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熊本大 自然科学教育部 理学専攻 数学コース 数学 2026年度第2期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は位相・幾何1問、線形代数1問、微分積分・解析1問です。固有値・固有ベクトル、重積分と極座標が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — エルミート行列の対角化

方針

行列がエルミートであることに注目すると,固有値は実数で,異なる固有値の固有空間は直交する。したがって,計算の中心は特性多項式と固有空間の基底を正しく出すことに絞られる。

検算

det⁡A\det A は固有値の積で 13⋅5=51^3\cdot5=5 になる。対角化行列 UU の各列のノルムはそれぞれ1であり,列同士の内積が0になるので,U∗U=IU^*U=I の検算も容易である。

答案上の注意

重複固有値 11 については,固有ベクトルを1本だけ出して終えると不十分である。代数的重複度が3なので,固有空間の次元が3であることを一次独立性で確認してから,正規直交化してユニタリ行列を作る。

解答

与えられた行列を AA とする。直接計算により特性多項式は det⁡(λI−A)=(λ−5)(λ−1)3 \det(\lambda I-A)=(\lambda-5)(\lambda-1)^3 である。したがって det⁡A=5,固有値は 5 が 1 重,1 が 3 重 \det A=5,\qquad \text{固有値は }5\text{ が }1\text{ 重,}1\text{ が }3\text{ 重} である。

固有空間は,例えば次のように取れる。 E5=span⁡{(i−1i1)}, E_5=\operatorname{span}\left\{ \begin{pmatrix} i\\ -1\\ i\\ 1\end{pmatrix} \right\}, E1=span⁡{(i100),(−1010),(−i001)}. E_1=\operatorname{span}\left\{ \begin{pmatrix} i\\ 1\\ 0\\ 0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} -1\\ 0\\ 1\\ 0\end{pmatrix}, \begin{pmatrix} -i\\ 0\\ 0\\ 1\end{pmatrix} \right\}. 実際,これらをそれぞれ A−5IA-5I,A−IA-I に代入すると零ベクトルになる。 また E1E_1 の3本は一次独立であるから,固有値 11 の固有空間の次元は 代数的重複度と一致する。

ユニタリ対角化のため,E1E_1 の基底をグラム・シュミット直交化する。次の4本を列ベクトルにもつ行列を U=(i2−16−i23i212−i6123−12026−i23i20032312) U= \begin{pmatrix} \frac{i}{\sqrt2} & -\frac1{\sqrt6} & -\frac{i}{2\sqrt3} & \frac{i}{2}\\ \frac1{\sqrt2} & -\frac{i}{\sqrt6} & \frac1{2\sqrt3} & -\frac12\\ 0 & \frac2{\sqrt6} & -\frac{i}{2\sqrt3} & \frac{i}{2}\\ 0 & 0 & \frac3{2\sqrt3} & \frac12 \end{pmatrix} とおく。このとき各列は正規直交であり,最初の3列は固有値 11 に属し,最後の列は固有値 55 に属する。よって U∗U=I,U∗AU=diag⁡(1,1,1,5) U^*U=I,\qquad U^*AU=\operatorname{diag}(1,1,1,5) であり,これが求めるユニタリ対角化である。

最後に,エルミート行列の固有値が実数であることを示す。X=X∗X=X^* とし, Xv=λvXv=\lambda v を満たす v≠0v\ne 0 を取る。このとき標準内積について λ⟨v,v⟩=⟨Xv,v⟩=⟨v,Xv⟩=λ‾⟨v,v⟩ \lambda\langle v,v\rangle =\langle Xv,v\rangle =\langle v,Xv\rangle =\overline{\lambda}\langle v,v\rangle となる。ここで ⟨v,v⟩>0\langle v,v\rangle>0 だから λ=λ‾\lambda=\overline{\lambda},すなわち λ∈R\lambda\in\mathbb R である。

最終答

det⁡A=5\det A=5。固有値は 11(3重)と 55(1重)。上の UU により U∗AU=diag⁡(1,1,1,5)U^*AU=\operatorname{diag}(1,1,1,5)。

第2問 — 極座標と重積分

領域の分割

極座標に直すと,内外の円は r=1,2r=1,2,直線 x=1x=1 は r=sec⁡θr=\sec\theta になる。交点は 2cos⁡θ=12\cos\theta=1,つまり θ=π/3\theta=\pi/3 である。この角度を境に上限が sec⁡θ\sec\theta から 22 に変わる。

対数微分の使い道

問2の結果は sec⁡θ\sec\theta の原始関数を与えている。今回の重積分では ∫sec⁡θ dθ\int\sec\theta\,d\theta が出るため,この小問は問3の計算を見据えた誘導である。

典型ミス

x≤1x\le1 を忘れて単純な半円環として積分すると値が大きくなる。またヤコビアン rr を落とすと,積分される関数が cos⁡θ\cos\theta のままになり,半径方向の寄与を失う。

極座標と重積分の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 距離空間と集合への距離

中心となる不等式

集合への距離の問題では,三角不等式を各 a∈Aa\in A に対して書き,下限を取るのが定石である。下限を取る前に aa を固定しておくと,不等式の向きを間違えにくい。

連続性の強さ

単に連続であるだけでなく,11-Lipschitz 連続であることが分かる。これは距離関数が点を少し動かしても,その移動距離以上には変化しないという意味である。

触点と閉包

距離空間では,xx が AA の閉包に属することと,任意の半径の開球が AA と交わることが同値である。今回の d(x,A)=0d(x,A)=0 は,この閉包の条件を距離の言葉に置き換えたものである。

距離空間と集合への距離の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

  • 2026年度第2期(このページ・全3問)

    エルミート行列の対角化 / 極座標と重積分 / 距離空間と集合への距離

  • 2026年度第1期 専門(全4問)

    対称群の中心化群 / トーラスの基本群と被覆空間 / ルーシェの定理と留数計算

  • 2026年度第1期 専門基礎(全3問)

    下三角分解と連立一次方程式 / ガウス積分と誤差関数 / ハウスドルフ性・連結性・無限遠で消える関数

2026年度第2期の出題内容

全3問

この3問の分野は位相・幾何1問・線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数エルミート行列の対角化答案上の注意あり
第2問微分積分・解析極座標と重積分領域の分割 / 対数微分の使い道あり
第3問位相・幾何距離空間と集合への距離中心となる不等式 / 連続性の強さあり

2026年度第2期の解説には検算1件・典型ミス1件が付いています。

同じテーマを出した他大学・他年度

2テーマ

2026年度第2期は2問に2テーマが出ています。

前年度(2026年度第1期 専門)との違い

大問数
2026年度第1期 専門 4問 → 2026年度第2期 3問
2026年度第2期で新しく出たテーマ
固有値・固有ベクトル・重積分と極座標
2026年度第1期 専門の解答例

熊本大学の公式過去問

公開年度範囲
2026年度(掲載は直近年度分。2025年度以前は郵送請求で2年分のコピー配布)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
院試hubの最終確認
2026-08-13
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