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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 工学研究科 機械工学群 数学・機械力学・専門科目 2024年度 院試 解答例・解説

京都大学 工学研究科 機械工学群 数学・機械力学・専門科目 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 数学1:定数係数微分方程式

方針

前半は,指数関数を掛けたとき微分演算子が DD+aD\mapsto D+a にずれることを使う問題である。後半は連立方程式を演算子の代数計算として扱い,まず1変数の定数係数微分方程式に落とす。演算子どうしが可換であることが明記されているので,消去は通常の多項式計算と同じ感覚で進めてよい。

途中式の要点

消去では z=(D2D)yx2 z=(D^2-D)y-x^2 を先に書いてから第2式へ代入するのが安全である。右辺は 3x2+(D3)x2=3x2+(2x3x2)=2x 3x^2+(D-3)x^2=3x^2+(2x-3x^2)=2x となる。ここで符号を落とすと,特殊解も初期条件の定数もすべて変わる。

検算

得られた解について y=e2x(x212)+x2+12,y=e2x(x12)+12 y'=e^{2x}\left(\frac{x}{2}-\frac12\right)+\frac{x}{2}+\frac12,\qquad y''=e^{2x}\left(x-\frac12\right)+\frac12 である。したがって yyx2=x2e2xx2x2=z y''-y'-x^2=\frac{x}{2}e^{2x}-\frac{x}{2}-x^2=z となり,第1式は満たされる。また z=e2x(x+12)122x z'=e^{2x}\left(x+\frac12\right)-\frac12-2x を用いれば y+z3z=3x2y'+z'-3z=3x^2 も確認できる。

典型ミス

g=xe2xg=xe^{2x} に対する 3g3g3e2x3e^{2x} としてしまうミスが起こりやすい。また,重根 λ=2\lambda=2 に対応する項は e2xe^{2x} だけでなく xe2xxe^{2x} も必要である。初期条件では z(0)=0z(0)=0 を直接 y(0)=0y''(0)=0 としてよいのは,すでに y(0)=0y'(0)=0 があるためである。

試験で書くべきポイント

演算子恒等式の証明では,k=1k=1 と帰納法のステップを両方書く。連立方程式では,消去後の演算子 D(D2)2D(D-2)^2,右辺 2x2x,特殊解の試行形,初期条件から決まる定数を順に示せば,部分点を取りこぼしにくい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 数学2:ベクトル場と楕円上の反射

方針

前半は極座標で見ると,v/x2+y2\boldsymbol{v}/\sqrt{x^2+y^2} が周方向の単位ベクトルであることを使うと見通しがよい。後半は楕円の媒介変数表示を使い,接線,法線,反射ベクトルを順に作る。

途中式の要点

楕円上の向きは (x,y)=(2cost,sint) (x,y)=(2\cos t,\sin t) tt を増やす向きと一致する。特に第1象限では (2,0)(2,0) から (0,1)(0,1) へ進む。線積分の符号はこの向きで決まる。

検算

接線ベクトルと法線ベクトルは (27)(37)+(37)(27)=0 \left(-\frac{2}{\sqrt7}\right)\left(-\frac{\sqrt3}{\sqrt7}\right) +\left(\frac{\sqrt3}{\sqrt7}\right)\left(-\frac{2}{\sqrt7}\right)=0 を満たす。また,反射方向は入射方向と同じ大きさを持つ: (437)2+(17)2=1. \left(-\frac{4\sqrt3}{7}\right)^2+\left(-\frac17\right)^2=1. これにより,反射公式の符号が正しく入っていることを確認できる。

典型ミス

楕円の法線を円の半径方向 (x,y)(x,y) としてしまうと誤りである。楕円では F=(x/2,2y)\nabla F=(x/2,2y) が法線方向になる。また,反射公式では内向き法線でも外向き法線でも同じ反射方向が得られるが,途中で一度だけ符号を反転させると別の直線になる。

試験で書くべきポイント

線積分では媒介変数の範囲と向きを明記する。反射では「反射点」「単位法線」「反射方向」「直線と軸の交点」を順に書くと,幾何の説明として採点しやすい答案になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 機械力学1:中心力場と軌道脱出

方針

中心力場では,噴射していない区間の運動はエネルギー保存と角運動量保存で決まる。噴射は瞬間的な速度変化として扱い,噴射の前後で位置は変わらないと考える。したがって各噴射直後の速度をエネルギー式へ入れれば,無限遠速度が求まる。

途中式の要点

円軌道では v02a=GMa2GM=av02 \frac{v_0^2}{a}=\frac{GM}{a^2} \quad\Longrightarrow\quad GM=av_0^2 である。この置換により,最終結果から G,MG,M を消去できる。楕円軌道の遠点・近点では半径方向速度が0なので, avd=bvb av_d=bv_b を必ず使う。

検算

b=ab=a と形式的におくと,楕円軌道は円軌道に戻り vd=vb=v0 v_d=v_b=v_0 となる。また2回噴射の総速度増分の式は Δv2v0=1+(vv0)2+22 \frac{\Delta v_2}{v_0} =1+\sqrt{\left(\frac{v'_\infty}{v_0}\right)^2+2} -2 となり,1回噴射の式と同じ形に戻る。この極限は符号確認に有効である。

典型ミス

逆噴射量 Δvd|\Delta v_d| と2回目の増速量 Δve\Delta v_e を同じ符号で扱うと,総速度増分の式が崩れる。もう一つの典型ミスは,近点での速度 vbv_b を円軌道速度 GM/b\sqrt{GM/b} としてしまうことである。近点速度は楕円軌道上の速度であり,角運動量保存とエネルギー保存から求める。

試験で書くべきポイント

ラグランジュ方程式,保存量,円軌道条件 GM=av02GM=av_0^2,遠点・近点の2保存式,噴射後のエネルギー式を順に書く。最後の説明問題では,運動エネルギー増加 mvΔve+m2(Δve)2 m v\Delta v_e+\frac{m}{2}(\Delta v_e)^2 vv 依存性を明示すると,いわゆるオーベルト効果を力学的に説明した答案になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 機械力学2:ばね振り子と剛体振り子

方針

どちらも一般化座標を選んでラグランジアンを作るのが最短である。ばね振り子では rr が動くため,角度方向の式に 2r˙θ˙2\dot r\dot\theta の項が出る。剛体棒では,棒全体を積分して端まわりの慣性モーメント mL2/3mL^2/3 を自然に得る。

途中式の要点

棒の運動エネルギーは,質点の式へ単に mL2mL^2 を入れるのではなく 0Ls2mLds=mL23 \int_0^L s^2\,\frac{m}{L}\,ds=\frac{mL^2}{3} を使う。その結果 T=12mL23(θ˙2+sin2θϕ˙2) T=\frac12\frac{mL^2}{3} \left(\dot\theta^2+\sin^2\theta\,\dot\phi^2\right) となる。

検算

θ\theta が十分小さく,ϕ˙=0\dot\phi=0 の剛体棒では θ¨+3g2Lθ=0 \ddot\theta+\frac{3g}{2L}\theta=0 となる。これは長さ LL の一様棒の物理振り子の公式 ω2=mg(L/2)mL2/3=3g2L \omega^2=\frac{mg(L/2)}{mL^2/3}=\frac{3g}{2L} と一致する。

典型ミス

重力ポテンシャルの符号を +mgrcosθ+mgr\cos\theta と置くと,鉛直下向きの安定性が逆になる。剛体棒では,sin2θϕ˙\sin^2\theta\,\dot\phi が保存量であって,ϕ˙\dot\phi 自体が常に保存されるわけではない。微小振動ではこの点を忘れると係数が ω02(1cos2θ0)\omega_0^2(1-\cos^2\theta_0) などの誤った形になる。

試験で書くべきポイント

エネルギー式,ラグランジアン,一般化座標ごとの方程式を順に示す。最後の微小振動では,角運動量保存で ϕ˙\dot\phiθ\theta の関数に直してから線形化することを明記するのが重要である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 専門1:円管内の粘性流れ

方針

まず流体が何であっても成り立つ力のつり合いから τrz\tau_{rz} を決める。その後,構成式を使って速度勾配を求める。ニュートン流体とビンガム流体の差は,この構成式の部分だけに現れる。

途中式の要点

中心軸で有限という条件により,積分定数 C/rC/r 型の項は消える。ビンガム流体では τrz(r)=ΔP2Lr \tau_{rz}(r)=\frac{\Delta P}{2L}r τ0\tau_0 に達する半径 r0r_0 を境に,内側はプラグ,外側はせん断流動となる。

検算

ビンガム流体の速度式で r=Rr=R とすると vz=0v_z=0 になり,壁面条件を満たす。また r=r0r=r_0 で外側の式は ΔP4μBL(Rr0)2 \frac{\Delta P}{4\mu_B L}(R-r_0)^2 となり,内側の一定速度と連続につながる。さらに r00r_0\to0 とするとニュートン流体の放物線分布に戻る。

典型ミス

せん断応力の符号は定義に依存する。本問の定義では τrz\tau_{rz} は正であり,ニュートン流体の構成式にマイナスが付く。ここを落とすと速度が壁面に向かって増える非物理的な式になる。もう一つのミスは,プラグ領域の速度を0とすることである。0になるのは速度勾配であって速度ではない。

試験で書くべきポイント

力のつり合い,中心で有限,壁面で滑りなし,降伏半径,速度の連続性を順に書く。ビンガム流体の説明では「中心部は剛体的に動く」という言葉を入れると,グラフの意味が伝わりやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 専門2:水素利用と熱力学

方針

熱力学の前半は,ポテンシャルを変数変換する問題である。u(s,v)u(s,v) から h(s,p)h(s,p),さらに g(T,p)g(T,p) へ移ると,必要な偏微分関係が自然に出る。吸蔵モデルは独立な MM 個のサイトの二項分布であり,規格化因子を先に求めると平均値がすぐに出る。

途中式の要点

占有率の圧力依存性では,水素分子1個が水素原子2個に対応するため μH=12μH2 \mu_{\mathrm H}=\frac12\mu_{\mathrm{H}_2} となる。このため圧力依存性は pp ではなく p\sqrt p 型になる。ここがこの問題の最も間違いやすい点である。

検算

占有率の式は p0p\to0 で0,pp\to\infty で1に近づく。物理的にサイトは高々1個の水素原子しか持てないので,1を超えるグラフは不適である。反応熱では,標準状態で安定な単体の生成エンタルピーが0であるため,H2\mathrm{H_2}C(s)\mathrm{C(s)} の寄与を入れないことを確認する。

典型ミス

水の値を液体のまま使うと,水蒸気を反応物とする反応熱が44.0 kJ/molずれる。ジュール・トムソン係数の符号判定では,絞りで dp<0dp<0 であることを忘れると「μJT>0\mu_{\mathrm{JT}}>0 なら昇温」と逆に答えてしまう。

試験で書くべきポイント

空欄問題でも,単に値だけでなく,dh=Tds+vdpdh=Tds+vdpdg=sdT+vdpdg=-s\,dT+v\,dp,二項定理,化学ポテンシャルの半分関係を明記する。数値計算では,水蒸気の生成エンタルピー 241.8 kJ/mol-241.8\ \mathrm{kJ/mol} を最初に書くと後の計算が追いやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 専門3:丸棒・固定梁・半円リングの応力

方針

丸棒の基本式は,断面上の応力分布を積分して内力モーメントに等置するだけで得られる。固定梁では対称性により内力が半分ずつ分担される。半円リングは,断面ごとの曲げ成分とねじり成分へモーメントベクトルを分解し,変位は単位荷重法で求める。

途中式の要点

両端固定の中央ねじりでは,中央の回転角が左右で同じであるため ϕC=TL(L/2)GIp=TR(L/2)GIp,TL+TR=TC \phi_C=\frac{T_L(L/2)}{GI_p}=\frac{T_R(L/2)}{GI_p},\qquad T_L+T_R=T_C から TL=TR=TC/2T_L=T_R=T_C/2 と分かる。中央集中荷重では最大曲げモーメントの大きさが支点と中央で同じ PCL/8P_CL/8 になる。

検算

半円リングの荷重 PAP_A によるモーメントは,θ=0\theta=0 の自由端で0になる。また θ=π\theta=\pi の固定端では M2=0M_2=0T2=2PART_2=-2P_AR となり,固定端には主にねじりが現れる。この極限を確認すると,分解の符号ミスを見つけやすい。

典型ミス

ねじり応力の計算で,中央に加えた TCT_C がそのまま全断面に流れると考えると2倍の誤差になる。両端固定なので各半分の内力は TC/2T_C/2 である。組合せ応力では,曲げ応力とせん断応力を単純に足すのではなく,主応力 σ2+(σ2)2+τ2 \frac{\sigma}{2}+\sqrt{\left(\frac{\sigma}{2}\right)^2+\tau^2} で最大垂直応力を評価する。

試験で書くべきポイント

断面二次モーメントの導出では積分範囲を明示する。固定梁では反力や固定端モーメントをすべて求めなくても,最大曲げモーメントと中央たわみの式を根拠付きで書く。半円リングでは,最初にモーメントの正方向を宣言してから M(θ),T(θ)M(\theta),T(\theta) を書くと,符号の採点で不利になりにくい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 専門4:伝達関数と閉ループ制御

方針

ブロック図はすべて代数方程式として書くのが安全である。微分器が目標値に直接かかるか,出力フィードバック側にだけかかるかで,ステップ入力時のインパルス成分の有無が変わる。

途中式の要点

制御系2の入力は U=C1R(C1+C2)Y U=C_1R-(C_1+C_2)Y であり,C2C_2 は目標値 RR には掛からない。ここを U=(C1+C2)(RY) U=(C_1+C_2)(R-Y) と読んでしまうと,制御系1と同じ微分キックを持つ誤った式になる。

検算

4-1の G1(s)G_1(s)720s+25(s+5)34(s+4)=s+7s(s+4)(s+5) \frac{7}{20s}+\frac{2}{5(s+5)}-\frac{3}{4(s+4)} = \frac{s+7}{s(s+4)(s+5)} と整理できる。分子の s2s^2 項が消えるので,計算途中で消えなければ部分分数の係数を見直すとよい。4-3では Gcl(0)=1G_{\mathrm{cl}}(0)=1 となり,単位ステップの最終値が1になることも確認できる。

典型ミス

極配置条件 6<Res<1 -6<\operatorname{Re}s<-1 は,単なる安定条件ではない。直線 Res=1\operatorname{Re}s=-1Res=6\operatorname{Re}s=-6 の両方で変数をずらしてRouth-Hurwitz条件を適用する必要がある。また,振動的応答の条件は安定条件だけでなく判別式が負であることまで必要である。

試験で書くべきポイント

伝達関数の導出では,ブロック図から立てた式を1行書く。Routh-Hurwitzでは,シフト後の多項式を明示する。微分キックの説明では,δ(t)\delta(t) が実際に出る式を示すと説得力が高い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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