京都大学 院試 過去問 解答例
京大 情報学研究科 先端数理科学コース 2023年度 院試 解答例・解説
京都大学 情報学研究科 先端数理科学コース 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 基礎科目:行列
左から掛ける写像の単射性
最後の設問は,実質的には「 を左から掛ける操作が単射か」を問うている。 は 行列なので,階数が3なら である。したがって から が従う。
階数判定の最短経路
全体を掃き出す必要はない。上3行だけで作った 小行列式が と非零なので,その時点で階数は少なくとも3である。列数が3である以上,階数は3を超えないため,すぐに と分かる。
第2問 — 基礎科目:極限とべき級数
大きい方だけが残る
では, 乗によって大きい方の寄与が支配的になる。大きい方 をくくり出すと,残りは と の間に挟まれるので,極限が になる。
偶数べきだけの級数
の形なので,通常のべき級数としては に置き換えると楽になる。係数は が支配的であり, の収束半径が になる。最後に を戻す点を忘れない。
第3問 — 基礎科目:二連棒の運動
拘束で自由度は1つになる
点 は 軸上にあり, である。この条件だけで と決まる。したがって系の運動は だけで記述できる。
運動エネルギーの注意点
2本目の棒 は,重心が単純な円運動をしていない。特に の 座標は なので,速度の 成分に係数3が出る。この係数を落とすと,小振動周期まで誤る。
小振動周期
小振動では のような高次項は無視する。そのため運動エネルギーの係数は で評価してよく,位置エネルギーは2次まで展開すれば十分である。
第4問 — 基礎科目:整数行列
構成と不可能性を分ける
偶数次では,2次の具体例をブロック対角に並べれば一気に構成できる。一方,奇数次では行列式が最も強い制約になる。
行列式の平方条件
なら である。整数行列なので は整数であり,左辺は整数の平方でなければならない。 が平方数になるのは が偶数のときだけである。
第5問 — 基礎科目:体積
楕円を円に戻す
射影領域は中心が ,半径方向の長さが 方向に2, 方向に1の楕円である。したがって と置くと単位円板に戻せる。
高さを積分する
立体は と の間にあるので,体積は射影領域上で高さを積分すればよい。分母が となるため,三角関数型の標準積分に帰着する。
第6問 — 専門科目:縮小写像とFourier係数
存在と一意性を同じ道具で処理する
は縮小写像を使うための条件である。さらに と により,反復列が の範囲から出ない。これで Banach の不動点定理をそのまま適用できる。
Fourier係数とLaurent係数
単位円周上で とおくと,Laurent 展開の係数がそのまま Fourier 係数になる。外側の円から正の次数の減衰,内側の円から負の次数の減衰が出る。両方を同時に押さえるために と置く。
第7問 — 専門科目:線形ODEとGamma関数
重解の固有値
固有値 は重解だが,固有空間は1次元である。そのため通常の対角化ではなく, を満たす一般化固有ベクトルを使う。Jordan鎖を用いれば 型の項が自然に現れる。
Gamma関数の解析接続
は,右半平面の定義域を1つずつ左へ広げる公式である。分母に が現れるため,非正整数に単純極が生じる。留数はその単純因子以外を代入して計算すればよい。
Newton法の収束
根でJacobianが正則なら,根の近くで一次近似を解くことが安定になる。Newton法の本質は,誤差の一次項を打ち消して二次の誤差だけを残す点にある。
第8問 — 専門科目:面積分と熱方程式
半球面積分
はベクトル場の回転の第1成分である。本問では計算すると になり,単位球面上でちょうど1になる。したがって面積だけを求めればよい。
正弦級数を使う理由
境界条件が なので, が自然な基底になる。右辺を正弦級数に展開すれば, は各モードに を掛けるだけなので,係数を割り算で決められる。
保存形差分
のように係数 が空間変化する場合は,単に と近似するよりも,格子辺でのフラックス差として離散化する方が自然である。対称性と正定値性も保ちやすい。
第9問 — 専門科目:古典スピン模型
古典スピンの角度積分
古典的な磁気モーメントは単位球面上を連続的に動く。外部磁場方向を極軸に取ると,エネルギーは だけに依存するため,角度積分は に落ちる。
揺らぎと感受率
を で1回微分すると磁化平均,2回微分すると磁化分散になる。一方,磁化率は 微分なので,両者の間に が現れる。
平均場の臨界条件
平均場方程式の右辺を の近くで線形化し,直線 と接する条件を見る。傾きが1を超えると 以外の解が現れるため, が臨界条件である。
第10問 — 専門科目:流体
粒子加速度は物質微分
非定常流では, だけが粒子加速度ではない。粒子が場所を移動することによる変化 も加える必要がある。本問では2つの項が簡単にまとまり, となる。
停留点型流れ
は, 方向に圧縮し, 方向に伸長する流れである。非圧縮条件はこの圧縮と伸長が釣り合うことを要求し, を与える。
erf型分布
の方程式は であり, がGauss型になる。したがって は誤差関数で表される。代表的な厚さは であり, が大きいほど薄いせん断層になる。
遠方条件について
上の は壁からの距離 に対する境界層解である。全実線で かつ両側の無限遠で同じ値 を課すと,この常微分方程式の古典解とは両立しない。流体力学的には,壁面から離れる片側極限 と読むのが自然である。