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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。力学1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・伝達関数・剛体の回転運動)。2023年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・剛体の回転運動・分配関数。

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

東京科学大 物理 2024年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学剛体球の弾性衝突軌跡の見方あり
第2問—同軸ケーブルエネルギーから定数を読む / 表皮効果の意味あり
第3問—線形代数・微分方程式・フーリエ積分原点での級数 / 積分の検算あり
第4問—一次元束縛状態と三準位近似3 状態条件の見方 / 三準位近似の注意あり
第5問—吸着平衡と三準位固体化学ポテンシャルで見る / 三準位固体の極限あり
第6問—実験物理の小問霧箱の数値 / 回路の典型ミスあり

この年度の解説には検算3件・典型ミス2件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は6問に7テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 6問 → 2024年度 6問
2024年度で新しく出たテーマ
伝達関数・フーリエ変換・静電場
2023年度のページを見る

第1問 — 剛体球の弾性衝突

方針

衝突時間は短いので,重力の力積は無視し,床からの力積だけで速度の飛びを 記述する。水平力積 JJ は並進速度を変える一方,同じ力積が接地点で働くた め角速度も変える。符号を間違えないためには,正の角速度で接地点が左向き に動くことを先に確認しておくとよい。

検算

得られた変換は S2=E,vx′2+25(aω′)2=vx2+25(aω)2 S^2=E,\qquad v_x'^2+\frac{2}{5}(a\omega')^2 =v_x^2+\frac{2}{5}(a\omega)^2 を満たす。つまり,同じ衝突をもう一度作用させると元に戻り,運動エネルギー も保存する。これは弾性衝突として自然な反射になっていることを示している。

典型ミス

I(ω′−ω)=+aJI(\omega'-\omega)=+aJ としてしまうと,接地点速度の反転 ux′=−uxu_x'=-u_x が出ない。図の角速度の正方向では,+x+x 方向の摩擦力は正の 自転を減らす向きのトルクを与える。

軌跡の見方

λ=1: vx=aω \lambda=1:\ v_x=a\omega では衝突前から接地点が床に対して滑らないので,水平方向の力積は 0 である。 各跳躍は同じ水平速度をもつ放物線になる。一方 λ=−1: vx=−25aω \lambda=-1:\ v_x=-\frac{2}{5}a\omega では衝突ごとに水平速度が反転する。同じ高さへ戻る理想的な跳躍を考えると, 左右に往復する概形になる。

解答

半径を aa,質量を MM とする。角速度の正方向は図の向きに合わせ,接地点 PP の剛体球に対する相対速度の xx 成分を −aω-a\omega と書く。したがって 接地点の速度は ux=vx−aω u_x=v_x-a\omega である。

一様な球の慣性モーメントは,球対称性から I=∫r⊥2 dm=23∫r2 dm I=\int r_\perp^2\,dm =\frac{2}{3}\int r^2\,dm である。一様密度 ρ=M(4πa3/3) \rho=\frac{M}{(4\pi a^3/3)} を用いると ∫r2 dm=ρ∫0ar2 4πr2 dr=3M4πa3⋅4πa55=35Ma2. \int r^2\,dm =\rho\int_0^a r^2\,4\pi r^2\,dr =\frac{3M}{4\pi a^3}\cdot\frac{4\pi a^5}{5} =\frac{3}{5}Ma^2. よって I=25Ma2. I=\frac{2}{5}Ma^2.

床からの水平力積を JJ とし,+x+x 方向を正にとる。xx 方向の運動量と, 重心まわりの角運動量について M(vx′−vx)=J,I(ω′−ω)=−aJ M(v_x'-v_x)=J,\qquad I(\omega'-\omega)=-aJ が成り立つ。鉛直方向は弾性衝突より vy′=−vy v_y'=-v_y である。ここで W=aω,W′=aω′,j=JM W=a\omega,\qquad W'=a\omega',\qquad j=\frac{J}{M} とおくと vx′=vx+j,W′=W−52j. v_x'=v_x+j,\qquad W'=W-\frac{5}{2}j. 衝突で全エネルギーが保存するので,鉛直方向の寄与は打ち消し合い, vx′2+25W′2=vx2+25W2. v_x'^2+\frac{2}{5}W'^2 =v_x^2+\frac{2}{5}W^2. これに上式を代入すると 2(vx−W)j+72j2=0 2(v_x-W)j+\frac{7}{2}j^2=0 であり,非自明な衝突では j=47(W−vx). j=\frac{4}{7}(W-v_x). したがって vx′=3vx+4aω7,aω′=10vx−3aω7. v_x'=\frac{3v_x+4a\omega}{7},\qquad a\omega'=\frac{10v_x-3a\omega}{7}. 接地点の速度については ux′=vx′−aω′=3vx+4aω−10vx+3aω7=−(vx−aω)=−ux u_x'=v_x'-a\omega' =\frac{3v_x+4a\omega-10v_x+3a\omega}{7} =-(v_x-a\omega) =-u_x となる。

次に p=(vxaω),p′=(vx′aω′) p=\begin{pmatrix}v_x\\ a\omega\end{pmatrix},\qquad p'=\begin{pmatrix}v_x'\\ a\omega'\end{pmatrix} とおくと,1 回の衝突は p′=Sp,S=17(3410−3) p'=Sp,\qquad S=\frac{1}{7} \begin{pmatrix} 3 & 4\\ 10 & -3 \end{pmatrix} で表される。直接計算により S2=E S^2=E であるから S−1=S=17(3410−3). S^{-1}=S =\frac{1}{7} \begin{pmatrix} 3 & 4\\ 10 & -3 \end{pmatrix}. よって nn 回衝突後は p(n)=Snp(0)={p(0)(n 偶数),Sp(0)(n 奇数) p^{(n)}=S^n p^{(0)} = \begin{cases} p^{(0)} &(n\ \text{偶数}),\\ Sp^{(0)} &(n\ \text{奇数}) \end{cases} である。すなわち {vx(n)=vx,ω(n)=ω(n 偶数),vx(n)=3vx+4aω7,ω(n)=10vx−3aω7a(n 奇数). \begin{cases} v_x^{(n)}=v_x,\quad \omega^{(n)}=\omega &(n\ \text{偶数}),\\[2mm] v_x^{(n)}=\dfrac{3v_x+4a\omega}{7},\quad \omega^{(n)}=\dfrac{10v_x-3a\omega}{7a} &(n\ \text{奇数}). \end{cases}

初期条件 vx=0, ω>0v_x=0,\ \omega>0 では (vx(n),aω(n))={(0,aω)(n 偶数),(47aω,−37aω)(n 奇数). (v_x^{(n)},a\omega^{(n)}) = \begin{cases} (0,a\omega) &(n\ \text{偶数}),\\[1mm] \left(\dfrac{4}{7}a\omega,-\dfrac{3}{7}a\omega\right) &(n\ \text{奇数}). \end{cases} したがって,重心は鉛直に落下して最初の衝突をした後,右向き速度をもつ 放物線運動と,水平速度が 0 の鉛直往復を交互に繰り返す。

SS の固有値は det⁡(S−λE)=λ2−1=0 \det(S-\lambda E)=\lambda^2-1=0 より λ=1, −1. \lambda=1,\ -1. λ=1\lambda=1 では vx=aω v_x=a\omega であり,接地点の水平速度が 0 なので衝突で vx,ωv_x,\omega は変わらない。 λ=−1\lambda=-1 では vx=−25aω v_x=-\frac{2}{5}a\omega であり,衝突のたびに vx,ωv_x,\omega の符号が反転する。

最終答

% I=25Ma2,M(vx′−vx)=J,I(ω′−ω)=−aJ, I=\frac{2}{5}Ma^2,\quad M(v_x'-v_x)=J,\quad I(\omega'-\omega)=-aJ, vx′=3vx+4aω7,ω′=10vx−3aω7a,ux′=−ux, v_x'=\frac{3v_x+4a\omega}{7},\quad \omega'=\frac{10v_x-3a\omega}{7a},\quad u_x'= -u_x, S=S−1=17(3410−3),Sn={E(n even),S(n odd), S=S^{-1}=\frac{1}{7} \begin{pmatrix}3&4\\10&-3\end{pmatrix},\quad S^n= \begin{cases}E &(n\ \mathrm{even}),\\ S &(n\ \mathrm{odd}),\end{cases} 固有値は 1,−11,-1。対応する条件は vx=aωv_x=a\omega,vx=−2aω/5v_x=-2a\omega/5。

第2問 — 同軸ケーブル

方針

同軸ケーブルは円筒対称性が強いので,電場はガウスの法則,磁場はアンペール の法則でほぼ一行で決まる。重要なのは,どの半径でどれだけの電荷・電流が 囲まれるかを領域ごとに分けることである。

エネルギーから定数を読む

電気容量は UE=C0V2/2U_E=C_0V^2/2 から読んでもよいが,この問題では C0=λ/VC_0=\lambda/V の方が短い。インダクタンスは UB=L0I2/2U_B=L_0I^2/2 から読む。内導体内部の磁場エネルギー μ0I2/(16π)\mu_0I^2/(16\pi) を落とすと,直流の L0L_0 が不足する。

表皮効果の意味

高周波で電流が導体表面に偏ると,導体内部に磁場が入りにくくなる。したがっ て磁場エネルギーが小さくなり,実効インダクタンスも小さくなる。答案では 「表皮効果」と「内部磁場エネルギーの減少」を両方書くと理由が明確である。

検算

交流表面電流の場合, L0acC0=(μ02πlog⁡ba)(2πε0log⁡(b/a))=μ0ε0 L_0^{\mathrm{ac}}C_0 =\left(\frac{\mu_0}{2\pi}\log\frac{b}{a}\right) \left(\frac{2\pi\varepsilon_0}{\log(b/a)}\right) =\mu_0\varepsilon_0 となり,幾何学的な比 b/ab/a が消える。真空中の電磁波速度と一致するので, 結果の物理的な整合性が確認できる。

同軸ケーブルの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 線形代数・微分方程式・フーリエ積分

方針

微分方程式は,そのまま f,gf,g を解こうとすると非線形で扱いにくい。指定さ れた置換を行うと F′=FG,G′=F2 F'=FG,\qquad G'=F^2 となり,保存量 F2−G2F^2-G^2 がただちに見える。境界条件が定数の値を決める ところまでがこの設問の狙いである。

原点での級数

原点条件から a0=1, b0=0a_0=1,\ b_0=0 を先に入れる。xg′=g+1−f2xg'=g+1-f^2 の右辺では 1−f21-f^2 の定数項が消えるため,1 次係数の比較で a1=0a_1=0 が強制される。 ここを曖昧にすると b2=−2a2b_2=-2a_2 の符号を誤りやすい。

積分の検算

k=0k=0 とおくと ∫−∞∞dxcosh⁡x=π \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{\cosh x}=\pi であり,得られた式も π/cosh⁡0=π\pi/\cosh0=\pi を返す。また ∣k∣|k| が大きいと 指数的に小さくなるので,滑らかな関数のフーリエ変換として自然である。

線形代数・微分方程式・フーリエ積分の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 一次元束縛状態と三準位近似

方針

前半は一次元束縛状態の標準問題である。偶ポテンシャルなので偶奇性で分類し, 有限井戸では外側を指数関数,内側を三角関数でつなぐ。3 状態存在条件は 「第 2 偶状態が束縛される条件」と読むと短い。

3 状態条件の見方

有限井戸の状態数は q2+p2=ρ2 q^2+p^2=\rho^2 の円と,qtan⁡q=pq\tan q=p,−qcot⁡q=p-q\cot q=p の交点の数で決まる。第 1 偶状態, 第 1 奇状態に続く第 2 偶状態は q=πq=\pi を越えたところで初めて現れる。 等号では外側の減衰率が 0 となり,正規化可能な束縛状態ではないため条件は 厳密に >> である。

三準位近似の注意

x^\hat x は偶奇性を反転する演算子なので,対角成分は 0 である。摂動 −Fx^-F\hat x による基底状態の 1 次補正では ∣0⟩|0\rangle と直接結合するのは ∣1⟩|1\rangle だけで,∣2⟩|2\rangle は寄与しない。この選択則を書いてから計算 すると,符号と係数 1/21/\sqrt2 を落としにくい。

検算

初期状態の期待値は ⟨x⟩(0)=2p032(1−1)=0 \langle x\rangle(0) =\frac{2p_0}{3\sqrt2}(1-1)=0 である。これは初期ベクトルの 0--1 間の寄与と 1--2 間の寄与が,行列要素の 符号差で打ち消すことに対応している。

一次元束縛状態と三準位近似の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 吸着平衡と三準位固体

方針

吸着問題は,吸着サイトの組合せエントロピーと気体の自由エネルギーを足し, nn で最小化するだけでよい。N≫MN\gg M の条件は,気相分子数を N−n≃NN-n\simeq N と近似してラングミュア型の簡単な形にするために使う。

化学ポテンシャルで見る

平衡条件は −ε+kBTlog⁡θ1−θ=kBTlog⁡NλT3V -\varepsilon+k_BT\log\frac{\theta}{1-\theta} =k_BT\log\frac{N\lambda_T^3}{V} である。左辺の −ε-\varepsilon は吸着でエネルギーが下がる効果,対数項は 吸着サイトを埋めることによる配置エントロピーの損失を表す。

三準位固体の極限

低温ではエネルギー −ε-\varepsilon の 2 重縮退した状態だけが占有されるので S→NkBlog⁡2S\to Nk_B\log2 となる。高温では 3 状態が等確率になり S→NkBlog⁡3S\to Nk_B\log3 である。比熱は低温でも高温でも 0 に近づくため,典型的な Schottky 型の山を描く。

典型ミス

吸着分子数を nn としたとき,気体分子数は N−nN-n である。自由エネルギーを 微分する段階でここを NN のまま扱うと,平衡条件の導出が不明確になる。 最後に N≫MN\gg M を使って N−n≃NN-n\simeq N とする順序が安全である。

吸着平衡と三準位固体の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 実験物理の小問

方針

この大問は短い実験系の設問を確実に処理する問題である。数値問題では, 何を読んだか,どの近似を使ったか,有効数字をどう丸めたかを答案に残すと 採点者に伝わりやすい。

霧箱の数値

6.66 MeV6.66\,\mathrm{MeV} は 3.7 GeV3.7\,\mathrm{GeV} に比べて十分小さいので, K=mv2/2K=mv^2/2 の非相対論近似でよい。相対論式を使っても差はこの有効数字では 現れない。

回路の典型ミス

帰還抵抗 RfR_f とコンデンサー CC を並列にするのがローパスである。入力側 や帰還の直列に入れると伝達関数が変わり,低周波ゲイン 20 と 100 Hz100\,\mathrm{Hz} 付近のカットオフを同時に満たせない。1 kΩ1\,\mathrm{k\Omega} を 2 本並列に使う発想が抵抗 3 個制限の要点である。

グラフ改善の要点

理論式が指数関数なら,通常の RR--TT グラフでは曲線の一致を目視しにくい。 log⁡R\log R--1/T1/T プロットにすれば理論曲線は直線になり,傾きが BB,切片が log⁡R(∞)\log R(\infty) になる。摂氏温度のまま逆数を取らないことも重要である。

実験物理の小問の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 物理 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全6問)

    剛体コマの歳差と章動 / 量子統計とボース凝縮 / 線形代数・複素積分・ルジャンドル多項式

  • 2024年度(このページ・全6問)

    剛体球の弾性衝突 / 同軸ケーブル / 線形代数・微分方程式・フーリエ積分

  • 2023年度(全6問)

    磁場中の帯電剛体 / 導体中の電磁波 / 複素関数・線形代数・ベクトル解析

  • 2022年度(全6問)

    サイクロイド上の運動 / 静電場と回転双極子の放射 / ヘルムホルツ方程式と波動方程式のグリーン関数

  • 2020年度(全6問)

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