大阪公立大学 院試 過去問 解答例
大阪公立大 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年度 院試 解答例・解説
大阪公立大学 理学研究科 物理学専攻 物理 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 連成振動と連成振り子
基準座標の意味
は2質点が同じ向きに動く成分であり,中央のばねの伸び を変えない。 そのため中央ばね は に現れない。一方 は2質点が互いに近づく・遠ざかる成分であり,中央ばねを2倍効かせるため が出る。
エネルギーでの確認
基準座標に直すと運動エネルギーにもポテンシャルエネルギーにも や の交差項が残らない。これは が独立な基準振動を表していることのよい検算である。
振り子で間違えやすい符号
ばねの伸びは であり,左の振り子についてはこの伸びを増やす向きと を増やす向きが逆になる。そのため厳密な運動方程式では が現れる。
小振幅モードの物理
同相モードでは2つのおもりの水平変位が等しいので,ばねの長さは一次近似で変化しない。したがって単振り子と同じ になる。逆相モードでは相対変位が となり,ばねによる復元力が加わるため角振動数が大きくなる。
第2問 — 電磁波と定常電流の磁場
波動方程式の減点ポイント
とできるのは,電荷のない真空領域を考えているからである。電荷密度を残したまま同じ変形をすると が残るので,条件を書かずに波動方程式だけを書くと論理が弱い。
直線電流の角度変換
有限直線電流の公式は暗記してもよいが,本問では から への変換を示すことが要求されている。 と を同時に使うと, と の因子が整理されて だけが残る。
三角形回路の検算
正三角形の中心から辺までの距離は内接円半径 である。外接円半径 と取り違えると答えが3倍ずれる。各辺の寄与の向きは右ねじの規則で面に垂直な同方向にそろう。
ソレノイドの考え方
円形回路の軸上磁場を先に求め,それを軸方向または半径方向に積分するのが最も安全である。多層の場合は「半径方向に一様に巻かれている」ことから と置く点が答案の要になる。
第3問 — 井戸型ポテンシャルとデルタ関数摂動
デルタ関数摂動の本質
デルタ関数型ポテンシャルは,波動関数の値そのものではなく導関数に不連続を作る。波動関数まで不連続にしてしまうと,二階微分にデルタ関数より強い特異性が出てしまい,問題のポテンシャルと整合しない。
偶奇性で一気に見通す
摂動は井戸の中央にあるので,中央で腹をもつ状態だけが影響を受ける。無限井戸の は,奇数 で中央が腹,偶数 で中央が節である。この観察だけで一次補正の有無を予測できる。
符号の確認
なのでデルタポテンシャルは斥力であり,影響を受ける準位は上昇する。導関数条件の符号を間違えると となり,物理的な予想と矛盾する。
直接解と摂動論の対応
直接解では対称解が超越方程式 を満たす。小さい で展開すると,奇数準位の波数だけが少し大きくなり,そのエネルギー上昇が摂動論の と一致する。これは答案の最後に書くと強い検算になる。
第4問 — 二準位磁性体の統計力学
自由エネルギーの定数
ギブス--ヘルムホルツの関係を積分すると積分定数が出る。この定数は全エネルギーを一様にずらすことに対応し,問題文の「エネルギーの原点は任意」という条件で落とせる。ここを書いておくと導出が答案として完結する。
二準位系の符号
磁気モーメントが磁場と同じ向きならエネルギーは ,逆向きなら である。ここを逆にしても分配関数は同じだが,磁化の符号の解釈で混乱しやすい。磁化は磁場方向を正にとれば正の値になる。
エントロピーの高温極限
では で2状態が等確率になるため,1粒子あたりのエントロピーは で最大になる。有限の磁場と温度では低エネルギー状態がやや多く占有されるため, だけ最大値から下がる。
断熱消磁の読み方
この模型では が のみで決まる。したがって断熱的に磁場を弱めると,同じエントロピーを保つため温度も同じ比率で下がる。これは断熱消磁冷却の基本式である。
比熱と磁化の検算
では準位差がないので ,また となる。低温強磁場の では となり,磁化は飽和値 に近づく。高温では となり,常磁性のキュリー則と一致する。