東北大学 院試 過去問 解答例
東北大 情報科学研究科 3群 機械・知能系 数学・専門科目 2023年度 院試 解答例・解説
東北大学 情報科学研究科 3群 機械・知能系 数学・専門科目 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全16問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 数学A-1
方針
1変数の はそのまま微分してもよいが、 としてから展開すると計算量が少ない。2次までなら、指数の中身も2次までで十分である。
検算
について、微分で確認すると , より である。また だから 。したがって2次項は であり、上の結果と一致する。
典型ミス
の2変数テイラー展開では、混合項 を落としやすい。ヘッセ行列の式を使う場合でも、2次項は であり、混合微分の係数にさらに が入ることを確認しておく。
試験で書くべきポイント
円板上の積分は、対称性から と の積分が等しいことを用いてもよい。 なので、その半分として が得られる。この方法は計算の検算として有効である。
第2問 — 数学A-2
方針
二次曲面の問題は、対称行列の固有値で主軸変換するのが最も確実である。とくに交差項 , は、行列の成分としては , に対応する。
楕円になる理由
対角化後の式が となるので、負の固有値方向に垂直な平面 で切ると となる。右辺が正で、左辺が正定値の2次形式なので、交線は楕円である。平面が原点を通る の場合は退化してしまうため、問題文の条件「原点を通らない」が効いている。
検算
固有ベクトルは互いに直交している。 対称行列の固有ベクトルとして自然な結果であり、計算ミスの発見に使える。
典型ミス
楕円の軸長を固有値そのものの比と混同しない。式 の半軸長は , である。したがって比は固有値比ではなく、その平方根の逆比で決まる。
第3問 — 数学A-3
方針
曲面が の形で与えられているので、面積も面積分も 平面への射影で処理する。法線の向きが指定されているため、単位法線を直接作るよりも を使う方が符号ミスが少ない。
検算
ストークスの定理を使うと、面積分は境界円周上の線積分でも求められる。境界を とおけば、上向き法線に対応する向きは反時計回りである。線積分 を計算しても となる。面積分で一次項が消えて円板面積だけが残ることと整合する。
典型ミス
面積分の integrand に単位法線だけを入れ、別に を付ける計算では、正規化因子を付け忘れたり重複させたりしやすい。本問では を一体で扱うのが安全である。
試験で書くべきポイント
法線の 成分が正であることを明記する。ここが逆向きだと面積分の答えは になり、計算過程が合っていても符号で失点する。
第4問 — 数学B-1
方針
第1式は 自身や を含まず、 と だけの式である。そこで と置くと1階方程式になる。第2式は標準的な1階線形方程式で、積分因子を使う。
第1式の注意
から としたとき、符号は連結な区間ごとに一定である。実数解として扱うなら となる区間で考える。院試答案では、一般解の形と任意定数が3個出ていることを書けば十分である。
検算
第1式の解について であるから となる。第2式では、同次解 と特解 を代入すれば右辺 が残る。
典型ミス
の符号を間違えやすい。積分結果を微分して戻るか、公式 に を入れて確認するとよい。
第5問 — 数学B-2
方針
左辺 は、方向ベクトル に沿った微分である。今回の変数変換では がこの方向に沿って一定となり、 が進行方向のパラメータになる。そのため偏微分方程式が だけの1階線形方程式に落ちる。
変数変換の検算
について である。これは左辺の微分方向に沿って が保存されることを意味する。新しい方程式に が残らないのはこのためである。
典型ミス
の連鎖律で となる点を落としやすい。ここで符号を間違えると、以後の式がすべてずれる。
試験で書くべきポイント
一般解の任意関数 は、境界条件で決まる。境界 では が全実数を動くので、 を一意に決定できる。この一言を書くと、条件の使い方が明確になる。
第6問 — 数学B-3
方針
連立線形微分方程式なので、ラプラス変換後は2元1次方程式になる。初期値が右辺に入るため、 の を落とさないことが重要である。
別解
行列で書くと 係数行列は であり、減衰 と回転が同時に現れる。そのため解が , の形になることは自然である。
検算
で一致する。また も一致し、初期条件も を満たす。
典型ミス
と を求めた後、平方完成された形 を崩して部分分数分解しようとすると時間がかかる。ラプラス変換表のシフト則をそのまま使うのが最短である。
第7問 — 熱力学1
方針
前半は、カルノー効率の半分という指定をそのまま熱効率に入れ、Aの排熱がBの受熱になることを使う。後半は、逆カルノー冷凍機のCOP から、取り去る熱量に対する仕事を積分する。
エントロピー生成の見方
中間温度 の熱源は、Aから熱を受け取りBへ同じ熱量を渡す。したがって複合エンジン全体のエントロピー収支では中間熱源の寄与は相殺され、最終的に高温熱源 と低温熱源 だけを見ればよい。この整理をすると、最小条件が の最小化に帰着する。
検算
は の間にあり、温度順序を満たす。また は相加相乗平均より であり、等号が で成り立つため、エントロピー生成最小条件の確認にもなる。
典型ミス
冷却過程のエントロピーは物質にとっては減少である。答案では「減少量」を正で書くのか、「変化量」を負で書くのかを明確にする。本解では減少量を正として のように書いた。
第8問 — 熱力学2
方針
状態2までは等積なので と が比例する。状態2から3は等温なので仕事は 。状態3から1は等圧なので仕事は とすれば、単位換算を最小限にできる。
p-v線図の読み方
等積過程は縦線、等温膨張は右下がりの曲線、等圧冷却は水平線である。状態3は状態1と同じ圧力上にあり、かつ状態2と同じ温度上にあるため、 とすぐに決まる。
検算
もとのサイクルでは である。したがって となり、仕事の和と一致する。
典型ミス
断熱膨張の温度比は である。指数を と逆にすると、温度が不自然に下がりすぎる。与えられた はこの指数を使うための数値である。
第9問 — 流体力学1
方針
複素ポテンシャルでは実部が速度ポテンシャル、虚部が流れ関数である。渦の項は なので、 を代入したときに実部へ が出る。
速度の符号
本解では標準的な定義 を用いた。そのため微分結果の虚部は である。ここを と読んでしまうと、渦による鉛直速度の符号が逆になる。
検算
とすれば純粋な渦であり、点 での速度は原点を中心とする接線方向になる。 における時計回り接線方向は右下向きなので、 となる。本解の符号はこれと一致する。
典型ミス
ベルヌーイの式では、無限遠方の速度を0としてよい。湧き出しと渦はいずれも速度が距離の逆数で減衰するためである。圧力式では速度の二乗を使うので、 の符号は最終的に消えるが、速度成分の設問では符号が採点対象になる。
第10問 — 流体力学2
方針
速度分布は、壁面で0、中央で最大という3条件で一意に決まる。力の設問は、助走区間の詳細なせん断応力分布を知らなくても、検査体積全体の運動量収支で求められる。
運動量補正
断面Bでは速度が一様でないため、運動量流束は ではなく である。ここを平均速度だけで処理すると、 の補正項を落とす。
検算
放物形分布では平均速度が最大速度の である。したがって は、平行平板間の十分発達層流の標準結果と一致する。
符号の注意
は「流体が壁に与える力」であり、運動量式に直接入る「壁が流体に与える力」と反対向きである。答案では正方向を明記し、式の符号の意味を示すと安全である。
第11問 — 材料力学1
方針
ねじり角は で決まる。ピン結合後は、ABとCDが同じ角度位置を共有する一方で、両軸の初期穴位置に のずれがある。この「初期ずれ」を適合条件に入れるのが核心である。
適合条件の意味
最終角を とすると、ABは から までねじれる。一方CDは、穴を合わせるための基準から見ると ずれていたので、最終的な弾性ねじれは である。両者のトルクが反対向きに釣り合うため となる。
検算
ABはCDより極断面二次モーメントが65倍大きい。そのため解放後の変形の大部分は細いCD側に出る。実際 となり、AB側のねじれ角は非常に小さい。物理的にも妥当である。
典型ミス
最大せん断応力では、ABについて外半径 を使う。中空軸の内半径 を使ってしまうと最大応力ではなく内面応力になる。また、トルクは両軸で同じ大きさでも、応力は が異なるため同じにはならない。
第12問 — 材料力学2
方針
全体を「直線片持ちはりAB」と「曲げモーメントを受ける円弧部BC」に分ける。ABにはCの荷重が、B点でのせん断力 と曲げモーメント として伝わる。円弧部のたわみはカスチリアーノの定理で求める。
曲げモーメントの確認
Bでは なので である。Cでは なので となる。自由端で曲げモーメントが0になるため、式 は端条件と整合している。
検算
直線部だけのC点寄与は である。円弧部寄与は であり、全体のたわみは直線部だけの場合より大きくなる。
典型ミス
B点のたわみだけをC点たわみとしてしまうと、B点回転による を落とす。円弧部はBから水平方向に だけ離れてCを持つので、Bの回転がCの鉛直変位に一次で効く。
第13問 — 機械力学1
方針
この系は糸が伸びず、プーリーとのすべりもないので、自由度は1つである。すべての変位と速度を に換算し、有効質量 と有効ばね定数 を作れば通常の1自由度減衰振動系になる。
半径比の意味
内側半径側の糸の移動量は、外側半径側の移動量の 倍である。そのため、質量項とばね項には速度または変位の二乗として が掛かる。半径比を一乗で入れるのは典型的なミスである。
重力の扱い
はつり合い位置からの変位であるため、重力ポテンシャルの一次項は静的つり合いで相殺される。運動方程式には重力項が現れない。もし自然長基準で座標を取る場合は、最後につり合い位置へ座標変換して同じ式に戻す必要がある。
検算
単位を見ると、 は であり、有効質量として加算できる。また はばね定数の単位のままであり、式の次元は整っている。
第14問 — 機械力学2
方針
小角近似では各質点の水平変位を としてよい。ばね力は水平力として働き、その一般化力は水平力に腕 を掛けたものになる。エネルギー法で作っても同じ行列式が得られる。
ばね の符号
中央ばねの伸びは である。したがって剛性行列の非対角成分は になる。同じ向きに動くと中央ばねの伸びが小さくなるため、この符号は物理的にも自然である。
検算
低次モードでは2つの振り子が同相で動くので、中央ばねの伸びは比較的小さい。高次モードでは逆相で動き、中央ばねが大きく変形する。そのため高次の固有角振動数の方が大きくなる。本解の はこの直観と一致する。
典型ミス
第2質量が であるため、質量行列の第2成分は である。剛性項にも重力復元 が入る。この係数4を落とすと、固有値が大きく変わる。
第15問 — 制御工学1
方針
内側に の負帰還、外側に単位負帰還がある。まずブロック図の信号関係を式にするのが重要で、いきなり標準形に当てはめると の位置を間違えやすい。
安定性
本問の閉ループは2次系である。2次多項式 は で安定である。ここでは , なので安定である。
定常速度偏差
速度入力では なので、位置入力のように単に としてはいけない。最終値定理で を計算するのが確実である。
根軌跡の検算
では となる。 で右辺が負になるため、極は共役複素数になり、実部は常に である。この性質を使えば図の概形を素早く描ける。
第16問 — 制御工学2
方針
非線形項は だけなので、状態方程式を書いた後、平衡点まわりでヤコビ行列を計算すればよい。特に のため、 まわりでは復元項の符号が反転する。
平衡点の意味
では、速度が0で、かつ なら加速度も0になる。したがって はすべて平衡点であり、問題で指定された3点はその一部である。
安定性の検算
は倒立位置に相当する。線形化で のように位置ずれを増やす向きの項が出るため、不安定極が現れるのは物理的にも自然である。
フィードバックゲインの符号
本解では制御入力を と定義した。この慣例でのゲインは である。もし と定義する流儀なら、ゲインの符号は になる。答案では自分の定義を必ず添える。