院試hub

京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 先端数理科学コース 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。線形代数2問・微分積分・解析2問。テーマタグは11件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・重積分と極座標)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・重積分と極座標。

最終更新:

収録5年度分の解答PDF:京都大学 情報学研究科 先端数理科学コース(¥2,880・紙面見本あり)

このページで公開
解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

京大 先端数理科学コース 2023年度 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は線形代数2問・微分積分・解析2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数行列左から掛ける写像の単射性 / 階数判定の最短経路あり
第2問微分積分・解析極限とべき級数大きい方だけが残る / 偶数べきだけの級数あり
第3問二連棒の運動拘束で自由度は1つになる / 運動エネルギーの注意点あり
第4問線形代数整数行列構成と不可能性を分ける / 行列式の平方条件あり
第5問体積楕円を円に戻す / 高さを積分するあり
第6問縮小写像とFourier係数存在と一意性を同じ道具で処理する / Fourier係数とLaurent係数あり
第7問微分積分・解析線形ODEとGamma関数重解の固有値 / Gamma関数の解析接続あり
第8問—専門科目:面積分と熱方程式半球面積分 / 正弦級数を使う理由あり
第9問古典スピン模型古典スピンの角度積分 / 揺らぎと感受率あり
第10問流体粒子加速度は物質微分 / 停留点型流れあり

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は7問に11テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 10問 → 2023年度 10問
2022年度のページを見る

第1問 — 基礎科目:行列

左から掛ける写像の単射性

最後の設問は,実質的には「BB を左から掛ける操作が単射か」を問うている。BB は 4×34\times 3 行列なので,階数が3なら ker⁡B={0} \ker B=\{0\} である。したがって B(C−D)=OB(C-D)=O から C−D=OC-D=O が従う。

階数判定の最短経路

BB 全体を掃き出す必要はない。上3行だけで作った 3×33\times 3 小行列式が −24-24 と非零なので,その時点で階数は少なくとも3である。列数が3である以上,階数は3を超えないため,すぐに rank⁡B=3\operatorname{rank}B=3 と分かる。

解答

与えられた行列を A=(−20−133−2332),B=(−20−133−233285−3) A= \begin{pmatrix} -2&0&-1\\ 3&3&-2\\ 3&3&2 \end{pmatrix},\qquad B= \begin{pmatrix} -2&0&-1\\ 3&3&-2\\ 3&3&2\\ 8&5&-3 \end{pmatrix} とおく。

(1) 第1行で展開すると det⁡A=(−2)∣3−232∣+(−1)∣3333∣=(−2)(6+6)−0=−24. \begin{aligned} \det A &=(-2) \begin{vmatrix} 3&-2\\ 3&2 \end{vmatrix} +(-1) \begin{vmatrix} 3&3\\ 3&3 \end{vmatrix} \\ &=(-2)(6+6)-0=-24. \end{aligned}

(2) BB の上から3行を取り出した小行列は AA である。したがって det⁡A=−24≠0 \det A=-24\ne 0 より BB には一次独立な3本の行がある。列数は3なので rank⁡B=3. \operatorname{rank}B=3.

(3) BC=BDBC=BD とする。このとき B(C−D)=O B(C-D)=O である。C−DC-D の第 jj 列を xj∈R3x_j\in\mathbb{R}^3 と書くと Bxj=0(j=1,2,3,4) Bx_j=0\qquad (j=1,2,3,4) である。

前問より B:R3→R4B:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^4 は列フルランクであるから,核は {0}\{0\} である。よって各 jj について xj=0x_j=0 となり, C−D=O. C-D=O. したがって C=D. C=D.

最終答

det⁡A=−24,rank⁡B=3. \det A=-24,\qquad \operatorname{rank}B=3. また BB は列フルランクなので,BC=BDBC=BD なら C=DC=D である。

第2問 — 基礎科目:極限とべき級数

大きい方だけが残る

(xn+yn)1/n(x^n+y^n)^{1/n} では,nn 乗によって大きい方の寄与が支配的になる。大きい方 MM をくくり出すと,残りは 11 と 21/n2^{1/n} の間に挟まれるので,極限が MM になる。

偶数べきだけの級数

x2nx^{2n} の形なので,通常のべき級数としては y=x2y=x^2 に置き換えると楽になる。係数は 3n3^n が支配的であり,yy の収束半径が 1/31/3 になる。最後に ∣y∣=∣x∣2|y|=|x|^2 を戻す点を忘れない。

基礎科目:極限とべき級数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 基礎科目:二連棒の運動

拘束で自由度は1つになる

点 BB は yy 軸上にあり,AB=ℓAB=\ell である。この条件だけで B=(0,−2ℓcos⁡θ)B=(0,-2\ell\cos\theta) と決まる。したがって系の運動は θ\theta だけで記述できる。

運動エネルギーの注意点

2本目の棒 ABAB は,重心が単純な円運動をしていない。特に G2G_2 の yy 座標は −3ℓcos⁡θ/2-3\ell\cos\theta/2 なので,速度の yy 成分に係数3が出る。この係数を落とすと,小振動周期まで誤る。

小振動周期

小振動では θ2θ˙2\theta^2\dot\theta^2 のような高次項は無視する。そのため運動エネルギーの係数は θ=0\theta=0 で評価してよく,位置エネルギーは2次まで展開すれば十分である。

基礎科目:二連棒の運動の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 基礎科目:整数行列

構成と不可能性を分ける

偶数次では,2次の具体例をブロック対角に並べれば一気に構成できる。一方,奇数次では行列式が最も強い制約になる。

行列式の平方条件

X2=3EnX^2=3E_n なら (det⁡X)2=3n(\det X)^2=3^n である。整数行列なので det⁡X\det X は整数であり,左辺は整数の平方でなければならない。3n3^n が平方数になるのは nn が偶数のときだけである。

基礎科目:整数行列の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 基礎科目:体積

楕円を円に戻す

射影領域は中心が (2,0)(2,0),半径方向の長さが xx 方向に2,yy 方向に1の楕円である。したがって x=2+2rcos⁡θ,y=rsin⁡θ x=2+2r\cos\theta,\qquad y=r\sin\theta と置くと単位円板に戻せる。

高さを積分する

立体は z=0z=0 と z=1/(2+x)z=1/(2+x) の間にあるので,体積は射影領域上で高さを積分すればよい。分母が 2+x=4+2rcos⁡θ2+x=4+2r\cos\theta となるため,三角関数型の標準積分に帰着する。

基礎科目:体積の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 専門科目:縮小写像とFourier係数

存在と一意性を同じ道具で処理する

∣f′∣≤1/2|f'|\le 1/2 は縮小写像を使うための条件である。さらに 0≤f≤1/20\le f\le 1/2 と x(1−x)≤1/4x(1-x)\le 1/4 により,反復列が [0,1][0,1] の範囲から出ない。これで Banach の不動点定理をそのまま適用できる。

Fourier係数とLaurent係数

単位円周上で z=eiθz=e^{i\theta} とおくと,Laurent 展開の係数がそのまま Fourier 係数になる。外側の円から正の次数の減衰,内側の円から負の次数の減衰が出る。両方を同時に押さえるために r=max⁡{R0−1,ρ0}r=\max\{R_0^{-1},\rho_0\} と置く。

専門科目:縮小写像とFourier係数の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 専門科目:線形ODEとGamma関数

重解の固有値

固有値 22 は重解だが,固有空間は1次元である。そのため通常の対角化ではなく,(A−2I)q=p(A-2I)q=p を満たす一般化固有ベクトルを使う。Jordan鎖を用いれば e2x(q+xp)e^{2x}(q+xp) 型の項が自然に現れる。

Gamma関数の解析接続

Γ(z+1)=zΓ(z)\Gamma(z+1)=z\Gamma(z) は,右半平面の定義域を1つずつ左へ広げる公式である。分母に z,z+1,…z,z+1,\ldots が現れるため,非正整数に単純極が生じる。留数はその単純因子以外を代入して計算すればよい。

Newton法の収束

根でJacobianが正則なら,根の近くで一次近似を解くことが安定になる。Newton法の本質は,誤差の一次項を打ち消して二次の誤差だけを残す点にある。

専門科目:線形ODEとGamma関数の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 専門科目:面積分と熱方程式

半球面積分

wy−vzw_y-v_z はベクトル場の回転の第1成分である。本問では計算すると x2+y2+z2x^2+y^2+z^2 になり,単位球面上でちょうど1になる。したがって面積だけを求めればよい。

正弦級数を使う理由

境界条件が u=0u=0 なので,sin⁡(nπx)sin⁡(mπy)\sin(n\pi x)\sin(m\pi y) が自然な基底になる。右辺を正弦級数に展開すれば,−Δ-\Delta は各モードに π2(m2+n2)\pi^2(m^2+n^2) を掛けるだけなので,係数を割り算で決められる。

保存形差分

−∇⋅(c∇u)-\nabla\cdot(c\nabla u) のように係数 cc が空間変化する場合は,単に cΔuc\Delta u と近似するよりも,格子辺でのフラックス差として離散化する方が自然である。対称性と正定値性も保ちやすい。

専門科目:面積分と熱方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 専門科目:古典スピン模型

古典スピンの角度積分

古典的な磁気モーメントは単位球面上を連続的に動く。外部磁場方向を極軸に取ると,エネルギーは −hcos⁡θ-h\cos\theta だけに依存するため,角度積分は 2π∫0πeβhcos⁡θsin⁡θ dθ 2\pi\int_0^\pi e^{\beta h\cos\theta}\sin\theta\,d\theta に落ちる。

揺らぎと感受率

log⁡Z\log Z を βh\beta h で1回微分すると磁化平均,2回微分すると磁化分散になる。一方,磁化率は hh 微分なので,両者の間に χ=β Var⁡(M) \chi=\beta\,\operatorname{Var}(M) が現れる。

平均場の臨界条件

平均場方程式の右辺を m=0m=0 の近くで線形化し,直線 mm と接する条件を見る。傾きが1を超えると m=0m=0 以外の解が現れるため,βcJq/3=1\beta_c Jq/3=1 が臨界条件である。

専門科目:古典スピン模型の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 専門科目:流体

粒子加速度は物質微分

非定常流では,∂u/∂t\partial u/\partial t だけが粒子加速度ではない。粒子が場所を移動することによる変化 u uxu\,u_x も加える必要がある。本問では2つの項が簡単にまとまり,a=x/(1+t2)2a=x/(1+t^2)^2 となる。

停留点型流れ

(u,w)=(−ax,az)(u,w)=(-ax,az) は,xx 方向に圧縮し,zz 方向に伸長する流れである。非圧縮条件はこの圧縮と伸長が釣り合うことを要求し,b=ab=a を与える。

erf型分布

vv の方程式は νv′′+axv′=0 \nu v''+axv'=0 であり,v′v' がGauss型になる。したがって vv は誤差関数で表される。代表的な厚さは δ∼νa \delta\sim\sqrt{\frac{\nu}{a}} であり,a/νa/\nu が大きいほど薄いせん断層になる。

遠方条件について

上の vv は壁からの距離 x≥0x\ge0 に対する境界層解である。全実線で v(0)=0v(0)=0 かつ両側の無限遠で同じ値 UU を課すと,この常微分方程式の古典解とは両立しない。流体力学的には,壁面から離れる片側極限 x→+∞x\to+\infty と読むのが自然である。

専門科目:流体の途中式・最終答をPDFで見る

京大 先端数理科学コース 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全10問)

    基礎科目:行列 / 基礎科目:積分と極限 / 基礎科目:円板の衝突

  • 2024年度(全10問)

    基礎科目:広義積分 / 基礎科目:行列の階数 / 基礎科目:剛体振り子

  • 2023年度(このページ・全10問)

    基礎科目:行列 / 基礎科目:極限とべき級数 / 基礎科目:二連棒の運動

  • 2022年度(全10問)

    基礎科目:中心力散乱 / 基礎科目:行列の階数 / 基礎科目:固有値

  • 2021年度(全10問)

    行列の正則性と逆行列 / 行列多項式とトレース / 数列の収束