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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 先端数理科学コース 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。線形代数2問・微分積分・解析1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・留数定理・正定値行列)。2021年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・分配関数。

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解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

京大 先端数理科学コース 2022年度 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は線形代数2問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問中心力散乱Binet型の式に直す / 反発力と散乱角あり
第2問線形代数行列の階数階数2の判定 / べきの階数あり
第3問線形代数固有値固有空間を写す / 共通固有値がないことの使い方あり
第4問—基礎科目:複素関数と広義積分複素余弦の絶対値 / 広義積分の置換あり
第5問微分積分・解析重積分第1象限の楕円領域 / 三角関数積分の処理あり
第6問Hilbert空間と二重層ポテンシャル随伴作用素の定義 / 値域と核の直交関係あり
第7問—専門科目:微分方程式と複素積分4乗で線形化する / 頂点上のCauchy主値あり
第8問—専門科目:面積分と反復法面の向き / 反復法の見方あり
第9問不完全気体Mayer関数 / 係数 の由来あり
第10問流体密度変化と速度勾配 / 循環は保存される量あり

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は8問に8テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 10問 → 2022年度 10問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・分配関数
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第1問 — 基礎科目:中心力散乱

Binet型の式に直す

中心力では角運動量が保存するので,時間微分を θ\theta 微分へ変換できる。u=1/ru=1/r と置くと r˙=−hu′,r¨=−h2u2u′′ \dot r=-h u',\qquad \ddot r=-h^2u^2u'' となり,軌道方程式が線形方程式に落ちる。

反発力と散乱角

力が外向きなので,軌道方程式の係数は 1+k/(mh2)1+k/(mh^2) となる。k=0k=0 なら α=1\alpha=1 で散乱角は0になる。k>0k>0 では α>1\alpha>1 となり,散乱角は正になる。

解答

極座標の単位ベクトルを er,eθ\boldsymbol{e}_r,\boldsymbol{e}_\theta とする。

(1) 力は原点から遠ざかる向きを正として Fr=kr3,Fθ=0 F_r=\frac{k}{r^3},\qquad F_\theta=0 である。したがって運動方程式は m(r¨−rθ˙2)=kr3,m(rθ¨+2r˙θ˙)=0. m(\ddot r-r\dot\theta^2)=\frac{k}{r^3},\qquad m(r\ddot\theta+2\dot r\dot\theta)=0. 第2式は ddt(r2θ˙)=0 \frac{d}{dt}(r^2\dot\theta)=0 と同値である。

(2) 単位質量あたりの角運動量を h=r2θ˙ h=r^2\dot\theta とおく。散乱前の無限遠では,速度は xx 軸負方向で大きさ v0v_0,衝突径数は aa であるから,原点まわりの角運動量の大きさは L=mah=mav0. L=mah=ma v_0. すなわち h=av0. h=a v_0.

(3) u=1/ru=1/r とおく。角運動量保存より θ˙=hu2\dot\theta=hu^2 であり, r˙=drdθθ˙=−u′u2hu2=−hu′ \dot r=\frac{dr}{d\theta}\dot\theta =-\frac{u'}{u^2}hu^2=-hu' である。ここで u′=du/dθu'=du/d\theta と書いた。さらに r¨=−hdu′dt=−hu′′θ˙=−h2u2u′′. \ddot r=-h\frac{du'}{dt} =-h u''\dot\theta =-h^2u^2u''. したがって  r¨=−h2u2d2udθ2  \boxed{\ \ddot r=-h^2u^2\frac{d^2u}{d\theta^2}\ } である。

この関係を動径方向の運動方程式へ代入すると −h2u2(u′′+u)=kmu3. -h^2u^2(u''+u)=\frac{k}{m}u^3. よって u′′+(1+kmh2)u=0. u''+\left(1+\frac{k}{mh^2}\right)u=0.

(4) α=1+kmh2=1+kma2v02 \alpha=\sqrt{1+\frac{k}{mh^2}} =\sqrt{1+\frac{k}{m a^2v_0^2}} とおくと,軌道方程式は u′′+α2u=0 u''+\alpha^2u=0 である。散乱前の無限遠を θ=0\theta=0 と取れば,u=0u=0 となる2つの漸近方向は θ=0,θ=πα \theta=0,\qquad \theta=\frac{\pi}{\alpha} である。散乱前の速度方向は xx 軸負方向,すなわち角度 π\pi の方向である。散乱後の速度方向は外向きの漸近方向 π/α\pi/\alpha であるから,散乱角は ϕ=π−πα=π(1−11+kma2v02). \phi=\pi-\frac{\pi}{\alpha} =\pi\left(1-\frac{1}{\sqrt{1+\dfrac{k}{m a^2v_0^2}}}\right).

最終答

m(r¨−rθ˙2)=kr3,ddt(mr2θ˙)=0, m(\ddot r-r\dot\theta^2)=\frac{k}{r^3},\qquad \frac{d}{dt}(mr^2\dot\theta)=0, L=mav0,r¨=−(av0)2u2d2udθ2(u=1/r), L=ma v_0,\qquad \ddot r=-(a v_0)^2u^2\frac{d^2u}{d\theta^2}\quad (u=1/r), ϕ=π(1−11+kma2v02). \phi=\pi\left(1-\frac{1}{\sqrt{1+\dfrac{k}{m a^2v_0^2}}}\right).

第2問 — 基礎科目:行列の階数

階数2の判定

3次正方行列で階数が2になるには,まず行列式が0でなければならない。ここでは det⁡X=9(a−2)\det X=9(a-2) となり,候補は a=2a=2 だけである。その候補で2本の行が一次独立であることを確認すれば十分である。

べきの階数

a=2a=2 では固有値が 0,±330,\pm\sqrt{33} と異なるため対角化できる。べきを取ると0固有値は0のままで,非零固有値は非零のまま残る。したがって階数は常に2である。

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第3問 — 基礎科目:固有値

固有空間を写す

式 CA=BCCA=BC は,CC が AA の作用と BB の作用をつなぐ写像であることを意味する。AA の固有ベクトル vv を CC で送ると,CvCv は BB の同じ固有値の固有ベクトル候補になる。

共通固有値がないことの使い方

もし AA と BB に共通固有値がないなら,その候補は零ベクトルでなければならない。AA が対角化可能なので,基底全体が CC で0に送られ,C=OC=O が従う。

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第4問 — 基礎科目:複素関数と広義積分

複素余弦の絶対値

∣cos⁡(x+iy)∣2|\cos(x+iy)|^2 は cos⁡2x+sinh⁡2y \cos^2x+\sinh^2y まで簡単に整理できる。長方形領域上の最大値なので,cos⁡2x\cos^2x と sinh⁡2y\sinh^2y をそれぞれ最大にすればよい。

広義積分の置換

x2/(1+x4)x^2/(1+x^4) は,x=1/tx=1/t によって 1/(1+t4)1/(1+t^4) と同じ積分に変わる。あとは 1/(1+z4)1/(1+z^4) の上半平面の極 eiπ/4,e3iπ/4 e^{i\pi/4},\quad e^{3i\pi/4} を拾う標準計算で π/2\pi/\sqrt2 が得られる。

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第5問 — 基礎科目:重積分

第1象限の楕円領域

x2+xy+y2x^2+xy+y^2 は正定値二次形式であり,領域はその楕円の第1象限部分である。極座標にすると角度ごとの半径上限が一発で出る。

三角関数積分の処理

最後の角度積分は tan⁡θ=t\tan\theta=t で有理関数に変わる。分母が t2+t+1t^2+t+1 になるので,平方完成して arctan に帰着すればよい。

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第6問 — 専門科目:Hilbert空間と二重層ポテンシャル

随伴作用素の定義

随伴作用素は,固定した yy に対して x↦(Ax,y)x\mapsto(Ax,y) をRiesz表現することで得られる。有限次元での転置共役行列の議論を,Hilbert空間で一般化したものと考えるとよい。

値域と核の直交関係

基本公式は R(A)‾=N(A∗)⊥ \overline{R(A)}=N(A^*)^\perp である。閉包が付く点が重要で,値域が閉でない作用素では R(A)R(A) 自体ではなく閉包が現れる。

二重層ポテンシャルの跳躍

二重層ポテンシャルは境界を越えると値が跳ぶ。今回の E=(2π)−1log⁡∣x∣E=(2\pi)^{-1}\log|x| と外向き法線の取り方では,外側極限から内側極限を引くと −μ-\mu になる。符号は法線方向と基本解の符号で決まる。

専門科目:Hilbert空間と二重層ポテンシャルの途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 専門科目:微分方程式と複素積分

4乗で線形化する

微分方程式には y3y^3 と y4y^4 が現れるので,Y=y4Y=y^4 と置くと一次線形方程式になる。初期値 y(0)=1y(0)=1 から正の枝を選ぶ。

頂点上のCauchy主値

極が三角形の頂点にあるため,通常の留数定理をそのまま使うのではなく主値を取る。多項式部分を除けば 1/(z−ω)1/(z-\omega) のみであり,頂点の内角 π/3\pi/3 が iπ/3i\pi/3 の寄与を与える。

熱方程式のCFL条件

陽解法では λ=Δt/(Δx)2\lambda=\Delta t/(\Delta x)^2 が大きすぎると高周波モードが増幅される。安定条件 λ≤1/2\lambda\le1/2 は必ず明記する必要がある。

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第8問 — 専門科目:面積分と反復法

面の向き

円錐面の法線は2通りある。本問では nz<0n_z<0 が指定されているので,面素ベクトルの符号をここで決める。符号を逆にすると答え全体が逆符号になる。

反復法の見方

反復法の収束は,誤差 ei=xi−x∗e_i=x_i-x_* が ei+1=Tei e_{i+1}=Te_i を満たすことを見ればよい。作用素ノルムが1未満なら誤差は幾何級数的に0へ収束する。

ブロック反復

第2の反復はブロックJacobi型である。I+AI+A を左辺に置くことで,反復行列に (I+A)−1(I+A)^{-1} が現れる。AA が正定値なら ∥(I+A)−1∥<1\|(I+A)^{-1}\|<1 となり,∥B∥<1\|B\|<1 と合わせて縮小性が得られる。

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第9問 — 専門科目:不完全気体

Mayer関数

f(r)=e−βU(r)−1 f(r)=e^{-\beta U(r)}-1 はMayer関数である。相互作用が弱いとき,∏(1+fij)\prod(1+f_{ij}) を1次で打ち切ると,2粒子相関だけが残る。

係数 4π4\pi の由来

相対座標 ri−rjr_i-r_j の積分は3次元球対称なので ∫R3f(∣r∣) d3r=4π∫0∞f(r)r2 dr \int_{\mathbb{R}^3}f(|r|)\,d^3r=4\pi\int_0^\infty f(r)r^2\,dr となる。これが a=4πa=4\pi の由来である。

圧力補正の符号

硬芯部分は f=−1f=-1 で排除体積効果を与え,圧力を上げる向きに働く。引力部分は f>0f>0 となり,式では圧力を下げる補正として現れる。U0U_0 が大きいほど圧力が下がるのはこのためである。

専門科目:不完全気体の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 専門科目:流体

密度変化と速度勾配

密度が時間とともに e−ate^{-at} で減少するため,連続の式は ux=au_x=a を要求する。境界値 u(0,t)=u0u(0,t)=u_0 を足せば速度場が決まる。

循環は保存される量

初期速度 a/(2πr)a/(2\pi r) は点渦の速度場であり,どの半径の円でも循環は aa になる。粘性によって渦度は広がるが,全循環は保たれる。

Lamb-Oseen型の拡散

突然停止後の渦度はGauss型に拡散する。速度は 1−e−r2/(4νt) 1-e^{-r^2/(4\nu t)} という因子を持ち,中心では有限に近づき,遠方では元の a/(2πr)a/(2\pi r) に近づく。

専門科目:流体の途中式・最終答をPDFで見る

京大 先端数理科学コース 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全10問)

    基礎科目:行列 / 基礎科目:積分と極限 / 基礎科目:円板の衝突

  • 2024年度(全10問)

    基礎科目:広義積分 / 基礎科目:行列の階数 / 基礎科目:剛体振り子

  • 2023年度(全10問)

    基礎科目:行列 / 基礎科目:極限とべき級数 / 基礎科目:二連棒の運動

  • 2022年度(このページ・全10問)

    基礎科目:中心力散乱 / 基礎科目:行列の階数 / 基礎科目:固有値

  • 2021年度(全10問)

    行列の正則性と逆行列 / 行列多項式とトレース / 数列の収束