院試hub

京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 先端数理科学コース 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。微分積分・解析3問・線形代数2問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・分配関数・一様収束)。

最終更新:

このページで公開
解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

京大 先端数理科学コース 2021年度 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は微分積分・解析3問・線形代数2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数行列の正則性と逆行列正則性は行列式で一発判定 / 逆行列の検算あり
第2問線形代数行列多項式とトレース行列方程式から固有値方程式へ / トレースの巡回性あり
第3問微分積分・解析数列の収束差分を幾何級数で抑える / 漸化式は2ステップ差分を見るあり
第4問微分積分・解析有理関数の広義積分ベータ関数型の標準積分 / 収束条件の確認あり
第5問—円に拘束された質点とばね角度が半角として入る / ばねは縮んでいるあり
第6問—境界値のヒルベルト変換とLipschitz空間平均値条件の役割 / 完備性は一様収束と傾きの制御あり
第7問—常微分方程式・線積分・台形公式・分枝閉形式と単連結性 / 台形公式の評価あり
第8問—広義積分・曲面積分・Jacobi法実関数の可除特異点 / 曲面積分はStokesで境界へ落とすあり
第9問—離散準位・理想気体・吸着4状態は2状態の直積 / 吸着はFermi型の占有率あり
第10問微分積分・解析流線関数と平行平板間の粘性流流線関数の符号 / 圧力は外力のつり合いから先に決まるあり

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に4テーマが出ています。

第1問 — 行列の正則性と逆行列

正則性は行列式で一発判定

正方行列が正則でないことと行列式が 00 であることは同値である。ここでは行列式が一次式 3(a−7)3(a-7) になるため,候補は一つしかない。

逆行列の検算

逆行列は余因子で求めても,掃き出しで求めてもよい。最後に例えば第1行と第1列の積が 1⋅23+1⋅(−1)+2⋅23=1 1\cdot \frac23+1\cdot(-1)+2\cdot\frac23=1 となることを確認しておくと,符号ミスを発見しやすい。

解答

与えられた行列を X=(112−303−12a) X=\begin{pmatrix} 1&1&2\\ -3&0&3\\ -1&2&a \end{pmatrix} とおく。まず行列式を計算すると det⁡X=1{0⋅a−3⋅2}−1{(−3)a−3(−1)}+2{(−3)⋅2−0(−1)}=3a−21=3(a−7). \begin{aligned} \det X &=1\{0\cdot a-3\cdot 2\} -1\{(-3)a-3(-1)\} +2\{(-3)\cdot 2-0(-1)\} \\ &=3a-21=3(a-7). \end{aligned} したがって,XX が正則でないのは a=7 a=7 のときである。

次に a=4a=4 とする。このとき X=(112−303−124),det⁡X=−9. X=\begin{pmatrix} 1&1&2\\ -3&0&3\\ -1&2&4 \end{pmatrix}, \qquad \det X=-9. 余因子行列を転置したものは adj⁡X=(−60396−9−6−33) \operatorname{adj}X= \begin{pmatrix} -6&0&3\\ 9&6&-9\\ -6&-3&3 \end{pmatrix} であるから, X−1=1−9adj⁡X=(230−13−1−2312313−13). X^{-1} =\frac{1}{-9}\operatorname{adj}X = \begin{pmatrix} \frac23&0&-\frac13\\ -1&-\frac23&1\\ \frac23&\frac13&-\frac13 \end{pmatrix}.

最終答

a=7,X−1∣a=4=(230−13−1−2312313−13). a=7,\qquad X^{-1}\bigm|_{a=4}= \begin{pmatrix} \frac23&0&-\frac13\\ -1&-\frac23&1\\ \frac23&\frac13&-\frac13 \end{pmatrix}.

第2問 — 行列多項式とトレース

行列方程式から固有値方程式へ

p(A)=Op(A)=O なら,AA の固有値 λ\lambda は p(λ)=0p(\lambda)=0 を満たす。これは行列多項式問題の基本手筋である。

トレースの巡回性

有限次元では tr⁡(BC)=tr⁡(CB)\operatorname{tr}(BC)=\operatorname{tr}(CB) は成分計算だけで示せる。より一般には積が定義できるサイズなら tr⁡(ABC)=tr⁡(BCA)\operatorname{tr}(ABC)=\operatorname{tr}(BCA) のような巡回性も成り立つが,順序を任意に入れ替えられるわけではない。

行列多項式とトレースの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 数列の収束

差分を幾何級数で抑える

第1小問は,数列そのものではなく差分 ∣an+1−an∣|a_{n+1}-a_n| が縮むことを見る問題である。差分の和が幾何級数で抑えられれば Cauchy 性が従う。

漸化式は2ステップ差分を見る

xn+1=p+1/xnx_{n+1}=p+1/x_n は単調性だけでは扱いにくい。しかし差を取ると反転写像の形が効いて, ∣xn+2−xn+1∣=∣xn+1−xn∣xnxn+1 |x_{n+2}-x_{n+1}|=\frac{|x_{n+1}-x_n|}{x_nx_{n+1}} となる。ここで xnxn+1>1x_nx_{n+1}>1 を一様に強めて評価するのが要点である。

極限値で検算する

収束が分かった後,極限を LL とおけば L=p+1L L=p+\frac1L である。正の極限なので L=p+p2+42 L=\frac{p+\sqrt{p^2+4}}{2} となり,漸化式の挙動と整合している。

数列の収束の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 有理関数の広義積分

ベータ関数型の標準積分

∫0∞xα−11+xβ dx \int_0^\infty \frac{x^{\alpha-1}}{1+x^\beta}\,dx は院試で頻出の標準積分である。xβ=t/(1−t)x^\beta=t/(1-t) でベータ関数に帰着するか,扇形輪郭積分で評価できる。

収束条件の確認

原点近くでは被積分関数は xx 程度,無限遠では x−2x^{-2} 程度である。したがって広義積分は両端で収束しており,公式の適用条件 0<2<30<2<3 とも一致する。

有理関数の広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 円に拘束された質点とばね

角度が半角として入る

弦 APAP が鉛直方向となす角を θ\theta とすると,中心角は 2θ2\theta である。このため速さは v=2Rθ˙v=2R\dot\theta となる。ここを Rθ˙R\dot\theta とすると,モーメントや時間比較の係数が崩れる。

ばねは縮んでいる

AP=2Rcos⁡θAP=2R\cos\theta なので,頂上以外では AP<2RAP<2R である。ばねは伸びているのではなく縮んでおり,ばね力は質点を AA から遠ざける向きに働く。符号を考えると,ばねのモーメントは θ\theta を減らす向きである。

円に拘束された質点とばねの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 境界値のヒルベルト変換とLipschitz空間

平均値条件の役割

正則関数の実部と虚部は境界上で共役関係を持つが,定数の実部は Hilbert 変換では復元できない。そこで ∫u=0\int u=0 が必要になる。

完備性は一様収束と傾きの制御

Lipschitz ノルムは「関数値の一様ノルム」と「傾きの一様評価」の和である。一様収束だけでは極限の Lipschitz 性は自動では出ないため,差商の Cauchy 性を極限へ渡す部分を書くことが重要である。

境界値のヒルベルト変換とLipschitz空間の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 常微分方程式・線積分・台形公式・分枝

閉形式と単連結性

∂P/∂y=∂Q/∂x\partial P/\partial y=\partial Q/\partial x は局所的にはポテンシャルの存在を示す条件である。単連結性があるため,閉曲線上の積分がすべて 00 になり,大域的な経路独立性が得られる。

台形公式の評価

台形公式は1区間あたり O(h3)O(h^3) の誤差を持つ。区間数が NN 個なので全体では NO(h3)=O(N−2)NO(h^3)=O(N^{-2}) となる。

平方根の跳び

負の実軸は主値平方根の分枝切断である。上側から近づくか下側から近づくかで極限値の符号が変わるため,虚部の符号判定が決定的である。

常微分方程式・線積分・台形公式・分枝の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 広義積分・曲面積分・Jacobi法

実関数の可除特異点

x=±π/2x=\pm\pi/2 では cos⁡x\cos x も 4x2−π24x^2-\pi^2 も 00 になる。複素指数関数で処理すると主値積分の公式が自然に現れるが,最終的な実積分は有限値を持つ。

曲面積分はStokesで境界へ落とす

直接パラメータ表示して面積分を計算するより,∇×A\nabla\times A の流束であることに注目して Stokes の定理を使う方が短い。境界の向きだけを誤らないようにする。

ランク1行列の特異値

W=uvTW=uv^T はランク1で,非零特異値は ∥u∥ ∥v∥\|u\|\,\|v\| だけである。ブロック Jacobi の収束判定もこの値に集約される。

広義積分・曲面積分・Jacobi法の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 離散準位・理想気体・吸着

4状態は2状態の直積

0,ε,ε,2ε0,\varepsilon,\varepsilon,2\varepsilon という縮退つきスペクトルは,独立な2準位系2個の和である。そのため分配関数が (1+e−βε)2(1+e^{-\beta\varepsilon})^2 となり,比熱も2倍になる。

吸着はFermi型の占有率

1つの吸着点には粒子が0個か1個しか入らない。したがって平均占有率は eβ(μ+ε)1+eβ(μ+ε) \frac{e^{\beta(\mu+\varepsilon)}}{1+e^{\beta(\mu+\varepsilon)}} という Fermi 型の形になる。ここで −ε-\varepsilon が吸着エネルギーなので,ε>0\varepsilon>0 は吸着が有利な場合である。

グラフの概形

ε>0\varepsilon>0 では低温でほぼ全吸着,高温で脱着する単調減少型になる。ε<0\varepsilon<0 では低温でも吸着が不利で,高温では熱波長因子が小さくなるため,途中に山を持つ。

離散準位・理想気体・吸着の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 流線関数と平行平板間の粘性流

流線関数の符号

ここでは u=fyu=f_y, v=−fxv=-f_x である。この符号なら渦度は ∂v∂x−∂u∂y=−Δf \frac{\partial v}{\partial x}-\frac{\partial u}{\partial y} =-\Delta f となる。循環の符号はこの一点で決まる。

圧力は外力のつり合いから先に決まる

平行流では yy 方向速度がないため,yy 方向の式は圧力勾配と外力の静的つり合いになる。そこから px=ayp_x=ay が出て,xx 方向の粘性方程式に入る。

流線関数と平行平板間の粘性流の途中式・最終答をPDFで見る

京大 先端数理科学コース 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全10問)

    基礎科目:行列 / 基礎科目:積分と極限 / 基礎科目:円板の衝突

  • 2024年度(全10問)

    基礎科目:広義積分 / 基礎科目:行列の階数 / 基礎科目:剛体振り子

  • 2023年度(全10問)

    基礎科目:行列 / 基礎科目:極限とべき級数 / 基礎科目:二連棒の運動

  • 2022年度(全10問)

    基礎科目:中心力散乱 / 基礎科目:行列の階数 / 基礎科目:固有値

  • 2021年度(このページ・全10問)

    行列の正則性と逆行列 / 行列多項式とトレース / 数列の収束