東京科学大学 院試 過去問 解答例
東工大 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2024年度 院試 解答例・解説
東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 剛体球の弾性衝突
方針
衝突時間は短いので,重力の力積は無視し,床からの力積だけで速度の飛びを 記述する。水平力積 は並進速度を変える一方,同じ力積が接地点で働くた め角速度も変える。符号を間違えないためには,正の角速度で接地点が左向き に動くことを先に確認しておくとよい。
検算
得られた変換は を満たす。つまり,同じ衝突をもう一度作用させると元に戻り,運動エネルギー も保存する。これは弾性衝突として自然な反射になっていることを示している。
典型ミス
としてしまうと,接地点速度の反転 が出ない。図の角速度の正方向では, 方向の摩擦力は正の 自転を減らす向きのトルクを与える。
軌跡の見方
では衝突前から接地点が床に対して滑らないので,水平方向の力積は 0 である。 各跳躍は同じ水平速度をもつ放物線になる。一方 では衝突ごとに水平速度が反転する。同じ高さへ戻る理想的な跳躍を考えると, 左右に往復する概形になる。
第2問 — 同軸ケーブル
方針
同軸ケーブルは円筒対称性が強いので,電場はガウスの法則,磁場はアンペール の法則でほぼ一行で決まる。重要なのは,どの半径でどれだけの電荷・電流が 囲まれるかを領域ごとに分けることである。
エネルギーから定数を読む
電気容量は から読んでもよいが,この問題では の方が短い。インダクタンスは から読む。内導体内部の磁場エネルギー を落とすと,直流の が不足する。
表皮効果の意味
高周波で電流が導体表面に偏ると,導体内部に磁場が入りにくくなる。したがっ て磁場エネルギーが小さくなり,実効インダクタンスも小さくなる。答案では 「表皮効果」と「内部磁場エネルギーの減少」を両方書くと理由が明確である。
検算
交流表面電流の場合, となり,幾何学的な比 が消える。真空中の電磁波速度と一致するので, 結果の物理的な整合性が確認できる。
第3問 — 線形代数・微分方程式・フーリエ積分
方針
微分方程式は,そのまま を解こうとすると非線形で扱いにくい。指定さ れた置換を行うと となり,保存量 がただちに見える。境界条件が定数の値を決める ところまでがこの設問の狙いである。
原点での級数
原点条件から を先に入れる。 の右辺では の定数項が消えるため,1 次係数の比較で が強制される。 ここを曖昧にすると の符号を誤りやすい。
積分の検算
とおくと であり,得られた式も を返す。また が大きいと 指数的に小さくなるので,滑らかな関数のフーリエ変換として自然である。
第4問 — 一次元束縛状態と三準位近似
方針
前半は一次元束縛状態の標準問題である。偶ポテンシャルなので偶奇性で分類し, 有限井戸では外側を指数関数,内側を三角関数でつなぐ。3 状態存在条件は 「第 2 偶状態が束縛される条件」と読むと短い。
3 状態条件の見方
有限井戸の状態数は の円と,, の交点の数で決まる。第 1 偶状態, 第 1 奇状態に続く第 2 偶状態は を越えたところで初めて現れる。 等号では外側の減衰率が 0 となり,正規化可能な束縛状態ではないため条件は 厳密に である。
三準位近似の注意
は偶奇性を反転する演算子なので,対角成分は 0 である。摂動 による基底状態の 1 次補正では と直接結合するのは だけで, は寄与しない。この選択則を書いてから計算 すると,符号と係数 を落としにくい。
検算
初期状態の期待値は である。これは初期ベクトルの 0--1 間の寄与と 1--2 間の寄与が,行列要素の 符号差で打ち消すことに対応している。
第5問 — 吸着平衡と三準位固体
方針
吸着問題は,吸着サイトの組合せエントロピーと気体の自由エネルギーを足し, で最小化するだけでよい。 の条件は,気相分子数を と近似してラングミュア型の簡単な形にするために使う。
化学ポテンシャルで見る
平衡条件は である。左辺の は吸着でエネルギーが下がる効果,対数項は 吸着サイトを埋めることによる配置エントロピーの損失を表す。
三準位固体の極限
低温ではエネルギー の 2 重縮退した状態だけが占有されるので となる。高温では 3 状態が等確率になり である。比熱は低温でも高温でも 0 に近づくため,典型的な Schottky 型の山を描く。
典型ミス
吸着分子数を としたとき,気体分子数は である。自由エネルギーを 微分する段階でここを のまま扱うと,平衡条件の導出が不明確になる。 最後に を使って とする順序が安全である。
第6問 — 実験物理の小問
方針
この大問は短い実験系の設問を確実に処理する問題である。数値問題では, 何を読んだか,どの近似を使ったか,有効数字をどう丸めたかを答案に残すと 採点者に伝わりやすい。
霧箱の数値
は に比べて十分小さいので, の非相対論近似でよい。相対論式を使っても差はこの有効数字では 現れない。
回路の典型ミス
帰還抵抗 とコンデンサー を並列にするのがローパスである。入力側 や帰還の直列に入れると伝達関数が変わり,低周波ゲイン 20 と 付近のカットオフを同時に満たせない。 を 2 本並列に使う発想が抵抗 3 個制限の要点である。
グラフ改善の要点
理論式が指数関数なら,通常の -- グラフでは曲線の一致を目視しにくい。 -- プロットにすれば理論曲線は直線になり,傾きが ,切片が になる。摂氏温度のまま逆数を取らないことも重要である。