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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 専門科目(物理学) 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全12問)

全12問。電磁気学・回路2問・熱・統計力学2問・量子力学2問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・分配関数・ハミルトン形式)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・分配関数・留数定理。

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解説11問と大問1問の途中式・最終答(全12問)
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途中式と最終答(最終答つき1問)
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京大 専門科目(物理学) 2025年度 院試 過去問の出題内容(全12問)

この12問の分野は電磁気学・回路2問・熱・統計力学2問・量子力学2問・力学2問・数学1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学—循環座標と対称性 / 作用の符号あり
第2問電磁気学・回路I-2 電磁気学(誘電体・磁性体境界の鏡像法)方針 — 鏡像法と双極子展開を組み合わせる / 背景 — 強磁性 vs 反磁性体への引力—
第3問熱・統計力学I-3 統計力学・熱力学(理想気体と Joule-Thomson 過程)方針 — Joule-Thomson 過程と「自由エネルギーの変数」 / 背景 — Joule-Thomson 効果の応用—
第4問量子力学I-4A 量子力学(2 準位系の時間発展と期待値)方針 — 2 準位系での時間発展は周波数 / 背景 — NMR と量子ビット—
第5問数学I-4B 物理数学(対称行列・Fourier 級数・経路に依らない線積分)方針 — 楕円面積 π/detA の便利公式 / Fourier 級数の対称性—
第6問量子力学II-1 量子力学(磁場中の荷電粒子・Landau 準位)方針 — 対称ゲージでの Landau 問題 / 背景 — 量子 Hall 効果と最低ランダウ準位—
第7問熱・統計力学II-2 統計力学(2 状態 1 次元鎖モデル)方針 — エラスティック鎖と Ising 鎖の対応 / 転送行列法と外力下での 1 次元 Ising—
第8問微分方程式II-3 物理数学(Laplace 変換と微分方程式)方針 — ODE を代数方程式に / 背景 — 制御理論と回路解析—
第9問—II-4 実験(X 線シリコンフォトダイオード)方針 — 半導体 X 線検出器の動作原理 / 背景 — Si(Li) 検出器と Ge 検出器—
第10問力学II-5A 力学(剛体の慣性モーメントと板上の球の運動)方針 — 「並進 + 回転」のエネルギー分配 / 背景 — Tippe Top と「板を引いて球を回す」—
第11問電磁気学・回路II-5B 電磁気学(導波管モード電磁波の分散)方針 — 導波管モードの分散関係と「カットオフ」 / 背景 — マイクロ波導波管とプラズマ—
第12問————

この年度の解説には典型ミス10件が付いています。

2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は8問に7テーマが出ています。

前年度(2024年度)との違い

大問数
2024年度 12問 → 2025年度 12問
2025年度で新しく出たテーマ
ハミルトン形式・RC回路の過渡応答・PN接合
2024年度のページを見る

第1問 — 力学

循環座標と対称性

中心力ポテンシャルでは角度 ϕ\phi の絶対値に物理的意味がなく,原点まわりに 全体を回転しても運動は変わらない。この連続対称性に対応する保存量が pϕp_\phi である。小問 (1) で ∂H/∂ϕ=0\partial H/\partial\phi=0 を確認するだけでも 保存は示せるが,小問 (2) の母関数は同じ事実を正準変換の言葉で表している。 微小回転の母関数に ϵpϕ′\epsilon p'_\phi が加わることから,pϕp_\phi が回転の生成子 であることも読み取れる。

作用の符号

ハミルトン・ヤコビ方程式から得られる prp_r には二つの符号がある。ここでは x>0x>0 上を負の向きに進むため,rr は時間とともに小さくなる。したがって pr=mr˙p_r=m\dot r は負であり,この条件で積分定数を除く S(r)S(r) の符号が決まる。 符号を機械的に選ぶと,物理的な運動方向と逆の枝を答えてしまうので注意する。

粒子の屈折率

通常の光学では屈折率は速さの逆数に比例するが,ここで定義された nn は sin⁡α/sin⁡β\sin\alpha/\sin\beta そのものであり,境界接線方向の運動量保存から v2/v1v_2/v_1 に等しい。井戸の中ではポテンシャルが負なので運動エネルギーが増え, v2>v1v_2>v_1,すなわち n>1n>1 になる。この点を光の屈折率の記憶だけで判断しない ことが重要である。

散乱角と焦点の近似

小問 (6) では α−β=χ/2\alpha-\beta=\chi/2 と Snell 型の関係を組み合わせるだけで ρ\rho を消去できる。小問 (7), (8) ではさらに ρ≪a\rho\ll a として, sin⁡α≃α\sin\alpha\simeq\alpha,sin⁡β≃β\sin\beta\simeq\beta を使う。焦点距離では 出射点の高さ asin⁡(2β−α)a\sin(2\beta-\alpha) と出射後の傾き tan⁡χ\tan\chi の両方を同じ一次精度で 残す必要がある。n→1n\to 1 ではほとんど曲がらないため f→∞f\to\infty となり, n→2n\to2 では焦点が円周上の極限 f→af\to a に近づくので,得られた式の極限も 幾何と整合している。

解答

極座標での中心力問題では,角度 ϕ\phi がハミルトニアンに陽に現れない。 したがって ϕ\phi は循環座標であり,その共役運動量 pϕp_\phi が保存量になる。

  1. 正準運動方程式は ϕ˙=∂H∂pϕ=pϕmr2,p˙ϕ=−∂H∂ϕ=0 \dot{\phi}=\frac{\partial H}{\partial p_\phi} =\frac{p_\phi}{m r^2}, \qquad \dot{p}_\phi=-\frac{\partial H}{\partial \phi}=0 である。よって pϕp_\phi は時間によらず一定である。
  2. 母関数を第2種の母関数 W=W(r,ϕ,pr′,pϕ′) W=W(r,\phi,p'_r,p'_\phi) として用いると,変換式は r′=∂W∂pr′,ϕ′=∂W∂pϕ′,pr=∂W∂r,pϕ=∂W∂ϕ r'=\frac{\partial W}{\partial p'_r},\qquad \phi'=\frac{\partial W}{\partial p'_\phi},\qquad p_r=\frac{\partial W}{\partial r},\qquad p_\phi=\frac{\partial W}{\partial \phi} である。求める変換は r′=r,ϕ′=ϕ+ϵ,pr′=pr,pϕ′=pϕ r'=r,\qquad \phi'=\phi+\epsilon,\qquad p'_r=p_r,\qquad p'_\phi=p_\phi なので, W(r,ϕ,pr′,pϕ′)=rpr′+(ϕ+ϵ)pϕ′+C W(r,\phi,p'_r,p'_\phi) =r p'_r+(\phi+\epsilon)p'_\phi+C とすればよい。ただし CC は任意定数で,変換には影響しない。
  3. pϕ=0p_\phi=0 のとき H=pr22m+E0(1−c2e−2kr) H=\frac{p_r^2}{2m}+E_0(1-c^2e^{-2kr}) である。エネルギーが E0E_0 なので pr22m=E0c2e−2kr,pr=±c2mE0 e−kr \frac{p_r^2}{2m}=E_0c^2e^{-2kr}, \qquad p_r=\pm c\sqrt{2mE_0}\,e^{-kr} を得る。質点は xx 軸の正の領域を負の向きに進むから,rr は減少し, pr=mr˙<0p_r=m\dot r<0 である。したがって dSdr=pr=−c2mE0 e−kr. \frac{dS}{dr}=p_r=-c\sqrt{2mE_0}\,e^{-kr}. 積分して S(r)=ck2mE0 e−kr+C S(r)=\frac{c}{k}\sqrt{2mE_0}\,e^{-kr}+C となる。ここでも CC は作用の任意加法定数である。
  4. 境界に沿う方向の運動量成分は保存する。境界法線から測った角を用いると mv1sin⁡α=mv2sin⁡β m v_1\sin\alpha=m v_2\sin\beta である。またエネルギー保存より 12mv12=12mv22+U0,v22=v12−2U0m. \frac12 m v_1^2=\frac12 m v_2^2+U_0, \qquad v_2^2=v_1^2-\frac{2U_0}{m}. よって定義された屈折率は n=sin⁡αsin⁡β=v2v1=1−2U0mv12. n=\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} =\frac{v_2}{v_1} =\sqrt{1-\frac{2U_0}{m v_1^2}}. 問題の設定では U0<0U_0<0 なので n>1n>1 である。
  5. 原点まわりの角運動量は pϕ=mr2ϕ˙p_\phi=m r^2\dot\phi である。井戸の外から入射する 直線運動では,原点から入射直線までの距離が衝突パラメタ ρ\rho であるから, 角運動量は pϕ=mv1ρ p_\phi=m v_1\rho で保存される。井戸内でも中心対称ポテンシャル中の運動なので,同じ値を持つ。
  6. 円の入口で ρ=asin⁡α \rho=a\sin\alpha である。δ=χ/2\delta=\chi/2 とおくと,幾何学的関係から α−β=δ,n=sin⁡αsin⁡β=sin⁡(β+δ)sin⁡β=cos⁡δ+cot⁡βsin⁡δ \alpha-\beta=\delta,\qquad n=\frac{\sin\alpha}{\sin\beta} =\frac{\sin(\beta+\delta)}{\sin\beta} =\cos\delta+\cot\beta\sin\delta である。したがって cot⁡β=n−cos⁡δsin⁡δ. \cot\beta=\frac{n-\cos\delta}{\sin\delta}. sin⁡β>0\sin\beta>0 を用いて sin⁡β=sin⁡δ(n−cos⁡δ)2+sin⁡2δ=sin⁡δn2−2ncos⁡δ+1. \sin\beta =\frac{\sin\delta} {\sqrt{(n-\cos\delta)^2+\sin^2\delta}} =\frac{\sin\delta} {\sqrt{n^2-2n\cos\delta+1}}. さらに sin⁡α=nsin⁡β\sin\alpha=n\sin\beta だから ρ=a nsin⁡(χ/2)n2−2ncos⁡(χ/2)+1. \rho =a\,\frac{n\sin(\chi/2)} {\sqrt{n^2-2n\cos(\chi/2)+1}}.
  7. ρ≪a\rho\ll a では α≃ρa,β≃αn,χ=2(α−β)≃2α(1−1n) \alpha\simeq\frac{\rho}{a},\qquad \beta\simeq\frac{\alpha}{n},\qquad \chi=2(\alpha-\beta)\simeq 2\alpha\left(1-\frac1n\right) である。井戸から出る点の高さは,円の幾何から yout=asin⁡(2β−α)≃aα(2n−1) y_{\mathrm{out}} =a\sin(2\beta-\alpha) \simeq a\alpha\left(\frac{2}{n}-1\right) となる。焦点が井戸の外にあるには,出射点が xx 軸の上側にあり,出射後の 直線が円の外側で xx 軸と交わる必要がある。したがって 2n−1>0 \frac{2}{n}-1>0 が必要十分であり, n<2 n<2 を得る。よって nc=2. n_c=2.
  8. n<2n<2 のとき,出射点は x=−ax=-a の近傍かつ yout>0y_{\mathrm{out}}>0 にあり,出射線は 下向きに角 χ\chi だけ傾く。焦点までの距離は,先の近似を用いて f≃a+youttan⁡χ≃a+aα(2/n−1)2α(1−1/n). f \simeq a+\frac{y_{\mathrm{out}}}{\tan\chi} \simeq a+\frac{a\alpha(2/n-1)} {2\alpha(1-1/n)}. 整理すると f=an2(n−1) f=\frac{a n}{2(n-1)} である。

最終答

ϕ˙=pϕmr2,p˙ϕ=0,W=rpr′+(ϕ+ϵ)pϕ′+C,S(r)=ck2mE0 e−kr+C. \dot{\phi}=\frac{p_\phi}{m r^2},\quad \dot p_\phi=0,\quad W=r p'_r+(\phi+\epsilon)p'_\phi+C,\quad S(r)=\frac{c}{k}\sqrt{2mE_0}\,e^{-kr}+C. n=1−2U0mv12,pϕ=mv1ρ,ρ=a nsin⁡(χ/2)n2−2ncos⁡(χ/2)+1,nc=2,f=an2(n−1). \begin{aligned} n&=\sqrt{1-\frac{2U_0}{m v_1^2}}, & p_\phi&=m v_1\rho, \\ \rho&= a\,\frac{n\sin(\chi/2)} {\sqrt{n^2-2n\cos(\chi/2)+1}}, \\ n_c&=2, & f&=\frac{a n}{2(n-1)}. \end{aligned}

第2問 — I-2 電磁気学(誘電体・磁性体境界の鏡像法)

方針 — 鏡像法と双極子展開を組み合わせる

鏡像法の電気・磁気アナロジー:

  • 電気: ϕ\phi, E⃗\vec E, D⃗=εE⃗\vec D=\varepsilon\vec E, ϕ\phi 連続, D⊥D_{\perp} 連続 → 鏡像電荷 q′=((ε0−ε)/(ε0+ε))qq' = ((\varepsilon_{0}-\varepsilon)/(\varepsilon_{0}+\varepsilon))q.
  • 磁気: ϕm\phi_{m}, H⃗\vec H, B⃗=μH⃗\vec B=\mu\vec H, ϕm\phi_{m} 連続, B⊥B_{\perp} 連続 → 鏡像モーメント m′=((μ0−μ)/(μ0+μ))mm' = ((\mu_{0}-\mu)/(\mu_{0}+\mu)) m.

変数の置換 ε→μ\varepsilon\to\mu のみで全公式が引き継がれる.

典型ミス

  • (2) 境界条件: ExE_{x} ではなく Dx=εExD_{x}=\varepsilon E_{x} が連続. 「ϕ\phi 連続」と混同しない.
  • (4) 鏡像双極子の符号: 法線 (x) 成分反転, 接線 (y) 成分維持.
  • (6) ロ の置換: ε/ε0→μ/μ0\varepsilon/\varepsilon_{0}\to\mu/\mu_{0} (比の方向に注意).

背景 — 強磁性 vs 反磁性体への引力

μ≫μ0\mu\gg\mu_{0} (強磁性) で (μ0−μ)/(μ0+μ)≈−1(\mu_{0}-\mu)/(\mu_{0}+\mu)\approx -1 → 鏡像が反対符号同向き → 磁石は媒質に 引きつけ られる. μ≪μ0\mu\ll\mu_{0} (超伝導) で (μ0−μ)/(μ0+μ)≈+1(\mu_{0}-\mu)/(\mu_{0}+\mu)\approx +1 → 同符号 → 反発し磁石は 浮上 する.

I-2 電磁気学(誘電体・磁性体境界の鏡像法)の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — I-3 統計力学・熱力学(理想気体と Joule-Thomson 過程)

方針 — Joule-Thomson 過程と「自由エネルギーの変数」

定常な多孔質壁を通る気体の押し出しは, 「圧力の異なる 2 つのリザーバ間で気体を移動」する非可逆断熱過程. 各リザーバ内では気体が静止していて熱力学的状態は規定可. 気体 1 単位が左から右に移ると, P VP\,V 仕事の差が内部エネルギー変化となって, エンタルピー H=U+PVH=U+PV が保存される.

理想気体では H=H(T)H=H(T) のみで PP に依らないので, (∂T/∂P)H=0(\partial T/\partial P)_{H}=0 になり Joule-Thomson 効果は消える. 実気体の B(T)B(T) が温度依存性を持つと, 効果が現れる.

典型ミス

  • (2) Stirling: ln⁡N!≈Nln⁡N−N\ln N! \approx N\ln N - N. −N-N の項を忘れると SS で 5/25/2 ではなく 3/23/2 になる.
  • (4) Maxwell: (∂S/∂P)T=−(∂V/∂T)P(\partial S/\partial P)_{T}=-(\partial V/\partial T)_{P} は G(T,P)G(T,P) から導かれる. 符号を逆にしない.
  • (5): T2T_{2} の方向は 逆転温度 に対する T1T_{1} の位置で決まる. 単純に「気体は冷える」と暗記しない.

背景 — Joule-Thomson 効果の応用

希ガス・水素・空気を液化する標準技術. ヘリウムは逆転温度が約 4040 K と低く, あらかじめ冷やしてから JT で更に冷却が必要. 一方, 空気の逆転温度は室温より十分高いので, 室温で減圧すると冷える(冷蔵庫の原理).

van der Waals 気体での B(T)≈b−a/(kBT)B(T)\approx b-a/(k_{B}T) から得る Tinv=2a/(bkB)T_{\text{inv}}=2a/(bk_{B}) は, 経験的に各気体の逆転温度を ∼10%\sim 10\% 程度の精度で予測する.

I-3 統計力学・熱力学(理想気体と Joule-Thomson 過程)の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — I-4A 量子力学(2 準位系の時間発展と期待値)

方針 — 2 準位系での時間発展は周波数 2ω2\omega

エネルギー差 E2−E1=2ℏωE_{2}-E_{1}=2\hbar\omega が物理的に観測される振動数(Rabi 振動の角振動数). 期待値 ⟨A^⟩\langle\hat A\rangle がこの 2ω2\omega で振動するのは, A^\hat A が ∣1⟩|1\rangle と ∣2⟩|2\rangle を結ぶ非対角行列要素を持つから.

A^=σx\hat A=\sigma_{x} と等価で, σx2=I\sigma_{x}^{2}=I から ⟨σx2⟩=1\langle\sigma_{x}^{2}\rangle=1 が任意の状態で. ゆらぎ ΔA=1−⟨A^⟩2=∣sin⁡(2ωt)∣\Delta A=\sqrt{1-\langle\hat A\rangle^{2}}=|\sin(2\omega t)| は時刻によって 0 から 1 まで変動.

典型ミス

  • (2) 位相の符号: H^∣n⟩=En∣n⟩\hat H|n\rangle=E_{n}|n\rangle で時間発展は e−iEnt/ℏe^{-iE_{n}t/\hbar}. E1=−ℏωE_{1}=-\hbar\omega なら係数 e+iωte^{+i\omega t}.
  • (4) ゆらぎ: ΔA=⟨A^2⟩−⟨A^⟩2\Delta A=\sqrt{\langle\hat A^{2}\rangle-\langle\hat A\rangle^{2}}. 二乗差を取ってから平方根.

背景 — NMR と量子ビット

2 準位系 ++ σx\sigma_{x} 摂動は核磁気共鳴 (NMR), 量子ビットの単一ゲート操作の基本モデル. ⟨σx⟩\langle\sigma_{x}\rangle の振動はラビ振動, 周波数 2ω2\omega (エネルギー差) は Larmor 周波数の一般化.

I-4A 量子力学(2 準位系の時間発展と期待値)の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — I-4B 物理数学(対称行列・Fourier 級数・経路に依らない線積分)

方針 — 楕円面積 =π/det⁡A=\pi/\sqrt{\det A} の便利公式

2 次元 2 次形式 x⃗TAx⃗=1\vec x^{T}A\vec x=1 の楕円面積は一般に π/det⁡A\pi/\sqrt{\det A}. 本問 det⁡A=9−1=8\det A=9-1=8 で即 π/8=π/(22)\pi/\sqrt 8=\pi/(2\sqrt 2). 固有値求めずに出せる.

Fourier 級数の対称性

矩形パルス偶関数 → 余弦展開のみ, 奇数倍周波数のみ残る. 1/n1/n で減衰し Gibbs 現象あり. 級数の最初に対称性 (偶/奇) を確認するのが基本.

完全微分の条件

∫(Pdx+Qdy)\int(Pdx+Qdy) が経路非依存 ⇔\Leftrightarrow ポテンシャル Φ\Phi で P=∂Φ/∂x,  Q=∂Φ/∂yP=\partial\Phi/\partial x,\;Q=\partial\Phi/\partial y ⇔\Leftrightarrow ∂P/∂y=∂Q/∂x\partial P/\partial y=\partial Q/\partial x. 単連結領域で同値.

典型ミス

  • (1): 非対角成分に 22 を入れる. 正しくは A12=A21=1A_{12}=A_{21}=1 (2xy2xy の係数を半分ずつ).
  • (2): 周期を 2a2a と取り違える. 「幅 2a2a の山と幅 2a2a の谷」で周期 4a4a.
  • (3): P,QP,Q の偏微分計算で多項式の係数ミス. 各項丁寧に.
I-4B 物理数学(対称行列・Fourier 級数・経路に依らない線積分)の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — II-1 量子力学(磁場中の荷電粒子・Landau 準位)

方針 — 対称ゲージでの Landau 問題

磁場中の 2 次元自由電子問題で, 対称ゲージ A⃗=12B⃗×r⃗\vec A=\frac{1}{2}\vec B\times\vec r を用いると角運動量 L^z\hat L_{z} が保存される. エネルギー (= Landau 準位 nn) と LzL_{z} (= 量子数 mm) で状態を完全指定. 縮退したエネルギー準位 En=ℏωc(n+1/2)E_{n}=\hbar\omega_{c}(n+1/2) は無限縮退で, mm は −n,−n+1,…-n,-n+1,\dots をとる.

ランダウ準位の最低 (n=0n=0) 状態は ρmeimφe−ρ2/2\rho^{m}e^{im\varphi}e^{-\rho^{2}/2}, m≥0m\ge 0. これらは複素変数 z=ρeiφz = \rho e^{i\varphi} の正則関数 zmz^{m} に Gauss 因子をかけた形で, ランダウ準位最低状態が「正則関数の空間」と等価という有名な事実 (Lowest Landau Level 正則性).

典型ミス

  • (2): Π^x2+Π^y2=2ℏqB(N^+1/2)⋅2=ℏqB(2N^+1)\hat\Pi_{x}^{2}+\hat\Pi_{y}^{2} = 2\hbar qB(\hat N+1/2)\cdot 2 = \hbar qB(2\hat N+1) で「+1/2+1/2」の零点エネルギーを正しく出す.
  • (3): [L^z,Π^y]=−iℏΠ^x[\hat L_{z},\hat\Pi_{y}]=-i\hbar\hat\Pi_{x} の符号. L^z\hat L_{z} が回転の生成子であることを確認.
  • (7): ψ(0,m)\psi_{(0,m)} は m≥0m\ge 0 のみ. ρm\rho^{m} で原点正則性を要求.
  • (8): 励起状態 ψ(n,m)\psi_{(n,m)} の最低 LzL_{z} は −nℏ-n\hbar (m=−nm=-n). LzL_{z} を −nℏ-n\hbar より低く取れない.

背景 — 量子 Hall 効果と最低ランダウ準位

最低ランダウ準位 n=0n=0 は分数量子 Hall 効果の舞台. Laughlin 波動関数 ψ=∏i<j(zi−zj)mexp⁡(−∑∣zk∣2/4)\psi=\prod_{i<j}(z_{i}-z_{j})^{m}\exp(-\sum|z_{k}|^{2}/4) が, ここで導いた単粒子 ρmeimφe−ρ2/2\rho^{m}e^{im\varphi}e^{-\rho^{2}/2} の 多体一般化. 多体波動関数の正則性 (lowest Landau level constraint) と粒子間の交換統計が分数量子 Hall を生む.

II-1 量子力学(磁場中の荷電粒子・Landau 準位)の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — II-2 統計力学(2 状態 1 次元鎖モデル)

方針 — エラスティック鎖と Ising 鎖の対応

鎖モデルは生体分子 (RNA, DNA) や ゴム弾性のミクロモデルとして頻出. 各要素が 2 状態 (短/長 = α\alpha/γ\gamma) を取り, 外力 ff で長くなる方向に偏らせる. 長さの統計が Boltzmann 分布で決まり, ⟨ℓ⟩\langle\ell\rangle vs ff の関係が 力 - 伸び曲線 (force-extension curve).

[B] では隣接要素の相互作用 ww を加える. これは Ising 鎖と完全等価で, 1 次元なので有限温度相転移は無いが, 熱容量に Schottky 型のピークが現れる.

転送行列法と外力下での 1 次元 Ising

(4) の QQ は外場 ff がスピン ±1\pm 1 にかかる Ising 鎖の転送行列に対応. 「Boltzmann 因子」の半分を左右の要素に振り分けることで対称な QQ が作れる. (5) の最大固有値 λmax⁡=2cosh⁡(βw)\lambda_{\max}=2\cosh(\beta w) が, 標準 Ising 鎖の転送行列の固有値と一致.

典型ミス

  • (1): Nα,NγN_{\alpha}, N_{\gamma} の符号. aNα+2aNγ=ℓaa N_{\alpha}+2a N_{\gamma}=\ell a から Nγ=ℓ−NN_{\gamma}=\ell-N, Nα=2N−ℓN_{\alpha}=2N-\ell.
  • (3): CC が低温・高温で 0 になり中間にピークというのは Schottky 異常熱容量の典型. exponentially supressed at low T, 1/T21/T^{2} at high T.
  • (4): 転送行列の行・列の振り分け方は規約. 半分・半分の Boltzmann で対称化するのが標準.

背景 — DNA 伸長実験と 2 状態モデル

シングル分子 DNA を引っ張る原子間力顕微鏡 (AFM) や光ピンセット実験で, 鎖の長さが力に対して階段的に変化する現象が観測される. 各塩基対が「畳まれた状態」「伸びた状態」の 2 状態を取ると考えると, 本問のモデルがそのまま使え, 力 - 伸び曲線が再現できる. (実際は隣接相互作用 (ww 項) が「協同性」を生み, より階段的な遷移になる.)

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第8問 — II-3 物理数学(Laplace 変換と微分方程式)

方針 — ODE を代数方程式に

Laplace 変換は 線形微分方程式を 多項式の代数方程式に変える. 微分演算 d/dtd/dt が乗算 ss に, 初期条件が代数式の定数項に変わる. 「変換」「代数で解く」「逆変換」の 3 ステップが標準.

ヘビサイド関数 u(t−a)u(t-a) と シフト則 e−asF(s)e^{-as}F(s) で, スイッチング (=ある時刻からだけ駆動) のような区分的入力も扱える.

典型ミス

  • (2): 3 位の極の留数は 2 階微分. 1/2!1/2! の係数を忘れない.
  • (5): 初期条件 x(0)=x′(0)=0x(0)=x'(0)=0 から境界項が消える. 一般には sX−x(0)sX-x(0) の x(0)x(0) 項を残す.
  • (6): シフト則を忘れて 1−e−t−te−t1-e^{-t}-te^{-t} をそのまま答えると t<3t<3 でも非ゼロになり初期条件不適合.

背景 — 制御理論と回路解析

Laplace 変換は線形時不変系の周波数応答 (Bode 線図), 制御系の安定性解析 (極の位置), 電気回路の過渡応答計算で標準ツール. 本問の式 (F) はステップ入力に対する 1 階遅れ + 1 階遅れ系の応答で, 制御理論の最も基本的な過渡応答パターン.

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第9問 — II-4 実験(X 線シリコンフォトダイオード)

方針 — 半導体 X 線検出器の動作原理

入射 X 線 →\to Si 原子と光電効果 →\to 電子放出 + 二次電離で電子・ホールペアを生成 (ε∼3.6\varepsilon\sim 3.6 eV/ペア で Si 固有値). この電荷を空乏層中の電場で分離・収集してパルス出力.

電荷有感アンプは「入力電荷を時間積分して電圧化」する標準回路で, 入力電荷量に比例した電圧出力を τ=RfCf\tau=R_{f}C_{f} で減衰. パルス高さがエネルギー比例, パルス幅が時定数 τ\tau.

典型ミス

  • (1) で nσℓn\sigma\ell の単位を間違える. cm 系で揃え, 結果 ≈1\approx 1. 1 桁有効で 0.60.6.
  • (2) 逆バイアスの方向: n-type には ++, p-type には −-. 順バイアスとは逆.
  • (4) 単位: CfC_{f} in F, qq in C, 結果 V. SI 単位を保つ.

背景 — Si(Li) 検出器と Ge 検出器

X 線天文衛星 (XRISM, NICER), シンクロトロン放射光のエネルギー分散検出器に Si(Li) や SDD (Silicon Drift Detector) が広く使われる. より高エネルギー X 線・γ 線には Ge (HPGe) 検出器, 高密度・高吸収率のため.

冷却は基本: 暗電流 ∝e−Eg/(2kBT)\propto e^{-E_{g}/(2k_{B}T)} で温度依存性が指数的. −30∘-30^\circC →\to −100∘-100^\circC で暗電流が 4 桁減. 但し本問の通り結露問題は同時に発生し, 真空 / 乾燥環境が前提.

II-4 実験(X 線シリコンフォトダイオード)の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — II-5A 力学(剛体の慣性モーメントと板上の球の運動)

方針 — 「並進 + 回転」のエネルギー分配

転がり問題の鍵は「並進 KE と回転 KE の比 = 1:I/(Mb2)1 : I/(Mb^{2})」. 球 (2/5)(2/5), 円環 (1)(1), 円板 (1/2)(1/2), 円柱 (1/2)(1/2) で異なる.

- 球が斜面を転がる (3): x˙2=(2gsin⁡α)/(1+I/(Mb2))⋅x\dot x^{2} = (2g\sin\alpha)/(1+I/(Mb^{2}))\cdot x で, 球は係数 (2g/(1+2/5))=10g/7(2g/(1+2/5))=10g/7, 摩擦無し滑り落ちなら 2g2g. 転がりは 5/75/7 倍に速度減少 (一部のエネルギーが回転に行く). - 板を引いて球を回す (4): 摩擦力が球に「回転」だけ付与, 並進は外部から打ち消される.

典型ミス

  • (2): 「中心軸まわり」の慣性モーメントは Ma2Ma^{2}. 直径まわりは Ma2/2Ma^{2}/2 (直交軸定理).
  • (3): 転がり拘束 x˙=bθ˙\dot x=b\dot\theta を忘れ, θ˙\dot\theta を残すと自由度が間違う.
  • (4): 摩擦力の向き. 球は静止 (x¨CoM=0\ddot x_{\text{CoM}}=0) なので重力下降を打ち消す向き = 斜面上向き. トルクは下端に上向きの力でかかるので, 球は時計回り (図の正方向) に角加速.

背景 — Tippe Top と「板を引いて球を回す」

(4) は「板を素早く引き抜くと球が転がり始める」という日常現象の力学的記述. 球の慣性が大きいので並進は遅れ, 板からの摩擦が球に角運動量を与える. テーブルクロスを引き抜く現象も同種.

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第11問 — II-5B 電磁気学(導波管モード電磁波の分散)

方針 — 導波管モードの分散関係と「カットオフ」

電場が zz 方向に有限な依存性 sin⁡(πz/z0)\sin(\pi z/z_{0}) を持つことは, zz 方向に有限の 導波管 (例: 平行平板間で間隔 z0z_{0}) を伝播する電磁波と等価. πz/z0\pi z/z_{0} の依存性は基本モード (TM1\mathrm{TM}_{1} あるいは TE1\mathrm{TE}_{1}) で, 境界 z=0, z0z=0,\,z_{0} で電場が 0.

分散関係 ω2=c2k2+(πc/z0)2\omega^{2}=c^{2}k^{2}+(\pi c/z_{0})^{2} から:

  • カットオフ周波数 ωc=πc/z0\omega_{c}=\pi c/z_{0}. これより低い周波数 (ω<ωc\omega<\omega_{c}) では k2<0k^{2}<0 になり, 波は伝播せず指数減衰 (evanescent).
  • ω>ωc\omega>\omega_{c} で伝播波となり vg<c<vpv_{g}<c<v_{p}. vg vp=c2v_{g}\,v_{p}=c^{2} は導波管 TE/TM モードの普遍関係.

典型ミス

  • (2) 符号: ∇2Ey\nabla^{2}E_{y} には ∂z2\partial_{z}^{2} で sin⁡(πz/z0)\sin(\pi z/z_{0}) が出るが, ∂z2sin⁡=−(π/z0)2sin⁡\partial_{z}^{2}\sin = -(\pi/z_{0})^{2}\sin で 負. これと −ω2/c2-\omega^{2}/c^{2} を比較し符号を誤らない.
  • (3): vg vp=c2v_{g}\,v_{p}=c^{2} は二乗を取った後の関係. 個別に vp/c,vg/cv_{p}/c, v_{g}/c を求めて積を取ると常に 1.
  • (4): 「位相速度がエネルギー伝達速度」と勘違い. 因果律と整合するのは vg≤cv_{g}\le c.

背景 — マイクロ波導波管とプラズマ

矩形導波管・円筒導波管は ω2=c2k2+ωc2\omega^{2}=c^{2}k^{2}+\omega_{c}^{2} 型分散を持つ. 同型の関係式が プラズマ中の電磁波 (プラズマ振動数 ωp\omega_{p}) でも現れる: ω2=c2k2+ωp2\omega^{2}=c^{2}k^{2}+\omega_{p}^{2}. プラズマでは ω<ωp\omega<\omega_{p} の波が反射 (電離層の AM 波反射, 太陽コロナでの遮蔽).

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第12問

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京大 専門科目(物理学) 院試 過去問の収録5年度

  • 2026年度(全12問)

    I-1 電磁気学(Maxwell 応力テンソルの応用) / I-2 解析力学(放物面上の質点) / I-3 物理数学(2 階 ODE・行列の対角化・熱方程式)

  • 2025年度(このページ・全12問)

    力学 / I-2 電磁気学(誘電体・磁性体境界の鏡像法) / I-3 統計力学・熱力学(理想気体と Joule-Thomson 過程)

  • 2024年度(全12問)

    I-1 量子力学(Pauli 演算子と 3 体 Ising 鎖) / I-2 電磁気学(層状・周期媒質中の Maxwell 方程式) / I-3 統計力学(超流動体中のフォノン気体)

  • 2023年度(全12問)

    I-1 力学(連星系の質量移動とロッシュ・ローブ) / I-2 電磁気学(円形コイルの磁場と磁気双極子相互作用) / I-3A 物理数学(行列冪・Lagrange の未定係数法)

  • 2022年度(全11問)

    I-1 量子力学(2 次元等方調和振動子と一様磁場) / I-2A 電磁気学(電気双極子・四重極子) / I-2B 物理数学(1 次元波動方程式の初期値問題)