東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)
全6問。量子力学1問。テーマタグは11件(調和振動子・固有値・固有ベクトル・留数定理)。2020年度と共通のテーマは調和振動子・固有値・固有ベクトル・分配関数。
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収録5年度分の解答PDF:東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理(¥2,880・紙面見本あり)
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- 解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき6問)
- 問題本文
- 非収録
東京科学大 物理 2022年度 院試 過去問の出題内容(全6問)
この6問の分野は量子力学1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | サイクロイド上の運動 | — | あり |
| 第2問 | — | 静電場と回転双極子の放射 | 放射場の構造 | あり |
| 第3問 | — | ヘルムホルツ方程式と波動方程式のグリーン関数 | 積分路の意味 | あり |
| 第4問 | 量子力学 | 円環上の量子粒子 | 縮退への注意 | あり |
| 第5問 | — | フェルミ粒子と白色矮星 | 状態密度の注意 | あり |
| 第6問 | — | 真空技術と熱電子放出 | ポテンシャルの符号 / 直線化の見方 | あり |
この年度の解説には典型ミス6件・検算5件が付いています。
2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に11テーマが出ています。
前年度(2020年度)との違い
- 大問数
- 2020年度 6問 → 2022年度 6問
- 2022年度で新しく出たテーマ
- 留数定理・フーリエ変換・電磁波・フェルミ・ボース統計・摂動論
第1問 — サイクロイド上の運動
方針
サイクロイドでは媒介変数の取り方を固定すると計算がほぼ機械的になる。 弧長要素 を先に求め, その弧長を一般化座標に選ぶと, サイクロイドの等時性が 単振動の形で現れる。
検算
で , で点 に達し , で である。符号付き弧長の符号指定とも一致する。 また は質量 に依存しない。これは次元解析の結果 とも整合する。
典型ミス
上下反転後の重力ポテンシャルで符号を誤りやすい。ここでは 正方向が下向きなので である。定数を落とした後に となるため, 点 が安定点になる。
答案で書くべきこと
完全弾性衝突の図示問題では, ただ曲線を描くだけでなく での値を読み取れるようにすることが重要である。 特に と の衝突で速度がどのように入れ替わるかを式で示すと, グラフの根拠が明確になる。
第2問 — 静電場と回転双極子の放射
方針
前半は導体球の標準問題であり, 球対称性だけで決まる。後半は遅延ポテンシャルから の放射場だけを残す問題である。近接場の 項を混ぜないことが重要になる。
放射場の構造
放射場は と書ける。したがって は常に に垂直で, エネルギー流は動径方向を向く。
検算
双極子モーメントの大きさは一定で向きだけが回る。観測方向が 軸なら は常に観測方向に垂直なので放射が最大になる。 逆に 平面内では, 時間の半分は加速度が観測方向に近くなるため平均強度が小さくなる。
典型ミス
の第一項 は一見重要に見えるが, これは であり放射場の次数では落ちる。放射場を求める段階で の遅延時刻微分だけを残すのが安全である。
解答
- 導体球の半径を , 電荷を と書く。球対称性とガウスの法則より 無限遠を電位の基準にすると
- 静電エネルギーは場のエネルギーから
- 導体球表面の電位が なので
- 電気双極子モーメントは である。遅延時刻を , とする。 の まででは すなわち を代入すればよい。
- 放射場の次数では ここで
- ポインティングベクトルは動径方向で, とすると よって
- は , すなわち 軸方向で最大である。 選択肢では 軸方向。
- 全放射パワーは 角度積分は なので
最終答
放射が最大となる向きは 軸方向。
第3問 — ヘルムホルツ方程式と波動方程式のグリーン関数
方針
この問題の中心はフーリエ変換の規格化と極の処方である。規格化が通常と少し違うため, 最初の と時間変換の を丁寧に追う必要がある。
積分路の意味
は外向き球面波を選ぶ処方である。最終的な は原点から外へ進む波を表す。逆の処方を選ぶと が現れ, 物理的な境界条件が変わる。
検算
の極限では であり, と一致する。 波動方程式の答は の光円錐上だけで値を持ち, 3次元のホイヘンス原理に合っている。
典型ミス
の積分を一つの閉曲線だけで処理すると符号を落としやすい。 と に分け, それぞれ上半平面・下半平面で閉じると 向きの違いまで自然に管理できる。
第4問 — 円環上の量子粒子
方針
円環上の自由粒子は平面波で解き, 弱い外力は通常の非縮退摂動論で扱う。 強い外力ではポテンシャル最小点の近くだけが効くため, 円環問題が調和振動子問題に 置き換わる。
縮退への注意
などの励起準位は縮退しているが, 基底状態 は非縮退である。 したがって基底エネルギーの二次補正には通常の式をそのまま使える。
検算
は, 円周上で左右対称に広がった基底状態では の平均がゼロであることを表す。したがってエネルギーの一次補正が消えるのは 物理的にも自然である。
典型ミス
強外力の基底エネルギーで定数項 を落とすと答がずれる。 調和振動子近似では曲率から を読むが, ポテンシャルの最小値そのものもエネルギー固有値に含まれる。
第5問 — フェルミ粒子と白色矮星
方針
前半はフェルミ粒子の占有数制限を使う統計力学である。後半は白色矮星を 「縮退電子の運動エネルギー」と「自己重力エネルギー」の競合としてスケール評価する。
状態密度の注意
状態密度ではスピンの因子 を忘れやすい。これを落とすと の係数が だけずれる。スケーリングだけなら影響しないが, フェルミ温度の見積もりでは数値に効く。
検算
電子の運動エネルギーは半径が小さくなるほど で増える。 重力エネルギーは で下がる。したがって小さすぎる半径では縮退圧が勝ち, 大きすぎる半径では重力で縮むので, 最小条件から安定半径が出る。
典型ミス
白色矮星の実温度が数万 K と聞くと高温に見えるが, 判定すべき相手は室温ではなく フェルミ温度である。密度が極端に大きいため が 程度になり, 熱的な広がりはフェルミエネルギーに比べて十分小さい。
第6問 — 真空技術と熱電子放出
方針
真空技術の前半は装置の典型的な圧力範囲を問う知識問題である。後半は ショットキー効果による仕事関数の低下を, 熱電子放出式に代入して直線化する。
ポテンシャルの符号
アノード電圧 で電位はアノード側ほど高くなるが, 電子の電荷は なので 電子のポテンシャルエネルギーは で下がる。この符号を逆にすると 仕事関数が増えるという不自然な結論になる。
直線化の見方
固定温度で を変える実験では, 指数の中に が現れる。 したがって と が直線関係になる。 温度を変える実験では Richardson の を先に割り, と を対応させる。
典型ミス
をそのまま に対してプロットすると が残るため厳密には直線にならない。仕事関数を傾きから読むには を使う必要がある。
東京科学大 物理 院試 過去問の収録5年度
剛体コマの歳差と章動 / 量子統計とボース凝縮 / 線形代数・複素積分・ルジャンドル多項式
剛体球の弾性衝突 / 同軸ケーブル / 線形代数・微分方程式・フーリエ積分
磁場中の帯電剛体 / 導体中の電磁波 / 複素関数・線形代数・ベクトル解析
2022年度(このページ・全6問)
サイクロイド上の運動 / 静電場と回転双極子の放射 / ヘルムホルツ方程式と波動方程式のグリーン関数
中心力と軌道遷移 / 静電場と誘電体 / 調和振動子と撃力