京都大学 院試 過去問 解答例
京大 情報学研究科 システム科学コース 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全14問)
全14問。数学5問・制御工学2問・確率・統計1問。テーマタグは12件(固有値・固有ベクトル・フーリエ変換・重積分と極座標)。2021年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理。
最終更新:
収録4年度分の解答PDF:京都大学 情報学研究科 システム科学コース(¥2,880・紙面見本あり)
- このページで公開
- 解説14問と大問1問の途中式・最終答(全14問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき14問)
- 問題本文
- 非収録
京大 システム科学コース 2023年度 院試 過去問の出題内容(全14問)
この14問の分野は数学5問・制御工学2問・確率・統計1問・線形代数1問・微分積分・解析1問・複素解析1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 数学 | 数学I・連立一次方程式と固有値和 | 一意性は係数行列の正則性で判定する / 固有値の和はトレース | あり |
| 第2問 | 数学 | 数学I・行列式の最大値と平方根行列 | 平方完成された形を見る / 2次正方行列の冪零性を使う | あり |
| 第3問 | 数学 | 数学I・直交射影 | 直交補空間の構造を先に決める / 最短点は正射影 | あり |
| 第4問 | 数学 | 数学II・最大化とアステロイド | 正の関数は対数で最大化する / アステロイドの接線公式 | あり |
| 第5問 | 数学 | 数学II・極限と合成写像の微分 | 振動項は絶対値で押さえる / 多層合成はヤコビアンの積 | あり |
| 第6問 | — | 複素関数論1・根とCauchy積分公式 | 等比和に1を足す / 微分係数の定義から導く | あり |
| 第7問 | — | 複素関数論2・ローラン級数 | 中心をずらして単純極を見る / 原点中心では領域に注意する | あり |
| 第8問 | 複素解析 | 複素関数論3・零点の個数 | 境界をまたぐ個数は差で取る | あり |
| 第9問 | 確率・統計 | 確率統計1・Poisson回帰の推定 | 単一観測のPoisson MLE / 重み付き最小二乗はCauchyで最適化 | あり |
| 第10問 | — | 確率統計2・確率積分変換とコピュラ | 確率積分変換 / 密度は連鎖律で出す | あり |
| 第11問 | 制御工学 | 制御工学1・ブロック線図と安定判別 | 中間信号を置いて連立する / 3次Hurwitz条件 | あり |
| 第12問 | 制御工学 | 制御工学2・Bode線図と同一ゲイン系 | 零点と極の折点 / 同じゲインは全域通過因子で作れる | あり |
| 第13問 | 微分積分・解析 | 信号処理1・Fourier級数とGaussian信号 | 半波整流された正弦波の級数 / 線形位相は時間遅延 | あり |
| 第14問 | 線形代数 | 信号処理2・巡回行列と離散Fourier変換 | 巡回行列はFourier基底で対角化される / 時間領域の巡回畳み込みは周波数領域の積 | あり |
2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は10問に12テーマが出ています。
前年度(2021年度)との違い
- 大問数
- 2021年度 13問 → 2023年度 14問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・留数定理・伝達関数
第1問 — 数学I・連立一次方程式と固有値和
一意性は係数行列の正則性で判定する
なので連立方程式はただ一つの解を持つ。求めるのは だけだが,一意性の確認も答案に必要である。
固有値の和はトレース
固有値を個別に求める必要はない。対角和だけで条件が決まり,非対角成分の には制約が出ない。
解答
- 係数行列を とおく。直接計算すると であるから,解は一意に存在する。実際に解くと したがって求める値は である。
- 重複度込みの固有値の和は行列のトレースに等しい。与えられた行列のトレースは である。固有値の和が であるから より である。 はトレースに現れないので任意でよい。したがって座標平面上の集合は であり,縦直線 である。
最終答
(1) 解は一意に存在し,。 (2) 条件を満たす点全体は直線 。
第2問 — 数学I・行列式の最大値と平方根行列
平方完成された形を見る
行列式が になるため,上から で押さえられる。
2次正方行列の冪零性を使う
から は冪零である。2次正方行列ではCayley--Hamiltonにより まで落ちるので,非零のJordan型冪零行列を平方として作ることはできない。
第3問 — 数学I・直交射影
直交補空間の構造を先に決める
が で張られる1次元空間なので, は である。射影行列は から直ちに得られる。
最短点は正射影
点 から への最短点は である。今回は のため, 自身がすでに 上にある。
第4問 — 数学II・最大化とアステロイド
正の関数は対数で最大化する
は正なので,対数を取って微分すると臨界点が一つだけ出る。
アステロイドの接線公式
に対する接線は である。切片の積を最大化すればよい。
第5問 — 数学II・極限と合成写像の微分
振動項は絶対値で押さえる
は収束しないが,係数 が に収束するため全体の極限は になる。
多層合成はヤコビアンの積
は1層分のヤコビアンであり, は後続層のヤコビアンを掛けたものになる。行列要素で書くと,最後の設問は標準的な逆伝播の形で表される。
第6問 — 複素関数論1・根とCauchy積分公式
等比和に1を足す
は と見れば,6乗根の問題になる。
微分係数の定義から導く
高階Cauchy公式をそのまま引用せず, を積分表示して差商の極限を取ればよい。
第7問 — 複素関数論2・ローラン級数
中心をずらして単純極を見る
中心では と置くと,主部が だけであることがすぐ分かる。
原点中心では領域に注意する
では特異点 を含まないので正則なTaylor展開になる。負冪係数はすべて である。
第8問 — 複素関数論3・零点の個数
境界をまたぐ個数は差で取る
の個数から の個数を引く。Roucheの不等式が境界上で厳密なので,境界 上の零点も排除できる。
第9問 — 確率統計1・Poisson回帰の推定
単一観測のPoisson MLE
Poisson分布では対数尤度 の最大点が観測値 になる。 の境界だけ,開区間条件に注意する。
重み付き最小二乗はCauchyで最適化
推定量はどの正の重みでも不偏であるため,MSE最小化は分散最小化になる。最適重みは分散が平均に比例するPoisson構造を反映して に比例する。
第10問 — 確率統計2・確率積分変換とコピュラ
確率積分変換
連続分布の確率変数を自身の分布関数へ代入すると一様分布になる。コピュラはこの一様化した変数の同時分布である。
密度は連鎖律で出す
を2変数で微分すれば,周辺密度とコピュラ密度の積に分解される。
第11問 — 制御工学1・ブロック線図と安定判別
中間信号を置いて連立する
複雑なブロック線図は,加算点の出力に変数を置くと代数方程式として処理できる。
3次Hurwitz条件
がHurwitz安定であるための条件は である。
第12問 — 制御工学2・Bode線図と同一ゲイン系
零点と極の折点
なので,折点は原点極, の零点, の極の順に現れる。
同じゲインは全域通過因子で作れる
は虚軸上で絶対値が1であり,ゲインを変えずに位相だけを変えるために使える。
第13問 — 信号処理1・Fourier級数とGaussian信号
半波整流された正弦波の級数
が負側だけ残る形なので,定数項と偶数次の余弦係数,さらに だけが残る。
線形位相は時間遅延
周波数領域の因子 は時間領域で だけの遅延を表す。追加の は全体位相であり,絶対値には影響しない。
第14問 — 信号処理2・巡回行列と離散Fourier変換
巡回行列はFourier基底で対角化される
添字を を法として読めば, の和は 自身にスカラーを掛けた形へ変形できる。
時間領域の巡回畳み込みは周波数領域の積
が対角行列になるため, の各成分は対応するFourier係数どうしの積になる。
京大 システム科学コース 院試 過去問の収録4年度
回転行列とノルム / 線形写像と正規直交基底 / 積分領域と反復対数
行列の冪零性と部分空間 / 歪対称行列の行列式 / 対数関数と数列
2023年度(このページ・全14問)
数学I・連立一次方程式と固有値和 / 数学I・行列式の最大値と平方根行列 / 数学I・直交射影
数学I・漸化式と行列の極限 / 数学I・内積空間と最小二乗近似 / 数学II・変数変換と漸近評価