院試hub

名古屋大学 院試 過去問 解答例

名大 工学研究科 機械航空系 基礎部門・専門部門 2023年度 院試 解答例・解説

名古屋大学 工学研究科 機械航空系 基礎部門・専門部門 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 基礎数学:極限・微分積分・極値

方針

第1問は計算量よりも,置換と局所展開を正しく選べるかが重要である。極限では「00\cdot\infty 型」をそのまま扱わず,対数や置換で標準形に落とす。不定積分では x4+1x^4+1 を複素数で割らず,実二次式の積に分解すると答案として安定する。

検算

不定積分の対数項は分母の二つの二次式が入れ替わると符号が反転する。微分して x2/(x4+1)x^2/(x^4+1) に戻るかを,少なくとも係数 1/(42)1/(4\sqrt2)1/(22)1/(2\sqrt2) について確認するとよい。極値問題では f0f\to0 (x2+y2)(x^2+y^2\to\infty) なので,局所最大はあり得るが大域最小は内部では期待しにくい。

典型ミス

媒介変数表示は単位円を表すため,xx だけでは上半円・下半円の枝が決まらない。枝を明記せずに 1x2\sqrt{1-x^2} だけを書くと符号を落とす。また停留点 (0,0)(0,0) を機械的に極値に含める誤りが多い。二変数では停留点であっても鞍点の可能性があるため,少なくとも互いに独立な二方向での増減を確認する。

試験で書くべきポイント

極限はテイラー展開の次数,積分は部分分数分解,極値は停留条件と分類を答案に残す。特に最後の設問では「(0,0)(0,0) は停留点だが極値ではない」と明記すると,ヒントに対応した答案になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 基礎数学:固有値とスペクトル分解

方針

対称行列の二次形式は,直交行列で対角化するとそのまま標準形になる。ここでは固有ベクトルが互いに直交しているため,正規化して列に並べるだけでよい。後半は固有値が異なる 2×22\times2 行列のスペクトル分解であり,射影行列 P,QP,Q を使うと AnA^n が一行で出る。

検算

前半の UUUTU=EU^{\mathsf T}U=E を満たす。また n=1n=1AnA^n の式に代入すれば元の AA に戻る。後半も P+Q=EP+Q=EaP+(a+2)Q=AaP+(a+2)Q=A を代入確認すると,符号ミスを発見しやすい。

典型ミス

二次形式の交差項は,対称行列の非対角成分が二回現れるため 2xy2xy になる。xyxy としてしまう誤りが多い。また標準形は,選んだ固有ベクトルの順序によって p23q2-p^2-3q^2 または 3p2q2-3p^2-q^2 のように変わる。どちらでもよいが,使用した UU と整合している必要がある。

試験で書くべきポイント

固有値,正規化固有ベクトル,直交行列,対角化式の順に書くと採点者が追いやすい。射影行列では,公式だけでなく P2=PP^2=P, PQ=OPQ=O の確認を一度は成分で示すと,後の AnA^n の根拠が明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 基礎数学:常微分方程式

方針

一階方程式は,変数分離形・完全微分形・同次形のどれに入るかを最初に判定する。二階線形方程式は,同次解と特解を分け,右辺が三角関数なら未定係数法が最短である。

検算

(2) の特解は係数が大きく見えるが,代入すると (cos2x+8sin2x)+4(cos2x+8sin2x)+5(cos2x+8sin2x)=65cos2x (\cos2x+8\sin2x)''+4(\cos2x+8\sin2x)'+5(\cos2x+8\sin2x) =65\cos2x となる。直交曲線群は,得られた式を微分して傾きの積が 1-1 になることを確認すればよい。

典型ミス

完全微分形では,もとの式を Mdx+Ndy=0Mdx+Ndy=0 に直す段階で符号を誤りやすい。ここで M=(ay4x+1)M=-(ay-4x+1) とするのがポイントである。また直交曲線群では,元の曲線群そのものを解いてから直交化する必要はない。傾きを負の逆数にした微分方程式を解けば足りる。

試験で書くべきポイント

完全微分形の条件 M/y=N/x\partial M/\partial y=\partial N/\partial x と,直交条件 m1m2=1m_1m_2=-1 は必ず明記する。結果だけを書くより,分類の根拠を一行添える方が部分点を取りやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 基礎数学:ベクトル解析

方針

曲面が z=f(x,y)z=f(x,y) で与えられるとき,上向きの面素ベクトルは (fx,fy,1)dxdy (-f_x,-f_y,1)\,dxdy である。この形を使うと,単位法線と dSdS を別々に扱うより符号ミスが少ない。閉曲面の面積分は,直接各面を積分するより発散定理を使うのが最短である。

検算

接平面の式 x+y2z=0x+y-\sqrt2z=0 に点 (1,1,2)(1,1,\sqrt2) を代入すると 00 になる。面積分が 00 になる二つの設問は,積分関数が x+yx+y に比例し,正方形領域で奇対称になっていることからも確認できる。

典型ミス

円錐 z=x2+y2z=\sqrt{x^2+y^2} は原点で滑らかでないため,単位法線は原点では定義されない。答案では通常,r0r\ne0 と断って書けば十分である。また線積分では,曲線のパラメータ範囲を領域条件から決める必要がある。ここでは z=tz=t かつ 0z20\le z\le2 なので 0t20\le t\le2 である。

試験で書くべきポイント

面積分では「どちら向きの法線を使ったか」を必ず書く。発散定理では,ϕ\nabla\cdot\nabla\phi の計算と円柱座標でのヤコビアン rr を落とさないことが重要である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 基礎物理学:剛体回転とひもの拘束

方針

この問題の核心は,符号付きの拘束条件を最初に固定することである。反時計回りを正にすると,半径 2r2r 側の質点は下向きに動き,半径 rr 側の質点は上向きに動く。したがって y˙1=2rω\dot y_1=2r\omegay˙2=rω\dot y_2=-r\omega と書ける。この二式が決まれば,あとは並進運動方程式と回転運動方程式を連立するだけである。

慣性モーメントの扱い

穴は「存在する円柱」から差し引く負の質量として扱う。穴の中心が回転軸からずれているため,穴自身の中心まわりの慣性モーメントだけでなく,平行軸項 mDlD2m_Dl_D^2 が必要である。この項を落とすと,穴の位置 lDl_D が答に現れず,問題文の条件を使っていないことになる。

検算

ブレーキがある定常状態では ω˙=0\dot\omega=0 であり,二つの質点は等速運動をする。したがって張力はどちらも mgmg でなければならない。このときプーリには 2rmgrmg=mgr2rmg-rmg=mgr の正トルクが残り,それをブレーキトルク 4cr2ω4cr^2\omega が打ち消す。ここから ω=mg/(4cr)\omega=mg/(4cr) が再確認できる。

典型ミス

質点 DD の符号を +rω+r\omega としてしまうと,二つの質点が同時に下がる不自然な拘束になる。逆向きに巻かれていることを,速度拘束の符号に反映させる必要がある。またブレーキ力は速度に比例する力であり,トルクに直すともう一度半径 2r2r を掛けるため,減衰トルクは 4cr2ω4cr^2\omega である。

試験で書くべきポイント

答案では,拘束条件,二つの質点の運動方程式,プーリのトルク式を分けて書く。いきなり消去後の式だけを書くと,張力の符号やブレーキトルクの根拠が不明になり,部分点を失いやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 専門:熱工学

方針

熱工学では,閉じた系か流動系かを最初に分ける。前半は定常流動のエネルギー収支なので,内部エネルギーではなくエンタルピーを含む全エネルギー e=h+w2/2+gze=h+w^2/2+gz を使うのが自然である。後半は集中熱容量近似と一次元定常熱伝導を切り替える問題である。

検算

運動エネルギーと位置エネルギーを無視した式は,h=u+pvh=u+pv を代入すれば閉じた系の第一法則と同じ次元になる。温度分布では,x=0x=0q=h(T(0)TL)q=h(T(0)-T_{\infty L})x=x=\ellq=h(TRT())q=h(T_{\infty R}-T(\ell)) が同時に満たされることを確認できる。

典型ミス

工業仕事の符号を境界仕事と混同しやすい。可逆定常流では単位質量あたりの工業仕事が vdp-\int v\,dp であり,圧力が下がる向きなら正の仕事が取り出せる。また集中熱容量モデルでは,片側面積 SS が与えられているため両面伝熱なら 2hS2hS になる。

試験で書くべきポイント

エネルギー収支,エントロピー収支,熱抵抗の3本を明確に分けて書く。特にエントロピー生成率は「出口-入口の流出入エントロピー」から「熱で入るエントロピー」を引く形を示すと,符号の根拠が伝わる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 専門:流体力学

方針

前半は混合部を検査体積に取り,連続の式と運動量保存を使う。混合では運動エネルギーが散逸するため,出口運動量流束は入口の単純和より小さくなり,その不足分を圧力差が担う。後半は垂直平板に引き上げられる液膜の標準問題であり,十分発達流の仮定で速度分布は放物線になる。

検算

v0=v1v_0=v_1 なら混合による運動量損失はないので Δp=0\Delta p=0 となる。液膜流量は U=0U=0 なら負であり,重力で下向きに流れる。UU を大きくすると QQ が正になるので,条件式の向きも物理的に妥当である。

典型ミス

運動量流束の差の符号と圧力差の定義を混同しやすい。本解答では Δp=p2p1\Delta p=p_2-p_1 と定義したため,混合後の圧力上昇が正に出る。液膜では自由表面の条件は速度ゼロではなく,せん断応力ゼロである。

試験で書くべきポイント

面積 Aj,AaA_j,A_a を最初に定義すると,式が短くなる。最大化は x=d2/D2x=d^2/D^2 に置き換え,x(1x)x(1-x) の最大値として処理すれば計算ミスが少ない。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 専門:機械力学

方針

つり合い位置からの変位を使うと,重力の斜面方向成分は定数項として消える。二自由度系はエネルギーと散逸関数を正しく書ければ,あとは微分だけで運動方程式が出る。一自由度系では,静たわみ LL と固有角振動数の関係が鍵である。

検算

c=0c=0 とすれば,二自由度系の運動方程式はばねだけの連成振動になる。二式を足すと全体並進に対して壁側ばねだけが復元力を与える形になり,物理的に整合する。乾性摩擦の条件は,μ\mu が大きいほど必要な初期変位 hh が大きくなる。

典型ミス

図の二つ目のばね・ダンパは二つの質量の相対変位に効くため,x2x_2 だけでなく x2x1x_2-x_1 を使う。乾性摩擦では静止摩擦と動摩擦を混ぜないことも重要である。

試験で書くべきポイント

ラグランジュ方程式は散逸関数を含む形まで書く。リサージュから位相を読む設問では,振幅比 xF=0/X|x|_{F=0}/Xsinϕ\sin\phi に結びつける一行を残すと採点者に伝わりやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — 専門:制御工学

方針

制御工学の問題は,ブロック線図,周波数軌跡,状態空間の3部構成である。ブロック線図では信号の和差を式に直す。周波数応答では実部・虚部を明示し,Nyquist 判別では負の実軸との関係を見る。状態フィードバックは特性多項式の係数比較で処理する。

検算

H2H_2 の分母は帰還を閉じた後の特性多項式である。c=1c=-1 の安定条件は二次の Routh 条件そのもので,境界を含めない。状態フィードバックの係数は,b3>0b_3>0 で入力が最下段にだけ入る可制御正準形なので,符号を一つずつ確認しやすい。

典型ミス

図2は正帰還ではなく負帰還である。分母を 1G1G21-G_1G_2 とすると安定領域が変わる。可観測性では,速度や加速度を測れば角度もわかると考えがちだが,状態方程式上,x1x_1x2,x3x_2,x_3 に影響しないため初期角度は識別できない。

試験で書くべきポイント

Nyquist の安定判別では「開ループ右半平面極がない」「1-1 を囲まない」の二点を書く。単に図を描くだけでなく,負の実軸を横切らない根拠を一行で示すと答案として強い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 専門:材料力学

方針

前半は単純支持ばりの反力と BMD を求め,曲げ応力公式 σ=My/I\sigma=My/I を使う。断面二次モーメントは図形を分割して中立軸まわりに足し合わせる。後半は曲げひずみエネルギーだけを考えればよいので,部材ごとの曲げモーメントを作り,Castigliano の定理を適用する。

検算

BMD の最大値 Pab/(a+b)Pab/(a+b) は,荷重が中央にある a=b=L/2a=b=L/2 の場合に PL/4PL/4 となり,標準公式と一致する。正方形断面は回転していても正方形の重心軸まわりの断面二次モーメントは変わらない。

典型ミス

I 形断面ではフランジの平行軸項を忘れると断面二次モーメントを大きく誤る。折れ曲がりばりでは,部材 AB と BC で曲げモーメントの腕の長さが異なるため,単一の式で全体を処理しない。

試験で書くべきポイント

BMD は図を描く設問だが,答案では区分式と最大値を併記すると十分に伝わる。Castigliano の定理では,QQ も外力として残したまま全エネルギーを作り,最後に U/P\partial U/\partial P を取るのが安全である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

名古屋大学 基礎部門・専門部門 — 他の年度