京都大学 院試 過去問 解答例
京大 理学研究科 地球惑星科学専攻 地球惑星科学専攻 基礎科目 2022年度 院試 解答例・解説
京都大学 理学研究科 地球惑星科学専攻 地球惑星科学専攻 基礎科目 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — ベクトル解析・微分方程式
方針
小問ごとに道具は標準的である。ベクトル解析では積の公式を先に書くと符号ミスを減らせる。接線は媒介変数の微分,対称点は垂線の足,連立微分方程式は行列化,最後は一次線形方程式として処理する。
検算
第[1]問の回転は を使っているため, だけを計算すればよい。例えば では となるので,回転は となり,上の式と一致する。
第[4]問は解を元の初期条件に代入すると である。また 成分と 成分はそれぞれ係数行列の固有ベクトル方向に乗っているため,微分方程式も満たす。
典型ミス
平面対称では,垂線の足 を答えにしてしまう誤りが多い。求める点は原点と対称な点なので である。媒介変数曲線では をそのまま傾きにせず,必ず を用いる。
答案で書くべきポイント
導出過程を求められているので,最終式だけでなく,使用した公式 や,連立微分方程式の固有値・固有ベクトルを明示すると採点上安定する。
第2問 — 力学・万有引力
方針
第[1]問は非慣性系での有効重力を考える問題である。ばねばかりは鉛直成分だけでなく,水平加速度に対応する慣性力も含めた合力の大きさを読む。第[2]問は反発係数を直接使うのではなく,エネルギーから最高到達高度の比を出す。第[3]問は球全体の並進加速度を差し引いて,球 B の中心系での潮汐加速度を求める。
時間の見積もり
第[2]問で,運動エネルギーが 倍になると,速度は 倍,高さも 倍になる。飛行時間は速度に比例するので,時間比は である。ここを としてしまうと係数が 2 倍ずれる。
潮汐力の符号
点 N は球 A に近いため球 B の中心より強く引かれ,球 B から見ると外向きに加速する。点 F は逆に中心より弱く引かれるため,相対加速度は負になる。符号は,分離が近い側で起こることの物理的確認にもなっている。
答案で書くべきポイント
潮汐加速度の近似では を明示する。最後の では,球 B の表面重力との釣り合いを書いてから,同密度条件で 表示に直すと導出が読みやすい。
第3問 — 電磁気
方針
電荷配置は符号つきの一次元力のつり合いで解く。同心球殻は重ね合わせで電位を出し,接地後のエネルギーは内側球殻の電荷を変数にした二次式として見る。平行導線は対称性で成分を消し,荷電粒子運動はローレンツ力の連立方程式を解く。
同心球殻の見方
半径 の導体球殻の内側では,その球殻による電位は一定である。このため には外側球殻からの寄与 , がそのまま入る。電場がないから寄与がない,と考えてしまうのは誤りで,電場ゼロでも電位は一定値として残る。
サイクロイドの概形
粒子は初め静止しているが,電場で 方向に加速される。磁場による力が向きを曲げ,平均的には の向き,すなわち 方向へ進む。
典型ミス
第[1]問では中央電荷に働く力だけを 0 にしても不十分である。3 つすべての電荷で力が 0 になる条件を連立して,両端が等しく中央が逆符号であることを示す必要がある。
第[3]問では,点 P で足し合わされる成分は導線間方向ではなく,平面 に垂直な成分である。図を描いて右ねじの向きを確認するとよい。
第4問 — 熱化学・無機化学
方針
第[1]問は二酸化炭素の等温線とファンデルワールス型状態方程式の標準問題である。臨界点では等温線が水平な変曲点になるため,一階微分と二階微分を同時に 0 とする。仕事は「圧縮に必要な仕事」なので,体積が減少する向きで符号を取り直す。
臨界点の検算
を一階微分条件に代入すると より となる。さらに状態方程式に戻すと である。
内部エネルギーの意味
理想気体では分子間相互作用を無視するため,同じ温度なら内部エネルギーは同じである。ファンデルワールス型では引力項 が存在し,体積を大きくすると分子間引力に逆らって引き離すため,内部エネルギーが増える。したがって正の は物理的にも自然である。
典型ミス
圧縮仕事で をそのまま答えると負になる。外部が気体へ加える仕事として正にするなら と書く必要がある。
酢酸の電離度では,弱酸であることから を電離した酢酸濃度とみなす。水の自己解離 は に比べて十分小さい。
第5問 — プレートテクトニクス
方針
プレート運動の空欄は,海嶺・沈み込み帯・球面運動の基本語を問うている。計算問題は,オイラー極まわりの角速度とアイソスタシーの 2 つである。どちらも式を立てて単位換算まで書くと点を落としにくい。
アイソスタシーの考え方
海嶺軸ではリソスフェア厚を 0 とみなす。海嶺から離れると,低密度の海水が増える一方,高密度のリソスフェアがアセノスフェアを置き換える。補償深度で柱の質量を等しくすると となる。符号を逆にしてしまうと,厚さが負になるので物理的に誤りだと気づける。
速度換算
は である。この換算を覚えておくと,プレート速度の計算が非常に速い。
答案で書くべきポイント
50 字程度の説明問題では,単語の定義だけでなく,何に使う概念かを一語添えるとよい。例えば地震波トモグラフィーなら「速度異常からスラブやマントル構造を推定する」と書くと,単なる解析手法名より内容が明確になる。
第6問 — 鉱物・結晶・相平衡
方針
第[1]問はケイ酸塩四面体の共有酸素数を構造分類に結びつける。第[2]問は観測反射から系統消滅を読む問題で,まず格子消滅を調べ,次に映進面による条件を確認する。第[3]問は共融型 2 成分系の相図を,平衡加熱と分別結晶で分けて読む。
消滅則の検算
体心格子では格子点 と からの散乱が に比例する。したがって が奇数なら打ち消し,偶数なら残る。観測ピークの例では などもすべて和が偶数であり, 格子と整合する。
相図の読み方
液相線は「その上ではすべて液体,その下に入ると結晶が出る」境界である。固相線は「その下では液体がない」境界である。低温側のソルバスは固溶限界を示し,単相固溶体と 2 固相共存領域を分ける。
これは読み方を示す模式図であり,公式図を写したものではない。答案では,相境界の名称と相の変化を言葉で追えば十分である。
典型ミス
分別結晶では,晶出した固相を系から取り除くため,全体組成を固定したてこ比の議論とは異なる。残液組成が液相線に沿って動くこと,晶出する固相組成も固相線に沿って変わることを書くとよい。
第7問 — 第四紀地質・岩脈
方針
第[1]問は第四紀層序,古地磁気,テフラ,海岸段丘をまとめて問う問題である。空欄は用語を正確に入れ,説明問題では「なぜ対比できるのか」「どのプロセスで地形が残るのか」を因果で書く。第[2]問は岩脈面に働く法線応力とマグマ圧を比較する。
古地磁気の整理
現在を含む正磁極期はブリュンヌ正磁極期で,その前が松山逆磁極期,さらに前がガウス正磁極期である。中期更新世の始まりは松山--ブリュンヌ境界に一致するため,チバニアンの基準として古地磁気境界が重要になる。
海岸段丘で書くべき因果
答案では,単に「隆起してできる」と書くだけでは不十分である。少なくとも という流れを書く。中期更新世末から後期更新世初めの高海面期に形成された面が,その後の相対的海面低下で陸上に現れる,という説明にするとよい。
岩脈面の応力
傾斜角 の面の法線は鉛直から だけ傾く。したがって,鉛直主応力 と水平主応力 の二乗方向余弦を使って と書ける。最大傾斜の面がちょうど開くところを限界条件にすると,マグマ圧が求まる。
典型ミス
有効法線応力は圧縮応力から流体圧を引いた量である。したがって,開口条件は であり, を小さく見積もると高傾斜の岩脈が開けない。また,傾斜角 は水平面であり,この面の法線応力は鉛直応力 である。