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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東工大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2025年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 剛体コマの歳差と章動

方針

前半は「高速自転なので角運動量はほぼ対称軸方向」という近似を使う。重力トルクは水平面内で e3\mathbf e_3 を回す向きに働くため, L˙=N\dot{\mathbf L}=\mathbf N の成分比較だけで歳差角速度が出る。

有効ポテンシャルの意味

後半は α,β\alpha,\beta が循環座標になっていることを利用する。保存量 LZ,L3L_Z,L_3α˙,β˙\dot\alpha,\dot\beta を消去すると,残る自由度は θ\theta だけであり,θ\theta が一次元粒子のように有効ポテンシャル中を運動すると見なせる。

検算

Ω=mgR/(Iω)\Omega=mgR/(I\omega) は,自転が速いほど小さくなる。また IωI\omega は角運動量の大きさなので,重いコマほど,また重心が支点から遠いほど歳差は速い。次元も (mgR)/(Iω)(kgm2/s2)/(kgm2/s)=1/s(mgR)/(I\omega)\sim(\mathrm{kg\,m^2/s^2})/(\mathrm{kg\,m^2/s})=1/\mathrm{s} となる。

典型ミス

N\mathbf N の符号を落とすと歳差の向きが逆になる。成分計算では R×(0,0,mg)=(mgRy, mgRx, 0) \mathbf R\times(0,0,-mg)=(-mgR_y,\ mgR_x,\ 0) を先に書くと安全である。また LZL_Z を計算するとき,θ˙\dot\theta を含む項は相殺する。この相殺を示さずに結果だけを書くと,章動の導出としては説得力が弱い。

試験で書くべきポイント

前半では「歳差による角運動量を無視する」という近似の位置づけを明記する。後半では,保存量 LZ,L3L_Z,L_3 を用いて α˙\dot\alpha を消去し,最後に E=12I1θ˙2+V(θ)E=\frac12 I_1\dot\theta^2+V(\theta) の形まで整理することが採点上の要点である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 量子統計とボース凝縮

方針

この問題の中心は,励起状態の粒子数 N=A(kBT)α+1F(α+1,z) N'=A(k_BT)^{\alpha+1}F(\alpha+1,z) μ0\mu\to0 で有限の上限をもつかどうかである。上限が有限なら,余った粒子が基底状態へ入る。

状態密度の数え方

箱の境界条件が ni=1,2,n_i=1,2,\ldots なので,kk 空間では第一八分体を数える。周期境界条件の公式をそのまま使うと係数を間違えやすいが,最終的な3次元状態密度は同じ標準形に一致する。

凝縮条件の見方

F(s,1)F(s,1) の大きな xx 側は指数関数で必ず収束する。問題は x=0x=0 だけであり,そこで (ex1)1x1(e^x-1)^{-1}\sim x^{-1} を使えば,条件 s>1s>1 がすぐ出る。

検算

3次元自由粒子では α=1/2\alpha=1/2 なので N0N=1(TTc)3/2, \frac{N_0}{N}=1-\left(\frac{T}{T_c}\right)^{3/2}, 標準的な理想ボース気体の結果に一致する。

典型ミス

μ=0\mu=0 を常に代入してよいわけではない。転移温度より上では N=NN=N' を満たす μ<0\mu<0 を解く。転移温度以下では励起状態が飽和し,その後に μ=0\mu=0 に固定される。

試験で書くべきポイント

転移温度の式だけでなく,なぜ α>0\alpha>0 が必要かを積分の収束性で説明すること。特に2次元で凝縮が起こらない理由は,状態密度が定数で低エネルギー側の積分が発散するためである。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 線形代数・複素積分・ルジャンドル多項式

方針

行列指数は対角化できれば一気に計算できる。複素積分では,単位円上で z=1/zz^*=1/z と置き換えて通常の留数計算へ戻す。ルジャンドル多項式は母関数を直接微分・比較するのが最も速い。

曲線の検算

パラメータ u=etu=e^t は正である。したがって原点は式の極限には現れるが,曲線上の点としては含まれない。答案で原点を交点として書くと,パラメータ範囲の確認不足と見なされる。

複素共役の扱い

zz^* を独立変数のように扱ってはいけない。積分路が単位円であることを使って初めて z=1/zz^*=1/z とできる。特に I3I_3 はこの置換後に z21+2z \frac{z^2}{1+2z} となり,内部の極が 1/2-1/2 に移る。

典型ミス

対角化で A=RMR1A=RMR^{-1} と書くなら,RR の列の順序と MM の固有値の順序を一致させる必要がある。また,留数計算では外側の極 z=2z=-2 を拾わないこと。

試験で書くべきポイント

第3問は小問が多いので,途中式を短く整えて計算ミスを避ける。曲線問題は「円錐曲線の種類」「パラメータ表示」「範囲内の軸交点」をそろえて書けば十分な答案になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 身近な波・計測回路・天体・真空

方針

この大問は短い物理評価が多い。単位と桁を先にそろえ,必要な近似を明示してから数値を丸めると安定する。

分圧回路の注意

図の下側抵抗が R1R_1,上側抵抗が R2R_2 であり,電圧計は R1R_1 の両端を読む。したがって倍率は (R1+R2)/R1(R_1+R_2)/R_1 である。ここを逆にすると 100 倍程度の誤差になる。

不定性

抵抗の1\%精度は,使用した抵抗値そのものの不定性として扱う。今回の数値では電圧計の読みの不定性と,2本の抵抗の不定性が同程度に効くので,どれか一つだけを残す近似は適切でない。

天体の桁の検算

半減期後の 56Ni{}^{56}\mathrm{Ni} は約 105410^{54} 個で,崩壊率はそれを半減期 106s10^6\,\mathrm{s} 程度で割った 1048s110^{48}\,\mathrm{s^{-1}} 程度になる。600光年の球面で割ると 109s1m210^9\,\mathrm{s^{-1}m^{-2}} 程度となり,求めた N=9N=9 と整合する。

真空排気の典型ミス

圧力そのものを時間に対して直線近似するのではなく,lnp\ln p を時間に対して直線にする。指数減衰の傾きが S/VS/V である。

試験で書くべきポイント

数値問題では丸める前の式を残す。特に σHV\sigma_{\mathrm{HV}}SS は,最終値だけでは採点者が手順を追えないため,誤差伝播式または ln(p0/p)\ln(p_0/p) の式を必ず書く。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 静電場と一様電磁場中の荷電粒子

方針

前半は双極子近似と導体球の境界条件,後半はローレンツ力の成分計算である。どちらも対称性を先に使うと計算量が大きく減る。

導体球の境界条件

導体表面でポテンシャルが一定であることが本質である。外部一様場のポテンシャルを Ez-Ez と選ぶと,誘導双極子の項だけで r=Rr=R 上の cosθ\cos\theta 依存性を打ち消せばよい。

電荷密度の符号

θ=0\theta=0,つまり +z+z 側では外部電場が +z+z 向きなので正電荷が誘導される。得られた σ=3ε0Ecosθ\sigma=3\varepsilon_0E\cos\theta はこの直感と一致する。

サイクロイドの見分け方

q<0q<0 では ω=qB/m<0\omega=qB/m<0 となる。初期加速度は v˙y(0)=qE/m<0 \dot v_y(0)=qE/m<0 なので,粒子はまず y<0y<0 側へ曲がる。一方,ドリフトは E×B/B2=(E/B,0,0)\mathbf E\times\mathbf B/B^2=(E/B,0,0)+x+x 方向である。この2点だけで図をほぼ特定できる。

典型ミス

双極子モーメントの向きは負電荷から正電荷へ向かう向きである。また,慣性系変換では E=E+V×B\mathbf E'=\mathbf E+\mathbf V\times\mathbf B の符号を間違えやすい。速度の関係 v=vV\mathbf v'=\mathbf v-\mathbf V を式に代入して確認するとよい。

試験で書くべきポイント

導体球では表面電荷密度を出す前に,外部ポテンシャルを明示する。荷電粒子では,A,ωA,\omega を求めるだけでなく,図選択の理由として初期加速度とドリフト方向を書けると答案が強い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 一次元量子力学

方針

前半の散乱は,波動関数と微分の連続条件をそのまま解く。後半の束縛状態は,無限壁側の境界条件を最初に満たす形で波動関数を書いておくと,接続条件が1本の量子化条件にまとまる。

透過率の注意

透過率は振幅比 B2|B|^2 ではない。左右で波数が異なるため,確率密度流の速度因子 k/mk/m を含めて T=kIIkIB2 T=\frac{k_{\mathrm {II}}}{k_{\mathrm I}}|B|^2 とする必要がある。

束縛条件の見方

ρ=kcotk(ba)\rho=-k\cot k(b-a)ρ>0\rho>0 だから,最初の束縛状態は π2<k(ba)<π \frac{\pi}{2}<k(b-a)<\pi の枝に現れる。しきい値では E0E\to0^- なので ρ0\rho\to0,これが k(ba)=π/2k(b-a)=\pi/2 を与える。

二重井戸の物理

左右に局在した状態の和と差が,偶奇の固有状態を作る。有限の障壁では中央で波動関数が重なり,節をもたない偶関数の方が曲率が小さく,運動エネルギーを低くできる。そのため基底状態は偶関数になる。

典型ミス

PL(t)P_L(t) を計算するとき,時間発展因子の相対位相だけが確率に残る。全体位相を含めて複雑に計算する必要はない。また,H+\langle H\rangle_+H\langle H\rangle_- の大小を逆にすると「基底状態に節がある」という不自然な結論になる。

試験で書くべきポイント

境界条件は言葉で済ませず,必ず式として書く。散乱では接続条件2本,束縛状態では C=DC=D と微分条件,二重井戸では確率の計算に用いる偶奇状態の直交性を書くことが得点につながる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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