大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 生物情報 2023年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 生物情報 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 遺伝子発現制御とタンパク質機能
採点上の注意
この問題は語句暗記だけではなく、「DNA の情報が機能性タンパク質になるまでに何段階の制御点があるか」を説明できるかが見られる。転写因子だけを書いて終えると不足である。mRNA の寿命、翻訳効率、修飾、分解まで含めて書くと答案の厚みが出る。
典型ミス
- 「転写因子が DNA を作る」のように、転写因子とポリメラーゼの役割を混同しない。
- 翻訳後修飾を「翻訳後にタンパク質が増えること」と書かない。修飾は活性、局在、安定性、相互作用を変える操作である。
- 酵素以外の機能を問われた場合、酵素の例だけを並べない。
検算の視点
答案を見直すときは、発現量の制御点が の少なくとも四層に分かれているかを確認する。さらに、各層で一つずつ具体例を挙げていれば、部分点を取りこぼしにくい。
第2問 — 細胞周期と細胞分裂
答案の組み立て
M 期の記述では、「M サイクリンがあるから分裂する」だけでは不十分である。高 M-Cdk 活性で M 期へ入り、APC/C による分解で M 期から出る、という上昇と下降の両方を書くとよい。
典型ミス
- コヒーシンとコンデンシンを逆にしない。接着がコヒーシン、凝縮がコンデンシンである。
- 後期 A と後期 B をどちらも「染色体が動く」とだけ書かない。A は染色体が極へ近づく過程、B は極どうしが離れる過程である。
- 植物の細胞質分裂に収縮環だけを書かない。植物では細胞板形成が中心である。
第3問 — 膜輸送と神経シグナル
符号を間違えないための整理
内側を基準に と置く。細胞内が負なら、正イオンを外から内へ入れる電気項は負に働き、正イオンを内から外へ出す電気項は正に働く。Ca 排出が難しいのは、濃度勾配だけでなく電気的にも内向きに引かれるためである。
検算
Na を外へ出す操作は濃度勾配にも電位にも逆らうので、1 個あたり数 かかる。K を内へ入れる操作は濃度勾配には逆らうが電位には助けられるため、Na より小さい値になる。この大小関係になっていれば符号はおおむね正しい。
典型ミス
- Na/K ポンプを二次性能動輸送と書かない。ATP を直接使う一次性能動輸送である。
- グルコース輸送で、SGLT と GLUT の膜局在を逆にしない。
- シナプス小胞放出で、Na 流入を直接の放出トリガーとしない。小胞融合の直接トリガーは Ca 流入である。
第4問 — 細胞生物学用語
採点されやすい書き方
用語説明では「何であるか」「どこで働くか」「何を変えるか」の三点を短く入れると強い。例えば Ras なら「低分子量 GTPase」「増殖シグナル」「活性型持続で発がん」の三点で骨格ができる。
典型ミス
- GTP 結合型 Ras を不活性型と書かない。GTP 結合型が活性型である。
- プロテオグリカンを単なる糖だけの分子としない。タンパク質の芯と糖鎖からなる。
- スプライソソームをリボソームと混同しない。スプライソソームは RNA の切り貼り、リボソームは翻訳を担う。
- ヒストン修飾を DNA 配列変化と書かない。配列を変えずにクロマチン状態を変える制御である。
第5問 — DNA ヘリカーゼと老化研究
答案の骨格
この問題では「ヘリカーゼがほどく酵素である」という一文で終えてはいけない。複製停止、DNA 損傷応答、細胞老化、組織機能低下まで因果列で書くと、早老症状とのつながりが明確になる。
採点上の注意
ES 細胞の説明では、単に「遺伝子を入れる」と書くだけでは不足である。相同領域、選抜、正しいクローン確認、胚盤胞注入、キメラ、生殖系列伝達という順番が重要である。
典型ミス
- 研究計画で測定項目を書かず、抽象的な「老化を調べる」に留めない。
- 治療法探索で期待結果を寿命延長だけにしない。DNA 損傷、幹細胞機能、炎症、組織機能など中間指標を書く。
- ヘリカーゼ変異を必ず発がん抑制とだけ結び付けない。細胞死や幹細胞枯渇により、発育不全や組織萎縮も起こりうる。