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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 数理工学コース 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全12問)

全12問。情報1問。テーマタグは6件(正定値行列・グラフ理論・固有値・固有ベクトル)。

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解説12問と大問1問の途中式・最終答(全12問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき12問)
問題本文
非収録

京大 数理工学コース 2021年度 院試 過去問の出題内容(全12問)

この12問の分野は情報1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—基礎数学 I微分漸化式の作り方 / 収束半径と端点あり
第2問情報アルゴリズム基礎最短路に含まれる枝の特徴 / 距離を増やす枝あり
第3問—線形計画単体上の線形関数 / 行列 の単調な係数あり
第4問—線形制御理論閉ループ極 / 逆応答の判定あり
第5問—基礎力学球殻定理 / 脱出速度あり
第6問—基礎数学 IIcompanion 行列 / 三重対角化の見方あり
第7問—応用数学係数減衰と解析接続 / 最近接特異点あり
第8問—グラフ理論交換論法 / ボトルネック最小性あり
第9問—オペレーションズ・リサーチパラメータと決定変数の区別 / 大域解のノルム評価あり
第10問—現代制御論第(i)の注意 / Riccati 方程式の平方完成あり
第11問—物理統計学零点エネルギー / 高温極限あり
第12問—力学系数学Wronskian を使う / 多項式解だけの場合の矛盾あり

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に6テーマが出ています。

第1問 — 基礎数学 I

微分漸化式の作り方

arctan⁡x\arctan x そのものを何度も微分するより,まず (1+x2)f′(x)=1(1+x^2)f'(x)=1 という1階の関係式を作るのが最短である。多項式 1+x21+x^2 は3階以上の導関数が消えるため,Leibniz 公式が3項だけに整理される。

収束半径と端点

Taylor 展開の収束半径は複素特異点までの距離で決まる。端点 x=1x=1 は収束半径上にあるため絶対収束はしないが,交代級数として収束し,π\pi の級数表示が得られる。

解答

  1. f′(x)=11+x2 f'(x)=\frac{1}{1+x^2} であるから (1+x2)f′(x)=1 (1+x^2)f'(x)=1 が成り立つ。両辺を n+1n+1 回微分する。右辺は 00 になり,左辺は積の微分公式より (1+x2)f(n+2)(x)+2(n+1)xf(n+1)(x)+n(n+1)f(n)(x) (1+x^2)f^{(n+2)}(x)+2(n+1)x f^{(n+1)}(x)+n(n+1)f^{(n)}(x) である。よって示すべき等式を得る。
  2. f′(x)=11+x2=∑j=0∞(−1)jx2j(∣x∣<1) f'(x)=\frac1{1+x^2} =\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j x^{2j}\qquad(|x|<1) である。これを 00 から xx まで項別積分すると arctan⁡x=∑j=0∞(−1)jx2j+12j+1=x−x33+x55−⋯ \arctan x =\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j\frac{x^{2j+1}}{2j+1} =x-\frac{x^3}{3}+\frac{x^5}{5}-\cdots である。
  3. arctan⁡z\arctan z は複素平面では z=±iz=\pm i に特異性をもつ。原点から最も近い特異点までの距離は 11 なので,原点中心の Taylor 展開の収束半径は 1 1 である。前問の幾何級数から見ても,∑(−1)jx2j\sum(-1)^j x^{2j} の収束半径が 11 であるため同じ結論になる。
  4. 前問の級数は x=1x=1 で交代級数として収束する。したがって Abel の定理,または交代級数の端点収束を用いて arctan⁡1=∑j=0∞(−1)j12j+1 \arctan 1=\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j\frac1{2j+1} である。左辺は π/4\pi/4 なので π=4∑j=0∞(−1)j12j+1=∑n=1∞4(−1)n−12n−1 \pi=4\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j\frac1{2j+1} =\sum_{n=1}^{\infty}\frac{4(-1)^{n-1}}{2n-1} を得る。

最終答

arctan⁡x=∑j=0∞(−1)jx2j+12j+1(∣x∣<1),収束半径=1. \arctan x=\sum_{j=0}^{\infty}(-1)^j\frac{x^{2j+1}}{2j+1} \quad(|x|<1), \qquad \text{収束半径}=1. また π=∑n=1∞4(−1)n−12n−1. \pi=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{4(-1)^{n-1}}{2n-1}.

第2問 — アルゴリズム基礎

最短路に含まれる枝の特徴

枝 (u,v)(u,v) が最短 ss-tt 路に乗るかどうかは, ds(u)+1+dt(v)=ds(t) d_s(u)+1+d_t(v)=d_s(t) で判定できる。この条件は,全ての最短路を列挙せずに済ませるための核である。

距離を増やす枝

枝を削除して最短距離が増えるのは,その枝が全ての最短路に共通しているときである。最短路DAGでは各最短路が各距離層を一度ずつ通るため,層間の枝数を数えるだけで共通枝の有無を判定できる。

アルゴリズム基礎の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 線形計画

単体上の線形関数

制約集合は原点を含む単体である。線形目的関数の係数が全て非負なら原点が最適になり,負の係数があるなら最も小さい係数の成分に重みを集中させるのが最適になる。

行列 AA の単調な係数

(A⊤u)j=−β−jα(A^\top u)_j=-\beta-j\alpha と書くと,符号と単調性が見やすい。u≥0, u≠0u\ge0,\ u\ne0 では j=nj=n が一意の最小係数になるため,最適解も一意に ene_n となる。

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第4問 — 線形制御理論

閉ループ極

安定性は s2+(a+kc)s+(b+k) s^2+(a+kc)s+(b+k) の Hurwitz 条件に帰着する。2次の場合は係数が正であることが必要十分であり,Routh 表を作らなくても判定できる。

逆応答の判定

単位階段応答の初期勾配は伝達関数の高周波展開から読める。ここでは y(t)=kc t+O(t2)y(t)=kc\,t+O(t^2) なので,定常値の符号と比べると c<0c<0 が逆応答の条件になる。

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第5問 — 基礎力学

球殻定理

一様球の外部重力場は,全質量が中心に集中した質点の重力場と同じである。したがって外部ポテンシャルは半径方向だけの問題になり,−GMm/r-GMm/r と書ける。

脱出速度

最小脱出速度では,無限遠で運動エネルギーがちょうど 00 になる。途中で速度が残る場合は初速度が余分に大きいので,等号条件で求めるのが最小値である。

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第6問 — 基礎数学 II

companion 行列

第1行に係数,第2行以下にシフトを持つ行列なので,特性多項式は xn+a1xn−1+⋯+an x^n+a_1x^{n-1}+\cdots+a_n になる。符号は xI−AxI-A を作ると第1行が x+a1,a2,…,anx+a_1,a_2,\ldots,a_n になることで確認できる。

三重対角化の見方

奇数番目と偶数番目の局所変換を分けると,それぞれがブロック対角行列になる。xI−OE=(xE−1−O)ExI-OE=(xE^{-1}-O)E と因数分解することで,根を変えずに対称三重対角行列へ移せる。

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第7問 — 応用数学

係数減衰と解析接続

Fourier 係数の指数減衰は,関数を実軸からどれだけ上下に動かせるかで決まる。上半平面への移動は負の kk,下半平面への移動は正の kk の評価に使う。

最近接特異点

cos⁡z=c>1\cos z=c>1 の解は実軸上にはなく,虚方向に ±arcosh⁡c\pm\operatorname{arcosh}c だけ離れた位置にある。任意の η\eta をそれより小さく取れば,その帯の中では極に当たらない。

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第8問 — グラフ理論

交換論法

最小全域木の証明では,枝を1本加えて閉路を作り,その閉路上の別の枝を1本抜く交換論法が基本である。カットの最小枝を入れても総重みが増えないことが重要である。

ボトルネック最小性

総重みが最小であることは,最大枝の重みも最小にすることを含意する。ただし逆は一般には成り立たない。ここでは最小全域木の各枝が,対応するカットで最小重みであることを使う。

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第9問 — オペレーションズ・リサーチ

パラメータと決定変数の区別

P(x)P(x) では xx はパラメータであり,KKT 条件を取る変数は y,ziy,z^i である。x⊤Cxx^\top Cx はこの段階では定数として扱う。

大域解のノルム評価

評価は f(x∗)≤f(0)f(x^\ast)\le f(0) と f(x)≥x⊤Cxf(x)\ge x^\top Cx の2つだけで出る。複雑な KKT 条件を使わず,非負二乗項と正定値性を直接使うのが簡潔である。

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第10問 — 現代制御論

第(i)の注意

公式問題の条件 ab≠0ab\ne0 のもとでは,指定された A,BA,B は可制御である。したがって「不可制御となる (a,b)(a,b)」は存在しない,というのがこの小問の結論である。

Riccati 方程式の平方完成

A⊤P+PA−PBB⊤P+I=0A^\top P+PA-PBB^\top P+I=0 は, x⊤Px˙=−∥x∥2−∥u∥2+∥u+B⊤Px∥2 \dot{x^\top Px} =-\|x\|^2-\|u\|^2+\|u+B^\top Px\|^2 を作るための式である。LQR の評価関数の下界や最適入力 u=−B⊤Pxu=-B^\top Px につながる基本恒等式になっている。

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第11問 — 物理統計学

零点エネルギー

12hν\frac12h\nu は分配関数に因子 e−βhν/2e^{-\beta h\nu/2} として入る。平均エネルギーには残るが,比熱では温度微分により定数部分は寄与しない。

高温極限

高温では hν/(kT)h\nu/(kT) が小さいため,量子振動子の比熱は古典的な等分配則の値 kk に近づく。低温では励起準位に上がれないため,比熱は指数関数的に 00 へ落ちる。

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第12問 — 力学系数学

Wronskian を使う

2階線形方程式では Wronskian が W′=−aWW'=-aW を満たす。ここで W=tk−1p(t) W=t^{k-1}p(t) となるため,a(t)a(t) がすぐに求まる。残りの b(t)b(t) は tkt^k が解である条件へ代入すればよい。

多項式解だけの場合の矛盾

b(t)=kp′(t)/(tp(t))b(t)=kp'(t)/(tp(t)) が多項式になるには,分母の次数が分子より大きいことが障害になる。唯一の逃げ道は pp が定数の場合だが,その場合は結局 x′′=0x''=0 となり定数解を含んでしまう。

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京大 数理工学コース 院試 過去問の収録4年度

  • 2025年度(全6問)

    微積分 / 線形代数 / 複素関数・グラフ理論

  • 2023年度(全6問)

    微積分 / 線形代数 / 複素関数・グラフ理論

  • 2022年度(全12問)

    基礎数学 I / アルゴリズム基礎 / 線形計画

  • 2021年度(このページ・全12問)

    基礎数学 I / アルゴリズム基礎 / 線形計画