院試hub

東京科学大 工学院 情報通信系 情報通信 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は線形代数1問、微分積分・解析1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標、ヒルベルト空間などが出ています。2023年度と共通するテーマは固有値・固有ベクトル、重積分と極座標です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 二重積分と級数和

領域変換の見方

x=u−v, y=u+vx=u-v,\ y=u+v は正方形を uu-vv 平面上のひし形領域へ移す。内側積分の上端が uu と 1−u1-u に分かれるのは,ひし形の幅が u=1/2u=1/2 を境に増加から減少へ変わるためである。Jacobian の 22 と,偶関数性により半分の領域だけ積分する係数 22 を掛け合わせて D=4D=4 になる点が落としやすい。

級数和への帰着

この問題の狙いは,Basel 和を二重積分から導くことである。単に ∑1/n2=π2/6\sum 1/n^2=\pi^2/6 を既知として書くのではなく,変数変換で I1I_1 と I2I_2 を評価してから和を結論する構成にすると,設問全体が一つの証明としてつながる。

解答

本問は,単位正方形上の二重積分を,幾何級数展開と変数変換の二通りで評価し,最後に級数和へ戻す構成である。 積分と級数をつなぐ部分,および領域分割で係数が変わる部分を明示する。

まず 11−xy=∑k=0∞(xy)k(0≤x,y<1) \frac{1}{1-xy}=\sum_{k=0}^{\infty}(xy)^k \qquad (0\le x,y<1) を用いると,単調収束定理により積分と和を交換できる。したがって I=∑k=0∞(∫01xk dx)(∫01yk dy)=∑k=0∞1(k+1)2. I =\sum_{k=0}^{\infty} \left(\int_0^1 x^k\,dx\right) \left(\int_0^1 y^k\,dy\right) =\sum_{k=0}^{\infty}\frac{1}{(k+1)^2}. 問題の添字を n=1,2,…n=1,2,\ldots とすれば,第 nn 項は an=1n2 a_n=\frac{1}{n^2} である。

次に x=u−v,y=u+v x=u-v,\qquad y=u+v とおく。Jacobian は ∣∂(x,y)∂(u,v)∣=∣1−111∣=2 \left|\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}\right| = \left|\begin{matrix}1&-1\\1&1\end{matrix}\right|=2 であり,分母は 1−xy=1−(u−v)(u+v)=1−u2+v2. 1-xy=1-(u-v)(u+v)=1-u^2+v^2. 領域 0≤x,y≤10\le x,y\le 1 は 0≤u≤1,−m(u)≤v≤m(u),m(u)=min⁡{u,1−u} 0\le u\le 1,\qquad -m(u)\le v\le m(u), \quad m(u)=\min\{u,1-u\} で表される。被積分関数は vv について偶関数なので I=∫01/2∫0u41−u2+v2 dv du+∫1/21∫01−u41−u2+v2 dv du. I=\int_0^{1/2}\int_0^u \frac{4}{1-u^2+v^2}\,dv\,du +\int_{1/2}^{1}\int_0^{1-u}\frac{4}{1-u^2+v^2}\,dv\,du. よって分割表示に入る量は A1=0,B1=12,C1(u)=u,A2=12,B2=1,C2(u)=1−u,D=4. A_1=0,\quad B_1=\frac12,\quad C_1(u)=u, \qquad A_2=\frac12,\quad B_2=1,\quad C_2(u)=1-u,\quad D=4.

第1部分は u=sin⁡θu=\sin\theta とおくと I1=4∫01/211−u2arctan⁡u1−u2 du=4∫0π/6θ dθ=π218. I_1 =4\int_0^{1/2}\frac{1}{\sqrt{1-u^2}} \arctan\frac{u}{\sqrt{1-u^2}}\,du =4\int_0^{\pi/6}\theta\,d\theta =\frac{\pi^2}{18}. 第2部分は u=cos⁡θu=\cos\theta とおく。uu が 1/21/2 から 11 へ動くと,θ\theta は π/3\pi/3 から 00 へ動く。また 1−u1−u2=1−cos⁡θsin⁡θ=tan⁡θ2. \frac{1-u}{\sqrt{1-u^2}} =\frac{1-\cos\theta}{\sin\theta} =\tan\frac{\theta}{2}. したがって I2=4∫0π/3θ2 dθ=π29. I_2 =4\int_0^{\pi/3}\frac{\theta}{2}\,d\theta =\frac{\pi^2}{9}. 以上から I=I1+I2=π218+π29=π26. I=I_1+I_2=\frac{\pi^2}{18}+\frac{\pi^2}{9} =\frac{\pi^2}{6}.

最終答

an=1n2,(A1,B1,C1)=(0,12,u),(A2,B2,C2)=(12,1,1−u),D=4, a_n=\frac{1}{n^2},\quad (A_1,B_1,C_1)=(0,\tfrac12,u),\quad (A_2,B_2,C_2)=(\tfrac12,1,1-u),\quad D=4, I1=π218,I2=π29,I=∑n=1∞1n2=π26. I_1=\frac{\pi^2}{18},\qquad I_2=\frac{\pi^2}{9},\qquad I=\sum_{n=1}^{\infty}\frac1{n^2}=\frac{\pi^2}{6}.

第2問 — 対称行列と最小ノルム補正

列空間への射影

解を持たない連立方程式を最小限に補正する問題は,「右辺を列空間へ直交射影する」問題として処理するのが最も確実である。対称行列なので固有空間が直交し,列空間は非零固有値に対応する固有空間そのものになる。

最小ノルム解

補正後方程式の解は一意ではない。零空間方向 (1,1,0)(1,1,0) と (0,0,1)(0,0,1) を足しても AzAz は変わらないためである。最小ノルム解は列空間方向だけに残るので,x−y=1/2x-y=1/2 の制約下で x2+y2+z32x^2+y^2+z_3^2 を最小化して x=1/4, y=−1/4, z3=0x=1/4,\ y=-1/4,\ z_3=0 を得る。

対称行列と最小ノルム補正の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 情報通信系論述

採点されやすい構成

論述答案は,知識の羅列ではなく,問いの二点に明確に対応させる必要がある。前半では「何を選ぶか」「なぜ重要か」「どういう仕組みか」を書き,後半では「何が未解決か」「なぜ難しいか」「どう解くか」を書くと,設問要求に対する対応が見えやすい。

図表の扱い

公式問題では図または表を答案に含めることが求められている。図表は大きく描けばよいわけではなく,本文の論理を補助する役割に絞る。上の答案例では,通信システムの流れを簡単なブロック図で示し,低遅延・高信頼通信の制約を表で整理した。これにより,抽象的な議論だけでなく,実装上の論点も押さえていることを示せる。

情報通信系論述の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(5年度)

  • 2025年度(全3問)

    極限・二重積分・数列の収束 / 対称行列と二次曲面 / 情報通信分野の論述

  • 2024年度(このページ・全3問)

    二重積分と級数和 / 対称行列と最小ノルム補正 / 情報通信系論述

  • 2023年度(全5問)

    ガンマ関数とWallis積 / Gram行列と固有値 / 二項分布とロジスティック回帰

  • 2022年度(全5問)

    多変数微分と体積 / 線形写像と対称行列 / 2状態Markov連鎖

  • 2020年度(全5問)

    変数変換と二変数関数の極値 / 正定値行列と対称化写像 / ガウス分布のモーメント

2024年度の出題内容

全3問

この3問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析二重積分と級数和領域変換の見方 / 級数和への帰着あり
第2問線形代数対称行列と最小ノルム補正列空間への射影 / 最小ノルム解あり
第3問—情報通信系論述採点されやすい構成 / 図表の扱いあり

同じテーマを出した他大学・他年度

4テーマ

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 3問
2024年度で新しく出たテーマ
ヒルベルト空間・符号理論
2023年度の解答例

東京科学大学の公式過去問

公開年度範囲
主に2021〜2025年実施(数学系は2020〜2024年実施)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2027年4月・2026年9月入学の理工学系修士は、数学系を除きTOEIC L&R・TOEFL iBT・Home Editionの外部スコアを使用。数学系は独自英語筆答が必須で、外部スコアによる免除はありません。提出期限は系別です。
院試hubの最終確認
2026-10-15
東京科学大学の公式過去問PDF