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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 理学研究科 地球惑星科学専攻 地球惑星科学専攻 基礎科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。固体地球科学1問・鉱物・岩石1問・数学1問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・調和振動子)。2022年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

京大 地球惑星科学専攻 基礎科目 2023年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は固体地球科学1問・鉱物・岩石1問・数学1問・地質1問・電磁気学・回路1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学—逆行列の検算 / ガウス積分の見方あり
第2問力学—摩擦の問題 / 球殻の慣性モーメントあり
第3問電磁気学・回路電磁気学球内電場 / 同軸導体の磁場あり
第4問—化学熱力学と速度論の区別 / 圧平衡定数あり
第5問固体地球科学プレートテクトニクスプレートの厚さと水深 / 海嶺地形あり
第6問鉱物・岩石鉱物・岩石学AlSiO 相図 / 単斜晶の垂直関係あり
第7問地質地質構造・火山地質断面の読み方 / 深成岩との接触関係あり

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 7問 → 2023年度 7問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2023年度で新しく出たテーマ
重積分と極座標・調和振動子・剛体の回転運動
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第1問 — 数学

方針

小問ごとに標準事項を確実に処理する問題である。積分は置換,トレースは成分表示,逆行列は零の配置を見てブロック化,微分方程式は重解ではなく「右辺が同次解と重なる」ことに注意する。

逆行列の検算

求めた逆行列の第 1,31,3 成分ブロックについて (3523)(−352−3)=(1001) \begin{pmatrix}3&5\\2&3\end{pmatrix} \begin{pmatrix}-3&5\\2&-3\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix} であり,第 2,42,4 成分ブロックについても (8221)(1/4−1/2−1/22)=(1001) \begin{pmatrix}8&2\\2&1\end{pmatrix} \begin{pmatrix}1/4&-1/2\\-1/2&2\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix} となる。符号ミスが起こりやすいので,最後に CC−1=ICC^{-1}=I の一部だけでも確認するとよい。

ガウス積分の見方

行列 A=(−211−2) A=\begin{pmatrix}-2&1\\1&-2\end{pmatrix} の固有値は −1,−3-1,-3 で,どちらも負である。したがって積分は収束する。指数部を平方完成する方法でもよいが,直交変換で固有方向 (1,1)(1,1), (1,−1)(1,-1) に移すと二つの一次元ガウス積分に分離する。直交変換のヤコビアンが 11 であることを書き落とさないのが答案上のポイントである。

解答

  1. I=∫x1−x dx I=\int x\sqrt{1-x}\,dx とおく。u=1−xu=1-x とすると x=1−u, dx=−dux=1-u,\ dx=-du であるから, I=−∫(1−u)u1/2 du=−∫(u1/2−u3/2) du. I=-\int (1-u)u^{1/2}\,du =-\int\left(u^{1/2}-u^{3/2}\right)\,du . よって I=−23u3/2+25u5/2+C=−23(1−x)3/2+25(1−x)5/2+C. I=-\frac{2}{3}u^{3/2}+\frac{2}{5}u^{5/2}+C =-\frac{2}{3}(1-x)^{3/2}+\frac{2}{5}(1-x)^{5/2}+C .
  2. A=(aij)A=(a_{ij}), B=(bij)B=(b_{ij}) と書くと, tr⁡(AB)=∑i=1n(AB)ii=∑i=1n∑j=1naijbji. \operatorname{tr}(AB) =\sum_{i=1}^n (AB)_{ii} =\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n a_{ij}b_{ji}. 有限和なので和の順序を入れ替えて tr⁡(AB)=∑j=1n∑i=1nbjiaij=∑j=1n(BA)jj=tr⁡(BA). \operatorname{tr}(AB) =\sum_{j=1}^n\sum_{i=1}^n b_{ji}a_{ij} =\sum_{j=1}^n (BA)_{jj} =\operatorname{tr}(BA).
  3. 行と列を (1,3,2,4)(1,3,2,4) の順に並べると,行列は (3500230000820021) \begin{pmatrix} 3&5&0&0\\ 2&3&0&0\\ 0&0&8&2\\ 0&0&2&1 \end{pmatrix} という二つの 22 次ブロックに分かれる。それぞれ (3523)−1=(−352−3),(8221)−1=14(1−2−28) \begin{pmatrix}3&5\\2&3\end{pmatrix}^{-1} = \begin{pmatrix}-3&5\\2&-3\end{pmatrix},\qquad \begin{pmatrix}8&2\\2&1\end{pmatrix}^{-1} = \frac14 \begin{pmatrix}1&-2\\-2&8\end{pmatrix} である。元の行列順に戻すと C−1=(−305001/40−1/220−300−1/202). C^{-1}= \begin{pmatrix} -3&0&5&0\\ 0&1/4&0&-1/2\\ 2&0&-3&0\\ 0&-1/2&0&2 \end{pmatrix}.
  4. 同次方程式の特性方程式は λ2+λ−6=(λ−2)(λ+3)=0 \lambda^2+\lambda-6=(\lambda-2)(\lambda+3)=0 である。右辺が e−3xe^{-3x} で,これは同次解の一つと重なるので,特殊解を yp=Axe−3xy_p=Ax e^{-3x} とおく。計算すると yp′=A(1−3x)e−3x,yp′′=A(9x−6)e−3x. y_p'=A(1-3x)e^{-3x},\qquad y_p''=A(9x-6)e^{-3x}. したがって yp′′+yp′−6yp=A{(9x−6)+(1−3x)−6x}e−3x=−5Ae−3x. y_p''+y_p'-6y_p =A\{(9x-6)+(1-3x)-6x\}e^{-3x} =-5A e^{-3x}. 右辺と比較して A=−1/5A=-1/5 である。よって一般解は y=C1e2x+C2e−3x−15xe−3x. y=C_1e^{2x}+C_2e^{-3x}-\frac15 xe^{-3x}.
  5. xtAx=−2x12+2x1x2−2x22=−32(x1+x2)2−12(x1−x2)2. \boldsymbol{x}^{t}A\boldsymbol{x} =-2x_1^2+2x_1x_2-2x_2^2 =-\frac32(x_1+x_2)^2-\frac12(x_1-x_2)^2. u=(x1+x2)/2, v=(x1−x2)/2u=(x_1+x_2)/\sqrt2,\ v=(x_1-x_2)/\sqrt2 とおくとヤコビアンは 11 で, xtAx=−3u2−v2. \boldsymbol{x}^{t}A\boldsymbol{x} =-3u^2-v^2. よって求める積分は ∫−∞∞e−3u2 du∫−∞∞e−v2 dv=π3π=π3. \int_{-\infty}^{\infty}e^{-3u^2}\,du \int_{-\infty}^{\infty}e^{-v^2}\,dv =\sqrt{\frac{\pi}{3}}\sqrt{\pi} =\frac{\pi}{\sqrt3}.

最終答

  1. −23(1−x)3/2+25(1−x)5/2+C-\dfrac23(1-x)^{3/2}+\dfrac25(1-x)^{5/2}+C
  2. tr⁡(AB)=tr⁡(BA)\operatorname{tr}(AB)=\operatorname{tr}(BA)
  3. (−305001/40−1/220−300−1/202)\begin{pmatrix} -3&0&5&0\\ 0&1/4&0&-1/2\\ 2&0&-3&0\\ 0&-1/2&0&2 \end{pmatrix}
  4. y=C1e2x+C2e−3x−15xe−3xy=C_1e^{2x}+C_2e^{-3x}-\dfrac15xe^{-3x}
  5. π3\dfrac{\pi}{\sqrt3}

第2問 — 力学

摩擦の問題

摩擦係数は無次元量である。mm が与えられていないので,運動方程式で mm が消える形にするのが自然である。停止距離の問題では,時間を求めずに v2−v02=2asv^2-v_0^2=2as を使うと計算が短い。

球殻の慣性モーメント

薄い球殻の慣性モーメントは I=(2/3)Ma2I=(2/3)Ma^2,M=4πa2ρM=4\pi a^2\rho としても直ちに得られる。面密度 ρ\rho が与えられているので,体積密度と取り違えないことが重要である。

安定条件の意味

NN 次元では外部重力の大きさが r1−Nr^{1-N} に比例する。一方,角運動量保存を考慮した遠心力は常に r−3r^{-3} に比例する。半径が少し増えたとき,外向きの遠心力が重力より速く弱まれば内向きの復元力が働く。この比較が N<4N<4 という条件の中身である。

試験で書くべき点

小問 (3) では「遠心力は r−3r^{-3}」とすぐ書くと,角運動量保存を使った理由が見えにくい。中心力なので L=mrvL=mrv が保存され,そこから遠心力を L2/(mr3)L^2/(mr^3) と表す,という一文を入れると答案として安定する。

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第3問 — 電磁気学

球内電場

一様帯電球の内部では,半径 rr のガウス球が包む電荷が r3r^3 に比例するため,電場の大きさは rr に比例する。したがって電子は調和振動子になる。電子の電荷を +e+e としてしまうと,原点から離れる指数関数的な運動になり,物理的にも不自然である。

同軸導体の磁場

外側導体の電流は内側と反対向きである。b≤r<cb\le r<c では,外側導体電流のうち半径 rr までに含まれる割合 r2−b2c2−b2 \frac{r^2-b^2}{c^2-b^2} だけが内側電流を打ち消す。r=cr=c で B=0B=0 になることを確認すると,符号と面積比のミスを検出できる。

反射率の典型ミス

境界条件は BB そのものではなく,接線成分の H=B/μH=B/\mu の連続である。また反射波では E×B\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{B} が −z-z 方向を向く必要があるため,BrB_r と ErE_r の符号関係が入射波と逆になる。この二点を落とすと,インピーダンスの分子の符号や係数が合わなくなる。

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第4問 — 化学

熱力学と速度論の区別

ダイヤモンドが常温常圧でグラファイトより熱力学的に不安定であることと,実際に短時間で変化することは別である。自発性はギブズエネルギー差,進みにくさは活性化エネルギーで説明する。

圧平衡定数

解離反応では総物質量が変化する。分圧を出す前に全物質量 1+α1+\alpha を書くことが重要である。pA=(1−α)pp_A=(1-\alpha)p,pB=2αpp_B=2\alpha p としてしまうのが典型的な誤りである。

二次反応の半減期

一次反応の半減期は初期濃度に依存しないが,二次反応では t1/2=1/(k[C]0)t_{1/2}=1/(k[C]_0) となり初期濃度に反比例する。この違いは速度式を積分した形から直接確認できる。

マイヤーの関係

単原子分子であることを使えば CV=3R/2C_V=3R/2,CP=5R/2C_P=5R/2 として差を出してもよい。ただし CP−CV=RC_P-C_V=R 自体は理想気体なら単原子に限らず成り立つので,H=U+PVH=U+PV から示す答案の方が一般性があり,減点されにくい。

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第5問 — プレートテクトニクス

プレートの厚さと水深

プレートが冷えて厚くなると,密度の大きいプレート物質がアセノスフェアを置き換えるため,アイソスタシーにより海底は沈降する。水深増加量は Δh=ρp−ρaρa−ρwL \Delta h=\frac{\rho_{\mathrm p}-\rho_{\mathrm a}}{\rho_{\mathrm a}-\rho_{\mathrm w}}L であり,分母が「アセノスフェアと海水の密度差」になる。ρp−ρw\rho_{\mathrm p}-\rho_{\mathrm w} を分母にしてしまうと,補償面で何を置換しているかが合わない。

海嶺地形

低速拡大の大西洋中央海嶺では冷却による強度増加と断層変位の影響が大きく,起伏が大きく山腹が急になりやすい。高速拡大の東太平洋海膨では熱的に高温で,軸部地形は比較的なだらかになる。

速度三角形

相対速度は添字の順序が重要である。VAB\boldsymbol{V}_{AB} は「B に対する A」の速度, VBC\boldsymbol{V}_{BC} は「C に対する B」の速度であり, VAB+VBC+VCA=0 \boldsymbol{V}_{AB}+\boldsymbol{V}_{BC}+\boldsymbol{V}_{CA}=0 を閉じた速度三角形として使う。

三重会合点の安定条件

海溝境界では,沈み込む側が境界へ向かう相対速度成分を持つ必要がある。境界から離れる成分を持つと,海溝が開く向きになり,三重会合点の幾何が時間とともに保てない。答案では「境界法線成分」と「境界平行成分」を分けて述べると明確である。

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第6問 — 鉱物・岩石学

Al2_2SiO5_5 相図

藍晶石は高圧相,珪線石は高温相,紅柱石は低圧側の相である。紅柱石--珪線石境界の傾きと,ΔS>0\Delta S>0 という情報を結びつけると,体積変化の符号まで判断できる。クラウジウス--クラペイロン式では,反応の向きをそろえて ΔS\Delta S と ΔV\Delta V を読むことが重要である。

単斜晶の垂直関係

単斜晶では α=γ=90∘\alpha=\gamma=90^\circ,β≠90∘\beta\ne90^\circ である。したがって bb 軸だけは aa--cc 面に垂直であるが,aa 軸は (100)(100) 面の法線とは限らない。直交晶の感覚で [hkl][hkl] と (hkl)(hkl) がいつも垂直だと考えるのは誤りである。

ソルバスと温度計

冷却時に一相固溶体が二相へ分離すると,各相の組成は温度に依存する。天然試料で共存する二相の組成を測り,ソルバスの較正曲線に戻すのが二長石温度計や二輝石温度計の考え方である。

開放系の水の扱い

脱水反応で出た H2_2O がすぐに失われる条件では,その後の経路は閉じた H2_2O 飽和系の相図を単純になぞらない。問題文の「石英が先に消費しつくされる」という条件は,後続の石英を必要とする融解反応を止めるための重要な指定である。

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第7問 — 地質構造・火山

地質断面の読み方

形成史は「重なりの法則」「切る・切られる関係」「不整合」「変形の有無」の順に読む。断層がどの層を切り,どの層に覆われるかを見れば,断層の時期を挟み込める。E 層と F 層が断層で切られていないことは,断層運動が E 層堆積前であることを示す。

深成岩との接触関係

地質図上で異なる岩石が接しているだけでは,貫入・不整合・断層を区別できない。野外では,接触変成があるか,基底礫岩があるか,破砕帯があるかを確認する。答案では,関係名と観察根拠を一対にして書くとよい。

火山噴火と気候

短期の寒冷化は硫酸エアロゾルによる日射反射が主因である。火山灰そのものは比較的早く沈降するため,長期の放射影響ではエアロゾルや温室効果ガスの滞留時間が重要になる。大規模火成区では,マグマ起源の CO2_2 に加え,被貫入堆積物からの炭素放出も温暖化要因になり得る。

地質構造・火山の途中式・最終答をPDFで見る

京大 地球惑星科学専攻 基礎科目 院試 過去問の収録5年度