関東 · 東京科学大学
科学大(旧東工大)化学系の院試対策|150分・選択2問と解法
東京科学大理学院化学系の2027年度要項は150分、物理化学・無機分析・有機の計6題から2題を選択。2025年過去問との違い、配点、錯体の吸収エネルギーと定常状態近似の解答、演習の進め方を説明します。
最終更新: 2026/10/16
東京科学大学理学院の化学系を受けるなら、まず共通の無機・分析化学、有機化学、物理化学を固め、そのうえで選択2題を解く準備をします。直近公表の2027年度要項は150分、選択は3分野の計6題から2題です。2025年実施の過去問にある生化学・物理を、そのまま選択分野として準備しないよう注意してください。
対象は旧東工大の理学院・化学系です。物質理工学院の応用化学系は別の選抜です。以下では2027年度の要項と2025年実施問題を分け、現在の形式に合わせた演習と、答案の書き方を説明します。
2027年度は150分、選択6題から2題
2027年4月・2026年9月入学の募集要項23ページにある条件は次のとおりです。この選抜は2026年夏に実施済みです。次の入学年度を受ける人は、最新の募集要項で変更の有無を確認してください。
| 項目 | 2027年度要項の内容 |
|---|---|
| B日程の筆答 | 2026年8月18日13:30〜16:00、150分 |
| 共通問題 | 物理化学・無機分析・有機の基礎知識と理解。300点 |
| 選択問題 | 物理化学2題・無機分析2題・有機2題の計6題から2題。400点 |
| 英語 | 外部試験スコア。200点 |
| B日程の口頭試問 | 2026年8月25日。受験資格者は8月21日17時頃に発表 |
選択2題の配点は共通より大きいため、共通の復習だけで準備を終えず、選択で長い問題を解き切る練習が必要です。ただし、共通には3分野とも含まれます。選択に使わない分野も、基礎まで省いてよいわけではありません。
2025年過去問の8選択と、2027年度の6選択を分ける
2025年実施問題の表紙は「2026大修」で、試験時間は同じ150分です。この年は共通1〜3をすべて解き、選択4〜11から2題を選ぶ形式でした。大学の出題意図と問題本文に照らすと、各問題は次の分野に分かれます。
| 問題番号 | 分野 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 共通1 | 無機・分析 | 有効核電荷、分子形、錯体の電子配置と吸収エネルギー |
| 共通2 | 有機 | キラリティ、異性体、エステル加水分解、反応生成物と立体配置 |
| 共通3 | 物理化学 | 気体の熱力学、水素原子、反応中間体の定常状態近似 |
| 選択4・5 | 無機・分析 | 結晶・半導体・状態図、錯体の構造・反応・金属間結合 |
| 選択6・7 | 有機 | 反応性と分子軌道、多段階合成と化学選択性 |
| 選択8・9 | 物理化学 | 気体の状態変化・混合、波動関数と固有エネルギー |
| 選択10・11 | 生化学・物理 | タンパク質・DNA、剛体と電気双極子。2027年度要項の選択分野には含まれない |
2027年度要項の選択は、物理化学・無機分析・有機の6題です。過去問の第10問・第11問を選べる前提で、本番の2題を決めないでください。量子力学や熱力学は物理化学に含まれるので、独立した物理分野がないことと、物理の基礎が不要なことは同じではありません。
共通1c:電子数から吸収エネルギーまでつなげる
2025年の共通1cは、Ti(III)の六配位アクア錯体について、不対電子・電子遷移・結晶場分裂を問います。公式問題2ページを手元に置き、以下の式がどの条件から出るか確認してください。
1.Ti³⁺の電子配置を決める
水は中性配位子なのでTiの酸化数は+3です。Ti³⁺は3d¹で、八面体型の結晶場では低いt2g軌道に電子が1個入ります。したがって不対電子は1個です。吸収に対応するのは、t2gからegへのd–d遷移です。
2.光子1個のエネルギーを1 molに換算する
波長500 nmをメートルに直し、問題で指定された定数を使います。まず光子1個のエネルギーを求めます。
1 mol分にはアボガドロ定数を掛け、JからkJへ直すため1,000で割ります。
237.6は丸める前の計算値で、指定定数に合わせた有効数字2桁なら2.4×10² kJ mol⁻¹です。波長をnmのまま代入する、アボガドロ定数を掛け忘れる、JとkJを混ぜると桁が変わります。電子配置の説明と単位換算を分けて書けば、途中式も確認しやすくなります。
共通3c:定常状態近似から速度定数を導く
2025年の共通3cでは、AとBから中間体Cが生じ、CがAとBへ戻る経路と生成物Pへ進む経路を考えます。順反応の速度定数をk₁、戻る反応をk₁′、生成物へ進む反応をk₂とします。公式問題4ページの条件から、まず生成と消費をすべて書きます。
最初の項はCの生成、残りの2項は別々の経路による消費です。ここに定常状態近似を適用すると、
となります。Pを作るのはk₂の経路なので、その速度にCの濃度を代入します。
定常状態近似は、Cの生成と消費がほぼ釣り合うと置く近似です。AとBへの逆反応だけを使って平衡を仮定すると、生成物へ進む消費項k₂[C]を落としてしまいます。また、開始直後から常にd[C]/dt=0と主張するものでもありません。
検算には極限と次元を使います。k₂が0ならPは生成しないので有効速度定数も0です。k₂がk₁′より十分大きいと有効速度定数はk₁に近づきます。k₁′とk₂はともに時間の逆数の単位を持つため、答えの単位は二分子反応のk₁と同じです。
共通の診断から150分演習へ進む
- 共通で止まる原因を分ける。 2025年の第1〜3問を解き、「基礎知識が出ない」「式を立てられない」「構造・立体を描けない」「計算・単位を誤る」のどこで止まるか記録します。
- 選択の候補を実際に解いて比べる。 無機分析なら結晶・錯体、有機なら反応機構・合成、物理化学なら熱力学・量子化学を、用語の見覚えではなく答案の完成度で選びます。現在の3分野で2題を完成できるようにします。
- 解けなかった小問を白紙から再現する。 正答を読むだけで終えず、定常状態近似なら3つの速度項、錯体なら電子数と換算式を、解説を閉じて書き直します。
- 最後に150分で通す。 2025年問題を2027年度の選択分野に合わせて使う場合は、共通1〜3と選択4〜9から2題で練習します。これは過去問を使った演習で、2026年実施の本番問題を再現したものではありません。
時間配分の一例は、問題確認5分、共通55分、選択2題に各40分、見直し10分で、合計150分です。これは院試hubの練習案で、公式の時間指定ではありません。練習結果に応じて調整し、選択を3題解く前提や、180分を使う前提にしないでください。
共通で解けない箇所を放置して選択だけを深掘りすることも、共通の短問だけで選択の長い導出を避けることも、配点に合いません。共通300点と選択400点の両方で、途中式や反応機構まで書ける状態を目指します。
英語・第一志望教員への相談・口頭試問も準備する
2027年度要項では、出願前に第一志望の指導教員と相談することが必須です。志望教員は第5志望まで必ず入力し、第10志望まで入力できます。志望理由書は1,500字程度で、志望動機、学士論文研究等の概要、修士で希望する研究内容とその意義・課題・方法を書きます。
英語スコアは出願時に提出し、締切後の提出や差し替えは認められません。筆答の勉強が進んでいても、英語の提出条件を満たす準備が必要です。対象となる英語試験・証明書・日付は、科学大大学院の外部受験ガイドで確認できます。
A日程の口述とB日程の口頭試問では、化学の知識・理解、研究能力や適性、志望動機、学士論文研究の内容などが問われます。学士論文研究や希望研究について「何を明らかにしたいか」「何が分かっていて何が未解決か」「どの方法で調べるか」を自分の言葉で説明できるようにします。要項にない面接時間や質問数は決めつけません。
公式過去問と解答・解説集の使い方
大学公式の過去問一覧では、化学系の2021〜2025年実施問題と、2025年の出題意図を確認できます。出題意図は何を測る問題かを説明する資料で、全設問の解答ではありません。まず問題を解き、必要な途中式や反応機構を解説で確かめてください。
院試hubの化学系解答・解説集は2021〜2025年実施の5年分・55問を収録しています。実施年で表示しており、2026年実施の問題を含むという意味ではありません。古い年度の選択分野も含むため、現在の要項と照らしながら使ってください。商品ページの収録内容と見本から、必要な問題の説明を確認できます。
途中式と最終答まで読める解説
このガイドで扱う解答PDF
問題本文は含みません。公式の問題冊子と併用してください。
化学系 専門科目の収録解説の分野(2021〜2025年度・55項目)
収録年度と解説項目数
院試hubに収録した5実施回の一覧です。どの回も解説見出しは11項目です。
| 実施回 | 解説項目数 | 公開範囲 |
|---|---|---|
| 2025年度 | 11 | 第7問の途中式・最終答 |
| 2024年度 | 11 | 第3問の途中式・最終答 |
| 2023年度 | 11 | 第3問の途中式・最終答 |
| 2022年度 | 11 | 第3問の途中式・最終答 |
| 2021年度 | 11 | 第9問の途中式・最終答 |
東京科学大 化学系 専門科目の解答で立てた注意点(167件)
院試hubの解説で、その設問だけに立てた小見出しです(「方針」「検算」のような全問共通の 見出しは除いています)。新しい実施回から並べています。
- 2025年度 第1問 原子・分子構造と錯体有効核電荷の見方 / VSEPR の典型ミス / 錯体の色と分裂幅
- 2025年度 第4問 固体化学と状態図岩塩型構造 / 真性半導体の輸率 / 格子エネルギーの端効果 / 共晶線
- 2025年度 第5問 錯体の構造・反応・金属間結合Cu(II) 錯体の安定構造 / 内圏型電子移動の採点点 / 金属間四重結合
- 2025年度 第6問 芳香族性と反応選択性芳香族性の判定 / NMR と時間スケール / ジアゾ化転位 / 速度論支配と熱力学支配
- 2025年度 第7問 天然物合成の反応設計保護基選択 / ラクトールへの Grignard 付加 / Johnson--Claisen 転位 / 位置選択的アジド化 / J から K の環化
- 2025年度 第8問 理想気体の状態量と混合圧力一定での G / 図1の落とし穴 / 混合エントロピー
化学17件
- 2025年度 第2問 有機化学の基礎反応キラリティ判定 / エステルのけん化 / 立体選択性
- 2024年度 第1問 弱酸平衡と14族元素弱酸近似の使いどころ / 緩衝液の式 / 14族の典型事項
- 2022年度 第1問 原子半径・電子配置・無機化学の周期性半径の考え方 / 電子配置の典型ミス / 酸化物とハロゲン化銀
- 2022年度 第10問 生化学反応機構選択問題への対応 / 機構問題の書き方
- 2021年度 第1問 元素の性質と分子形単体の状態 / VSEPR の数え方 / 電気陰性度の周期傾向
- 2021年度 第2問 有機化学の基礎反応脱離と HBr 付加の選び分け / デカリンの安定性 / 共役塩基で酸性度を比べる
力学14件
- 2025年度 第11問 力学と電気双極子棒のつり合い / 角度の定義 / 双極子モーメントの原点依存性
- 2024年度 第11問 微小振動と電磁波微小振動は二次係数だけで決まる / 安定性の分岐 / 横波の証明
- 2022年度 第9問 調和振動子と不確定性関係偶奇性 / 基底状態の意味
- 2022年度 第11問 剛体の転がりと磁場転がり運動 / アンペールの法則 / ビオ・サバール積分
- 2021年度 第8問 二原子分子の分子軌道と振動MO 図で必要な情報 / 赤外活性の条件 / 同位体シフトの符号
熱・統計力学9件
- 2025年度 第3問 熱力学・量子化学・速度論仕事の符号 / 水素原子の縮退 / 定常状態近似の書き方
- 2023年度 第3問 熱力学状態量と断熱過程示強性と示量性 / 氷の融点の符号 / 断熱式の導出で書くべき点
- 2021年度 第3問 原子と気体の熱力学第2イオン化エネルギーの落とし穴 / エネルギー方程式の使い方 / 物理的意味
物性物理5件
- 2024年度 第4問 固体化学と材料物性密度計算の単位 / 格子エネルギーと融点 / YSZ の伝導
- 2022年度 第4問 沈殿滴定と半導体結晶Mohr 法の計算 / 密度式の単位
生物3件
- 2023年度 第10問 生化学の基礎反応選択問題としての書き方 / RNA と DNA の安定性 / PLP の役割
電磁気学・回路2件
- 2021年度 第11問 連成振動と交流回路重心運動と相対運動に分ける / 交流回路の定常解
頻出論点と、同じ論点を出す他大学
院試hubが解答した大問の論点を、他大学の出題と突き合わせたものです。併願先を 探すときの重なりの実数として使えます。
| 論点 | この専攻での出題 | 出題年度 | 同じ論点を出す他大学 | 全国の出題大学 |
|---|---|---|---|---|
| 転位 | 8問 | 2025・2024・2023・2022・2021 | 東京大学・北海道大学・名古屋工業大学・名古屋大学・東北大学 | 7大学 |
| 調和振動子 | 5問 | 2024・2023・2022・2021 | 名古屋大学・北海道大学・電気通信大学・広島大学・九州大学 | 16大学 |
| 結晶構造 | 3問 | 2025・2024・2022 | 東京大学・北海道大学・名古屋工業大学・九州大学・東北大学 | 9大学 |
| 固有値・固有ベクトル | 2問 | 2025・2023 | 神戸大学・京都大学・東京大学・大阪大学・名古屋大学 | 25大学 |
| 剛体の回転運動 | 2問 | 2023・2022 | 北海道大学・京都大学・広島大学・九州工業大学・筑波大学 | 16大学 |
| 静電場 | 2問 | 2024・2023 | 名古屋大学・北海道大学・九州工業大学・筑波大学・九州大学 | 16大学 |
| 電磁波 | 1問 | 2024 | 北海道大学・筑波大学・九州大学・東京大学・名古屋大学 | 15大学 |
| 井戸型ポテンシャル | 1問 | 2025 | 名古屋大学・九州大学・東京大学・北海道大学・東北大学 | 15大学 |
| 状態図・相変態 | 1問 | 2025 | 北海道大学・東京大学・名古屋工業大学・九州大学・京都大学 | 9大学 |
| 角運動量 | 1問 | 2025 | 北海道大学・九州大学・京都大学・東北大学・東京都立大学 | 9大学 |
東京科学大 公式の過去問の公開年度と公式解答例
- 公式の過去問ページ
- 全学院共通(理学院・工学院・物質理工学院・情報理工学院 ほか)
- 公開されている年度
- 主に2021〜2025年実施(数学系は2020〜2024年実施)
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- 2027年4月・2026年9月入学の理工学系修士は、数学系を除きTOEIC L&R・TOEFL iBT・Home Editionの外部スコアを使用。数学系は独自英語筆答が必須で、外部スコアによる免除はありません。提出期限は系別です。
- 院試hubが最後にリンクを確認した日
- 2026-10-16
- ページの内容
- 学院・系単位で問題と出題の意図を配布。出題の意図は解答例とは異なります。数理・計算科学系の「2024年から英文出題なし」は専門問題の言語の案内で、英語外部スコアが不要という意味ではありません。物理学系は2020年に代替口述試験を実施したため問題掲載なし。著作権による非公開箇所があります。
よくある質問
科学大化学系の院試は何分で、何問を選びますか。
2027年4月・2026年9月入学のB日程要項は13時30分〜16時の150分です。共通は物理化学・無機分析・有機の基礎、選択は各2題の計6題から2題です。2025年実施問題では共通1〜3をすべて解き、選択4〜11の8題から2題でした。過去問の選択範囲を現在の要項へ流用しないでください。
化学系の選択で生化学や物理を使えますか。
2025年実施問題には生化学の第10問と物理の第11問がありました。一方、2027年度要項の選択は物理化学・無機分析・有機の3分野だけです。生化学・物理を独立した選択分野として準備する前に、受験年度の要項を確認してください。
共通問題・選択問題・英語の配点は何点ですか。
2027年度要項では共通300点、選択400点、外部英語200点です。B日程には別途口頭試問があり、筆答後に受験資格者を発表します。数値配点だけで合格が決まるとは書かれていません。
科学大化学系の勉強はどこから始めますか。
共通の無機分析・有機・物理化学を一通り解き、答えだけでなく電子数・単位・反応機構・近似条件を説明できるか確認します。その後、現在の選択3分野で2題を完成できるよう演習します。この記事では2025年共通1cの錯体と共通3cの反応速度を途中式から説明しています。
過去問の「2025年実施」と表紙の「2026大修」は別の試験ですか。
大学公式が2025年実施問題として掲載する化学系PDFの表紙には「2026大修」とあります。実施年と入学年度の表示が異なる同じ問題です。院試hubの2021〜2025年実施問題の解説集に、2026年実施問題まで収録したという意味ではありません。
東京科学大学の解答PDF
公式過去問と併用する解答・解説PDFを、東京科学大学の研究科・科目別に掲載しています。収録年度と価格は各ページで確認できます。
- 東京科学大学 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学系 専門科目の解答PDF(収録5年分)
- 東京科学大学 理学院 数学系 数学コース 修士課程 数学の解答PDF(収録6年分)
- 東京科学大学 理学院 物理学系 物理学コース 物理の解答PDF(収録5年分)
- 東京科学大学 工学院 システム制御系 システム制御系 数学の解答PDF(収録7実施回分)
- 東京科学大学 工学院 情報通信系 情報通信の解答PDF(収録5年分)
- 東京科学大学 工学院 機械系 機械系 専門科目の解答PDF(収録5年分)
- 東京科学大学 工学院 電気電子系 電気電子系 専門科目の解答PDF(収録6年分)
- 東京科学大学 情報理工学院 情報工学系 専門科目(情報工学)の解答PDF(収録5年分)
- 東京科学大学 情報理工学院 数理・計算科学系 専門科目(数理・計算科学)の解答PDF(収録5年分)
東京科学大学の解答PDF一覧で、東京科学大学の研究科・専攻・科目をまとめて確認できます。