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広島大学 院試 過去問 解答例

広島大 先進理工系科学研究科 物理学プログラム 物理 2025年度 一般A 院試 解答例・解説

広島大学 先進理工系科学研究科 物理学プログラム 物理 2025年度 一般Aの院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 力学

方針

この問題は,微小変換に対する LL の変化を「運動方程式を使った全微分」と「具体的なラグランジアンを代入した全微分」の二通りで書き,比較する問題である。比較の結果が保存量であり,これはネーターの定理の最も基本的な使い方である。

時間並進で出る量

時間並進から得られる保存量は px˙L \boldsymbol{p}\cdot\dot{\boldsymbol{x}}-L である。この問題のラグランジアンでは px˙L=mx˙2(12mx˙2mgx3)=12mx˙2+mgx3. \boldsymbol{p}\cdot\dot{\boldsymbol{x}}-L =m\dot{\boldsymbol{x}}^2 -\left(\frac12m\dot{\boldsymbol{x}}^2-mgx_3\right) =\frac12m\dot{\boldsymbol{x}}^2+mgx_3. つまり,運動エネルギーと重力ポテンシャルエネルギーの和が一定である。符号は x3x_3 軸を鉛直上向きに取っているため V=mgx3V=mgx_3 になる。

空間並進の注意点

x1,x2x_1,x_2 方向の並進では重力ポテンシャルが変わらないので,通常の運動量 p1=mx˙1,p2=mx˙2 p_1=m\dot{x}_1,\qquad p_2=m\dot{x}_2 が保存する。一方,x3x_3 方向の並進では LL 自体は不変ではなく δL=mgϵ3\delta L=-mg\epsilon_3 だけ変化する。ただしこれは mgϵ3=ddt(mgϵ3t) -mg\epsilon_3=\frac{d}{dt}(-mg\epsilon_3 t) という全微分であるため, mx˙3+mgt m\dot{x}_3+mg t が一定になる。これを微分すれば mx¨3+mg=0m\ddot{x}_3+mg=0,すなわち x¨3=g \ddot{x}_3=-g であり,鉛直方向の自由落下運動を表している。

答案で落としやすい点

δx˙=d(δx)/dt\delta\dot{\boldsymbol{x}}=d(\delta\boldsymbol{x})/dt を書かずに式(2)へ飛ぶと,全微分になる理由が見えない。時間並進では δx=ϵ0x˙\delta\boldsymbol{x}=\epsilon_0\dot{\boldsymbol{x}} の符号も重要である。この問題では x(t+ϵ0)x(t)x(t+\epsilon_0)-x(t) と定義されているので正号になる。また,鉛直方向について mx˙3m\dot{x}_3 が保存すると答えるのは誤りで,保存するのは mx˙3+mgtm\dot{x}_3+mgt である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 電磁気学

波動方程式の導き方

電磁波の波動方程式は,片方の回転方程式にさらに ×\nabla\times を作用させ,もう片方の回転方程式を代入して時間微分を二階にするのが定石である。このとき ×(×J)=(J)2J \nabla\times(\nabla\times\boldsymbol{J}) =\nabla(\nabla\cdot\boldsymbol{J})-\nabla^2\boldsymbol{J} の第一項が消える理由は,真空中で E=0\nabla\cdot\boldsymbol{E}=0 および B=0\nabla\cdot\boldsymbol{B}=0 だからである。

横波条件の意味

kE0=0\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{E}_0=0kB0=0\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{B}_0=0 は,電場と磁場が進行方向に成分を持たないことを表す。また k×E0=ωB0\boldsymbol{k}\times\boldsymbol{E}_0=\omega\boldsymbol{B}_0 は, k,E0,B0\boldsymbol{k},\boldsymbol{E}_0,\boldsymbol{B}_0 の向きが右手系を作ることを表す。符号を誤るとポインティングベクトルの向きも逆になるので,ファラデーの法則の時間微分の符号を丁寧に確認する。

エネルギー密度と流れの確認

分散関係から c=ω/kc=\omega/k,また B0=E0/cB_0=E_0/c である。したがって電場エネルギー密度と磁場エネルギー密度は各時刻で等しく, ϵ02E2=12μ0B2 \frac{\epsilon_0}{2}E^2=\frac{1}{2\mu_0}B^2 となる。ポインティングベクトルは k^\hat{\boldsymbol{k}} 方向を向き,大きさは cUcU であるから,エネルギーが光速 cc で運ばれるという解釈と整合している。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 量子力学

ガウス仮定から何を見るか

基底状態の仮定をシュレディンガー方程式に入れると,x2x^2 に比例する項と定数項に分かれる。固有値方程式では右辺が EϕE\phi でなければならないので,x2x^2 の係数をゼロにする。これが α=ω/\alpha=\omega/\hbar を決める最短の方法である。

分散の見方

調和振動子では x2n=ω(n+12) \langle x^2\rangle_n=\frac{\hbar}{\omega}\left(n+\frac12\right) が成り立つ。問(2)では n=0,1n=0,1 だけを使えばよい。第一励起状態は奇関数なので x=0\langle x\rangle=0 であることを忘れなければ,分散はそのまま x2\langle x^2\rangle になる。

二次元での縮退

等方的な二次元調和振動子ではエネルギーが n+mn+m だけで決まる。したがって第一励起準位 n+m=1n+m=1 は二重縮退しており, ϕ1(x)ϕ0(y)\phi_1(x)\phi_0(y)ϕ0(x)ϕ1(y)\phi_0(x)\phi_1(y) の任意の線形結合も同じエネルギーの固有状態である。答案では「線形独立なものを全て」と指定されているため,この二つを明示する。

角運動量の保存判定

H^2\hat{H}_2x,yx,y に対して回転対称なので L^z\hat{L}_z と交換する。一方,ϵω2x^y^\epsilon\omega^2\hat{x}\hat{y} は回転対称ではない。実際に [x^y^,L^z]=i(x^2y^2) [\hat{x}\hat{y},\hat{L}_z]=i\hbar(\hat{x}^2-\hat{y}^2) が残るため,角運動量は保存しない。ここで符号を誤りやすいので, [x^,p^x]=[y^,p^y]=i[\hat{x},\hat{p}_x]=[\hat{y},\hat{p}_y]=i\hbar を一つずつ使って確認するのが安全である。

期待値の時間変化率

最後の問は,状態の時間発展を直接求める必要はない。ハイゼンベルク方程式で演算子の微分を先に出し,その期待値を t=0t=0 の状態で取ればよい。1,0|1,0\ranglexx 方向に広く,0,1|0,1\rangleyy 方向に広いので,二つの符号が反対になることも物理的な確認になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 熱・統計力学

符号の確認

ハミルトニアンが H=Hiμi \mathcal{H}=-H\sum_i\mu_i なので,H>0H>0 では μi=+μ\mu_i=+\mu が低エネルギー状態である。そのため低温では MNμM\to N\mu となる。この符号を逆にすると,磁化,自由エネルギー微分,ミクロカノニカルでの U=μHNU=-\mu HN' がすべてずれる。

揺らぎのスケーリング

独立な粒子の和では平均は NN に比例し,標準偏差は N\sqrt{N} に比例する。したがって相対揺らぎは 1/N1/\sqrt{N} で小さくなる。これは熱力学極限で巨視的な磁化が鋭く決まることを表す。

エントロピーと熱容量

熱容量からエントロピーを再構成するときは dS=CTdT dS=\frac{C}{T}\,dT を一定磁場で積分する。積分定数が必要であり,本問では H>0H>0 で基底状態が一つなので S(0,H)=0S(0,H)=0 と置ける。ここを書かないと,熱容量だけから絶対エントロピーを決めたことにならない。

負温度が現れる理由

二準位系はエネルギーに上限がある。ミクロカノニカルでは U=0U=0 で状態数が最大になり,そこを越えて反転分布 N>N+N_- > N_+ になると,エネルギーを増やすほど状態数が減る。したがって 1T=(SU)N \frac{1}{T}=\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_N が負になり,負温度が現れる。これは計算ミスではなく,上限のあるスペクトルに特有の性質である。

示量変数と示強変数

NNUU を同じ倍率で増やすと,粒子一個あたりのエネルギー U/NU/N は変わらない。エントロピーは粒子数に比例して増えるので示量変数,温度は U/NU/N だけで決まり系の大きさに依存しないので示強変数である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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