電気通信大学 院試 過去問 解答例
電通大 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 専門科目(無機・有機化学・物理化学) 2022年度 院試 解答例・解説
電気通信大学 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 専門科目(無機・有機化学・物理化学) 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全2問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 選択問題:無機・有機化学
Moseley 式は Bohr 模型と遮蔽の合わせ技
特性 X 線では「どの殻へ落ちるか」と「内側電子がどれだけ核電荷を遮蔽するか」を分けて考える。 主量子数の差は や を作り,遮蔽は の形を作る。平方根を取ると が にほぼ比例するので,原子番号の決定に使える。
Cu(II) の長短結合は Jahn--Teller 効果
八面体錯体は, 軌道の不均等占有が残るため,正八面体のままでは不安定である。 軸方向に伸びると が下がり,電子配置のエネルギーを下げられる。結合長の説明では, 単に「歪む」と書くのではなく,どの軌道が下がり,どの結合が長くなるかまで対応させる。
有機構造決定は不飽和度と官能基から絞る
分子量86でカルボニルを持ち,水酸基を持たないという情報から,まずアルデヒドまたはケトンを考える。 さらに光学活性であるため,不斉中心を持つ骨格が必要になる。2-methylbutanal はこの条件を すべて満たすが,直鎖ケトンや対称性の高い異性体は光学活性を説明できない。
反応機構で配向性と立体化学を説明する
アニリンの直接ニトロ化では,反応場が酸性であることを見落とすと配向性を誤る。プロトン化された アニリニウム基はメタ配向性である。ブロモヒドリン生成では,環状ブロモニウムを経る anti 付加を 書ければ,生成物のラセミ性まで自然に説明できる。
第2問 — 選択問題:物理化学
熱力学量は単位をそろえてから計算する
は , は で与えられることが多い。 を引く前に を へ直すと,符号と桁を誤りにくい。 この反応は気体分子数が増えるので だが,300 K では吸熱量が大きく, は正に残る。
分圧式は無次元化を忘れない
平衡定数を分圧で書くときは,各分圧を標準圧力 で割った無次元量を使う。 標準圧力を省くと単位を持つ式になり,厳密には と呼べない。反応進行度の問題では, 係数の和が反応前後で 増えることに注意すると,全物質量 が自然に出る。
断熱仕事は内部エネルギーから出す
可逆断熱では と の関係で終状態を求め,仕事は第一法則から出すのが最短である。 膨張では温度が下がり, なので,系が外部にした仕事は正になる。符号規約を 答案の中で一度明示しておくと採点者に伝わりやすい。
アリルラジカルは三中心三電子系
アリルラジカルの本質は,3つの 軌道に3個の電子が入ることである。非結合性軌道に 不対電子が入るため,ラジカルは片端だけに局在せず,2本の C--C 結合の性質が平均化される。 励起で反結合性が増えると伸縮振動が低波数へ動く,という判断もこの軌道図から読める。