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広島大学 院試 過去問 解答例

広島大 先進理工系科学研究科 数学プログラム 数学 2025年度 一般A 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問。線形代数1問・微分積分・解析1問。テーマタグは2件(固有値・固有ベクトル・一様収束)。2024年度 一般Bと共通のテーマは固有値・固有ベクトル。

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解説3問と大問1問の途中式・最終答(全3問)
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途中式と最終答(最終答つき3問)
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広島大 数学 2025年度 一般A 院試 過去問の出題内容(全3問)

この3問の分野は線形代数1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数逆行列・連立方程式と多項式空間上の線形写像—あり
第2問微分積分・解析関数列の一様収束と多変数関数の極値—あり
第3問—第3問 (I)/(II) 選択—あり

この年度の解説には試験で書くべきポイント3件・典型ミス3件が付いています。

2025年度 一般Aの出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

前年度(2024年度 一般B)との違い

大問数
2024年度 一般B 3問 → 2025年度 一般A 3問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル
2025年度 一般Aで新しく出たテーマ
一様収束
2024年度 一般Bのページを見る

第1問 — 線形代数:逆行列・連立方程式と多項式空間上の線形写像

方針

(A) は教科書通りの余因子展開,あるいは行基本変形で逆行列を求めるだけ。連立方程式は x=A−1b\boldsymbol{x}=A^{-1}\boldsymbol{b} で機械的に出る。(B) は「点での値」を取る作用素 φ\varphi を基底 {1,x,x2}\{1,x,x^2\} に対する行列 BB で表すのが基本。φ\varphi の固有値は固有値の集合だけで定まり,「点で評価する」写像なので Lagrange 補間との関係で λ=2, ±i\lambda=2,\,\pm i という綺麗な値が出る。(4) では固有ベクトル展開で φn\varphi^n の挙動を可視化し,「絶対値 >1>1 の固有値成分があれば発散,≤1\le 1 なら有界」という標準形分析に持ち込む。

典型ミス

  • (A) で det⁡A\det A の符号を間違えると A−1A^{-1} がそっくりそのまま符号反転してしまう。連立方程式の検算(Ax=bA\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b} を直接代入)を必ず行う。
  • (B)(2) で「φ\varphi は基底をどこへ送るか」を計算し列ベクトルとして並べる順序を間違いやすい。BB の第 jj 列は基底 jj 番目の像の係数。
  • (B)(4) で「有界」を「収束」と取り違えると ∣λ∣<1|\lambda|<1 までしか取れず,∣λ∣=1|\lambda|=1 の成分を落としてしまう。今回は ∣i∣=∣−i∣=1|i|=|-i|=1 で「振動するが有界」という固有値が含まれるのが鍵。
  • (4) で「実係数多項式の基底」を求める際,vi,v−i\boldsymbol{v}_i,\boldsymbol{v}_{-i} をそのまま並べてしまうと係数が虚数になる。和と差を取り C\mathbb C 基底のまま実係数化するのが正解。

試験で書くべきポイント

  • (A):det⁡A\det A と A−1A^{-1} の最終形を明示し,連立方程式は A−1bA^{-1}\boldsymbol{b} で求める旨を 1 行で示す。
  • (B)(2):φ(1),φ(x),φ(x2)\varphi(1),\varphi(x),\varphi(x^2) の計算過程を残し,BB の各列の意味を明示する。
  • (B)(3):特性多項式 −(λ−2)(λ2+1)-(\lambda-2)(\lambda^2+1) への因数分解を出し,固有値と固有ベクトルを対応関係込みで書く。φ\varphi の固有値・固有ベクトル(多項式表示)も忘れずに書く。
  • (B)(4):φn(f)=c22nv2+⋯\varphi^n(f)=c_2 2^n\boldsymbol{v}_2+\cdots の展開式を立てる→∣2n∣→∞|2^n|\to\infty から c2=0c_2=0 が必要十分→残る成分は ∣in∣=1|i^n|=1 で有界,と論証する。実係数基底は {x,1−x2}\{x,1-x^2\} で十分。

解答

逆行列。 A=(143362351)A=\begin{pmatrix}1 & 4 & 3\\ 3 & 6 & 2\\ 3 & 5 & 1\end{pmatrix} の行列式は,第1行展開で det⁡A=1⋅(6−10)−4⋅(3−6)+3⋅(15−18)=−4+12−9=−1 \det A = 1\cdot(6-10)-4\cdot(3-6)+3\cdot(15-18) = -4+12-9 = -1 となる。よって AA は正則であり,余因子行列の転置から A−1A^{-1} を計算する。

各 (i,j)(i,j) 余因子 CijC_{ij} は次の通り: C11=det⁡(6251)=−4,C12=−det⁡(3231)=3,C13=det⁡(3635)=−3,C21=−det⁡(4351)=11,C22=det⁡(1331)=−8,C23=−det⁡(1435)=7,C31=det⁡(4362)=−10,C32=−det⁡(1332)=7,C33=det⁡(1436)=−6. \begin{aligned} &C_{11}=\det\begin{pmatrix}6&2\\5&1\end{pmatrix}=-4,\quad C_{12}=-\det\begin{pmatrix}3&2\\3&1\end{pmatrix}=3,\quad C_{13}=\det\begin{pmatrix}3&6\\3&5\end{pmatrix}=-3,\\ &C_{21}=-\det\begin{pmatrix}4&3\\5&1\end{pmatrix}=11,\quad C_{22}=\det\begin{pmatrix}1&3\\3&1\end{pmatrix}=-8,\quad C_{23}=-\det\begin{pmatrix}1&4\\3&5\end{pmatrix}=7,\\ &C_{31}=\det\begin{pmatrix}4&3\\6&2\end{pmatrix}=-10,\quad C_{32}=-\det\begin{pmatrix}1&3\\3&2\end{pmatrix}=7,\quad C_{33}=\det\begin{pmatrix}1&4\\3&6\end{pmatrix}=-6. \end{aligned} 余因子行列の転置 A~\widetilde A は A~=(C11C21C31C12C22C32C13C23C33)=(−411−103−87−37−6) \widetilde A = \begin{pmatrix}C_{11}&C_{21}&C_{31}\\ C_{12}&C_{22}&C_{32}\\ C_{13}&C_{23}&C_{33}\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}-4 & 11 & -10\\ 3 & -8 & 7\\ -3 & 7 & -6\end{pmatrix} となるので, A−1=1det⁡AA~=(4−1110−38−73−76). A^{-1}=\frac{1}{\det A}\widetilde A = \begin{pmatrix}4 & -11 & 10\\ -3 & 8 & -7\\ 3 & -7 & 6\end{pmatrix}. AA−1AA^{-1} の対角成分が 11,非対角成分が 00 であることは直接代入で確認できる。

連立方程式の解。 Ax=bA\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b},b=(7,−8,9)⊤\boldsymbol{b}=(7,-8,9)^{\top} の解は x=A−1b\boldsymbol{x}=A^{-1}\boldsymbol{b} なので x=(4−1110−38−73−76)(7−89)=(28+88+90−21−64−6321+56+54)=(206−148131). \boldsymbol{x} = \begin{pmatrix}4 & -11 & 10\\ -3 & 8 & -7\\ 3 & -7 & 6\end{pmatrix} \begin{pmatrix}7\\ -8\\ 9\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}28+88+90\\ -21-64-63\\ 21+56+54\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}206\\ -148\\ 131\end{pmatrix}. 代入で確かに Ax=(7,−8,9)⊤A\boldsymbol{x}=(7,-8,9)^{\top} となる。

(B) 多項式空間上の線形写像 (1) φ\varphi の線形性

任意の f,g∈Vf,g\in V と α,β∈C\alpha,\beta\in\mathbb C に対して (αf+βg)(t)=αf(t)+βg(t)(t∈R) (\alpha f+\beta g)(t)=\alpha f(t)+\beta g(t)\quad(t\in\mathbb R) であるから,定義より φ(αf+βg)=(αf+βg)(−1)+(αf+βg)(0)x+(αf+βg)(1)x2 \varphi(\alpha f+\beta g) =(\alpha f+\beta g)(-1)+(\alpha f+\beta g)(0)x+(\alpha f+\beta g)(1)x^2 =α(f(−1)+f(0)x+f(1)x2)+β(g(−1)+g(0)x+g(1)x2)=αφ(f)+βφ(g). =\alpha\bigl(f(-1)+f(0)x+f(1)x^2\bigr)+\beta\bigl(g(-1)+g(0)x+g(1)x^2\bigr) =\alpha\varphi(f)+\beta\varphi(g). よって φ\varphi は C\mathbb C 上の線形写像である。

(2) 表現行列 BB

基底 {1,x,x2}\{1,x,x^2\} それぞれの像を計算する: φ(1)=1+1⋅x+1⋅x2,φ(x)=−1+0⋅x+1⋅x2,φ(x2)=1+0⋅x+1⋅x2. \varphi(1)=1+1\cdot x+1\cdot x^2,\quad \varphi(x)=-1+0\cdot x+1\cdot x^2,\quad \varphi(x^2)=1+0\cdot x+1\cdot x^2. したがって表現行列は B=(1−11100111). B=\begin{pmatrix}1 & -1 & 1\\ 1 & 0 & 0\\ 1 & 1 & 1\end{pmatrix}.

(3) BB および φ\varphi の固有値・固有ベクトル

特性多項式は,第2行で展開して det⁡(B−λI)=−1⋅det⁡(−1111−λ)+(−λ)det⁡(1−λ111−λ)=−(−(1−λ)−1)−λ((1−λ)2−1)=−(λ−2)−λ(λ2−2λ)=−λ3+2λ2−λ+2=−(λ−2)(λ2+1). \begin{aligned} \det(B-\lambda I) &= -1\cdot\det\begin{pmatrix}-1 & 1\\ 1 & 1-\lambda\end{pmatrix} +(-\lambda)\det\begin{pmatrix}1-\lambda & 1\\ 1 & 1-\lambda\end{pmatrix}\\ &= -\bigl(-(1-\lambda)-1\bigr)-\lambda\bigl((1-\lambda)^2-1\bigr)\\ &= -(\lambda-2)-\lambda(\lambda^2-2\lambda)\\ &= -\lambda^3+2\lambda^2-\lambda+2 = -(\lambda-2)(\lambda^2+1). \end{aligned} よって固有値は λ=2, i, −i \lambda=2,\ i,\ -i である。

λ=2\lambda=2 の固有ベクトル。 (B−2I)v=0(B-2I)\boldsymbol{v}=\boldsymbol{0} より −v1−v2+v3=0, v1−2v2=0, v1+v2−v3=0-v_1-v_2+v_3=0,\ v_1-2v_2=0,\ v_1+v_2-v_3=0。 v1=2v2v_1=2v_2,v3=3v2v_3=3v_2 となるので,v2=1v_2=1 ととれば v2=(2,1,3)⊤\boldsymbol{v}_2=(2,1,3)^{\top}。

λ=i\lambda=i の固有ベクトル。 第2行から v1=iv2v_1=iv_2。第1行に代入して (1−i)⋅iv2−v2+v3=0⇒v3=−iv2(1-i)\cdot iv_2-v_2+v_3=0 \Rightarrow v_3=-iv_2。 v2=1v_2=1 ととれば vi=(i,1,−i)⊤\boldsymbol{v}_i=(i,1,-i)^{\top}。

λ=−i\lambda=-i の固有ベクトル。 v−i=vi‾=(−i,1,i)⊤\boldsymbol{v}_{-i}=\overline{\boldsymbol{v}_i}=(-i,1,i)^{\top}(BB は実行列なので複素共役で得られる)。

φ\varphi の固有値・固有ベクトル。 基底同型 V≅C3V\cong\mathbb C^3 により φ\varphi の固有値も 2,i,−i2,i,-i,対応する固有ベクトル(多項式)は 2+x+3x2 (λ=2),i+x−ix2 (λ=i),−i+x+ix2 (λ=−i). 2+x+3x^2\ (\lambda=2),\quad i+x-ix^2\ (\lambda=i),\quad -i+x+ix^2\ (\lambda=-i). たとえば φ(2+x+3x2)\varphi(2+x+3x^2) は,f(−1)=4, f(0)=2, f(1)=6f(-1)=4,\ f(0)=2,\ f(1)=6 なので 4+2x+6x2=2(2+x+3x2)4+2x+6x^2=2(2+x+3x^2)。確かに固有値 22 に対応する。

(4) 反復が有界となる多項式の集合 WW

任意の f∈Vf\in V は固有ベクトル v2,vi,v−i\boldsymbol{v}_2,\boldsymbol{v}_i,\boldsymbol{v}_{-i} で展開できる: f=c2 (2+x+3x2)+ci (i+x−ix2)+c−i (−i+x+ix2)(c2,ci,c−i∈C). f=c_2\,(2+x+3x^2)+c_i\,(i+x-ix^2)+c_{-i}\,(-i+x+ix^2)\quad(c_2,c_i,c_{-i}\in\mathbb C). φ\varphi は固有ベクトルに対して固有値倍で作用するので,nn 回適用すると φn(f)=c2⋅2nv2+ci⋅invi+c−i⋅(−i)nv−i. \varphi^n(f)=c_2\cdot 2^n\boldsymbol{v}_2+c_i\cdot i^n\boldsymbol{v}_i+c_{-i}\cdot(-i)^n\boldsymbol{v}_{-i}. {v2,vi,v−i}\{\boldsymbol{v}_2,\boldsymbol{v}_i,\boldsymbol{v}_{-i}\} は線形独立なので,対応する基底変換は同型写像であり,C3\mathbb C^3 のノルムにおいて ∥φn(f)∥≍∣c2∣2⋅4n+∣ci∣2+∣c−i∣2 . \|\varphi^n(f)\|\asymp \sqrt{|c_2|^2\cdot 4^n+|c_i|^2+|c_{-i}|^2}\,. ここで ∣in∣=∣(−i)n∣=1|i^n|=|(-i)^n|=1 を用いた。 よって {φn(f)}n∈N\{\varphi^n(f)\}_{n\in\mathbb N} が有界 ⟺\Longleftrightarrow c2=0c_2=0 である。

したがって W={ci vi+c−i v−i∣ci,c−i∈C} W=\{c_i\,\boldsymbol{v}_i+c_{-i}\,\boldsymbol{v}_{-i}\mid c_i,c_{-i}\in\mathbb C\} となる。これは vi,v−i\boldsymbol{v}_i,\boldsymbol{v}_{-i} で C\mathbb C 上張られる集合だから,明らかに VV の C\mathbb C 線形部分空間である(和とスカラー倍で閉じる)。

実係数多項式による基底。 vi,v−i\boldsymbol{v}_i,\boldsymbol{v}_{-i} を組み合わせて実係数になる多項式を作る: 12(vi+v−i)=x,12i(vi−v−i)=1−x2. \tfrac12(\boldsymbol{v}_i+\boldsymbol{v}_{-i})=x,\qquad \tfrac{1}{2i}(\boldsymbol{v}_i-\boldsymbol{v}_{-i})=1-x^2. 逆に vi=ix−i(1−x2)+x=⋯\boldsymbol{v}_i=ix-i(1-x^2)+x=\cdots とは書きにくいので直接: vi=i(1−x2)+x,v−i=−i(1−x2)+x. \boldsymbol{v}_i=i(1-x^2)+x,\qquad \boldsymbol{v}_{-i}=-i(1-x^2)+x. これより {x, 1−x2}\{x,\,1-x^2\} は WW を C\mathbb C 上張る。 さらに 1−x21-x^2 と xx は線形独立(次数を見れば明らか)なので,これは WW の C\mathbb C 上の基底である。 構成要素はいずれも実係数多項式である。

なお φ\varphi をこの基底に制限した行列は,φ(x)=−1+x2=−(1−x2)\varphi(x)=-1+x^2=-(1-x^2),φ(1−x2)=φ(1)−φ(x2)=(1+x+x2)−(1+x2)=x\varphi(1-x^2)=\varphi(1)-\varphi(x^2)=(1+x+x^2)-(1+x^2)=x より φ∣W↔(01−10) \varphi|_W\leftrightarrow \begin{pmatrix}0 & 1\\ -1 & 0\end{pmatrix} となり,これは π/2\pi/2 回転(位数 44)であり実際に {φn(f)}\{\varphi^n(f)\} が有界となることが確認できる。

最終答

A−1=(4−1110−38−73−76)A^{-1}=\begin{pmatrix}4 & -11 & 10\\ -3 & 8 & -7\\ 3 & -7 & 6\end{pmatrix},連立方程式の解は (x,y,z)=(206, −148, 131)(x,y,z)=(206,\,-148,\,131)。

(1) 線形性を示した。 (2) B=(1−11100111)B=\begin{pmatrix}1 & -1 & 1\\ 1 & 0 & 0\\ 1 & 1 & 1\end{pmatrix}。

BB の固有値は 2,i,−i2,i,-i。固有ベクトルはそれぞれ (2,1,3)⊤, (i,1,−i)⊤, (−i,1,i)⊤(2,1,3)^{\top},\ (i,1,-i)^{\top},\ (-i,1,i)^{\top}。φ\varphi の固有値も同じ 2,i,−i2,i,-i で,固有ベクトル(多項式)は 2+x+3x2, i+x−ix2, −i+x+ix22+x+3x^2,\ i+x-ix^2,\ -i+x+ix^2。

WW は VV の C\mathbb C 線形部分空間であり,実係数多項式から成る一組の基底は { x, 1−x2 }\{\,x,\ 1-x^2\,\} である。

第2問 — 解析:関数列の一様収束と多変数関数の極値

方針

(A) は「導関数の一様収束+11 点での値の収束」から「関数自身の収束」へ持ち上げる古典的設定である。 (1)(2) は基本定理 fn(x)=fn(b)+∫bxfn′(t)dtf_n(x)=f_n(b)+\int_b^x f_n'(t)dt に従って,端点項と積分項を別々に扱う。 II が「広義」(コンパクト集合上一様)と書いてあるのは,II 自体が無限区間でも構わないからである。 (3) は端点情報がないと関数族はいくらでも上下にずらせる,ということを定数列で示す。 (B) は最大・最小の存在をまず無限遠での減衰から保証し,臨界点を連立で解く標準パターン。 偏微分の因数分解 1−x2+y21-x^2+y^2 と 1+x2−3y21+x^2-3y^2 が現れた段階で連立から x2=2,y2=1x^2=2,y^2=1 が綺麗に出る。

典型ミス

  • (A)(1) で「II 上で一様収束」と即答するのは誤り。I=RI=\mathbb R で aa が大きくずれると ∣x−a∣|x-a| が爆発し, ∫ax\int_a^x の一様評価が利かない。コンパクト集合に制限すべきこと(広義一様収束)に注意。
  • (A)(2) を「{fn}\{f_n\} 全体が収束する」と勘違いしないこと。問題文は「収束する部分関数列が取れる」と 書いている。Bolzano--Weierstrass で 1 点での収束部分列を取り出すのが鍵。
  • (A)(3) で「導関数が一様収束しているから関数も収束する」と短絡しないこと。fn=nf_n=n という 最も簡単な反例で十分。
  • (B) で最大・最小の存在を述べずにいきなり臨界点の値を答えると不十分。R2\mathbb R^2 は非コンパクト なので,無限遠での減衰の議論を必ず添える。
  • ケース A(x=0x=0)の値 00 を見落とすと「最大値が候補と一致するか」の比較が甘くなる。

試験で書くべきポイント

  • (A)(1):コンパクト集合 K⊂I×IK\subset I\times I を取り,それを覆う閉区間 L⊂IL\subset I で sup⁡L∣fn′−g∣=Mn→0\sup_L|f_n'-g|=M_n\to 0 と評価。∣x−a∣|x-a| を diam(L)\mathrm{diam}(L) で抑えて結論。
  • (A)(2):Bolzano--Weierstrass による {fnk(b)}\{f_{n_k}(b)\} の収束部分列の取り出し,基本定理による表示,極限関数 F=c+∫bxgF=c+\int_b^x g が C1C^1 である理由(gg が連続)を順に書く。
  • (A)(3):反例 fn(x)=nf_n(x)=n を提示し,fn′≡0f_n'\equiv 0 が一様収束する一方で fn(x)→∞f_n(x)\to\infty であることを 2 行で示す。
  • (B)(1):商の微分の途中経過を残し,因数分解した最終形を書く。
  • (B)(2):(i) 無限遠で f→0f\to 0 なので最大・最小は有界閉領域上で達成される,(ii) 臨界点条件を場合分け,(iii) 値を比較して結論,の三段構えで論述する。
解析:関数列の一様収束と多変数関数の極値の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 第3問 (I)/(II) 選択

方針

(I):Z\mathbb Z は離散位相,Q\mathbb Q は孤立点を持たない位相,という違いを開集合の言葉で記述するのが筋。 (A) は「Hausdorff 性で点列の極限が一意化される」ことの教科書的議論で,(3) の反例には密着位相をいれた小さな空間を持って来るのが定番。 (B) は (1)(2) で「孤立点を持つかどうか」という性質を具体的に確認し,(3) で同相は孤立点の存在を保つことを使う。

(II):要となるのは確率積分変換 Ui=F(Xi)∼U(0,1)U_i=F(X_i)\sim \mathrm U(0,1) により問題を U(0,1)\mathrm U(0,1) の i.i.d.\ 列の問題に帰着させる発想。 そうすると ϕ(Xi,Xi+1)=1Xi≤Xi+1\phi(X_i,X_{i+1})=\mathbf 1_{X_i\le X_{i+1}} は Bernoulli(1/2)\mathrm{Bernoulli}(1/2) 列となり, 隣接組のみが共分散を生む短距離相関構造が見える。P(X1≤X2≤X3)=1/6P(X_1\le X_2\le X_3)=1/6 から共分散 −1/12-1/12 を出すのが鍵。

典型ミス

(I):

  • (A)(1) で R\mathbb R の通常位相のような Hausdorff の例を挙げてしまうと反例にならない。粗い位相(密着・有限補集合など)が必要。
  • (A)(3) で「全射だから像の Hausdorff 性が遺伝する」と書くのは誤り。位相を粗くすればいくらでも崩れる。
  • (B)(3) を「Z⊂Q\mathbb Z\subset\mathbb Q に部分集合関係があるから〜」のような誤った包含議論で書かない。同相は集合論的でなく位相的不変量を比べる。

(II):

  • (1) で「単に確率積分変換」と一行で済ませず,「狭義単調増加かつ連続なので F−1F^{-1} が (0,1)(0,1) で取れる」事実を書くこと。
  • (4) で X2X_2 を共有しているからといって独立と勘違いしないこと。X2X_2 が両方の ϕ\phi に効くため,相関が出る。
  • (5) で「すべての対が独立」として n⋅1/4n\cdot 1/4 で終わってしまうと致命的に減点。隣接の共分散項 −1/12-1/12 を必ず計上する。
  • 共分散の係数で 22 をかけ忘れる(∑i≠j=2∑i<j\sum_{i\neq j}=2\sum_{i<j})のは頻発するミス。

試験で書くべきポイント

(I):

  • (A)(1):密着位相など具体的な反例位相空間を提示し,「xn=ax_n=a がどの開集合を見ても全項が含まれる」ことを示す。
  • (A)(2):背理法・互いに素な開近傍の取り方・N=max⁡(N1,N2)N=\max(N_1,N_2) の三段論法を明示する。
  • (A)(3):「X=RX=\mathbb R,Y={a,b}Y=\{a,b\}(密着位相)」と具体的に書き,連続性と全射性を確認した上で YY が Hausdorff でないことを述べる。
  • (B)(1)(2):部分空間位相の定義「Z∩U\mathbb Z\cap U,Q∩U\mathbb Q\cap U(UU は R\mathbb R の開集合)」を明示。
  • (B)(3):「Z\mathbb Z で {a}\{a\} が開」を相手の像 {h(a)}\{h(a)\} に運び,Q\mathbb Q では開でないことに矛盾,という流れを書く。

(II):

  • (1):FF が狭義単調増加かつ連続なので F−1 ⁣:(0,1)→RF^{-1}\colon (0,1)\to\mathbb R が定義可能。P(F(X1)≤u)=uP(F(X_1)\le u)=u を示す。
  • (2):「連続分布なので P(X1=X2)=0P(X_1=X_2)=0」と「対称性」を 2 行明示。
  • (3):ϕ(X1,X2)∼Bernoulli(1/2)\phi(X_1,X_2)\sim\mathrm{Bernoulli}(1/2) と書き,平均 1/21/2,分散 1/41/4 の根拠を簡潔に書く。
  • (4):E[ϕ(X1,X2)ϕ(X2,X3)]=P(X1≤X2≤X3)=1/6E[\phi(X_1,X_2)\phi(X_2,X_3)]=P(X_1\le X_2\le X_3)=1/6 を経由する計算を残す。
  • (5):∣i−j∣=1|i-j|=1 と ∣i−j∣≥2|i-j|\ge 2 で場合分けし,前者が −1/12-1/12,後者が独立で 00。Var=∑Var+2∑i<jCov\mathrm{Var}=\sum\mathrm{Var}+2\sum_{i<j}\mathrm{Cov} の式を使い,σn2=(n+2)/12\sigma_n^2=(n+2)/12 までまとめる。
第3問 (I)/(II) 選択の途中式・最終答をPDFで見る

広島大 数学 院試 過去問の収録4年度

  • 2026年度 一般A(全3問)

    行列式・逆行列・固有値・ジョルダン標準形・可換子 / 一様連続性・関数項級数・広義重積分 / 第3問 (I)/(II) 選択

  • 2025年度 一般A(このページ・全3問)

    線形代数:逆行列・連立方程式と多項式空間上の線形写像 / 解析:関数列の一様収束と多変数関数の極値 / 第3問 (I)/(II) 選択

  • 2024年度 一般B(全3問)

    線形代数:交代行列・対称行列と内積 / 微分積分:x log sin x の解析と級数 / 第3問 (I)/(II) 選択:位相 / 確率

  • 2023年度 一般B(全3問)

    線形代数:べき零行列と逆行列・対角化と極限 / 多変数関数の連続・偏微分・重積分 / 第3問 (I)/(II) 選択