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熊本大 自然科学教育部 理学専攻 数学コース 数学 2026年度第1期 専門基礎 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は微分積分・解析2問です。重積分と極座標、一様収束、テイラー展開が出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 下三角分解と連立一次方程式

方針

この問題は,直接 44 元連立方程式を解くよりも,指定された分解 A=BCA=BC を使う方が速い。BB は下三角,CC は結果として上三角になるため,前進代入と後退代入だけで全体が終わる。

検算

最後の解については A(9−17/223/2−9)=(1111) A\begin{pmatrix}9\\ -17/2\\ 23/2\\ -9\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}1\\1\\1\\1\end{pmatrix} を代入で確認できる。また det⁡A=−2\det A=-2 は,CC の対角成分の積から一瞬で検算できる。

答案上の注意

A=BCA=BC から C=AB−1C=AB^{-1} と書いてしまう誤りが起こりやすい。行列積は可換ではないので,左から B−1B^{-1} を掛けて C=B−1AC=B^{-1}A とする必要がある。

解答

与えられた BB は対角成分がすべて 11 の下三角行列であるから,前進代入で By=1,1=t(1,1,1,1) By=\mathbf{1},\qquad \mathbf{1}={}^t(1,1,1,1) を解く。上から順に y1=1,12y1+y2=1,34y2+y3=1,1619y3+y4=1 y_1=1,\qquad \frac12y_1+y_2=1,\qquad \frac34y_2+y_3=1,\qquad \frac{16}{19}y_3+y_4=1 となるので, y1=1,y2=12,y3=58,y4=919. y_1=1,\qquad y_2=\frac12,\qquad y_3=\frac58,\qquad y_4=\frac9{19}.

次に A=BCA=BC であるから C=B−1AC=B^{-1}A である。列ごとに Bcj=ajBc_j=a_j を解くと C=(22000430001946000−119). C= \begin{pmatrix} 2 & 2 & 0 & 0\\ 0 & 4 & 3 & 0\\ 0 & 0 & \frac{19}{4} & 6\\ 0 & 0 & 0 & -\frac1{19} \end{pmatrix}. 実際,第2行以降では直前の行を消去していく形になり,例えば第3列については (0374)−34(2400)=(031944) \begin{pmatrix}0\\3\\7\\4\end{pmatrix} -\frac34\begin{pmatrix}2\\4\\0\\0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}0\\3\\\frac{19}{4}\\4\end{pmatrix} という計算が現れる。

Cz=yCz=y も上三角行列の後退代入で解ける。第4成分から −119z4=919,194z3+6z4=58, -\frac1{19}z_4=\frac9{19},\qquad \frac{19}{4}z_3+6z_4=\frac58, 4z2+3z3=12,2z1+2z2=1 4z_2+3z_3=\frac12,\qquad 2z_1+2z_2=1 となる。したがって z4=−9,z3=232,z2=−172,z1=9. z_4=-9,\qquad z_3=\frac{23}{2},\qquad z_2=-\frac{17}{2},\qquad z_1=9.

行列式は分解を使えば短く求まる。BB の対角成分はすべて 11 なので det⁡B=1, \det B=1, また CC は上三角行列だから det⁡C=2⋅4⋅194⋅(−119)=−2. \det C =2\cdot4\cdot\frac{19}{4}\cdot\left(-\frac1{19}\right) =-2. よって det⁡A=det⁡B det⁡C=−2. \det A=\det B\,\det C=-2.

最後に,すでに By=1,Cz=y By=\mathbf{1},\qquad Cz=y を満たす zz を求めているので, Az=BCz=By=1 Az=BCz=By=\mathbf{1} である。したがって Ax=1Ax=\mathbf{1} の解は x=zx=z であり, x1=9,x2=−172,x3=232,x4=−9. x_1=9,\qquad x_2=-\frac{17}{2},\qquad x_3=\frac{23}{2},\qquad x_4=-9.

最終答

y=(11/25/89/19),C=(220004300019/46000−1/19),z=x=(9−17/223/2−9),det⁡A=−2. y=\begin{pmatrix}1\\[1mm]1/2\\[1mm]5/8\\[1mm]9/19\end{pmatrix},\quad C= \begin{pmatrix} 2 & 2 & 0 & 0\\ 0 & 4 & 3 & 0\\ 0 & 0 & 19/4 & 6\\ 0 & 0 & 0 & -1/19 \end{pmatrix}, \quad z=x=\begin{pmatrix}9\\[1mm]-17/2\\[1mm]23/2\\[1mm]-9\end{pmatrix}, \quad \det A=-2.

第2問 — ガウス積分と誤差関数

方針

中心は e−x2e^{-x^2} の整級数展開である。有界閉区間上の一様収束を先に押さえると,その後の項別積分が正当化され,テイラー展開まで自然に進む。

一様収束の見方

区間が有界であることから ∣x∣≤R|x|\le R とできる。あとは ∑R2n/n!\sum R^{2n}/n! で各項を上から押さえるだけでよい。ここで区間全体で同じ RR を使うことが,一様収束の答案で必ず書くべき点である。

数値計算の注意

小数第3位を四捨五入するのではなく,切り捨てる指定である。f(1)≃0.7468f(1)\simeq0.7468 なので,答は 0.750.75 ではなく 0.740.74 になる。

ガウス積分と誤差関数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — ハウスドルフ性・連結性・無限遠で消える関数

方針

3つの小問はいずれも標準事実だが,定義に戻って書くことが重要である。ハウスドルフ性は「異なる2点を交わらない開集合で分ける」,連結性は「非自明な開閉分離がない」,無限遠での収束は「大きな区間の外では値が小さい」と読む。

連結性の典型手

Q\mathbb{Q} の非連結性では,有理数で切るのではなく無理数で切る。有理数で切ると切断点そのものが片側に入ってしまい,開集合としての扱いがやや面倒になる。無理数を使えば,左右の相対開集合がそのまま Q\mathbb{Q} を分割する。

最大値・最小値の検算

無限遠で 00 に近づくだけでは,常に最大値と最小値の両方があるとは限らない。例えば正の山だけを持つ関数では最大値を取り,最小値は 00 に近づくだけで取らないことがあり得る。そのため結論は「最大値または最小値」であり,正の値を取る場合と負の値を取る場合に分けるのが自然である。

ハウスドルフ性・連結性・無限遠で消える関数の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(3年度)

  • 2026年度第2期(全3問)

    エルミート行列の対角化 / 極座標と重積分 / 距離空間と集合への距離

  • 2026年度第1期 専門(全4問)

    対称群の中心化群 / トーラスの基本群と被覆空間 / ルーシェの定理と留数計算

  • 2026年度第1期 専門基礎(このページ・全3問)

    下三角分解と連立一次方程式 / ガウス積分と誤差関数 / ハウスドルフ性・連結性・無限遠で消える関数

2026年度第1期 専門基礎の出題内容

全3問

この3問の分野は微分積分・解析2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—下三角分解と連立一次方程式答案上の注意あり
第2問微分積分・解析ガウス積分と誤差関数一様収束の見方 / 数値計算の注意あり
第3問微分積分・解析ハウスドルフ性・連結性・無限遠で消える関数連結性の典型手 / 最大値・最小値の検算あり

2026年度第1期 専門基礎の解説には検算1件が付いています。

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