京都大学 院試 過去問 解答例
京大 情報学研究科 先端数理科学コース 2022年度 院試 解答例・解説
京都大学 情報学研究科 先端数理科学コース 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 基礎科目:中心力散乱
Binet型の式に直す
中心力では角運動量が保存するので,時間微分を 微分へ変換できる。 と置くと となり,軌道方程式が線形方程式に落ちる。
反発力と散乱角
力が外向きなので,軌道方程式の係数は となる。 なら で散乱角は0になる。 では となり,散乱角は正になる。
第2問 — 基礎科目:行列の階数
階数2の判定
3次正方行列で階数が2になるには,まず行列式が0でなければならない。ここでは となり,候補は だけである。その候補で2本の行が一次独立であることを確認すれば十分である。
べきの階数
では固有値が と異なるため対角化できる。べきを取ると0固有値は0のままで,非零固有値は非零のまま残る。したがって階数は常に2である。
第3問 — 基礎科目:固有値
固有空間を写す
式 は, が の作用と の作用をつなぐ写像であることを意味する。 の固有ベクトル を で送ると, は の同じ固有値の固有ベクトル候補になる。
共通固有値がないことの使い方
もし と に共通固有値がないなら,その候補は零ベクトルでなければならない。 が対角化可能なので,基底全体が で0に送られ, が従う。
第4問 — 基礎科目:複素関数と広義積分
複素余弦の絶対値
は まで簡単に整理できる。長方形領域上の最大値なので, と をそれぞれ最大にすればよい。
広義積分の置換
は, によって と同じ積分に変わる。あとは の上半平面の極 を拾う標準計算で が得られる。
第5問 — 基礎科目:重積分
第1象限の楕円領域
は正定値二次形式であり,領域はその楕円の第1象限部分である。極座標にすると角度ごとの半径上限が一発で出る。
三角関数積分の処理
最後の角度積分は で有理関数に変わる。分母が になるので,平方完成して arctan に帰着すればよい。
第6問 — 専門科目:Hilbert空間と二重層ポテンシャル
随伴作用素の定義
随伴作用素は,固定した に対して をRiesz表現することで得られる。有限次元での転置共役行列の議論を,Hilbert空間で一般化したものと考えるとよい。
値域と核の直交関係
基本公式は である。閉包が付く点が重要で,値域が閉でない作用素では 自体ではなく閉包が現れる。
二重層ポテンシャルの跳躍
二重層ポテンシャルは境界を越えると値が跳ぶ。今回の と外向き法線の取り方では,外側極限から内側極限を引くと になる。符号は法線方向と基本解の符号で決まる。
第7問 — 専門科目:微分方程式と複素積分
4乗で線形化する
微分方程式には と が現れるので, と置くと一次線形方程式になる。初期値 から正の枝を選ぶ。
頂点上のCauchy主値
極が三角形の頂点にあるため,通常の留数定理をそのまま使うのではなく主値を取る。多項式部分を除けば のみであり,頂点の内角 が の寄与を与える。
熱方程式のCFL条件
陽解法では が大きすぎると高周波モードが増幅される。安定条件 は必ず明記する必要がある。
第8問 — 専門科目:面積分と反復法
面の向き
円錐面の法線は2通りある。本問では が指定されているので,面素ベクトルの符号をここで決める。符号を逆にすると答え全体が逆符号になる。
反復法の見方
反復法の収束は,誤差 が を満たすことを見ればよい。作用素ノルムが1未満なら誤差は幾何級数的に0へ収束する。
ブロック反復
第2の反復はブロックJacobi型である。 を左辺に置くことで,反復行列に が現れる。 が正定値なら となり, と合わせて縮小性が得られる。
第9問 — 専門科目:不完全気体
Mayer関数
はMayer関数である。相互作用が弱いとき, を1次で打ち切ると,2粒子相関だけが残る。
係数 の由来
相対座標 の積分は3次元球対称なので となる。これが の由来である。
圧力補正の符号
硬芯部分は で排除体積効果を与え,圧力を上げる向きに働く。引力部分は となり,式では圧力を下げる補正として現れる。 が大きいほど圧力が下がるのはこのためである。
第10問 — 専門科目:流体
密度変化と速度勾配
密度が時間とともに で減少するため,連続の式は を要求する。境界値 を足せば速度場が決まる。
循環は保存される量
初期速度 は点渦の速度場であり,どの半径の円でも循環は になる。粘性によって渦度は広がるが,全循環は保たれる。
Lamb-Oseen型の拡散
突然停止後の渦度はGauss型に拡散する。速度は という因子を持ち,中心では有限に近づき,遠方では元の に近づく。