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京都大学 院試 過去問 解答例

京大 情報学研究科 通信情報システムコース 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。情報2問・電磁気学・回路2問・線形代数1問。テーマタグは8件(正規表現・形式言語・固有値・固有ベクトル・留数定理)。2022年度と共通のテーマは正規表現・形式言語・固有値・固有ベクトル・留数定理。

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収録5年度分の解答PDF:京都大学 情報学研究科 通信情報システムコース(¥2,880・紙面見本あり)

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解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

京大 通信情報システムコース 2023年度 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は情報2問・電磁気学・回路2問・線形代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—A-1 微積分・線形代数極座標の公式を覚えるだけにしない / ベータ関数の条件あり
第2問電磁気学・回路A-2 論理回路・順序回路NAND 実現の見方 / Mealy 型が状態を減らせる理由あり
第3問情報A-3 情報理論・符号化2 次拡大情報源の平均符号長 / 状態付き情報源のエントロピーあり
第4問—A-4 浮動小数点・パイプライン非正規化数の指数 / 分岐予測の比較あり
第5問微分方程式B-1 フーリエ変換・微分方程式偶関数の利用 / 留数計算の符号あり
第6問電磁気学・回路B-2 電気回路ブリッジ平衡の立て方 / 有限入力抵抗の影響あり
第7問線形代数B-3 OFDM・待ち行列CP 比率の扱い / 有限容量待ち行列あり
第8問—B-4 プロセッサ・キャッシュ分岐即値 / 列優先アクセスの衝突あり
第9問情報B-5 オートマトン・計算量NFA の読み取り / NP と co-NP の関係あり
第10問—B-6 文脈自由文法・構文木具象構文と抽象構文 / NNF 変換の不変条件あり

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に8テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 17問 → 2023年度 10問
2023年度で新しく出たテーマ
静電場・オペアンプ回路・ベータ関数・ガンマ関数
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第1問 — A-1 微積分・線形代数

極座標の公式を覚えるだけにしない

勾配の式は、(zr,zθ/r)(z_r,z_\theta/r) が (zx,zy)(z_x,z_y) を回転したものだと見ると一行で示せる。 ラプラシアンは係数 1/r1/r が出る点が落とし穴である。これは基底ベクトルの長さが θ\theta 方向で rr 倍になることに対応している。

ベータ関数の条件

恒等式の証明で q>1q>1 が必要なのは、x=1x=1 における (1−x)q−1(1-x)^{q-1} の境界項を 0 にするためである。単に部分積分するだけでなく、境界項の消滅を 明記すると答案として安定する。

固有空間の確認

AA は対称行列なので異なる固有値の固有空間は直交する。 λ=3\lambda=3 の二次元空間 x=y+zx=y+z と、λ=−3\lambda=-3 の方向 (1,−1,−1)T(1,-1,-1)^T は実際に直交しており、 計算結果の検算になる。

解答

(1) 極座標表示の微分公式

x=rcos⁡θ, y=rsin⁡θx=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta とおく。連鎖律より zr=zxcos⁡θ+zysin⁡θ,zθ=−rzxsin⁡θ+rzycos⁡θ z_r=z_x\cos\theta+z_y\sin\theta,\qquad z_\theta=-r z_x\sin\theta+r z_y\cos\theta である。したがって (zrzθ/r)=(cos⁡θsin⁡θ−sin⁡θcos⁡θ)(zxzy). \begin{pmatrix} z_r\\ z_\theta/r \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos\theta&\sin\theta\\ -\sin\theta&\cos\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix}z_x\\z_y\end{pmatrix}. 右辺の行列は直交行列なのでノルムを保ち、 zx2+zy2=zr2+1r2zθ2 z_x^2+z_y^2=z_r^2+\frac{1}{r^2}z_\theta^2 が従う。

また ∂∂x=cos⁡θ∂∂r−sin⁡θr∂∂θ,∂∂y=sin⁡θ∂∂r+cos⁡θr∂∂θ \frac{\partial}{\partial x} =\cos\theta\frac{\partial}{\partial r} -\frac{\sin\theta}{r}\frac{\partial}{\partial\theta}, \qquad \frac{\partial}{\partial y} =\sin\theta\frac{\partial}{\partial r} +\frac{\cos\theta}{r}\frac{\partial}{\partial\theta} である。これを zz に二度作用させ、θx=−sin⁡θ/r\theta_x=-\sin\theta/r, θy=cos⁡θ/r\theta_y=\cos\theta/r, rx=cos⁡θr_x=\cos\theta, ry=sin⁡θr_y=\sin\theta を用いて x,yx,y 方向の二階微分を足すと、一階微分係数の微分から出る項が整理されて zxx+zyy=zrr+1rzr+1r2zθθ z_{xx}+z_{yy} =z_{rr}+\frac{1}{r}z_r+\frac{1}{r^2}z_{\theta\theta} となる。

(2) ベータ関数

定義から B ⁣(12,1)=∫01x−1/2 dx=2. B\!\left(\frac12,1\right) =\int_0^1 x^{-1/2}\,dx =2. また x=sin⁡2ux=\sin^2 u とおくと、dx=2sin⁡ucos⁡u dudx=2\sin u\cos u\,du であり、 B ⁣(12,12)=∫01dxx(1−x)=∫0π/22 du=π. B\!\left(\frac12,\frac12\right) =\int_0^1\frac{dx}{\sqrt{x(1-x)}} =\int_0^{\pi/2}2\,du =\pi.

最後に p>0, q>1p>0,\ q>1 とする。部分積分により pB(p,q)=∫01pxp−1(1−x)q−1 dx=[xp(1−x)q−1]01+(q−1)∫01xp(1−x)q−2 dx=(q−1)B(p+1,q−1). \begin{aligned} pB(p,q) &=\int_0^1 p x^{p-1}(1-x)^{q-1}\,dx\\ &=\left[x^p(1-x)^{q-1}\right]_0^1 +(q-1)\int_0^1 x^p(1-x)^{q-2}\,dx\\ &=(q-1)B(p+1,q-1). \end{aligned} 境界項は p>0, q>1p>0,\ q>1 の仮定により 0 である。

(3) 固有値と固有ベクトル

A=(12221−22−21) A=\begin{pmatrix} 1&2&2\\ 2&1&-2\\ 2&-2&1 \end{pmatrix} について det⁡(λI−A)=(λ−3)2(λ+3) \det(\lambda I-A) =(\lambda-3)^2(\lambda+3) である。したがって固有値は λ=3(重複度 2),λ=−3 \lambda=3\quad(\text{重複度 }2),\qquad \lambda=-3 である。

λ=3\lambda=3 では (A−3I)(xyz)=0⟺x=y+z (A-3I)\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=0 \quad\Longleftrightarrow\quad x=y+z なので、固有ベクトル全体は { s(110)+t(101)  |  (s,t)≠(0,0) }. \left\{\,s\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix} +t\begin{pmatrix}1\\0\\1\end{pmatrix} \;\middle|\; (s,t)\ne(0,0)\,\right\}. λ=−3\lambda=-3 では固有空間は一次元であり、 { u(1−1−1)  |  u≠0 } \left\{\,u\begin{pmatrix}1\\-1\\-1\end{pmatrix} \;\middle|\; u\ne0\,\right\} である。

最終答

B ⁣(12,1)=2,B ⁣(12,12)=π,det⁡(λI−A)=(λ−3)2(λ+3). B\!\left(\frac12,1\right)=2,\qquad B\!\left(\frac12,\frac12\right)=\pi,\qquad \det(\lambda I-A)=(\lambda-3)^2(\lambda+3). 固有値は 3,3,−33,3,-3。λ=3\lambda=3 の固有空間は x=y+zx=y+z、λ=−3\lambda=-3 の固有空間は span⁡{(1,−1,−1)T}\operatorname{span}\{(1,-1,-1)^T\}。

第2問 — A-2 論理回路・順序回路

NAND 実現の見方

積和形を NAND--NAND 形に直すときは、各積項の否定を先に作り、最後の NAND で P1‾ P2‾ P3‾‾=P1+P2+P3\overline{\overline{P_1}\,\overline{P_2}\,\overline{P_3}}=P_1+P_2+P_3 を使う。3 入力 NAND で 2 入力積項を扱う場合は、同じ入力を 2 本に複製してよい。

Mealy 型が状態を減らせる理由

Moore 型は出力を状態に持たせるため、認識直後の出力状態が必要になる。Mealy 型は遷移に出力を 持たせられるので、接頭辞 1,11,1111,11,111 を覚える状態だけで済む。今回の符号は prefix-free なので、 認識後は必ず初期状態へ戻せる。

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第3問 — A-3 情報理論・符号化

2 次拡大情報源の平均符号長

ハフマン符号の平均長は、2 記号を 1 ブロックとして計算した後、最後に 2 で割る。 この割り算を忘れると、情報源記号 1 個あたりの平均符号長ではなくブロックあたりの値になる。

状態付き情報源のエントロピー

状態遷移が出力記号に依存していても、状態が分かれば出力分布は SAS_A または SBS_B の どちらかである。したがってエントロピー率は、定常分布で重み付けした条件付きエントロピーに なる。

巡回符号の検算

deg⁡G=4\deg G=4 なので次元は 7−4=37-4=3、符号語数は 23=82^3=8 個である。表に 8 個ちょうど並んで いること、各多項式の次数が 6 以下であることが基本的な検算になる。

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第4問 — A-4 浮動小数点・パイプライン

非正規化数の指数

非正規化数では仮数の暗黙の 1 が消える一方、指数は 1−bias1-\text{bias} を使う。 今回なら 2−22^{-2} に仮数 F/16F/16 を掛けるため、最小刻みは 2−62^{-6} である。

分岐予測の比較

ループ分岐は最後だけ不成立になることが多い。常に成立と予測する方式は最後に 3 サイクル払う だけなので、反復回数が多い場合に強い。一方、反復回数が少ない場合は、成立を外すたびに 1 サイクルだけ払う常に不成立方式が有利になる。

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第5問 — B-1 フーリエ変換・微分方程式

偶関数の利用

どちらのフーリエ変換も偶関数なので、虚部は消え、cos⁡\cos 積分だけで計算できる。 ω=0\omega=0 は式に代入せず、面積または極限で扱う。

留数計算の符号

cosh⁡z\cosh z の零点は iπ/2i\pi/2 から iπi\pi 間隔で並ぶ。 分母の微分が sinh⁡z\sinh z であること、上半平面では eiz=eix−ye^{iz}=e^{ix-y} が減衰することを 押さえると、閉路積分の向きと符号を誤りにくい。

B-1 フーリエ変換・微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — B-2 電気回路

ブリッジ平衡の立て方

中央枝に電流が流れないとき、中央上下の節点は同電位である。したがって左右それぞれの分圧比が 一致する。抵抗だけのホイートストンブリッジと同じ考え方を、複素インピーダンスに拡張すればよい。

有限入力抵抗の影響

増幅器の入力抵抗 rir_i が有限だと、帰還分圧点 VbV_b から入力側へ電流が流れる。 そのため単純な Vb=R1V2/(R1+RF)V_b=R_1V_2/(R_1+R_F) にはならない。理想利得の極限を取ると 非反転増幅器の標準利得 1+RF/R11+R_F/R_1 に戻る。

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第7問 — B-3 OFDM・待ち行列

CP 比率の扱い

CP 長が最大遅延以上であることから TCP≥1 μsT_{\mathrm{CP}}\ge1\,\mu\mathrm{s} が先に決まる。 比率が 1:91:9 なので有効シンボル長はその 9 倍であり、総シンボル長は 10 倍になる。 伝送速度の計算では CP を含む総時間で割る点が重要である。

有限容量待ち行列

状態 3 にいるときの到着はシステムに入らない。滞在時間に Little の法則を使うときは、 外部到着率 λ\lambda ではなく、受理された実効到着率 λ(1−PB)\lambda(1-P_{\mathrm{B}}) を使う。

B-3 OFDM・待ち行列の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — B-4 プロセッサ・キャッシュ

分岐即値

分岐先オフセットはバイト差ではなく、左 2 ビットシフト前の word 単位の即値で指定する。 今回の戻り先は PC+4PC+4 から 12 byte 戻るため、即値は −12/4=−3-12/4=-3 である。

列優先アクセスの衝突

ダイレクトマップでは「容量が足りそうか」だけでなく「同じ index に写るか」が重要である。 今回の 8 KiB キャッシュでは列方向ストライドが 16 ブロックで、32 行離れたブロックが同じ index に写るため、同じブロックの隣接列を読む前に追い出される。

B-4 プロセッサ・キャッシュの途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — B-5 オートマトン・計算量

NFA の読み取り

開始状態に a,ba,b の自己ループがあるため、受理に使う分岐を任意の位置まで遅らせられる。 その後に上側の aaaa または下側の babbab を読み切って終わる必要があるので、言語は 「末尾条件」として表せる。

NP と co-NP の関係

PP は補集合で閉じている。したがって P=NPP=NP が成り立つ世界では、NP も補集合で閉じて NP=co-NPNP=co\text{-}NP になる。これと矛盾する NP≠co-NPNP\ne co\text{-}NP が分かれば、P=NPP=NP は否定される。

B-5 オートマトン・計算量の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — B-6 文脈自由文法・構文木

具象構文と抽象構文

具象構文では括弧や優先順位が問題になるが、抽象構文では演算子の木構造だけを保存する。 そのため NNF 変換のような意味を保つ変換は、文字列ではなく AST 上で実装すると単純になる。

NNF 変換の不変条件

`nnf(e, neg)` は、`neg=False` なら ee と同値な NNF、`neg=True` なら ¬e\neg e と同値な NNF を 返す関数である。この不変条件を置くと、二重否定、ド・モルガン律、原子命題への否定の停止条件が 自然に整理される。

B-6 文脈自由文法・構文木の途中式・最終答をPDFで見る

京大 通信情報システムコース 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全10問)

    A-1 微積分・線形代数 / A-2 論理回路 / A-3 情報理論・符号

  • 2024年度(全10問)

    A-1 解析・線形代数 / A-2 論理回路・順序回路 / A-3 情報理論

  • 2023年度(このページ・全10問)

    A-1 微積分・線形代数 / A-2 論理回路・順序回路 / A-3 情報理論・符号化

  • 2022年度(全17問)

    A-1 微積分 / A-2 解析 / A-3 電磁気

  • 2021年度(全17問)

    A-1 微積分と線形代数 / A-2 解析 / A-3 電磁気