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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東工大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2023年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 磁場中の帯電剛体

方針

この問題は、点電荷のローレンツ力を剛体の並進運動と回転運動へ分解するだけでほぼ決まる。 重要なのは、点 A, B が重心から ±a(cosθ,sinθ)\pm a(\cos\theta,\sin\theta) の位置にあることを最初に固定することである。 ここを bb と取り違えると、慣性モーメント以外のすべての係数がずれる。

符号の検算

面外向き磁場に対して (vx,vy,0)×(0,0,B0)=B0(vy,vx,0) (v_x,v_y,0)\times(0,0,B_0)=B_0(v_y,-v_x,0) である。したがって +y+y 方向に動く正電荷は x-x 方向の力を受ける。 [A][A]θ>0\theta>0 とすると、A 側の正電荷と B 側の負電荷が作るトルクは時計回り、すなわち負のトルクになり、復元力になる。 この符号確認を答案に短く入れると、選択肢の向きを自信をもって決められる。

一定角速度運動の見方

回転方程式の右辺が 0 であることは、重心速度が長辺方向 (cosθ,sinθ)(\cos\theta,\sin\theta) と直交することを意味する。 そのため速度を A(t)(sinθ,cosθ) A(t)(\sin\theta,-\cos\theta) と置くのが自然である。並進方程式に代入すると、二つの式が同時に成り立つためには T(S+ω0)A=0T-(S+\omega_0)A=0 かつ dA/dt=0dA/dt=0 が必要になる。 片方の式だけから A(t)A(t) を求めようとすると、時刻依存の三角関数が残り、一定角速度という条件を満たさない。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 導体中の電磁波

境界条件の注意

ここでは電場も磁束密度も境界面に平行である。電場の接線成分は連続で、磁場については通常 HH の接線成分が連続である。 ただし本問では導体中の透磁率を真空中と同じ μ\mu として扱う指定があるため、結果として ByB_y も連続になる。 ϵEx\epsilon E_x の連続条件は法線成分の電束密度に対する条件なので、この配置では使わない。

反射率の符号

反射波は z-z 方向に進むため、同じ電場振幅でも ByB_y の符号が入射波と逆になる。 この符号を落とすと ER/E0E_R/E_0 が逆数型になり、完全導体極限で R1R\to 1 という検算は通っても位相が誤る。 振幅比を求める段階では Byvac(0)=k0ω(E0ER) B_y^{\mathrm vac}(0)=\frac{k_0}{\omega}(E_0-E_R) と書くのが要点である。

良導体近似

k2=μϵω2+iμσω=μϵω2(1+iσωϵ) k^2=\mu\epsilon\omega^2+i\mu\sigma\omega =\mu\epsilon\omega^2\left(1+i\frac{\sigma}{\omega\epsilon}\right) であり、σ/(ωϵ)1\sigma/(\omega\epsilon)\gg 1 なら変位電流項より伝導電流項が支配的である。 ki>0k_i>0 を選ぶのは、z>0z>0ekize^{-k_i z} と減衰する波だけが物理的だからである。 この減衰長は表皮深さ δ=1/ki=2/(μσω)\delta=1/k_i=\sqrt{2/(\mu\sigma\omega)} で、導体がよいほど、また周波数が高いほど電磁波は浅い領域に閉じ込められる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 複素関数・線形代数・ベクトル解析

複素関数の典型ミス

x2+y2=z2x^2+y^2=|z|^2 は見た目が単純でも zˉ\bar z を含むので正則ではない。 また、ixy=i(x+iy)ix-y=i(x+iy) と見抜ければ、コーシー・リーマンを計算せずに正則性が判断できる。 選択問題では、まず z,zˉz,\bar z で書き直すと時間を節約できる。

微小量 iϵi\epsilon の役割

分母の実軸上の極は、+iϵ+i\epsilon によって下半平面側へ移動する。 上半平面に閉じる今回の積分では、その極は囲まれない。 ここで半留数を加えてしまうのが典型的な失点である。 指数因子の符号から閉じる向きを決め、次に極がどちらへ避けられたかを確認する。

ベクトル場の見方

成分を眺めて (zr)=(xzr,yzr,r+z2r) \nabla(zr)=\left(\frac{xz}{r},\frac{yz}{r},r+\frac{z^2}{r}\right) と気づくと、回転と線積分が一気に処理できる。 ただし経路が原点から出発しているため、ポテンシャルの値が有限であることも確認しておくと答案として安全である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — ランダウ準位

何が縮退を作るか

ハミルトニアンが αα\alpha^\dagger\alpha だけで書けるため、エネルギーは nαn_\alpha だけに依存する。 β\beta^\dagger はエネルギーを変えずに角運動量と軌道半径を変える演算子である。 この構造を先に把握すると、縮退数の問題で不要な波動関数計算を避けられる。

角運動量の符号

ψ01x+iy=reiϕ\psi_{01}\propto x+iy=re^{i\phi} なので Lz=iϕ L_z=-i\hbar\frac{\partial}{\partial\phi} から固有値は ++\hbar である。 xiyx-iy と取り違えると符号が反転するため、β\beta^\dagger を作用させたときにどちらの因子が出るかを微分で確認するのが安全である。

縮退数の検算

νqBR22=qBπR2h \nu\simeq\frac{qBR^2}{2\hbar} =\frac{qB\pi R^2}{h} であり、磁束 BπR2B\pi R^2 を磁束量子 h/qh/q で割った形になっている。 最低ランダウ準位の状態数として自然な形であり、係数 22 の検算に使える。

摂動の二次補正

x2+y2x^2+y^2 には数演算子のほかに αβ\alpha^\dagger\beta^\daggerαβ\alpha\beta が含まれる。 基底状態に作用して非対角成分を作るのは αβ\alpha^\dagger\beta^\dagger だけである。 縮退している 0,nβ\lvert0,n_\beta\rangle とは直接結合しないので、通常の非縮退摂動として処理できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — イジングスピンの熱力学

独立スピンの熱容量

C=Nk(βH)2sech2(βH) C=Nk(\beta H)^2\operatorname{sech}^2(\beta H) は、低温ではほぼ全スピンがそろって励起できず、高温では上下がほぼ等確率でエネルギーが温度に鈍感になるため、両端で 0 になる。 そのため単調増加や単調減少のグラフは除外できる。

断熱消磁

独立スピンのエントロピーは H/TH/T だけで決まる。 磁場を小さくすると、同じエントロピーを保つには温度も同じ比で下がる。 これは常磁性塩の断熱消磁の基本式であり、T/HT/H が一定と覚えるより、βH\beta H 一定と見る方が符号や比を間違えにくい。

結合したスピン対

結合項 Jσ1σ2J\sigma_1\sigma_2J>0J>0 なので、磁場が弱いと反平行配置が有利である。 この反平行配置は 1 組につき 2 通りあるため、絶対零度でも J<H<J-J<H<J では残留エントロピーが残る。 一方、強磁場領域では全スピンが磁場方向にそろい、基底状態は一意になる。

高温磁化の検算

高温極限の一次まででは、結合 JJ は磁化に現れない。 熱揺らぎが十分大きいとスピン間結合の効果は βJ\beta J の高次に押し込まれ、キュリー則 MNHkT M\simeq \frac{NH}{kT} が残る。この形になっているかを最後に確認するとよい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 放射線計測

ガンマ線の吸収割合

質量吸収係数を使うときは、必ず μx=(μ/ρ)ρx \mu x=(\mu/\rho)\rho x の無次元量に直す。薄い吸収体なら 1eμxμx1-e^{-\mu x}\simeq\mu x と近似できるが、今回の概算では μx1\mu x\simeq1 なので指数関数をそのまま使う。

コンプトン端

シンチレータに最大エネルギーが入るのは、散乱光子のエネルギーが最小になる後方散乱である。 662keV662\,{\mathrm keV} の全エネルギーが吸収されるわけではない。 プラスチックシンチレータでは光電吸収が小さいため、実測波形の最大パルスをコンプトン端と対応させるのが自然である。

パルス面積から電荷へ

オシロスコープの電圧波形から得るのは、終端抵抗を流れた電流 I=V/RI=V/R の時間積分である。 したがって三角形近似では Q=電圧波形の面積R Q=\frac{\text{電圧波形の面積}}{R} とする。ピーク電圧だけで電子数を出すと、時間幅の情報を落としてしまう。

阻止能曲線の判定

阻止能の形は主に速度で決まり、横軸を運動エネルギーにすると質量の大きい粒子ほど同じ速度に達するのに大きなエネルギーが必要になる。 そのため陽子の曲線はミューオンの曲線より右へずれる。 アルファ粒子の阻止能を見積もるときは、同じ速度で z2=4z^2=4 倍になる点を使う。

片対数グラフと寿命

自然指数で減衰する量を常用対数で直線近似すると、傾きに ln10\ln10 が入る。 a=1τln10 a=-\frac{1}{\tau\ln10} であり、τ=1/a\tau=-1/a としてしまうと約 2.32.3 倍ずれる。 この変換係数は実験データ処理で頻出である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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