院試hub

関東 · 東京大学

東大 コンピュータ科学 院試 過去問対策|5年20問で見る形式言語・OS・アルゴリズム

東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻の2022〜2026年度、5年20問の解答解説メモから、形式言語、OS・計算機アーキテクチャ、アルゴリズム、グラフ理論の年度別テーマと答案の初手を整理します。

最終更新: 2026/10/16

東京大学の研究科別・公式過去問を見る

東大コンピュータ科学の院試は、名前だけ見ると「プログラミングが得意なら戦える」と思いやすい試験です。しかし、2022〜2026年度の解答解説を作ってみると、問われているのは実装経験そのものではありません。形式言語の構成、OSの状態追跡、キャッシュとパイプラインの時間計算、グラフや近似アルゴリズムの証明を、紙の答案として短く書けるかが勝負です。

この記事では、東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻の2022〜2026年度、5年20問の解答解説をもとに、「どの年度から解くか」「最初の10分で何を見るか」「答案の最初に何を書くか」を整理します。

この記事の根拠

  • 2022〜2026年度の5年分、各4問、合計20問の解答解説をもとにしています。
  • 2026年5月25日時点で、公式のコンピュータ科学専攻入試案内には2027年度入試案内書、書籍リスト、2022〜2026年度相当の過去問題リンクが掲載されています。
  • 研究科全体の過去問アーカイブでは、筆記試験問題は過去5年分公開と案内され、一般教育科目と各専攻の専門科目への入口が整理されています。

先に結論: 最初は2024年度、仕上げは2026年度

初回演習には2024年度が向いています。形式言語と状態数、キャッシュとIPC、連結性と全域木、評価戦略と再帰が並び、理論・システム・アルゴリズム・プログラミング言語の4領域を一度に確認できます。問題が派手すぎず、東大CSの答案に必要な「構成して、表にして、証明する」動きを見やすい年度です。

次に2025年度で、平方根言語、パイプラインとキャッシュ、スケジューリングとセマフォ、グラフ連結度へ広げます。最後に2026年度で、削除操作の形式言語、ページングとTLB、パイプラインと論理回路、有限差分と対数時間探索を確認してください。2022年度と2023年度は、古い年度というより、CPUスケジューリング、再帰的ソート、ページ置換、CPI計算を使って基礎の穴を見つける年度です。

5年20問の年度別テーマ

年度4問のテーマ演習で見ること
2026形式言語とオートマトン、ページングとTLB、パイプラインと論理回路、有限差分と対数時間探索。最新年度。DFA/PDAの構成、参照列の追跡、ロードユースハザード、固定次数多項式の最大値探索を、答案の冒頭から組み立てる。
2025形式言語とオートマトン、パイプラインとキャッシュ、スケジューリングとセマフォ、グラフの連結度とサイクル。システム系の比重が重い年度。CPI分解、待ち時間、デッドロック確認、2連結・3連結の証明構造を点検する。
2024形式言語と状態数、キャッシュとIPC、連結性と全域木、評価戦略と再帰。最初の診断年度。NFA/DFAの状態数差、キャッシュミス、DFS/BFS、値呼び・名前呼びの違いをバランスよく見られる。
2023半分接頭辞と言語クラス、集合分割の近似アルゴリズム、ページ置換、キャッシュとCPI。証明と表計算が混ざる年度。閉包性、近似比、不変量、LRU/最適置換、CPI式をそれぞれ短く書けるかを見る。
2022CPUスケジューリング、再帰的ソート、部分語位置の写像と言語クラス、データ依存とパイプライン。基礎の穴を見つける年度。Ganttチャート、再帰式、有限状態変換、パイプラインのストールを自力で表にできるか確認する。

最初の10分で見る順序

東大CSは4問構成なので、全問を均等に読んでから悩むと時間を失います。最初の10分で、どの問題を完答候補にするか、どの問題を部分点狙いにするかを分けてください。

順序見る分野判断基準
1形式言語・オートマトンDFA/NFA/PDAの構成、閉包性、反例言語、状態数下界のどれで攻めるかが見えるなら先に着手する。
2OS・メモリ管理ページ置換、TLB、スケジューリング、セマフォは表を書けば進む。参照列や時刻を追えるなら得点源になる。
3アーキテクチャキャッシュ、CPI/IPC、パイプライン、ロードユースハザードは式の分解が見えるかで判断する。
4アルゴリズム・グラフDFS/BFS、全域木、サイクル、近似比、再帰式、不変量をすぐ置ける問題を拾う。
5評価戦略・探索・有限差分値呼び/名前呼び、対数時間探索、差分係数のような問題は、初手が見えれば速いが、見えないと深追いしやすい。

形式言語は「構成」か「反例」かを先に決める

2022〜2026年度を通して、形式言語・オートマトンは毎年の入口になっています。2026年度は削除操作、2025年度は平方根言語、2024年度はNFAとDFAの状態数差と非正規性、2023年度は半分接頭辞、2022年度は部分語位置の写像です。いずれも、定義を読んだあとに「構成で示すのか、閉包性で示すのか、反例で崩すのか」を決める必要があります。

答案の最初には、対象の言語操作を一文で書き直してください。正規言語ならDFAやNFAの状態遷移で追える情報は何か。文脈自由言語ならPDAのスタックに何を持たせるか。非正規性を示すなら、正規言語との共通部分や一文字アルファベットへの制限で単純化できるか。ここが見えれば、後半の証明はかなり短くなります。

失点しやすいのは、結論だけを「正規」「文脈自由」と書くことです。東大CSでは、オートマトンを構成したのか、閉包性を使ったのか、正規ではない理由をどの補題で示したのかまで必要です。特に文脈自由言語では、正規言語で使えた有限状態の変換がそのまま使えない場面があります。

OSとアーキテクチャは表を作る

システム系は、2026年度のページングとTLB、2025年度のパイプラインとキャッシュ、2024年度のキャッシュとIPC、2023年度のページ置換とCPI、2022年度のスケジューリングとパイプラインに現れます。どれも、公式を知っているだけでは点になりません。参照列、フレーム、ヒット/ミス、待ち時間、ストール、CPIの増分を表として追う必要があります。

ページ置換では、LRU、FIFO、最適置換の違いを過去と未来のどちらを見るかで説明します。TLBでは、TLBミスとページフォールトを同じものとして扱わない。キャッシュでは、容量ミス、競合ミス、ラインサイズ、ミスペナルティを分ける。パイプラインでは、ロードユースハザードだけが特別にストールを生むのか、分岐や構造ハザードも含めるのかを確認します。

典型ミスは、ページフォールト数だけを答えて表を残さないこと、CPI/IPCを逆数として扱う途中でペナルティの単位を落とすこと、スケジューリングで応答時間とターンアラウンド時間を混同することです。システム系は、答えよりも途中表が答案の価値になります。

アルゴリズムとグラフは不変量を書く

2025年度のグラフ連結度とサイクル、2024年度の連結性と全域木、2023年度の集合分割近似、2022年度の再帰的ソート、2026年度の対数時間探索は、どれも「アルゴリズム名を書けば終わり」ではありません。なぜ正しいか、どの量が単調に進むか、どの下界と比較しているかを答案に残す必要があります。

DFS/BFSなら、訪問済み集合と探索木を明示します。全域木なら、辺交換で木であり続ける理由を書く。近似アルゴリズムなら、平均下界と最大要素下界など、比較対象となる下界を先に置く。再帰式なら、再帰の枝数と部分問題サイズからオーダーを出します。対数時間探索なら、探索区間が毎回定数倍で縮む根拠を書きます。

証明問題で手が止まる受験生は、定理名を探しすぎています。まず小さな不変量を置いてください。「連結性が保たれる」「サイクルが作れる」「負荷の最大値は下界以上」「探索区間は半分になる」といった一文があるだけで、答案の方向が決まります。

参考書に戻る章

コンピュータ科学専攻は範囲が広いので、参考書を最初から読む計画は破綻しやすいです。過去問で止まった箇所から章単位で戻る方が現実的です。

戻る章対応する年度到達目標
形式言語とオートマトン2022〜2026DFA/NFA/PDA、正規表現、閉包性、非正規性、文脈自由性を構成で説明できる。
OS: スケジューリングとメモリ管理2022、2023、2025、2026Ganttチャート、LRU/FIFO/最適置換、TLB、ページフォールト、セマフォを表で追える。
計算機アーキテクチャ2022〜2026キャッシュミス、CPI/IPC、パイプライン、ロードユースハザード、命令フォーマットを式にできる。
アルゴリズム設計2022、2023、2026再帰式、近似比、下界、不変量、探索区間の縮小を説明できる。
グラフ理論2024、2025DFS/BFS、連結性、全域木、サイクル、k連結の証明の型を使える。
プログラミング言語2024値呼びと名前呼び、遅延評価、再帰呼び出し回数の違いをトレースできる。

4週間の演習順序

  1. 1週目は2024年度を解きます。形式言語、キャッシュ、グラフ、評価戦略を1年で見て、どの分野で答案の初手が出ないかを診断します。
  2. 2週目は2025年度を解きます。平方根言語、CPI分解、SRTFとセマフォ、連結度とサイクルを使い、理論とシステムの両方で証明の骨格を作ります。
  3. 3週目は2026年度を解きます。最新年度として、削除操作、TLB、パイプライン、有限差分と探索を確認し、表と証明の精度を上げます。
  4. 4週目は2022年度と2023年度を解きます。スケジューリング、再帰的ソート、ページ置換、CPI、近似アルゴリズムで基礎を固めます。

自己採点チェック

  • 形式言語で、DFA/NFA/PDAのどれを構成するか、またはどの閉包性を使うかを最初に書いたか。
  • 非正規性や文脈自由でないことを、反例や制限言語を使って説明したか。
  • ページ置換、TLB、スケジューリングで、表や時系列を答案に残したか。
  • CPI/IPCやキャッシュで、ミスペナルティ、ヒット率、命令数、サイクル数の単位を揃えたか。
  • パイプラインで、どの依存関係がストールを生むかを命令列上で示したか。
  • グラフや近似アルゴリズムで、不変量、下界、交換 argument、計算量を書いたか。
  • 最終答が合っていても、採点者が途中状態を追える答案になっているか。

今は深追いしないもの

コンピュータ科学専攻を目指すと、最新の機械学習論文、競技プログラミングの難問、分散システムの細かい実装、CPU設計の深い最適化まで手を広げたくなります。しかし直近5年の専門科目を見る限り、まず必要なのは、形式言語の構成、OSとアーキテクチャの表、アルゴリズムの不変量です。最新技術の広い読書は、これらの答案の型を作ってからで十分です。

特に短期対策では、実装だけに寄せすぎないでください。東大CSの答案では、プログラムを書けることより、なぜそのアルゴリズムが正しいか、なぜそのページが追い出されるか、なぜその言語クラスで閉じるかを説明する力が点になります。

公式情報で確認する入口

出願年度の試験形式、TOEFL、口述試験、志望研究室への連絡、専門科目の公開範囲は必ず公式情報で確認してください。この記事では、東京大学大学院 情報理工学系研究科のコンピュータ科学専攻 入試案内と、研究科全体の過去問アーカイブを参照しています。2026年5月25日時点で、コンピュータ科学専攻の入試案内には2022〜2026年度相当の専門科目リンクが掲載されています。

同じ研究科の他専攻と募集時期

2027年度修士の募集専攻・日程で、過去問のある専攻と現在募集している専攻を分けて確認できます。

情報理工学系研究科には、コンピュータ科学・数理情報学・システム情報学・電子情報学・知能機械情報学・創造情報学の6専攻があります。2027年度の修士冬入試はシステム情報学・創造情報学のみで、コンピュータ科学は含まれません。

途中式と最終答まで読める解説

問題本文は含みません。公式の問題冊子と併用してください。

専門科目(コンピュータ科学)の収録解説の分野(2022〜2026年度・20項目)

院試hubの収録解説5実施回・20項目の見出しを分野別に数えたものです。設問を分割した項目や、公開資料の制約を説明する項目を含むため、公式問題の大問数や完成答案数とは一致しません。が16項目(全体の80%)で最多。は5実施回すべてに出ています。

分野項目数全項目に占める割合直近の連続出題最後に出た回
1680%5回連続2026年度
情報315%2回連続2026年度

このほか1項目だけ収録した分野は 電磁気学・回路 です。

収録年度と解説項目数

院試hubに収録した5実施回の一覧です。どの回も解説見出しは4項目です。

東大 専門科目(コンピュータ科学)の解答で立てた注意点(48件)

院試hubの解説で、その設問だけに立てた小見出しです(「方針」「検算」のような全問共通の 見出しは除いています)。新しい実施回から並べています。

  • 2026年度 第2問 ページングとTLBページテーブルサイズの基本 / FIFOの落とし穴 / TLBとページフォールトの時間
  • 2026年度 第4問 有限差分と対数時間探索有限差分の係数 / 最大値探索の見方 / 一般の固定次数の場合
  • 2025年度 第2問 パイプラインとキャッシュCPIの分解 / ラインサイズの決まり方 / 命令フォーマットの比較
  • 2025年度 第3問 スケジューリングとセマフォ待ち時間の数え方 / SRTFとセマフォの相互作用 / デッドロックの確認
  • 2025年度 第4問 グラフの連結度とサイクルサイクルと2本のパス / 新しい頂点を足す補題 / 一般化の構造
  • 2024年度 第1問 形式言語と状態数NFAとDFAの差 / 平方数位置の非正規性

情報9件

  • 2026年度 第1問 形式言語とオートマトン削除操作の見方 / 正規表現の作り方 / オートマトン構成の核心
  • 2025年度 第1問 形式言語とオートマトン平方根言語の見方 / 正規言語で閉じる理由 / 文脈自由言語で同じ議論が使えない理由
  • 2023年度 第2問 集合分割の近似アルゴリズム平均下界と最大要素下界を組み合わせる / ループ回数の証明で見るべき不変量 / データ構造の選び方

電磁気学・回路3件

  • 2026年度 第3問 パイプラインと論理回路パイプライン時間の分解 / ゲート数制限への対応 / ロードユースハザード

頻出論点と、同じ論点を出す他大学

院試hubが解答した大問の論点を、他大学の出題と突き合わせたものです。併願先を 探すときの重なりの実数として使えます。

論点この専攻での出題出題年度同じ論点を出す他大学全国の出題大学
正規表現・形式言語3問2026・2025・2023京都大学・東京科学大学・東北大学・早稲田大学・千葉大学10大学
オートマトン理論2問2026・2024九州工業大学・静岡大学・早稲田大学・東京科学大学・大阪大学11大学
計算量理論1問2024名古屋大学・九州工業大学・大阪大学・京都工芸繊維大学・静岡大学9大学
ソートアルゴリズム1問2022京都大学・静岡大学・東京科学大学・京都工芸繊維大学・九州大学9大学
グラフ探索1問2024京都大学・静岡大学・名古屋大学・大阪大学・東京科学大学9大学

東大 公式の過去問の公開年度と公式解答例

公開されている年度
2022〜2026
公式の解答例
解答例の掲載なし
院試hubが最後にリンクを確認した日
2026-08-13
ページの内容
専門科目(コンピュータ科学)の筆記試験を和文・英文で年度別に公開。2022年度は8月実施・2月実施の2回分を掲載。2026年度は出題意図あり。解答例は非公開。

よくある質問

東大 コンピュータ科学の過去問は何年度から解くべきですか。

最初は2024年度が使いやすいです。形式言語と状態数、キャッシュとIPC、連結性と全域木、評価戦略と再帰の4問で、コンピュータ科学専攻の中心である理論・システム・アルゴリズム・言語処理を一度に確認できます。次に2025年度でスケジューリングとセマフォ、グラフ連結度まで広げ、最後に2026年度で最新のページング、パイプライン、有限差分と探索を確認してください。

この記事は何を根拠にしていますか。

院試hubで作成した東京大学 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻の2022〜2026年度、5年20問の解答解説と、大学が公開している過去問を確認しています。募集要項の要約ではなく、実際に答案を作るときの初手と失点条件を整理した記事です。

最初に固めるべき分野は何ですか。

形式言語・オートマトン、OS/メモリ管理、計算機アーキテクチャ、アルゴリズム/グラフの4本です。毎年、形式言語系の証明問題と、ページ置換・キャッシュ・パイプライン・スケジューリングなどのシステム系問題が並ぶため、この2本を先に安定させると年度差に強くなります。

形式言語の問題は何を答案に書けばよいですか。

言語操作の定義、DFA/NFA/PDAの構成、閉包性、反例言語、状態数の下界を先に書きます。正規言語か文脈自由言語かを結論だけで述べるのではなく、どのオートマトンをどう組み合わせるか、またはなぜ同じ議論が使えないかを短く示してください。

OSやアーキテクチャの計算問題はどう対策すべきですか。

ページ置換、TLB、キャッシュ、CPI/IPC、パイプライン、ロードユースハザード、スケジューリングは、表を書いて時刻や参照列を追う練習が必要です。公式を覚えるだけでなく、参照列、フレーム、ヒット/ミス、待ち時間、ストールを答案に残してください。

グラフやアルゴリズムはどの程度必要ですか。

DFS/BFS、連結性、全域木、サイクル、近似アルゴリズム、再帰式、対数時間探索は押さえるべきです。証明では、アルゴリズム名だけでなく、不変量、下界、交換 argument、計算量をセットで書く必要があります。

公式過去問と併用する解答・解説PDFを、東京大学の研究科・科目別に掲載しています。収録年度と価格は各ページで確認できます。

東京大学の解答PDF一覧で、東京大学の研究科・専攻・科目をまとめて確認できます。

院試対策ガイド一覧(大学別)