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科学大・旧東工大 物理院試の過去問解答|2026年度・全47小問

東京科学大(旧東工大)物理学系の2025年実施・2026年度過去問を全47小問解説。分子振動、水素原子の摂動、物理数学、半導体・回路、電磁気、格子振動を途中式と図で説明。公式PDFと販売解説集の収録年度も案内します。

最終更新: 2026/10/17

東京科学大学の学院・系別・公式過去問を見る

2025年実施・2026年度入学の東京科学大学物理学系の院試過去問を、午前3題・午後3題、全47小問解説しています。分子の振動波形、有限サイズの原子核、ホール電圧の符号、回路の出力、磁気エネルギー、格子振動の比熱まで、途中式と図を掲載しました。解答・解説は院試Hubによるものです。

物理学系の公式一覧には2021〜2025年実施の問題と、2025年の出題意図があります。下の表から直接開けます。他の系を探している場合は、科学大の学院・系別の公式過去問へ進んでください。

物理学系の公式過去問・出題意図

物理学系の実施年別の公式PDF
実施年問題出題意図
2025年問題PDF出題意図PDF
2024年問題PDF—
2023年問題PDF—
2022年問題PDF—
2021年問題PDF—

2020年は筆答に代えて口述試験を実施したため、公式中央一覧に同年の問題はありません。2025年実施の問題は表紙に「2026 大修」とあり、院試hubの「2025年度」教材が扱う2024年実施問題とは異なります。

2025年実施は午前・午後それぞれ120分、3題必答

午前は9時30分〜11時30分、午後は13時30分〜15時30分で、各3題すべてに解答します。各回の解答用紙は3枚で、1題ごとに該当する用紙に記入します。公式PDFの1ページが午前の表紙、8ページが午後の表紙です。これから受験する回の時間・科目は、その回の募集要項でも確認してください。

2025年実施の出題意図に書かれていること

大学の出題意図は1ページで、午前3題・午後3題の評価対象を示しています。午前は分子振動の古典・解析力学、水素原子と摂動論、微分方程式・フーリエ変換・特殊関数。午後は半導体の測定と回路、電流と磁場の相互作用、格子振動の統計力学です。最終答や計算過程は載っていません。問題を解いた後は、式の結果に加え、使った法則や近似を説明できるか確認してください。

解説集の年度と公式実施年の対応

院試hubの教材年度公式問題の実施年
2025年度2024年実施
2024年度2023年実施
2023年度2022年実施
2022年度2021年実施
2020年度2019年実施

解説集は上の5回・30問を収録し、2025年実施問題の解答は含みません。例えば教材2025年度の無料解答例は、2024年実施の剛体コマの問題です。解説集の収録内容と見本で、手元の過去問と照合できます。

午前1:三原子分子の伸縮振動と屈曲振動

公式問題の2〜3ページを解きます。両端の原子Aの質量はmA、中央の原子Bの質量はmBです。変位は平衡位置から測り、初期変位はすべて0。以下では質量比q=mA/mBを使い、固有角振動数は元の記号でも示します。

(1)伸縮振動のラグランジアン

左のばねの伸びはx₂−x₁、右はx₃−x₂です。自然長ℓを含む原子間距離からℓを引くため、伸びの式にはℓが残りません。運動エネルギーから弾性エネルギーを引きます。

Lx=mA2(x˙12+x˙32)+mB2x˙22−k12[(x2−x1)2+(x3−x2)2].\begin{aligned}L_x={}&\frac{m_A}{2}(\dot x_1^2+\dot x_3^2)+\frac{m_B}{2}\dot x_2^2\\&-\frac{k_1}{2}\left[(x_2-x_1)^2+(x_3-x_2)^2\right].\end{aligned}

(2)重心固定から中央原子の変位を求める

平衡位置−ℓ、0、ℓの質量中心は原点です。重心が動かず、初期変位も0なので、変位の質量付きの和が0になります。

mAx1+mBx2+mAx3=0m_Ax_1+m_Bx_2+m_Ax_3=0
x2=−mAmB(x1+x3)=−q(x1+x3)x_2=-\frac{m_A}{m_B}(x_1+x_3)=-q(x_1+x_3)

(3)2つの基準振動と原子2・3の波形

(1)のラグランジアンから両端の運動方程式を求めます。中央の変位には(2)を代入します。

mAx¨1=−k1(x1−x2),mAx¨3=−k1(x3−x2).\begin{aligned}m_A\ddot x_1&=-k_1(x_1-x_2),\\m_A\ddot x_3&=-k_1(x_3-x_2).\end{aligned}

差u=x₁−x₃と和v=x₁+x₃を取ると、独立した2つの単振動に分かれます。

u¨+k1mAu=0,v¨+k1mA(1+2q)v=0.\begin{aligned}\ddot u+\frac{k_1}{m_A}u&=0,\\\ddot v+\frac{k_1}{m_A}(1+2q)v&=0.\end{aligned}

低い方の固有角振動数をω₁とします。v=0のモードでは両端が逆向きに動き、中央原子は静止します。

ω1=k1mA,(x1,x2,x3)∝(1,0,−1)\omega_1=\sqrt{\frac{k_1}{m_A}},\qquad (x_1,x_2,x_3)\propto(1,0,-1)

問題の波形はx₁=a sin(2πt/T₁)です。したがってx₂=0、x₃=−a sin(2πt/T₁)を描きます。

伸縮の低周波モード:中央は静止、両端は逆相原子1と3は同じ振幅で逆相。原子2は静止する。 波形は各原子の振幅で規格化し、横軸はそのモードの周期Tで割った時間。原子1A原子2B静止原子3A原子1の変位が正の瞬間の変位方向x₁/a1−1x₂/a1−1x₃/a1−10123t/T
伸縮の低周波モード:中央は静止、両端は逆相。q=mA/mBです。灰線が与えられたx₁/a、青線が0のx₂/a、緑線がx₃/aです。 矢印は方向を示し、長さで振幅比を表してはいません。

高い方のモードではu=0、つまり両端が同相です。重心を止めるため、中央原子が逆向きに動きます。

ω2=k1(1mA+2mB),(x1,x2,x3)∝(1,−2q,1).\begin{aligned}\omega_2&=\sqrt{k_1\left(\frac1{m_A}+\frac2{m_B}\right)},\\(x_1,x_2,x_3)&\propto(1,-2q,1).\end{aligned}
x2=−2qasin⁡2πtT2,x3=asin⁡2πtT2.\begin{aligned}x_2&=-2qa\sin\frac{2\pi t}{T_2},\\x_3&=a\sin\frac{2\pi t}{T_2}.\end{aligned}
伸縮の高周波モード:両端は同相、中央は逆相原子1と3は同相で同じ振幅。原子2は逆相で振幅が2q倍。qは原子AとBの質量比。 波形は各原子の振幅で規格化し、横軸はそのモードの周期Tで割った時間。原子1A原子2B原子3A原子1の変位が正の瞬間の変位方向x₁/a1−1x₂/(2qa)1−1x₃/a1−10123t/T
伸縮の高周波モード:両端は同相、中央は逆相。q=mA/mBです。中央原子の波形は振幅2qaで割って表示しています。実際の振幅比は1:2q:1です。 矢印は方向を示し、長さで振幅比を表してはいません。

T₁=2π/ω₁とT₂=2π/ω₂は異なります。図では各モードの周期で時間を割っています。重心が並進する周波数0のモードは、重心固定の条件によって除かれています。

(4)屈曲角δを変位で表す

3ページの原図の向きでは、左の角度δ₁は(y₁−y₂)/ℓ、右のδ₂は(y₃−y₂)/ℓです。微小角の一次まで取って足します。

δ=δ1+δ2=y1−2y2+y3ℓ\delta=\delta_1+\delta_2=\frac{y_1-2y_2+y_3}{\ell}

(5)重心も全体の回転も止める条件

重心固定からmA(y₁+y₃)+mB y₂=0です。また、平衡位置を使った一次の角運動量は、左端から−mAℓẏ₁、右端からmAℓẏ₃となります。中央原子の一次の寄与は0です。

Lz=mAℓ(y˙3−y˙1)=0L_z=m_A\ell(\dot y_3-\dot y_1)=0

よってy₃−y₁は定数です。初期変位が0なのでこの定数も0となり、次の関係が得られます。

y3=y1,y2=−2mAmBy1=−2qy1y_3=y_1,\qquad y_2=-\frac{2m_A}{m_B}y_1=-2qy_1

(6)屈曲振動のラグランジアン

(5)から全原子の運動エネルギーをy₁だけで表せます。屈曲角はδ=2(1+2q)y₁/ℓです。

Ky=mAy˙12+mB2(2qy˙1)2=mA(1+2q)y˙12,Vy=k2ℓ22δ2=2k2(1+2q)2y12.\begin{aligned}K_y&=m_A\dot y_1^2+\frac{m_B}{2}(2q\dot y_1)^2\\&=m_A(1+2q)\dot y_1^2,\\V_y&=\frac{k_2\ell^2}{2}\delta^2=2k_2(1+2q)^2y_1^2.\end{aligned}
Ly=mA(1+2q)y˙12−2k2(1+2q)2y12L_y=m_A(1+2q)\dot y_1^2-2k_2(1+2q)^2y_1^2

q=mA/mBを代入すれば、指定されたmA、mB、k₂、y₁、ẏ₁だけの式になります。

(7)屈曲振動の固有角振動数と波形

(6)のオイラー・ラグランジュ方程式を整理します。

2mA(1+2q)y¨1+4k2(1+2q)2y1=0,ω3=2k2(1mA+2mB).\begin{gathered}2m_A(1+2q)\ddot y_1+4k_2(1+2q)^2y_1=0,\\\omega_3=\sqrt{2k_2\left(\frac1{m_A}+\frac2{m_B}\right)}.\end{gathered}

指定されたy₁=b sin(2πt/T₃)に対して、原子2は逆相、原子3は同相です。

y2=−2qbsin⁡2πtT3,y3=bsin⁡2πtT3,T3=2πω3.\begin{aligned}y_2&=-2qb\sin\frac{2\pi t}{T_3},\\y_3&=b\sin\frac{2\pi t}{T_3},\qquad T_3=\frac{2\pi}{\omega_3}.\end{aligned}
屈曲モード:両端は同相、中央は逆相原子1と3は同相で同じ振幅。原子2は逆相で振幅が2q倍。qは原子AとBの質量比。 波形は各原子の振幅で規格化し、横軸はそのモードの周期Tで割った時間。原子1A原子2B原子3A原子1の変位が正の瞬間の変位方向y₁/b1−1y₂/(2qb)1−1y₃/b1−10123t/T
屈曲モード:両端は同相、中央は逆相。q=mA/mBです。中央原子の波形は振幅2qbで割って表示しています。実際の振幅比は1:2q:1です。 矢印は方向を示し、長さで振幅比を表してはいません。

これは問題で指定された平面内の屈曲1モードです。分子全体の回転や並進を、振動モードとして追加しません。

午前2:水素原子と原子核の有限サイズによる摂動

公式問題の4〜5ページを解きます。式を短くするためγ=e²/(4πε₀)と置きます。原子核は固定されているので、mは問題が指定する電子の質量です。

(1)s軌道の動径方程式

s軌道は角度に依存しないため、ラプラシアンの角度微分は0です。Ψns=Rns/√(4π)を代入すると共通の定数が消えます。

−ℏ22m1r2ddr(r2dRnsdr)−γrRns=ERns-\frac{\hbar^2}{2m}\frac1{r^2}\frac{d}{dr}\left(r^2\frac{dR_{ns}}{dr}\right)-\frac{\gamma}{r}R_{ns}=ER_{ns}

(2)1s軌道の長さa

R₁s=C exp(−r/a)を微分するとR′=−R/a、R″=R/a²です。動径方程式をRで割ります。

−ℏ22ma2+1r(ℏ2ma−γ)=E1-\frac{\hbar^2}{2ma^2}+\frac1r\left(\frac{\hbar^2}{ma}-\gamma\right)=E_1

E₁はrによらない定数なので、1/rの係数を0にします。

a=ℏ2mγ=4πε0ℏ2me2a=\frac{\hbar^2}{m\gamma}=\frac{4\pi\varepsilon_0\hbar^2}{me^2}

(3)1s軌道のエネルギー

(2)の式の定数項が固有エネルギーです。

E1=−ℏ22ma2=−γ2a=−e28πε0aE_1=-\frac{\hbar^2}{2ma^2}=-\frac{\gamma}{2a}=-\frac{e^2}{8\pi\varepsilon_0a}

(4)平均二乗半径

まず動径関数を規格化します。全体の位相を選んでCを正とします。

1=C2∫0∞r2e−2r/a dr=C2a34,C=2a3/21=C^2\int_0^\infty r^2e^{-2r/a}\,dr=C^2\frac{a^3}{4},\qquad C=\frac2{a^{3/2}}

平均二乗半径では、体積要素のr²に加えて観測量r²を掛けます。

⟨r2⟩=4a3∫0∞r4e−2r/a dr=3a2\langle r^2\rangle=\frac4{a^3}\int_0^\infty r^4e^{-2r/a}\,dr=3a^2

(5)一様に帯電した球によるポテンシャル

半径Rの原子核の内部では、ガウスの法則から電場の大きさはer/(4πε₀R³)です。外部では点電荷と同じになります。求めるVは電子のポテンシャルエネルギーなので、電位に電子の電荷−eを掛けます。

V(r)={−γ2R(3−r2R2),0≤r≤R,−γr,r≥R.V(r)=\begin{cases}-\dfrac{\gamma}{2R}\left(3-\dfrac{r^2}{R^2}\right),&0\le r\le R,\\[5pt]-\dfrac{\gamma}{r},&r\ge R.\end{cases}

特徴的な点は(0,−3γ/(2R))と(R,−γ/R)です。原点では傾きが0、r=Rでは値と傾きがつながり、無限遠で0へ近づきます。

有限サイズの原子核と点電荷のポテンシャル横軸r/R、縦軸VR/γ。有限の核では原点でマイナス3/2、r/Rが1でマイナス1となり、外側は点電荷の曲線と一致する。点電荷のポテンシャルは原点で負の無限大へ発散する。VR/γr/R0−1−3/21有限の核点電荷
γ=e²/(4πε₀)です。青線は核内で放物線となり、r=Rで灰破線の−γ/rに滑らかにつながります。核内で青線の方が上にあるため、一次の補正ΔEは正です。

(6)一次のエネルギー補正

摂動ΔVはr≥Rで0です。R≪aなので、核内で動径関数R₁s(r)を原点での値に置き換えると、求める最低次の項が得られます。

ΔV(r)=γ(1r−32R+r22R3)(0<r<R)\Delta V(r)=\gamma\left(\frac1r-\frac3{2R}+\frac{r^2}{2R^3}\right)\quad(0<r<R)
ΔE=∫0Rr2∣R1s(r)∣2ΔV(r) dr≃4γa3∫0R(r−3r22R+r42R3)dr=2γR25a3.\begin{aligned}\Delta E&=\int_0^R r^2|R_{1s}(r)|^2\Delta V(r)\,dr\\&\simeq\frac{4\gamma}{a^3}\int_0^R\left(r-\frac{3r^2}{2R}+\frac{r^4}{2R^3}\right)dr\\&=\frac{2\gamma R^2}{5a^3}.\end{aligned}
ΔEE1=−45(Ra)2+O((R/a)3)\frac{\Delta E}{E_1}=-\frac45\left(\frac Ra\right)^2+O\left((R/a)^3\right)

比は負ですが、ΔE自体は正です。分母E₁が負だからです。核の電荷を広げると中心付近の引力のポテンシャルが浅くなり、電子のエネルギーが上がります。

(7)波動関数に混ざるns軌道の係数

設問が与えた離散的なns状態への展開について、非縮退の一次摂動の係数を使います。動径関数は実数に選びます。

cn=⟨ns∣ΔV∣1s⟩E1−En(n≥2)c_n=\frac{\langle ns|\Delta V|1s\rangle}{E_1-E_n}\qquad(n\ge2)

核内の2つの動径関数を原点での値に置き換えます。角度積分は1で、動径積分は(6)と同じです。

⟨ns∣ΔV∣1s⟩≃Rns(0)R1s(0)γR210,E1−En=−γ2a(1−1n2).\begin{aligned}\langle ns|\Delta V|1s\rangle&\simeq R_{ns}(0)R_{1s}(0)\frac{\gamma R^2}{10},\\E_1-E_n&=-\frac{\gamma}{2a}\left(1-\frac1{n^2}\right).\end{aligned}
cn≃−2R2Rns(0)5a (1−1/n2)c_n\simeq-\frac{2R^2R_{ns}(0)}{5\sqrt a\,(1-1/n^2)}

Rns(0)の次元は長さの−3/2乗なので、cₙは無次元です。この係数は、設問で指定された核内の定数近似の範囲での答えです。

午前3:微分方程式、フーリエ変換、エルミート多項式

公式問題の6ページを解きます。フーリエ変換の規約を途中で変えず、矩形関数の極限では面積も確認します。

(1)強制項sin 3xを持つ微分方程式

同次方程式y″+2y=0の解に、特解A sin 3xを足します。代入すると(−9+2)A=1なのでA=−1/7です。

y=C1cos⁡(2x)+C2sin⁡(2x)−17sin⁡3xy=C_1\cos(\sqrt2x)+C_2\sin(\sqrt2x)-\frac17\sin3x

初期条件は指定されていないため、C₁、C₂は任意定数です。

(2)log xを含む広義積分

x=2tと置き、log 2を含む部分とlog tの部分に分けます。

I=∫0∞log⁡xx2+4 dx=12[log⁡2∫0∞dt1+t2+∫0∞log⁡t1+t2 dt].\begin{aligned}I&=\int_0^\infty\frac{\log x}{x^2+4}\,dx\\&=\frac12\left[\log2\int_0^\infty\frac{dt}{1+t^2}+\int_0^\infty\frac{\log t}{1+t^2}\,dt\right].\end{aligned}

最後の積分をJとすると、t=1/uでJ=−JとなりJ=0です。0付近のlog tも、無限遠の(log t)/t²も積分可能なので、この変数変換が使えます。

I=π4log⁡2I=\frac{\pi}{4}\log2

(3)xˣyʸzᶻの最小値

対数を取ってx log x+y log y+z log zを最小にします。関数φ(t)=t log tはt>0でφ″(t)=1/t>0なので、凸性から次の不等式を得ます。

xlog⁡x+ylog⁡y+zlog⁡z≥3(13log⁡13)=log⁡13.\begin{aligned}x\log x+y\log y+z\log z&\ge3\left(\frac13\log\frac13\right)\\&=\log\frac13.\end{aligned}

等号はx=y=z=1/3のときです。指数関数は単調増加なので、求める最小値は1/3です。

min⁡x+y+z=1, x,y,z>0xxyyzz=13\min_{x+y+z=1,\ x,y,z>0}x^xy^yz^z=\frac13

(4)矩形関数のフーリエ変換

ここでは次の規約を使います。

f^(k)=∫−∞∞f(x)e−ikx dx,f(x)=12π∫−∞∞f^(k)eikx dk.\begin{aligned}\widehat f(k)&=\int_{-\infty}^{\infty}f(x)e^{-ikx}\,dx,\\f(x)&=\frac1{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\widehat f(k)e^{ikx}\,dk.\end{aligned}

fは−aからaで高さbなので、その区間だけを積分します。

f^(k)=b∫−aae−ikx dx=2bsin⁡(ak)k\widehat f(k)=b\int_{-a}^{a}e^{-ikx}\,dx=\frac{2b\sin(ak)}k

k=0で見かけ上0/0になりますが、極限は2abです。不連続点x=±aでは、通常の逆変換は左右の値の平均b/2を返します。以下の極限には端点での値の違いは影響しません。

(5)ab=1、a→0の極限

この矩形の面積は2ab=2です。したがって極限は重み2のデルタ関数になります。b=1/aを(4)へ代入すると、各kでフーリエ変換が2に近づきます。

f^a(k)=2sin⁡(ak)ak⟶2\widehat f_a(k)=\frac{2\sin(ak)}{ak}\longrightarrow2
fa(x)⟶2δ(x)=1π∫−∞∞eikx dkf_a(x)\longrightarrow2\delta(x)=\frac1\pi\int_{-\infty}^{\infty}e^{ikx}\,dk

この積分表示は超関数としての意味です。通常の広義積分として収束する、という意味ではありません。滑らかな試験関数φを掛けると、次の極限で重み2を確認できます。

∫−∞∞fa(x)φ(x) dx=1a∫−aaφ(x) dx⟶2φ(0)\int_{-\infty}^{\infty}f_a(x)\varphi(x)\,dx=\frac1a\int_{-a}^{a}\varphi(x)\,dx\longrightarrow2\varphi(0)

(6)H₀、H₁、H₂

母関数exp(−z²+2zx)をzの2次まで展開します。

e−z2+2zx=1+2xz+(2x2−1)z2+O(z3)e^{-z^2+2zx}=1+2xz+(2x^2-1)z^2+O(z^3)

母関数の係数はHₙ/n!なので、z²の係数には2!を掛けます。

H0=1,H1=2x,H2=4x2−2H_0=1,\qquad H_1=2x,\qquad H_2=4x^2-2

(7)エルミート多項式の漸化式

母関数をzで微分すると∂g/∂z=(2x−2z)gです。両辺を級数で表し、zⁿ/n!の係数を比較します。

∑n=0∞Hn+1znn!=(2x−2z)∑n=0∞Hnznn!\sum_{n=0}^{\infty}H_{n+1}\frac{z^n}{n!}=(2x-2z)\sum_{n=0}^{\infty}H_n\frac{z^n}{n!}
Hn+1(x)=2xHn(x)−2nHn−1(x)(n≥1)H_{n+1}(x)=2xH_n(x)-2nH_{n-1}(x)\qquad(n\ge1)

n=1を入れるとH₂=2x·2x−2=4x²−2となり、(6)と一致します。

午後1:半導体の測定、論理回路、反転増幅器

公式PDFの9〜12ページ、冊子の午後2〜5ページを解きます。ホール電圧のプラス・マイナス端子と、フリップフロップの入力段の反転を確認してから計算します。

(1)4端子法の利点

電流を流す端子と、電圧を測る端子を分けることで、リード線や電流端子の接触抵抗による電圧降下を測定値から除きやすくなります。電圧計の入力抵抗が十分大きければ電圧端子にはほとんど電流が流れず、そのリード線・接触部の電圧降下も小さくなります。試料の電圧端子間の抵抗を、2端子法より正確に評価できます。

(2)運動方程式、電流、ホール電圧

キャリアの電荷は符号を含むqです。緩和時間τを用いた運動方程式は次のとおりです。

m∗dvdt=qE+qv×B−m∗vτm^*\frac{d\boldsymbol v}{dt}=q\boldsymbol E+q\boldsymbol v\times\boldsymbol B-\frac{m^*\boldsymbol v}{\tau}

空欄は、アがm* dv/dt、イがq、ウがq v×Bです。電流の断面積は幅Wと厚さdの積なので、エはnqvₓWdです。

I=nqvxWdI=nqv_xWd

定常状態でy方向の電流が流れないとき、vᵧ=0です。ローレンツ力のy成分は−qvₓBzなので、Eᵧ=vₓBzになります。図2の電圧計は手前のyが小さい側をプラス、奥をマイナスに取っています。よってVᵧ=EᵧWです。

Vy=EyW=vxBzW=IBznqdV_y=E_yW=v_xB_zW=\frac{IB_z}{nqd}

これが空欄オです。端子の向きを逆に取ればVᵧの符号も逆になるため、公式の形だけでキャリアの符号を決めません。

ホール電圧の端子配置と測定グラフ試料を上から見る。電流はxの正方向。磁場はzの正方向で紙面手前。yの小さい側が電圧計のプラス端子、大きい側がマイナス端子。測定値は磁束密度1テスラでマイナス500マイクロボルト。試料の上面:Bzは紙面手前 ⊙I−+xyVᵧ = 下側 − 上側Vᵧ [μV]Bz [T]0−250−50000.51.0傾き −500 μV/T
上は原図の端子配置を上面から整理した図です。Vᵧ=EᵧWの符号を使うと、下の負の傾きは電子によるN型伝導を示します。

(3)抵抗率は5.0 Ω·cm

電圧端子間の抵抗はVₓ/I=200 Ωです。抵抗率ρは抵抗に断面積を掛け、端子間距離Lで割ります。cmに統一するとW=0.10 cm、d=0.050 cm、L=0.20 cmです。

ρ=VxIWdL=2.0×10−310×10−60.10×0.0500.20=5.0 Ω⋅cm.\begin{aligned}\rho&=\frac{V_x}{I}\frac{Wd}{L}\\&=\frac{2.0\times10^{-3}}{10\times10^{-6}}\frac{0.10\times0.050}{0.20}\\&=5.0\ \Omega\cdot\mathrm{cm}.\end{aligned}

(4)N型、キャリア密度2.5×10¹⁶ cm⁻³

図3はBz=1.0 TでVᵧ=−500 μVとなる直線です。傾きが負なので、(2)の端子配置ではq<0、電子が主なキャリアとなるN型です。今度の測定電流は1.0 mAで、(3)の10 μAとは異なります。

∣dVydBz∣=5.0×10−4 V/T\left|\frac{dV_y}{dB_z}\right|=5.0\times10^{-4}\ \mathrm{V/T}
n=Ied ∣dVy/dBz∣=1.0×10−3(1.6×10−19)(5.0×10−4)(5.0×10−4)=2.5×1022 m−3=2.5×1016 cm−3.\begin{aligned}n&=\frac{I}{ed\,|dV_y/dB_z|}\\&=\frac{1.0\times10^{-3}}{(1.6\times10^{-19})(5.0\times10^{-4})(5.0\times10^{-4})}\\&=2.5\times10^{22}\ \mathrm{m^{-3}}=2.5\times10^{16}\ \mathrm{cm^{-3}}.\end{aligned}

この計算は設問の単一キャリアのモデルを使っています。

(5)log n、T⁻¹、領域III

カはlog n、キはT⁻¹、クはIIIです。熱励起の因子exp(−A/T)は、対数を取ると1/Tに対して直線になります。右側ほど1/Tが大きく低温なので、ドナーからの励起を調べるのは低温の凍結領域IIIです。

IIはドナーがほぼ電離し終えた領域、Iは高温で価電子帯から伝導帯への励起が増える領域です。励起エネルギーを数値に換算する場合は、対数の底や温度依存の前因子もそろえる必要があります。

(6)真理値表は1、0、0、1

図7の上の枝はAND、下はNORです。最後にORを取るので、入力が一致すると1になるXNOR回路です。

X=(A∧B)∨¬(A∨B)=(A∧B)∨(¬A∧¬B).\begin{aligned}X&=(A\land B)\lor\neg(A\lor B)\\&=(A\land B)\lor(\neg A\land\neg B).\end{aligned}
ABX
001
010
100
111

(7)RSフリップフロップの出力波形

入力側のNANDは2つの入力をつないでいるため、SとRをそれぞれ反転します。交差結合したNANDに入るのは¬Sと¬Rです。

X=¬(¬S∧Y),Y=¬(¬R∧X)X=\neg(\neg S\land Y),\qquad Y=\neg(\neg R\land X)

S=1、R=0でX=1、Y=0にセットされ、S=0、R=1でX=0、Y=1にリセットされます。S=R=0に戻っても直前の状態を保ちます。初期状態X=0、Y=1から、最初のSの立ち上がり、Rの立ち上がり、2回目のSの立ち上がりの順で出力が切り替わります。

RSフリップフロップの入力と出力波形Sはt1からt2、t5からt6で1。Rはt3からt4で1。Xは初め0で、t1で1、t3で0、t5で1となる。Yはその反対。入力が0へ戻っても出力は保持される。S10R10X10Y10t1t2t3t4t5t6時間
原図の各入力変化をt₁〜t₆と呼んでいます。XとYが変化するのはt₁、t₃、t₅です。t₂、t₄、t₆で入力が下がっても、その時点の出力が保たれます。

図の入力にはS=R=1の区間はありません。両方を1にするとX=Y=1となり、その後の同時解除では最終状態が確定しないため、通常の保持状態としては扱いません。

(8)反転増幅器の増幅率

理想オペアンプが負帰還で動作すると、接地された非反転入力と反転入力の電位は等しく0です。入力端子には電流が流れないため、R₁を流れた電流がそのままR₂へ流れます。

EinR1=−EoutR2,EoutEin=−R2R1\frac{E_{\mathrm{in}}}{R_1}=\frac{-E_{\mathrm{out}}}{R_2},\qquad \frac{E_{\mathrm{out}}}{E_{\mathrm{in}}}=-\frac{R_2}{R_1}

午後2:結合コイルの起電力と磁場から受ける力

公式PDFの13〜16ページ、冊子の午後6〜9ページを解きます。ソレノイドは十分長いとし、端の磁場の乱れを無視します。

(1)ソレノイド内の磁束密度

単位長さ当たりn回巻きなので、長さℓにnℓ回あります。アンペールの法則を内部と外部にまたがる長方形の経路に適用します。

Bℓ=μ0(nℓ)I,B=μ0nIB\ell=\mu_0(n\ell)I,\qquad B=\mu_0nI

(2)自己インダクタンス

1巻きを貫く磁束はBSです。全巻数nℓを掛けた鎖交磁束λを電流Iで割ります。

λ=(nℓ)BS=μ0n2SℓI,L=μ0n2Sℓ\lambda=(n\ell)BS=\mu_0n^2S\ell I,\qquad L=\mu_0n^2S\ell

(3)蓄えられるエネルギー

電流を0からIまで増やす間に電源がする仕事を積分します。ここではLが電流によらないためdλ=L dIです。

E=∫0Ii dλ=∫0ILi di=12LI2E=\int_0^I i\,d\lambda=\int_0^I Li\,di=\frac12LI^2

(4)内側コイルに生じる起電力

内側コイルが拾う磁束の断面積はS′です。巻数は同じなので、相互インダクタンスMは次の値です。

M=μ0n2S′ℓ=S′SLM=\mu_0n^2S'\ell=\frac{S'}S L

図では同じ巻き方向で、正の電流はb→aです。一方、求める電圧はcの電位からdの電位を引いたものです。同じ向きの端子電圧Vd−VcがM dI/dtとなるため、指定されたV′は逆符号になります。

V′(t)=Vc−Vd=−S′SL dI(t)dtV'(t)=V_c-V_d=-\frac{S'}S L\,\frac{dI(t)}{dt}

(5)並列接続したときの自己インダクタンス

外側・内側の自己インダクタンスをL、L′とすると、L′=(S′/S)L=Mです。今度は両枝の電流を左端a・cから右端b・dへそろえて取ります。共通の端子電圧をVとすると、

V=LI˙1+MI˙2,V=MI˙1+L′I˙2.\begin{aligned}V&=L\dot I_1+M\dot I_2,\\V&=M\dot I_1+L'\dot I_2.\end{aligned}

差を取ると(L−M)İ₁=0です。S′<Sなのでİ₁=0となり、変化する電流は内側の枝に流れます。全電流の変化はİ₂なので、合成インダクタンスはL′です。

Leq=S′SLL_{\mathrm{eq}}=\frac{S'}S L

一般式(LL′−M²)/(L+L′−2M)へ代入しても同じ結果です。磁気的な結合を無視した通常の並列合成LL′/(L+L′)は使えません。

(6)非線形磁性体の磁気エネルギー

H=nI、B=κμ₀H+αH³です。電流が作る鎖交磁束λ=nℓSBを使い、電源の仕事I dλを積分します。

E~=∫0Ii dλdi di=nℓS∫0Ii(κμ0n+3αn3i2)di=κμ0n2SℓI22+34αSℓn4I4.\begin{aligned}\widetilde E&=\int_0^I i\,\frac{d\lambda}{di}\,di\\&=n\ell S\int_0^I i\left(\kappa\mu_0n+3\alpha n^3i^2\right)di\\&=\frac{\kappa\mu_0n^2S\ell I^2}{2}+\frac34\alpha S\ell n^4I^4.\end{aligned}
G=34Sℓn4I4G=\frac34S\ell n^4I^4

磁気エネルギー密度は∫H dBです。∫B dHは磁気随伴エネルギーで、非線形の場合は値が異なります。この取り違えをすると、最後の係数を3/4ではなく1/4にしてしまいます。

(7)外部磁場Bが満たす方程式

真空中の静的な磁場であり、BにはソレノイドZ自身の電流が作る磁場を含めません。したがって、この領域のBには電流源がなく、次の2式が成り立ちます。

∇⋅B=0,∇×B=0\boldsymbol\nabla\cdot\boldsymbol B=0,\qquad \boldsymbol\nabla\times\boldsymbol B=\boldsymbol0

後者の右辺にZの電流密度を入れると、問題が除外した自己磁場を混ぜることになります。

(8)1本の回路が受ける力の線積分

電流の向きに取った線素d rが受ける力はI d r×Bです。回路全体で足します。

f(z)=I∮Czdr×B\boldsymbol f(z)=I\oint_{C_z}d\boldsymbol r\times\boldsymbol B

(9)面積分K(z)を使った力の表式

基本ベクトルeᵢを使って成分を取り、スカラー三重積でd rを先頭へ移します。その後、設問のグリーンの定理を使います。

fi(z)=I∮Czdr⋅(B×ei)=I∫Szez⋅[∇×(B×ei)]dx dy.\begin{aligned}f_i(z)&=I\oint_{C_z}d\boldsymbol r\cdot(\boldsymbol B\times\boldsymbol e_i)\\&=I\int_{S_z}\boldsymbol e_z\cdot\left[\boldsymbol\nabla\times(\boldsymbol B\times\boldsymbol e_i)\right]dx\,dy.\end{aligned}

eᵢが一定でdiv B=0なので、角括弧内は(∂/∂xᵢ)Bです。またcurl B=0から∂Bz/∂xᵢ=∂Bᵢ/∂zとなります。

fi(z)=I∫Sz∂Bz∂xi dx dy=I∫Sz∂Bi∂z dx dy=IdKi(z)dz.\begin{aligned}f_i(z)&=I\int_{S_z}\frac{\partial B_z}{\partial x_i}\,dx\,dy\\&=I\int_{S_z}\frac{\partial B_i}{\partial z}\,dx\,dy=I\frac{dK_i(z)}{dz}.\end{aligned}

各断面は同じ形のままz方向へ移動するため、xy平面の積分範囲を固定して微分できます。

f(z)=IdK(z)dz\boldsymbol f(z)=I\frac{d\boldsymbol K(z)}{dz}

(10)N本の回路全体が受ける力

Nが十分大きいので、単位長さ当たりの回路数をN/(z₂−z₁)として和を積分に置き換えます。

F≃NIz2−z1∫z1z2dKdz dz=NIz2−z1[K(z2)−K(z1)].\begin{aligned}\boldsymbol F&\simeq\frac{NI}{z_2-z_1}\int_{z_1}^{z_2}\frac{d\boldsymbol K}{dz}\,dz\\&=\frac{NI}{z_2-z_1}\left[\boldsymbol K(z_2)-\boldsymbol K(z_1)\right].\end{aligned}

一様な外部磁場ならK(z₂)=K(z₁)で合力は0です。この式は設問の密な巻線の連続近似で、有限本数の端点の差は無視しています。

午後3:一次元格子の光学・音響フォノンと比熱

公式PDFの17〜19ページ、冊子の午後10〜12ページを解きます。原子2個で1単位胞、全体でN単位胞です。以下の自由エネルギーと比熱は、すべて単位胞当たりで答えます。

(1)光学フォノンの自由エネルギー

1モードの準位はℏω₀(n+1/2)です。β=1/(kBT)として分配関数を等比級数で求めます。

z0=∑n=0∞e−βℏω0(n+1/2)=e−βℏω0/21−e−βℏω0z_0=\sum_{n=0}^{\infty}e^{-\beta\hbar\omega_0(n+1/2)}=\frac{e^{-\beta\hbar\omega_0/2}}{1-e^{-\beta\hbar\omega_0}}

光学枝はNモードあるので全体の分配関数はz₀ᴺです。−kBT log(z₀ᴺ)をNで割ります。

FoptN=ℏω02+kBTlog⁡(1−e−ℏω0/(kBT))\frac{F_{\mathrm{opt}}}{N}=\frac{\hbar\omega_0}{2}+k_BT\log\left(1-e^{-\hbar\omega_0/(k_BT)}\right)

(2)平均フォノン数

r=exp(−βℏω₀)と置くと、∑n rⁿ=r/(1−r)²、∑rⁿ=1/(1−r)です。共通の零点エネルギーの因子は比で消えます。

⟨n2,k⟩=1eℏω0/(kBT)−1\langle n_{2,k}\rangle=\frac1{e^{\hbar\omega_0/(k_BT)}-1}

(3)光学フォノンの比熱

単位胞当たりのエネルギーはℏω₀(1/2+⟨n⟩)です。Tで微分し、x₀=ℏω₀/(kBT)を使って整理します。

Copt=kBx02ex0(ex0−1)2,x0=ℏω0kBTC_{\mathrm{opt}}=k_Bx_0^2\frac{e^{x_0}}{(e^{x_0}-1)^2},\qquad x_0=\frac{\hbar\omega_0}{k_BT}

零点エネルギーℏω₀/2は温度によらないため、比熱には寄与しません。

(4)高温ではkB

kBT≫ℏω₀ならx₀≪1で、exp x₀−1≃x₀です。(3)のx₀²が分母と打ち消し合います。

Copt⟶kBC_{\mathrm{opt}}\longrightarrow k_B

(5)音響フォノンの状態密度

ω=s|k|なので、正負2つの波数が同じ正のωに対応します。波数和を積分へ置き換えます。

D(ω)=a2π∫−π/aπ/aδ(ω−s∣k∣) dkD(\omega)=\frac{a}{2\pi}\int_{-\pi/a}^{\pi/a}\delta(\omega-s|k|)\,dk

2つの根k=±ω/sから、それぞれ1/sが出ます。上限をωD=πs/aと書くと、

D(ω)=aπsΘ(πsa−ω)(ω≥0)D(\omega)=\frac{a}{\pi s}\Theta\left(\frac{\pi s}{a}-\omega\right)\qquad(\omega\ge0)

∫₀∞D(ω)dω=1なので、音響枝は単位胞当たり1モードです。階段関数の端点での値はこの積分に影響しません。

(6)音響枝の高温比熱

kBT≫ℏωDなら、音響枝の各モードがそれぞれkBの比熱を持ちます。状態密度の積分が1なので、

Cac⟶kB∫0ωDD(ω) dω=kBC_{\mathrm{ac}}\longrightarrow k_B\int_0^{\omega_D}D(\omega)\,d\omega=k_B

この温度条件だけでは、より高い周波数ω₀の光学枝まで高温極限に達したとは限りません。

(7)低温ではTに比例する

温度に依存する音響枝のエネルギーを積分します。kBT≪ℏωDなら上限を無限大に延ばせます。x=ℏω/(kBT)と置くと、設問の積分公式が使えます。

Uac,thermalN≃aπs∫0∞ℏωeℏω/(kBT)−1 dω=a(kBT)2πsℏ∫0∞xex−1 dx=πakB26ℏsT2.\begin{aligned}\frac{U_{\mathrm{ac,thermal}}}{N}&\simeq\frac{a}{\pi s}\int_0^\infty\frac{\hbar\omega}{e^{\hbar\omega/(k_BT)}-1}\,d\omega\\&=\frac{a(k_BT)^2}{\pi s\hbar}\int_0^\infty\frac{x}{e^x-1}\,dx\\&=\frac{\pi a k_B^2}{6\hbar s}T^2.\end{aligned}
Cac≃πakB23ℏsTC_{\mathrm{ac}}\simeq\frac{\pi a k_B^2}{3\hbar s}T

三次元のT³則をそのまま使うと誤りです。ここでは一次元の状態密度が一定なのでTに比例します。波数を連続とみなすには、有限の鎖ではモード間隔2πℏs/(aN)よりkBTが十分大きい範囲を考えます。

(8)選択肢は(b)

低温の光学枝はCopt≃kB x₀²exp(−x₀)と指数関数的に小さく、合計比熱は音響枝によるT比例で立ち上がります。一方、kBT≫ℏω₀の高温では、光学枝と音響枝からそれぞれkBずつ寄与します。

C≃πakB23ℏsT(低温),C⟶2kB(高温).\begin{aligned}C&\simeq\frac{\pi a k_B^2}{3\hbar s}T&&(\text{低温}),\\C&\longrightarrow2k_B&&(\text{高温}).\end{aligned}

原点で有限の正の傾きを持ち、高温で水平に飽和する(b)を選びます。具体的な曲がり方はω₀/ωDによって変わります。

光学・音響フォノンの比熱と低温部の拡大単位胞当たりの合計比熱は低温で温度に比例して立ち上がり、高温で2kBへ近づく。音響と光学の各枝は高温でkBに近づく。例では光学フォノンの温度尺度が音響の上限の4倍。C/kB210T/ΘD02468合計音響光学低温部を拡大00.400.1T/ΘD
ΘD=ℏπs/(akB)です。図はω₀=4πs/aとした例で、問題の数値条件ではありません。下の灰破線は低温の接線C/kB=(π²/3)T/ΘDです。原点の傾きと高温の2kBへの飽和が、選択肢(b)を判断する条件です。

以下の分析は2019・2021〜2024年実施の30問を扱います。物理数学と実験・計測も含め、座標、保存則、境界条件、分配関数、単位換算を答案に書く練習に使ってください。

2019・2021〜2024年実施の出題分野

解説集に収録した5回・各6問を、出題分野と復習する論点で整理しました。表の年度は上の対応表と同じ教材年度です。

教材年度出題分野重い分野準備への示唆
2025剛体コマの歳差と章動、量子統計とボース凝縮、線形代数・複素積分・ルジャンドル多項式、波・計測回路・天体・真空、静電場と一様電磁場中の荷電粒子、一次元量子力学。剛体、量子統計、物理数学、実験小問。最後の総合演習向き。オイラー角、BECの収束条件、特殊関数、実験スケールを同じ日に処理する練習に使う。
2024剛体球の弾性衝突、同軸ケーブル、線形代数・微分方程式・フーリエ積分、一次元束縛状態と三準位近似、吸着平衡と三準位固体、実験物理の小問。衝突、電磁気、フーリエ解析、統計熱力学。境界条件と自由エネルギーが崩れる年度。保存則を置く問題と、分配関数・化学ポテンシャルから始める問題を分ける。
2023磁場中の帯電剛体、導体中の電磁波、複素関数・線形代数・ベクトル解析、ランダウ準位、イジングスピンの熱力学、放射線計測。電磁気、量子磁場、統計、検出器。電磁場と量子・統計の横断に向く。ゲージ、境界条件、縮退度、吸収係数、電荷量換算を答案に残す練習をする。
2022サイクロイド上の運動、静電場と回転双極子の放射、ヘルムホルツ方程式と波動方程式のグリーン関数、円環上の量子粒子、フェルミ粒子と白色矮星、真空技術と熱電子放出。解析力学、放射、グリーン関数、量子統計、真空。入口年度として有用。曲線座標、Green関数、境界条件、フェルミ縮退、真空計とSchottky効果を章単位で点検する。
2020中心力と軌道遷移、静電場と誘電体、調和振動子と撃力、行列とラプラス変換、アインシュタイン模型、電磁波検出器。古典力学、電磁気、物理数学、熱統計、計測。最初に解く年度として使いやすい。標準4力と線形代数・ラプラス変換・検出器が一通り出るため、自分の穴が見える。

必答3題の解く順番を決める

2025年実施の本番形式では、午前・午後とも3題必答です。選ぶのは解く順番で、苦手分野の大問を丸ごと捨てる方式ではありません。各問の最初に置く式を確かめ、解ける小問から進めます。力学なら座標と保存量、電磁気なら境界条件と向き、物理数学なら方程式と正規化、量子ならハミルトニアン、統計なら分配関数、実験なら単位と測定原理を確認してください。

最初に読む保留する避ける条件
2020中心力、2024同軸ケーブル、2023イジング、2022真空、2025静電場のように、式を置く入口が明確な問題。2025剛体コマ、2024フーリエ積分、2022Green関数のように、計算量はあるが初手を置ける問題。オイラー角、特殊関数、放射線計測、実験回路で用語だけ反応し、座標・単位・境界条件が書けない状態。

特に注意したいのは実験物理です。短答に見えて、真空の圧力レンジ、PMTの電荷換算、放射線の相互作用、計測回路の時定数を、数値の桁まで扱います。後回しにしてもよい分野ではなく、最初に「単位換算なら取れる」「装置名だけなら危ない」と判断する対象です。

優先度を下げてよいこと

研究室紹介を広く読むこと、出題の意図の文言を覚えること、特殊な物理トピックの名前だけを増やすことは、過去問演習の初期段階では優先度を下げて構いません。30問で繰り返し効いているのは、初見の小問でも保存則、境界条件、分配関数、単位換算へ戻る力です。

一方で、物理数学と実験物理を捨てる戦略は危険です。物理数学は5年すべてに出ており、実験・計測も真空、放射線、検出器、回路、天体・波動として毎年のように顔を出します。得点源にしない場合でも、最初の一行と代表的な検算だけは持っておくべきです。

本番形式では3題を120分で練習する

2025年実施の問題で時間配分を試すときは、午前3題または午後3題を120分で解きます。均等なら1題40分ですが、計算量は同じではありません。途中で止まった小問に時間を使い切らず、他の大問の解ける部分を確保してください。終了後は、時間が足りなかった箇所と、法則・計算方法が分からなかった箇所を分けて復習します。1問ずつ学ぶ練習と、本番の時間内に3題を処理する練習を分けると課題が見えます。

年度順にやるなら、2020と2022で入口を作り、2023と2024で電磁気・量子・統計・実験の穴を潰し、2025を総合演習に回します。分野別に切るなら、物理数学5問、実験5問、統計5問という横断練習を入れると、年度ごとのばらつきに振り回されにくくなります。

併願先の過去問を確認する

地球惑星科学・数学・電気電子を併願する場合は、各系の問題と科目構成を確認してください。物理学系と同じ解答数・試験時間とは限りません。

途中式と最終答まで読める解説

問題本文は含みません。公式の問題冊子と併用してください。

物理の収録解説の分野(2020〜2025年度・30項目)

院試hubの収録解説5実施回・30項目の見出しを分野別に数えたものです。設問を分割した項目や、公開資料の制約を説明する項目を含むため、公式問題の大問数や完成答案数とは一致しません。が16項目(全体の53%)で最多。・力学は5実施回すべてに出ています。

分野項目数全項目に占める割合直近の連続出題最後に出た回
1653%5回連続2025年度
力学517%5回連続2025年度
数学310%3回連続2025年度
量子力学310%1回連続2025年度

このほか1項目だけ収録した分野は 線形代数・電磁気学・回路・熱・統計力学 です。

収録年度と解説項目数

院試hubに収録した5実施回の一覧です。どの回も解説見出しは6項目です。

東京科学大 物理の解答で立てた注意点(72件)

院試hubの解説で、その設問だけに立てた小見出しです(「方針」「検算」のような全問共通の 見出しは除いています)。新しい実施回から並べています。

  • 2025年度 第5問 静電場と一様電磁場中の荷電粒子導体球の境界条件 / 電荷密度の符号 / サイクロイドの見分け方
  • 2024年度 第2問 同軸ケーブルエネルギーから定数を読む / 表皮効果の意味
  • 2024年度 第4問 一次元束縛状態と三準位近似3 状態条件の見方 / 三準位近似の注意
  • 2024年度 第5問 吸着平衡と三準位固体化学ポテンシャルで見る / 三準位固体の極限
  • 2024年度 第6問 実験物理の小問霧箱の数値 / 回路の典型ミス / グラフ改善の要点
  • 2023年度 第2問 導体中の電磁波境界条件の注意 / 反射率の符号 / 良導体近似

力学7件

数学7件

  • 2025年度 第3問 線形代数・複素積分・ルジャンドル多項式曲線の検算 / 複素共役の扱い
  • 2024年度 第3問 線形代数・微分方程式・フーリエ積分原点での級数 / 積分の検算
  • 2023年度 第3問 複素関数・線形代数・ベクトル解析複素関数の典型ミス / 微小量 iε の役割 / ベクトル場の見方

量子力学6件

電磁気学・回路4件

  • 2025年度 第4問 身近な波・計測回路・天体・真空分圧回路の注意 / 不定性 / 天体の桁の検算 / 真空排気の典型ミス

熱・統計力学4件

  • 2023年度 第5問 イジングスピンの熱力学独立スピンの熱容量 / 断熱消磁 / 結合したスピン対 / 高温磁化の検算

線形代数4件

  • 2020年度 第4問 行列とラプラス変換行列多項式の処理 / 固有ベクトルの検算 / 畳み込み / 解の確認

頻出論点と、同じ論点を出す他大学

院試hubが解答した大問の論点を、他大学の出題と突き合わせたものです。併願先を 探すときの重なりの実数として使えます。

論点この専攻での出題出題年度同じ論点を出す他大学全国の出題大学
調和振動子7問2025・2023・2022・2020名古屋大学・北海道大学・電気通信大学・広島大学・九州大学16大学
固有値・固有ベクトル6問2025・2024・2023・2022・2020神戸大学・京都大学・東京大学・大阪大学・名古屋大学25大学
分配関数4問2024・2023・2022・2020東京大学・名古屋大学・北海道大学・筑波大学・九州大学16大学
静電場4問2025・2024・2022・2020名古屋大学・北海道大学・九州工業大学・筑波大学・九州大学16大学
ハミルトン形式4問2024・2023・2022・2020名古屋大学・広島大学・筑波大学・九州大学・京都大学15大学
留数定理3問2025・2023・2022東京大学・北海道大学・名古屋大学・筑波大学・大阪公立大学18大学
剛体の回転運動3問2025・2024・2023北海道大学・京都大学・広島大学・九州工業大学・筑波大学16大学
電磁波3問2025・2023・2022北海道大学・筑波大学・九州大学・東京大学・名古屋大学15大学
フーリエ変換2問2024・2022京都大学・東京大学・名古屋工業大学・筑波大学・名古屋大学14大学
ラグランジアン2問2022・2020名古屋大学・北海道大学・京都大学・広島大学・筑波大学13大学

東京科学大 公式の過去問の公開年度と公式解答例

公式の過去問ページ
理学院 物理学系(系独自)
公開されている年度
系サイトに依存
公式の解答例
解答例の掲載なし
英語の扱い
2027年4月・2026年9月入学ではTOEIC L&R・TOEFL iBT・Home Editionを使用。物理学系は出願時に提出せず、筆答試験当日にオンライン版PDFを印刷して持参。当日未提出は不合格です。
院試hubが最後にリンクを確認した日
2026-10-15
ページの内容
物理学系の独自サイト。公式過去問は学院横断アーカイブも参照。英語の提出方法は2027年4月・2026年9月入学募集要項21頁で確認。数学系と同様、物理学系はA日程を実施しません。

よくある質問

三原子分子の中央原子が静止するのはどのモードですか。

2025年実施の午前第1問では、両端の原子が同じ振幅で逆向きに動く低周波の伸縮モードで中央原子が静止します。もう一方の伸縮モードと屈曲モードでは、両端が同相、中央が逆相になり、振幅比は1:2mA/mB:1です。

原子核の有限サイズの補正で、ΔE/E₁が負になるのはなぜですか。

核の電荷を球内に広げると中心付近のポテンシャルが浅くなり、補正ΔEは正になります。一方、元の基底状態のエネルギーE₁は負なので、比ΔE/E₁は負です。2025年実施の午前第2問では、最低次の比は−(4/5)(R/a)²です。

幅2a、高さbの矩形関数はab=1でδ(x)になりますか。

面積が2ab=2なので、a→0の極限は2δ(x)です。2025年実施の午前第3問では、フーリエ変換が2に近づくことからも確認できます。通常の関数の各点での極限ではなく、試験関数を掛けて積分したときの極限です。

一次元の格子振動の比熱も低温でT³に比例しますか。

2025年実施の午後第3問では、音響フォノンの状態密度が一定なので低温比熱はTに比例します。高温では音響枝と光学枝が単位胞当たりkBずつ寄与し、合計2kBに近づきます。原子1個当たりの値と混同しないようにします。

公式ページの2025年実施問題も分析対象ですか。

2025年実施・2026年度の午前3題、午後3題の全47小問を、途中式と図を含めてこの記事で解説しています。販売する解説集と記事後半の30問の分析は、2019・2021・2022・2023・2024年実施が対象です。2025年実施の解答は販売解説集には含まれません。

物理学系の院試は何分で何問解きますか。

2025年実施問題では、午前は9時30分〜11時30分、午後は13時30分〜15時30分です。各120分でそれぞれ3題すべてに解答します。午前・午後とも1題ごとに該当する解答用紙を使います。

物理の2025年度教材は、2025年実施問題に対応しますか。

院試hubの物理2025年度教材は、2024年実施問題に対応します。公式一覧の2025年実施問題は表紙に「2026 大修」とあり、別の問題です。年の数字だけで合わせず、実施年と問題の内容を確認してください。

最初に解く年度はどれがよいですか。

入口は2020商品年度(2019年実施)か2022商品年度(2021年実施)です。物理数学、力学、電磁気、量子、統計、実験物理が6問で見渡せます。最後の総合演習には剛体コマ、BEC、実験小問が重い2025商品年度を回すのが無難です。

どの分野を優先すべきですか。

物理数学を毎週切らさず、力学・電磁気・量子・統計をそれぞれ1問ずつ答案化する配分が向いています。実験物理は後回しにせず、真空、放射線、検出器、計測回路の単位換算を短答で書けるようにしてください。

公式過去問と併用する解答・解説PDFを、東京科学大学の研究科・科目別に掲載しています。収録年度と価格は各ページで確認できます。

東京科学大学の解答PDF一覧で、東京科学大学の研究科・専攻・科目をまとめて確認できます。

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