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電通大 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 専門科目(分子生物学・生物化学・細胞・神経生物学) 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全2問)

全2問の分野は生物2問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 分子生物学・生物化学

収支は三炭糖が二本できることから数える

ATP と NADH の数え間違いは、グルコース 1 分子からグリセルアルデヒド 3-リン酸が 2 分子生じる点を落とすと起こりやすい。後半の基質レベルリン酸化は 1 本の三炭糖あたり ATP 2 分子なので、全体で ATP 4 分子を作る。発酵では ATP を追加で作るのではなく、NADH を NAD+^+ に戻して解糖系を回し続ける点が本質である。

糖新生は不可逆段階の迂回を書く

糖新生の説明では「逆向きに進む」とだけ書くと減点される。解糖系の不可逆段階を具体名で挙げ、別酵素で迂回することを示せば、熱力学的に成立する説明になる。特にホスホフルクトキナーゼ 1 とフルクトース 1,6-ビスホスファターゼは、解糖と糖新生の同時進行を防ぐ調節点として重要である。

DNA/RNA は構造差と機能差を対応させる

DNA と RNA の違いは、糖と塩基の一覧だけではなく、安定な情報保存と一過的・調節的な情報利用という機能差まで結びつけると答案が強くなる。RT-PCR では RNA をそのまま通常の DNA ポリメラーゼで増幅できないため、逆転写で cDNA を作る一手が必須である。

分子生物学・生物化学の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 細胞・神経生物学

濃度表は細胞が何を低く保つかで覚える

細胞内で高いのは K+\mathrm{K}^+、細胞外で高いのは Na+\mathrm{Na}^+ と Ca2+\mathrm{Ca}^{2+} である。特に Ca2+\mathrm{Ca}^{2+} は細胞外が mM オーダーなのに対し、細胞質は 10−710^{-7} M 程度に抑えられる。この大きな勾配が、筋収縮、分泌、シナプス伝達などのスイッチとして使われる。

GPCR はヌクレオチド交換を中心に書く

GPCR 経路では、受容体そのものが GDP を GTP に交換する酵素ではなく、G タンパク質のヌクレオチド交換を促進する点を意識する。答案では「GDP が外れ、GTP が結合する」と書くと、単なる語句暗記よりも機構を理解していることが伝わる。

運動装置と伝導装置は構造から機能へつなげる

鞭毛・繊毛では 9+2 構造、ダイニン、微小管滑り、屈曲の順で説明する。神経では髄鞘が膜抵抗を高め、膜容量を下げるため、脱分極が絞輪へ速く伝わる。構造名を並べるだけでなく、構造がどの物理的性質を変えて機能に結びつくかまで書くと、短い答案でも得点しやすい。

顕微鏡比較は分解能と試料条件を対にする

電子顕微鏡は高分解能という利点だけを書くと半分である。電子線は真空中で扱うため、試料固定・脱水・染色・薄切などが必要になり、生きた細胞の時間変化をそのまま追う用途には不向きである。光学顕微鏡は分解能では劣るが、蛍光観察やライブイメージングに強い。

解答

  1. 典型的な哺乳類細胞での対応は次の通りである。 陽イオン細胞内濃度細胞外濃度H+7×10−5 mM4×10−5 mMNa+5–15 mM145 mMK+140 mM5 mMCa2+10−4 mM1–2 mM \begin{array}{c|c|c} \text{陽イオン} & \text{細胞内濃度} & \text{細胞外濃度}\\ \hline \mathrm{H}^+ & 7\times 10^{-5}\,\mathrm{mM} & 4\times 10^{-5}\,\mathrm{mM}\\ \mathrm{Na}^+ & 5\text{--}15\,\mathrm{mM} & 145\,\mathrm{mM}\\ \mathrm{K}^+ & 140\,\mathrm{mM} & 5\,\mathrm{mM}\\ \mathrm{Ca}^{2+} & 10^{-4}\,\mathrm{mM} & 1\text{--}2\,\mathrm{mM} \end{array} したがって、記号で表せば H+\mathrm{H}^+ は細胞内 D・細胞外エ、Na+\mathrm{Na}^+ は細胞内 B・細胞外ア、K+\mathrm{K}^+ は細胞内 A・細胞外イ、Ca2+\mathrm{Ca}^{2+} は細胞内 C・細胞外ウである。
  2. シグナル伝達の空欄は、アが G タンパク質共役型受容体、イが G タンパク質、ウが GDP、エが GTP、オが cAMP である。リガンド結合により受容体が構造変化し、G タンパク質 α\alpha サブユニットの GDP が GTP に交換され、活性化した α\alpha サブユニットが標的酵素を調節して cAMP などの二次メッセンジャーを増やす。
  3. 葉緑体は光エネルギーを用いて水から電子を取り出し、ATP と NADPH を介して二酸化炭素を糖へ固定する細胞小器官である。葉緑体が独自の環状 DNA、70S 型リボソーム、二重膜を持ち、既存の葉緑体から分裂して増えることは、祖先的なシアノバクテリアが真核細胞内に共生したとする細胞内共生説を支持する。
  4. 真核生物の鞭毛・繊毛の軸糸は、周辺 9 対と中央 2 本の微小管からなる 9+2 構造を基本とする。ダイニン腕が隣接する微小管上を滑ろうとし、ネキシンなどの連結構造がその滑りを曲げ運動に変換するため、鞭毛や繊毛が波打つ。
  5. 死後硬直では ATP 供給が止まり、筋小胞体による Ca2+^{2+} 回収も低下する。Ca2+^{2+} が残るとアクチンとミオシンの相互作用が進む一方、ATP が不足してミオシン頭部がアクチンから解離できないため、架橋が固定され筋肉が硬くなる。
  6. 髄鞘が欠損すると、軸索膜の絶縁性が低下して電流が漏れ、ランビエ絞輪間を飛び移る跳躍伝導が効率よく起こらない。その結果、活動電位の伝播速度が低下し、重い場合は伝導ブロックやタイミングの乱れが生じる。
  7. チャネルロドプシンは光で開く陽イオンチャネルである。標的神経細胞にチャネルロドプシンを発現させ、特定波長の光を照射すると Na+^+ や Ca2+^{2+} などが流入して膜が脱分極し、活動電位を誘発できる。光を止めるとチャネルが閉じるため、神経活動をミリ秒程度の時間精度で操作できる。
  8. 光学顕微鏡は可視光とレンズを用いるため、分解能は電子顕微鏡より低いが、生細胞観察、蛍光標識、時間変化の追跡に適する。電子顕微鏡は電子線を用いるため高分解能で膜構造や微細構造を観察できるが、一般に真空・固定・薄切などの処理が必要で、生きた試料の動態観察には向かない。

最終答

H+\mathrm{H}^+: D/エ、Na+\mathrm{Na}^+: B/ア、K+\mathrm{K}^+: A/イ、Ca2+\mathrm{Ca}^{2+}: C/ウ。GPCR 経路は、G タンパク質共役型受容体、G タンパク質、GDP、GTP、cAMP の順。髄鞘欠損では跳躍伝導が障害され、活動電位伝播が遅くなる。

年度別の解答例(5年度)

2026年度の出題内容

全2問

この2問の分野は生物2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問生物分子生物学・生物化学収支は三炭糖が二本できることから数える / 糖新生は不可逆段階の迂回を書くあり
第2問生物細胞・神経生物学濃度表は細胞が何を低く保つかで覚える / GPCR はヌクレオチド交換を中心に書くあり

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 2問 → 2026年度 2問
2025年度の解答例

電気通信大学の公式過去問

公開年度範囲
2021〜2025年8月実施(2022〜2026年度入学)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
TOEIC/TOEFL スコア提出。学内英語試験なし。
院試hubの最終確認
2026-09-26
電気通信大学の公式過去問PDF