九州大学 院試 過去問 解答例
九大 システム情報科学府 情報理工学専攻 数学 2023年度 院試 解答例・解説
九州大学 システム情報科学府 情報理工学専攻 数学 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 線形代数
ラプラシアン行列として読む
この はグラフのラプラシアン行列である。隣接行列 の各行和が次数であり、 は次数を対角に並べた行列になっている。今回は第1,2,3頂点が三角形を作り、第4頂点が孤立しているので、零固有値が2重になることも構造から予想できる。
固有空間は連結成分ごとの定数ベクトル
ラプラシアンの零固有空間は、連結成分ごとに一定値をとるベクトルで張られる。三角形成分上で一定のベクトルと、孤立頂点だけに値を持つベクトルが基底になる。計算だけでなく、この見方を書けると固有空間の重複度を取り違えにくい。
一般証明は行和に着目する
が固有値であることを示すには、行列式を計算する必要はない。各行和が であることから、全成分が のベクトルが核に入ると示すのが最短である。対称性やグラフの知識を使わなくても成立するため、答案としても堅い。
第2問 — 解析学・微積分
テイラー係数は導関数値を階乗で割る
の問題では、導関数の周期性と係数公式 を分けて書くと減点されにくい。絶対収束は偶数項だけを扱うより、指数級数で上から押さえると簡潔である。
重根は を生む
定数係数線形微分方程式では、特性方程式の重根 に対して が現れる。今回は が2重根であるため、 だけでなく を忘れないことが重要である。
半径によって極の個数が変わる
複素積分は、円が を含むかどうかで答えが変わる。 という条件は、円が極を通らないようにするためである。 では極が増えるものの、留数が打ち消し合って積分が になる。
第3問 — ベクトル解析
向きの違いが線積分の値を変える
この線積分では と一定になるため、弧の角度差だけで値が決まる。反時計回りは短い弧で角度差 、時計回りは長い弧で角度差 になる。端点だけでなく、向きを必ず反映する。
閉曲面全体であることを見落とさない
は半球面だけではなく、平面 の円板も含む境界である。半球面だけを積分すると になるが、底面の寄与が で打ち消す。外向き法線の向きまで書くと、符号の根拠が明確になる。
発散定理との関係
閉曲面には境界曲線がないので、回転場の閉曲面フラックスは になる。計算で確認しても、定理で一行にまとめてもよいが、試験答案では底面を含むことを明示しておくと安全である。
第4問 — 確率・統計
未知のコインを選んだまま投げ続ける
この問題では、毎回コインを選び直すのではなく、最初に選んだ同じコインを何度も投げる。したがって1回目に表が出ると、表の出やすいコインが選ばれている可能性が高まり、2回目の表の条件付き確率は事前平均の より大きくなる。
Bayes の公式は尤度を並べて正規化する
事前分布が一様なので、事後確率は「その観測が各コインでどれだけ起こりやすいか」を並べて、合計が1になるよう割ればよい。 の観測では尤度が 、 の観測では尤度が になる。
両端のコインの扱い
必ず裏が出るコインは や の後ではあり得ない。一方、必ず表が出るコインは の後では候補に残るが、4回目に初めて表という観測とは矛盾する。端の値 を代入して確率が になることを明示すると、答案の整合性が確認しやすい。