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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 数理工学コース 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全12問)

全12問。情報1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・伝達関数)。2021年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・伝達関数・正定値行列。

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解説12問と大問1問の途中式・最終答(全12問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき12問)
問題本文
非収録

京大 数理工学コース 2022年度 院試 過去問の出題内容(全12問)

この12問の分野は情報1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—基礎数学 I必要条件と十分条件の区別 / 導関数の極限は面積だけでは決まらないあり
第2問情報アルゴリズム基礎平均ギャップの望遠和 / 二分探索で失われない性質あり
第3問—線形計画内点からの改善方向 / 射影の役割あり
第4問—線形制御理論変位フィードバックだけでは減衰がない / 周波数応答の最大値あり
第5問—基礎力学角運動量保存 / Binet 方程式の符号あり
第6問—基礎数学 II基底の選び方 / 列ベクトルの順番あり
第7問—応用数学奇関数の Fourier 級数 / Gibbs 現象につながる極限あり
第8問—グラフ理論最大流最小カット定理の核 / 最小カットでは等号条件が強いあり
第9問—オペレーションズ・リサーチ球制約の使い方あり
第10問—現代制御論可観測でない理由 / LQR の低次元化あり
第11問—物理統計学不変測度の計算 / 拡散係数で交差項が残る理由あり
第12問—力学系数学全1行列の固有分解 / 必要十分条件あり

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に5テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 12問 → 2022年度 12問
2022年度で新しく出たテーマ
線形空間・基底
2021年度のページを見る

第1問 — 基礎数学 I

必要条件と十分条件の区別

級数収束なら一般項は 00 に収束するが,逆は成り立たない。この区別は頻出で,調和級数が最も短い反例になる。

導関数の極限は面積だけでは決まらない

ff が単調増加で極限をもつことは,f′≥0f'\ge0 の面積が有限であることに対応する。しかし非負連続関数の面積が有限でも,関数値そのものが 00 に収束するとは限らない。幅を急速に小さくした山を置くと,全体の面積は有限のまま高さだけを保てる。

解答

  1. 正しい。部分和を SN=∑n=1Nan S_N=\sum_{n=1}^N a_n とおく。級数が収束するとは SNS_N が有限な極限をもつことである。このとき aN=SN−SN−1 a_N=S_N-S_{N-1} であり,N→∞N\to\infty とすると右辺は同じ極限の差になる。したがって lim⁡N→∞aN=0 \lim_{N\to\infty}a_N=0 である。
  2. 正しくない。例えば an=1n a_n=\frac1n とすれば an→0a_n\to0 である。しかし調和級数 ∑n=1∞1n \sum_{n=1}^{\infty}\frac1n は発散する。よって一般には,項が 00 に収束しても級数は収束しない。
  3. 正しくない。反例として f(x)=arsinh⁡x=log⁡(x+x2+1) f(x)=\operatorname{arsinh}x=\log\left(x+\sqrt{x^2+1}\right) を取る。この関数は C1C^1 級で f′(x)=1x2+1>0 f'(x)=\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}>0 であるから広義単調増加である。また lim⁡x→∞f′(x)=0 \lim_{x\to\infty} f'(x)=0 である。一方で arsinh⁡x→∞(x→∞) \operatorname{arsinh}x\to\infty \quad (x\to\infty) なので f(x)f(x) は有限な極限をもたない。
  4. 正しくない。連続な非負関数 φ∈Cc∞(−1,1)\varphi\in C_c^\infty(-1,1) で φ(0)=1\varphi(0)=1 を満たすものを一つ固定し, g(x)=∑n=1∞φ(2n+2(x−n)) g(x)=\sum_{n=1}^{\infty}\varphi\bigl(2^{n+2}(x-n)\bigr) と定める。各点の近くでは有限個の項しか寄与しないので gg は連続であり,g(x)≥0g(x)\ge0 である。 また各山の幅は 2−n−22^{-n-2} 程度なので ∫0∞g(x) dx<∞ \int_0^\infty g(x)\,dx<\infty である。そこで f(x)=∫0xg(t) dt f(x)=\int_0^x g(t)\,dt とおくと,ff は C1C^1 級かつ広義単調増加で,lim⁡x→∞f(x)\lim_{x\to\infty}f(x) は収束する。 しかし f′(n)=g(n)=1(n=1,2,…) f'(n)=g(n)=1\qquad(n=1,2,\ldots) であるから f′(x)→0f'(x)\to0 ではない。

最終答

  1. 正しい。
  2. 正しくない。反例は an=1/na_n=1/n。
  3. 正しくない。反例は f(x)=arsinh⁡xf(x)=\operatorname{arsinh}x。
  4. 正しくない。有界な増加関数でも,導関数に幅の狭い連続な山を無限に置くと f′(x)→0f'(x)\to0 は従わない。

第2問 — アルゴリズム基礎

平均ギャップの望遠和

隣接差の総和が最大値と最小値の差に潰れることが基本である。これは以降の二分探索の正当性にも使われる。

二分探索で失われない性質

中央のギャップが平均より小さいなら,左右どちらかの内部では平均ギャップが元より大きくなる。そうでなければ,全体の範囲を足し戻したときに元の平均ギャップに届かないためである。この不変量があるので,整列せずに線形時間で探索できる。

アルゴリズム基礎の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 線形計画

内点からの改善方向

YY は現在点 yy の成分を使ったスケーリングである。制約 ∥Y−1d∥≤1/2\|Y^{-1}d\|\le1/2 により,各成分の相対変化が高々 1/21/2 に抑えられるため,y+dy+d の非負性が保たれる。

射影の役割

pp は Y2Y^2 で重み付けされた意味で cc を A⊤A^\top の像に射影する量である。残差 q=c−A⊤pq=c-A^\top p が AY2q=0AY^2q=0 を満たすことが,d∗d^\ast を等式制約 Ad=0Ad=0 の中に入れる鍵である。

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第4問 — 線形制御理論

変位フィードバックだけでは減衰がない

u=−cyu=-cy はばね定数を k+ck+c に変えるだけで,速度に比例する減衰項を作らない。そのため根は純虚数か零根か不安定実根になり,漸近安定にはならない。

周波数応答の最大値

条件は分母の二乗 (k−mω2)2+d2ω2 (k-m\omega^2)^2+d^2\omega^2 の最小値評価に帰着する。2次関数として ω2\omega^2 で最小化すると,減衰が小さいときだけ共振ピークが現れる。

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第5問 — 基礎力学

角運動量保存

中心力では接線方向の力がないため,r2θ˙r^2\dot\theta が保存する。質量 mm を掛ければ通常の角運動量になるが,本問の hh は質量を除いた量である。

Binet 方程式の符号

ここでは中心力の正方向が外向きに取られている。そのため通常の「内向きを正」とした形と符号が逆に見える。動径方向の式から一度導くと符号ミスを避けられる。

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第6問 — 基礎数学 II

基底の選び方

各成分が2次同次多項式なので,第一成分に x2,xy,y2x^2,xy,y^2 を置く3通りと,第二成分に置く3通りで合計6次元になる。

列ベクトルの順番

表現行列は「基底ベクトルの像を,同じ基底で展開した係数」を列に並べる。行と列を逆にしないことが重要である。

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第7問 — 応用数学

奇関数の Fourier 級数

この関数は奇関数なので余弦係数は全て消える。残る正弦係数も偶数次では消え,奇数次だけが現れる。

Gibbs 現象につながる極限

S2n(π/(2n))S_{2n}(\pi/(2n)) は不連続点の近くを nn に応じて拡大して見ている量である。中点 Riemann 和に直すと,sin⁡x/x\sin x/x の積分が自然に現れる。

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第8問 — グラフ理論

最大流最小カット定理の核

本問は定理そのものを段階的に示している。カットをまたぐ正味流量がカット容量を超えないこと,増加路がないとき到達可能集合が等号を達成することが中心である。

最小カットでは等号条件が強い

最小カット XX で cap⁡(X)=val⁡(f)\operatorname{cap}(X)=\operatorname{val}(f) になると,XX から外へ出る枝は全て飽和し,外から XX へ入る枝の流量は全て 00 になる。このため残余ネットワークでは XX から外へ出られない。

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第9問 — オペレーションズ・リサーチ

gg を作る意味

ff は一般には凸とは限らないが,12x⊤x\frac12x^\top x を足した gg は Hessian が Q+IQ+I となり凸になる。まず凸な gg を最小化し,球制約上で ff に戻すのが問題の仕掛けである。

球制約の使い方

f=g−∥x∥2/2f=g-\|x\|^2/2 なので,g(x)≥g(u)g(x)\ge g(u) だけではまだ不十分である。そこで ∥x∥2≤1=∥u∥2\|x\|^2\le1=\|u\|^2 を使うと,差し引く量まで比較できる。

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第10問 — 現代制御論

可観測でない理由

行列 AA の第3列は (0,0,−1/2)⊤(0,0,-1/2)^\top であり,x3x_3 は x1,x2x_1,x_2 や出力 y=x2y=x_2 に影響しない。そのため x3x_3 の初期値は出力から復元できず,可観測ではない。

LQR の低次元化

コストは x2x_2 と uu だけを見ており,x3x_3 は安定な従属モードである。したがって本質的には x1,x2x_1,x_2 の2次元 LQR を解けばよく,Riccati 解の第3行・第3列は 00 になる。

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第11問 — 物理統計学

不変測度の計算

μ(dx)=dx/(π1−x2)\mu(dx)=dx/(\pi\sqrt{1-x^2}) は x=cos⁡θx=\cos\theta により一様測度 dθ/πd\theta/\pi に変わる。この変換で全ての平均が三角関数の直交性に帰着する。

拡散係数で交差項が残る理由

B(Xn)−⟨B⟩B(X_n)-\langle B\rangle は cos⁡(4nθ)\cos(4^n\theta) と cos⁡(4n+1θ)\cos(4^{n+1}\theta) の和である。時刻をずらして足し合わせると隣同士が同じ周波数に重なり,係数が a1+a2a_1+a_2 になる。この重なりが DD に現れる。

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第12問 — 力学系数学

全1行列の固有分解

この行列は aI+b11⊤aI+b\mathbf1\mathbf1^\top と見れば一気に解ける。全成分が同じ方向だけ固有値が a+nba+nb になり,成分和が0の方向では固有値が aa のままである。

必要十分条件

初期値 e1e_1 は 1\mathbf1 方向にも,成分和0の方向にも射影をもつ。したがって片方の固有値だけが負でも不十分で,aa と a+nba+nb の両方が負であることが必要十分になる。

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    基礎数学 I / アルゴリズム基礎 / 線形計画

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    基礎数学 I / アルゴリズム基礎 / 線形計画