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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。線形代数1問。テーマタグは9件(調和振動子・固有値・固有ベクトル・分配関数)。

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収録5年度分の解答PDF:東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理(¥2,880・紙面見本あり)

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

東京科学大 物理 2020年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—中心力と軌道遷移遠日点で円軌道へ移る計算 / 有効ポテンシャルの概形あり
第2問—静電場と誘電体空洞問題の見方 / エネルギー積分の注意あり
第3問—調和振動子と撃力撃力の物理 / 演算子のずれあり
第4問線形代数行列とラプラス変換行列多項式の処理 / 固有ベクトルの検算あり
第5問—アインシュタイン模型古典極限の意味 / 量子比熱の概形あり
第6問—電磁波検出器波長域の整理 / 光電子増倍管の役割分担あり

この年度の解説には典型ミス3件・検算2件・試験で書くべきポイント1件が付いています。

2020年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に9テーマが出ています。

第1問 — 中心力と軌道遷移

方針

中心力では角運動量保存により ϕ\phi の運動を消去でき,動径方向の1次元運動として扱える。有効ポテンシャルの遠心力項 L2/(2mr2)L^2/(2mr^2) と重力項 −GMm/r-GMm/r を正しい符号で書くことがこの問題の中心である。

遠日点で円軌道へ移る計算

遠日点で瞬間的に加速するので,その瞬間の位置 r2r_2 は変わらない。円軌道に入った後は,円軌道の一般式 Ecirc=−GMm2rcirc E_{\mathrm{circ}}=-\frac{GMm}{2r_{\mathrm{circ}}} を使えばよい。ここで rcircr_{\mathrm{circ}} は修正前楕円の遠日点半径であり,エネルギー方程式 E1=U1(r)E_1=U_1(r) の大きい方の根で決まる。

有効ポテンシャルの概形

Ui(r)=Li22mr2−GMmr(i=1,2) U_i(r)=\frac{L_i^2}{2mr^2}-\frac{GMm}{r}\qquad (i=1,2) はいずれも r→0r\to0 で +∞+\infty, r→∞r\to\infty で 0−0^- に近づく。円軌道では極小点で全エネルギーに接する。

検算

束縛楕円では E1<0E_1<0 なので a=−GMm/(2E1)>0a=-GMm/(2E_1)>0 となる。また円軌道の式により E2<0E_2<0 である。遠日点で加速して円軌道へ移る場合,楕円の遠日点速度は同半径の円軌道速度より小さいため,エネルギーは増加し,通常 E2>E1E_2>E_1 となる。

典型ミス

ϕ˙=L/(mr2)\dot\phi=L/(mr^2) を使った後,遠心力項を L2/(mr3)L^2/(mr^3) ではなく L2/(2mr2)L^2/(2mr^2) の微分から出すことに注意する。また遠日点半径は2次方程式の大きい方の根であり,符号選択を誤ると近日点を使ってしまう。

解答

太陽の質量を MM, 万有引力定数を GG とし, k=GMm k=GMm とおく。極座標での加速度は a=(r¨−rϕ˙2)er+(rϕ¨+2r˙ϕ˙)eϕ \boldsymbol a=(\ddot r-r\dot\phi^2)\boldsymbol e_r+(r\ddot\phi+2\dot r\dot\phi)\boldsymbol e_\phi であるから,運動方程式は m(r¨−rϕ˙2)=−GMmr2,m(rϕ¨+2r˙ϕ˙)=0 m(\ddot r-r\dot\phi^2)=-\frac{GMm}{r^2},\qquad m(r\ddot\phi+2\dot r\dot\phi)=0 である。

第2式に rr を掛けると r2ϕ¨+2rr˙ϕ˙=1rddt(r2ϕ˙)=0 r^2\ddot\phi+2r\dot r\dot\phi =\frac{1}{r}\frac{d}{dt}(r^2\dot\phi)=0 より r2ϕ˙=const. r^2\dot\phi=\text{const.} したがって角運動量の大きさ L=mr2ϕ˙ L=mr^2\dot\phi は保存する。

この保存量を用いて ϕ˙=L/(mr2)\dot\phi=L/(mr^2) と書くと,動径方向の式は mr¨=L2mr3−GMmr2=−ddr(L22mr2−GMmr) m\ddot r =\frac{L^2}{mr^3}-\frac{GMm}{r^2} =-\frac{d}{dr}\left( \frac{L^2}{2mr^2}-\frac{GMm}{r} \right) となる。よって有効ポテンシャルは U(r)=L22mr2−GMmr U(r)=\frac{L^2}{2mr^2}-\frac{GMm}{r} である。

楕円軌道の長半径を aa とすると,ケプラー問題の束縛軌道では E1=−GMm2a E_1=-\frac{GMm}{2a} である。したがって a=−GMm2E1(E1<0) a=-\frac{GMm}{2E_1} \qquad (E_1<0) である。

遠日点半径を r2r_2 とする。軌道修正前の遠日点では E1=U1(r2)=L122mr22−GMmr2 E_1=U_1(r_2) =\frac{L_1^2}{2mr_2^2}-\frac{GMm}{r_2} である。これを r2r_2 について解くと,遠日点は大きい方の根なので r2=−GMm−(GMm)2+2E1L12m2E1. r_2= \frac{-GMm-\sqrt{(GMm)^2+\dfrac{2E_1L_1^2}{m}}}{2E_1}. 軌道修正後は半径 r2r_2 の円軌道であるから,その全エネルギーは E2=−GMm2r2=GMm E1GMm+(GMm)2+2E1L12m. E_2=-\frac{GMm}{2r_2} = \frac{GMm\,E_1}{ GMm+\sqrt{(GMm)^2+\dfrac{2E_1L_1^2}{m}} }.

最終答

m(r¨−rϕ˙2)=−GMmr2,m(rϕ¨+2r˙ϕ˙)=0,L=mr2ϕ˙=const.,U(r)=L22mr2−GMmr,a=−GMm2E1,E2=GMm E1GMm+(GMm)2+2E1L12m. \begin{gathered} m(\ddot r-r\dot\phi^2)=-\frac{GMm}{r^2},\qquad m(r\ddot\phi+2\dot r\dot\phi)=0,\\ L=mr^2\dot\phi=\text{const.},\qquad U(r)=\frac{L^2}{2mr^2}-\frac{GMm}{r},\\ a=-\frac{GMm}{2E_1},\qquad E_2= \frac{GMm\,E_1}{ GMm+\sqrt{(GMm)^2+\dfrac{2E_1L_1^2}{m}} }. \end{gathered}

第2問 — 静電場と誘電体

空洞問題の見方

空洞は「電荷を取り除いた領域」なので,正の一様帯電球に負の一様帯電球を重ねるのが最短である。空洞内では2つの一様球の内部電場を引き算するため,点 (x,y,z)(x,y,z) への依存が消え,一様電場だけが残る。

エネルギー積分の注意

一様帯電球のエネルギーでは外部空間の電場エネルギーも含める。内部だけを積分すると全エネルギーの一部しか得られない。空洞の設問では「空洞内部」のエネルギーなので,空洞体積だけを積分する。

誘電体球殻の概形

電束密度は自由電荷だけで決まるため r>ar>a で同じ 1/r21/r^2 型である。一方,電場は媒質の誘電率で割るので,誘電体領域だけ小さくなる。

試験で書くべきポイント

分極面電荷の符号は法線の向きで決まる。内側面の外向き法線は原点向きであるため,σpol\sigma_{\mathrm{pol}} は負になる。ここを「原点に近い面だから負」と言葉だけで済ませず,σ=P⋅n\sigma=\boldsymbol P\cdot\boldsymbol n と書くと答案として強い。

静電場と誘電体の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 調和振動子と撃力

撃力の物理

δ(t)\delta(t) 型の外力は位置を瞬間的には変えず,運動量だけを Δp=F0 \Delta p=F_0 だけ変える。したがって Δx˙=F0/m\Delta\dot x=F_0/m である。これは古典力学の力積と同じ内容で,演算子方程式でもそのまま成り立つ。

演算子のずれ

撃力後の b^,b^†\hat b,\hat b^\dagger は,撃力前の a^,a^†\hat a,\hat a^\dagger から純虚数だけ平行移動した形になる。このずれが t>0t>0 の平均位置 F0mωsin⁡ωt \frac{F_0}{m\omega}\sin\omega t を生む。一方,数演算子状態の量子ゆらぎは平行移動では変わらない。

検算

x^H(t)\hat x_H(t) の追加項は長さの次元をもつ。実際, F0mω \frac{F_0}{m\omega} は (運動量)/(質量×角振動数)(\text{運動量})/(\text{質量}\times\text{角振動数}) で長さである。さらに t=0t=0 で追加項は0,時間微分は F0/mF_0/m となり,境界条件と一致する。

典型ミス

ハミルトニアンではラグランジアンの +F(t)x+F(t)x が −F(t)x-F(t)x になる。ここを誤ると速度の跳びの符号が逆になる。また,⟨x2⟩−⟨x⟩2\langle x^2\rangle-\langle x\rangle^2 を求める設問では,撃力で生じる平均変位を必ず差し引く。

調和振動子と撃力の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 行列とラプラス変換

行列多項式の処理

Φ(A)\Phi(A) を直接計算してもよいが,特性多項式を正しく求めた後はケイリー・ハミルトンの定理で A3=6A2−11A+6I A^3=6A^2-11A+6I として高次の AA を落とすのが速い。第3問の f(A)f(A) も同じ発想で,まず多項式を Φ(λ)\Phi(\lambda) で割った余りに直す。

固有ベクトルの検算

固有値 λ=1,2,3\lambda=1,2,3 の和は tr⁡A=6\operatorname{tr}A=6,積は det⁡A=6\det A=6 と一致する。固有ベクトルは規格化だけでなく,第1成分が非負という指定も忘れない。

畳み込み

∫0tet−τf(τ) dτ \int_0^t e^{t-\tau}f(\tau)\,d\tau は核 ete^t との畳み込みである。したがってラプラス変換は積になり,1/(s−1)1/(s-1) が掛かる。ここで e−τe^{-\tau} ではなく et−τe^{t-\tau} である点を見落とすと分母を s+1s+1 にしてしまう。

解の確認

求めた h(t)h(t) を用いると,畳み込み項のラプラス変換は H(s)/(s−1)H(s)/(s-1) であり, H(s)−H(s)s−1=5ss2+1 H(s)-\frac{H(s)}{s-1} =\frac{5s}{s^2+1} が戻る。初期条件が別途与えられていない積分方程式なので,ラプラス変換だけで一意に決まる。

行列とラプラス変換の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — アインシュタイン模型

古典極限の意味

古典論では各2次形式の自由度が平均エネルギー kBT/2k_{\mathrm B}T/2 を持つ。1原子あたり運動量3成分と変位3成分で合計6個の2次自由度があるため,平均エネルギーは 3kBT3k_{\mathrm B}T,比熱は 3kB3k_{\mathrm B} になる。これはデュロン・プティ則である。

量子比熱の概形

量子論では低温で励起に必要なエネルギー ℏω\hbar\omega を熱的に供給できないため,比熱は指数関数的に小さくなる。高温では準位間隔が kBTk_{\mathrm B}T に比べて小さく見え,古典結果へ戻る。

異方性がある場合

Ω≫ω\Omega\gg\omega なら,温度を上げるにつれてまず x,yx,y 方向の2自由度が励起され,比熱は一時的に 2NkB2Nk_{\mathrm B} に近づく。さらに高温で zz 方向も励起されると最終的に 3NkB3Nk_{\mathrm B} へ近づく。

典型ミス

零点エネルギーは分配関数や平均エネルギーには現れるが,比熱では温度微分により消える。低温比熱で exp⁡[−ℏω/(kBT)]\exp[-\hbar\omega/(k_{\mathrm B}T)] を落とすと,量子凍結の本質を失う。

アインシュタイン模型の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 電磁波検出器

波長域の整理

波長が短い順に,γ\gamma 線,X線,紫外線,可視光,赤外線,マイクロ波,ラジオ波と並ぶ。核準位の遷移はエネルギーが大きいため γ\gamma 線,外殻電子の遷移は原子・分子の光学遷移なので可視光または紫外・赤外の領域になる。設問の選択肢の中では可視光が最も標準的である。

光電子増倍管の役割分担

カソードは光を電子へ変換する段階,ダイノードは電子数を増やす段階,アノードは電荷を集めて外部回路へ渡す段階である。名称だけでなく「光電効果」「二次電子放出」「収集」を書くと物理過程が明確になる。

電圧波形の符号とスケール

アノードに電子が到達するとアノード側に負電荷が入るため,単純な容量モデルでは負パルスになる。大きさは 107e/C10^7e/C,戻りの速さは RCRC で決まる。問題で与えられた 1 ns1\ \mathrm{ns} は電子群の到着幅,10 ns10\ \mathrm{ns} は読み出し回路の緩和時間であり,混同しない。

半導体検出器でエネルギー分析できる理由

γ\gamma 線では1光子のエネルギーが十分大きく,多数の電子正孔対を作る。平均生成エネルギーがほぼ一定なので,総電荷量から入射エネルギーを測れる。可視光の1光子検出では,主に「来たかどうか」を測っており,1光子エネルギーの差を電荷量として分解する構造ではない。

電磁波検出器の途中式・最終答をPDFで見る

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