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九州大学 院試 過去問 解答例

九大 システム情報科学府 情報理工学専攻 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・確率・統計1問・線形代数1問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・留数定理・ベイズ推定)。2022年度と共通のテーマは留数定理。

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収録5年度分の解答PDF:九州大学 システム情報科学府 情報理工学専攻 数学(¥2,880・紙面見本あり)

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

九大 数学 2023年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・確率・統計1問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—ラプラシアン行列として読む / 固有空間は連結成分ごとの定数ベクトルあり
第2問微分積分・解析解析学・微積分テイラー係数は導関数値を階乗で割る / 重根は を生むあり
第3問微分積分・解析ベクトル解析向きの違いが線積分の値を変える / 閉曲面全体であることを見落とさないあり
第4問確率・統計—未知のコインを選んだまま投げ続ける / Bayes の公式は尤度を並べて正規化するあり

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に3テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 4問 → 2023年度 4問
両年度に出たテーマ
留数定理
2023年度で新しく出たテーマ
固有値・固有ベクトル・ベイズ推定
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第1問 — 線形代数

ラプラシアン行列として読む

この LL はグラフのラプラシアン行列である。隣接行列 AA の各行和が次数であり、DD は次数を対角に並べた行列になっている。今回は第1,2,3頂点が三角形を作り、第4頂点が孤立しているので、零固有値が2重になることも構造から予想できる。

固有空間は連結成分ごとの定数ベクトル

ラプラシアンの零固有空間は、連結成分ごとに一定値をとるベクトルで張られる。三角形成分上で一定のベクトルと、孤立頂点だけに値を持つベクトルが基底になる。計算だけでなく、この見方を書けると固有空間の重複度を取り違えにくい。

一般証明は行和に着目する

00 が固有値であることを示すには、行列式を計算する必要はない。各行和が 00 であることから、全成分が 11 のベクトルが核に入ると示すのが最短である。対称性やグラフの知識を使わなくても成立するため、答案としても堅い。

解答

  1. 各頂点の次数は第1,2,3成分がいずれも 22、第4成分が 00 である。したがって D=(2000020000200000) D=\begin{pmatrix} 2&0&0&0\\ 0&2&0&0\\ 0&0&2&0\\ 0&0&0&0 \end{pmatrix} であり、 L=D−A=(2−1−10−12−10−1−1200000). L=D-A= \begin{pmatrix} 2&-1&-1&0\\ -1&2&-1&0\\ -1&-1&2&0\\ 0&0&0&0 \end{pmatrix}.
  2. 左上の 3×33\times 3 ブロックを BB とおくと B=(2−1−1−12−1−1−12)=3I3−J3 B= \begin{pmatrix} 2&-1&-1\\ -1&2&-1\\ -1&-1&2 \end{pmatrix} =3I_3-J_3 である。ただし J3J_3 はすべての成分が 11 の行列である。 J3(1,1,1)T=3(1,1,1)TJ_3(1,1,1)^{\mathsf T}=3(1,1,1)^{\mathsf T} なので B(1,1,1)T=0 B(1,1,1)^{\mathsf T}=0 である。一方、x1+x2+x3=0x_1+x_2+x_3=0 を満たすベクトル xx に対しては J3x=0J_3x=0 だから Bx=3xBx=3x である。第4成分は孤立しており、Le4=0Le_4=0 である。 よって LL の固有値は 0, 0, 3, 3 0,\ 0,\ 3,\ 3 である。
  3. λ=0\lambda=0 に対する固有空間は E0=span⁡{(1110),(0001)} E_0=\operatorname{span}\left\{ \begin{pmatrix}1\\1\\1\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}0\\0\\0\\1\end{pmatrix} \right\} である。また λ=3\lambda=3 に対する固有空間は、第4成分が 00 で、かつ第1から第3成分の和が 00 であるベクトル全体である。したがって E3={(x1x2x30)∣x1+x2+x3=0}=span⁡{(1−100),(10−10)}. E_3= \left\{ \begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\\0\end{pmatrix} \mid x_1+x_2+x_3=0 \right\} =\operatorname{span}\left\{ \begin{pmatrix}1\\-1\\0\\0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix}1\\0\\-1\\0\end{pmatrix} \right\}.
  4. 1=(1,…,1)T\mathbf 1=(1,\ldots,1)^{\mathsf T} とおく。L=D−AL=D-A の第 ii 行の和は ∑j=1nLij=∑k=1naik−∑j=1naij=0 \sum_{j=1}^n L_{ij} =\sum_{k=1}^n a_{ik}-\sum_{j=1}^n a_{ij}=0 である。したがって L1=0L\mathbf 1=0 であり、1≠0\mathbf 1\ne 0 だから 00 は LL の固有値である。

最終答

L=(2−1−10−12−10−1−1200000)L=\begin{pmatrix}2&-1&-1&0\\-1&2&-1&0\\-1&-1&2&0\\0&0&0&0\end{pmatrix}。 固有値は 00 が2重、33 が2重。 E0=span⁡{(1,1,1,0)T,(0,0,0,1)T}E_0=\operatorname{span}\{(1,1,1,0)^{\mathsf T},(0,0,0,1)^{\mathsf T}\}、 E3={(x1,x2,x3,0)T∣x1+x2+x3=0}E_3=\{(x_1,x_2,x_3,0)^{\mathsf T}\mid x_1+x_2+x_3=0\}。一般にも L1=0L\mathbf1=0。

第2問 — 解析学・微積分

テイラー係数は導関数値を階乗で割る

cos⁡x\cos x の問題では、導関数の周期性と係数公式 ak=f(k)(0)/k!a_k=f^{(k)}(0)/k! を分けて書くと減点されにくい。絶対収束は偶数項だけを扱うより、指数級数で上から押さえると簡潔である。

重根は xerxxe^{rx} を生む

定数係数線形微分方程式では、特性方程式の重根 rr に対して erx,xerxe^{rx},xe^{rx} が現れる。今回は r=2r=2 が2重根であるため、C1e2xC_1e^{2x} だけでなく C2xe2xC_2xe^{2x} を忘れないことが重要である。

半径によって極の個数が変わる

複素積分は、円が z=±1z=\pm1 を含むかどうかで答えが変わる。r≠1r\ne1 という条件は、円が極を通らないようにするためである。r>1r>1 では極が増えるものの、留数が打ち消し合って積分が 00 になる。

解析学・微積分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — ベクトル解析

向きの違いが線積分の値を変える

この線積分では F⋅dr=−4 dθ\boldsymbol F\cdot d\boldsymbol r=-4\,d\theta と一定になるため、弧の角度差だけで値が決まる。反時計回りは短い弧で角度差 π/2\pi/2、時計回りは長い弧で角度差 −3π/2-3\pi/2 になる。端点だけでなく、向きを必ず反映する。

閉曲面全体であることを見落とさない

SS は半球面だけではなく、平面 z=0z=0 の円板も含む境界である。半球面だけを積分すると −8π-8\pi になるが、底面の寄与が 8π8\pi で打ち消す。外向き法線の向きまで書くと、符号の根拠が明確になる。

発散定理との関係

閉曲面には境界曲線がないので、回転場の閉曲面フラックスは 00 になる。計算で確認しても、定理で一行にまとめてもよいが、試験答案では底面を含むことを明示しておくと安全である。

ベクトル解析の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 確率・統計

未知のコインを選んだまま投げ続ける

この問題では、毎回コインを選び直すのではなく、最初に選んだ同じコインを何度も投げる。したがって1回目に表が出ると、表の出やすいコインが選ばれている可能性が高まり、2回目の表の条件付き確率は事前平均の 1/21/2 より大きくなる。

Bayes の公式は尤度を並べて正規化する

事前分布が一様なので、事後確率は「その観測が各コインでどれだけ起こりやすいか」を並べて、合計が1になるよう割ればよい。HH の観測では尤度が pip_i、B4B_4 の観測では尤度が (1−pi)3pi(1-p_i)^3p_i になる。

両端のコインの扱い

必ず裏が出るコインは HH や B4B_4 の後ではあり得ない。一方、必ず表が出るコインは HH の後では候補に残るが、4回目に初めて表という観測とは矛盾する。端の値 p=0,1p=0,1 を代入して確率が 00 になることを明示すると、答案の整合性が確認しやすい。

確率・統計の途中式・最終答をPDFで見る

九大 数学 院試 過去問の収録5年度