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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東工大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2022年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — サイクロイド上の運動

方針

サイクロイドでは媒介変数の取り方を固定すると計算がほぼ機械的になる。 弧長要素 dsds を先に求め, その弧長を一般化座標に選ぶと, サイクロイドの等時性が 単振動の形で現れる。

検算

φ=0\varphi=0x=y=s=0x=y=s=0, φ=π\varphi=\pi で点 AA に達し =0\ell=0, φ=2π\varphi=2\pi=4a\ell=4a である。符号付き弧長の符号指定とも一致する。 また TT は質量 mm に依存しない。これは次元解析の結果 p=0p=0 とも整合する。

典型ミス

上下反転後の重力ポテンシャルで符号を誤りやすい。ここでは yy 正方向が下向きなので U=mgyU=-mgy である。定数を落とした後に U=mg2/(8a)U=mg\ell^2/(8a) となるため, 点 AA が安定点になる。

答案で書くべきこと

完全弾性衝突の図示問題では, ただ曲線を描くだけでなく T/4,T/2,3T/4,TT/4,T/2,3T/4,T での値を読み取れるようにすることが重要である。 特に T/4T/43T/43T/4 の衝突で速度がどのように入れ替わるかを式で示すと, グラフの根拠が明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 静電場と回転双極子の放射

方針

前半は導体球の標準問題であり, 球対称性だけで決まる。後半は遅延ポテンシャルから r1r^{-1} の放射場だけを残す問題である。近接場の r2r^{-2} 項を混ぜないことが重要になる。

放射場の構造

放射場は E=μ04πrn×(n×p¨),B=1cn×E \mathbf E=\frac{\mu_0}{4\pi r}\mathbf n\times \bigl(\mathbf n\times\ddot{\mathbf p}\bigr),\qquad \mathbf B=\frac{1}{c}\mathbf n\times\mathbf E と書ける。したがって E\mathbf E は常に n\mathbf n に垂直で, エネルギー流は動径方向を向く。

検算

双極子モーメントの大きさは一定で向きだけが回る。観測方向が zz 軸なら p¨\ddot{\mathbf p} は常に観測方向に垂直なので放射が最大になる。 逆に xyxy 平面内では, 時間の半分は加速度が観測方向に近くなるため平均強度が小さくなる。

典型ミス

ϕ\phi の第一項 pr/r3 \mathbf p\cdot\mathbf r/r^3 は一見重要に見えるが, これは r2r^{-2} であり放射場の次数では落ちる。放射場を求める段階で ϕ\nabla\phi の遅延時刻微分だけを残すのが安全である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — ヘルムホルツ方程式と波動方程式のグリーン関数

方針

この問題の中心はフーリエ変換の規格化と極の処方である。規格化が通常と少し違うため, 最初の (2π)3(2\pi)^{-3} と時間変換の (2π)1(2\pi)^{-1} を丁寧に追う必要がある。

積分路の意味

kk+i0k\to k+i0 は外向き球面波を選ぶ処方である。最終的な eikr/(4πr)e^{ikr}/(4\pi r) は原点から外へ進む波を表す。逆の処方を選ぶと eikr/(4πr)e^{-ikr}/(4\pi r) が現れ, 物理的な境界条件が変わる。

検算

k0k\to 0 の極限では G(r)1/(4πr)G(r)\to 1/(4\pi r) であり, Δ(1/4πr)=δ(r)\Delta(1/4\pi r)=-\delta(\mathbf r) と一致する。 波動方程式の答は t=r/ct=r/c の光円錐上だけで値を持ち, 3次元のホイヘンス原理に合っている。

典型ミス

sinpr\sin pr の積分を一つの閉曲線だけで処理すると符号を落としやすい。 eipre^{ipr}eipre^{-ipr} に分け, それぞれ上半平面・下半平面で閉じると 向きの違いまで自然に管理できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 円環上の量子粒子

方針

円環上の自由粒子は平面波で解き, 弱い外力は通常の非縮退摂動論で扱う。 強い外力ではポテンシャル最小点の近くだけが効くため, 円環問題が調和振動子問題に 置き換わる。

縮退への注意

n=±1n=\pm1 などの励起準位は縮退しているが, 基底状態 n=0n=0 は非縮退である。 したがって基底エネルギーの二次補正には通常の式をそのまま使える。

検算

0X0=0\langle0|X|0\rangle=0 は, 円周上で左右対称に広がった基底状態では XX の平均がゼロであることを表す。したがってエネルギーの一次補正が消えるのは 物理的にも自然である。

典型ミス

強外力の基底エネルギーで定数項 FR-FR を落とすと答がずれる。 調和振動子近似では曲率から Ω2=F/(MR)\Omega^2=F/(MR) を読むが, ポテンシャルの最小値そのものもエネルギー固有値に含まれる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — フェルミ粒子と白色矮星

方針

前半はフェルミ粒子の占有数制限を使う統計力学である。後半は白色矮星を 「縮退電子の運動エネルギー」と「自己重力エネルギー」の競合としてスケール評価する。

状態密度の注意

状態密度ではスピンの因子 22 を忘れやすい。これを落とすと ϵF\epsilon_F の係数が 22/32^{2/3} だけずれる。スケーリングだけなら影響しないが, フェルミ温度の見積もりでは数値に効く。

検算

電子の運動エネルギーは半径が小さくなるほど R2R^{-2} で増える。 重力エネルギーは R1R^{-1} で下がる。したがって小さすぎる半径では縮退圧が勝ち, 大きすぎる半径では重力で縮むので, 最小条件から安定半径が出る。

典型ミス

白色矮星の実温度が数万 K と聞くと高温に見えるが, 判定すべき相手は室温ではなく フェルミ温度である。密度が極端に大きいため TFT_F109K10^9\,\mathrm K 程度になり, 熱的な広がりはフェルミエネルギーに比べて十分小さい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 真空技術と熱電子放出

方針

真空技術の前半は装置の典型的な圧力範囲を問う知識問題である。後半は ショットキー効果による仕事関数の低下を, 熱電子放出式に代入して直線化する。

ポテンシャルの符号

アノード電圧 V>0V>0 で電位はアノード側ほど高くなるが, 電子の電荷は e-e なので 電子のポテンシャルエネルギーは eVz/d-eVz/d で下がる。この符号を逆にすると 仕事関数が増えるという不自然な結論になる。

直線化の見方

固定温度で VV を変える実験では, 指数の中に V\sqrt V が現れる。 したがって lnJ\ln JV\sqrt V が直線関係になる。 温度を変える実験では Richardson の T2T^2 を先に割り, ln(J0/T2)\ln(J_0/T^2)1/T1/T を対応させる。

典型ミス

lnJ0\ln J_0 をそのまま 1/T1/T に対してプロットすると 2lnT2\ln T が残るため厳密には直線にならない。仕事関数を傾きから読むには ln(J0/T2)\ln(J_0/T^2) を使う必要がある。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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