京都大学 院試 過去問 解答例
京大 情報学研究科 通信情報システムコース 2023年度 院試 解答例・解説
京都大学 情報学研究科 通信情報システムコース 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A-1 微積分・線形代数
極座標の公式を覚えるだけにしない
勾配の式は、 が を回転したものだと見ると一行で示せる。 ラプラシアンは係数 が出る点が落とし穴である。これは基底ベクトルの長さが 方向で 倍になることに対応している。
ベータ関数の条件
恒等式の証明で が必要なのは、 における の境界項を 0 にするためである。単に部分積分するだけでなく、境界項の消滅を 明記すると答案として安定する。
固有空間の確認
は対称行列なので異なる固有値の固有空間は直交する。 の二次元空間 と、 の方向 は実際に直交しており、 計算結果の検算になる。
第2問 — A-2 論理回路・順序回路
NAND 実現の見方
積和形を NAND--NAND 形に直すときは、各積項の否定を先に作り、最後の NAND で を使う。3 入力 NAND で 2 入力積項を扱う場合は、同じ入力を 2 本に複製してよい。
Mealy 型が状態を減らせる理由
Moore 型は出力を状態に持たせるため、認識直後の出力状態が必要になる。Mealy 型は遷移に出力を 持たせられるので、接頭辞 を覚える状態だけで済む。今回の符号は prefix-free なので、 認識後は必ず初期状態へ戻せる。
第3問 — A-3 情報理論・符号化
2 次拡大情報源の平均符号長
ハフマン符号の平均長は、2 記号を 1 ブロックとして計算した後、最後に 2 で割る。 この割り算を忘れると、情報源記号 1 個あたりの平均符号長ではなくブロックあたりの値になる。
状態付き情報源のエントロピー
状態遷移が出力記号に依存していても、状態が分かれば出力分布は または の どちらかである。したがってエントロピー率は、定常分布で重み付けした条件付きエントロピーに なる。
巡回符号の検算
なので次元は 、符号語数は 個である。表に 8 個ちょうど並んで いること、各多項式の次数が 6 以下であることが基本的な検算になる。
第4問 — A-4 浮動小数点・パイプライン
非正規化数の指数
非正規化数では仮数の暗黙の 1 が消える一方、指数は を使う。 今回なら に仮数 を掛けるため、最小刻みは である。
分岐予測の比較
ループ分岐は最後だけ不成立になることが多い。常に成立と予測する方式は最後に 3 サイクル払う だけなので、反復回数が多い場合に強い。一方、反復回数が少ない場合は、成立を外すたびに 1 サイクルだけ払う常に不成立方式が有利になる。
第5問 — B-1 フーリエ変換・微分方程式
偶関数の利用
どちらのフーリエ変換も偶関数なので、虚部は消え、 積分だけで計算できる。 は式に代入せず、面積または極限で扱う。
留数計算の符号
の零点は から 間隔で並ぶ。 分母の微分が であること、上半平面では が減衰することを 押さえると、閉路積分の向きと符号を誤りにくい。
第6問 — B-2 電気回路
ブリッジ平衡の立て方
中央枝に電流が流れないとき、中央上下の節点は同電位である。したがって左右それぞれの分圧比が 一致する。抵抗だけのホイートストンブリッジと同じ考え方を、複素インピーダンスに拡張すればよい。
有限入力抵抗の影響
増幅器の入力抵抗 が有限だと、帰還分圧点 から入力側へ電流が流れる。 そのため単純な にはならない。理想利得の極限を取ると 非反転増幅器の標準利得 に戻る。
第7問 — B-3 OFDM・待ち行列
CP 比率の扱い
CP 長が最大遅延以上であることから が先に決まる。 比率が なので有効シンボル長はその 9 倍であり、総シンボル長は 10 倍になる。 伝送速度の計算では CP を含む総時間で割る点が重要である。
有限容量待ち行列
状態 3 にいるときの到着はシステムに入らない。滞在時間に Little の法則を使うときは、 外部到着率 ではなく、受理された実効到着率 を使う。
第8問 — B-4 プロセッサ・キャッシュ
分岐即値
分岐先オフセットはバイト差ではなく、左 2 ビットシフト前の word 単位の即値で指定する。 今回の戻り先は から 12 byte 戻るため、即値は である。
列優先アクセスの衝突
ダイレクトマップでは「容量が足りそうか」だけでなく「同じ index に写るか」が重要である。 今回の 8 KiB キャッシュでは列方向ストライドが 16 ブロックで、32 行離れたブロックが同じ index に写るため、同じブロックの隣接列を読む前に追い出される。
第9問 — B-5 オートマトン・計算量
NFA の読み取り
開始状態に の自己ループがあるため、受理に使う分岐を任意の位置まで遅らせられる。 その後に上側の または下側の を読み切って終わる必要があるので、言語は 「末尾条件」として表せる。
NP と co-NP の関係
は補集合で閉じている。したがって が成り立つ世界では、NP も補集合で閉じて になる。これと矛盾する が分かれば、 は否定される。
第10問 — B-6 文脈自由文法・構文木
具象構文と抽象構文
具象構文では括弧や優先順位が問題になるが、抽象構文では演算子の木構造だけを保存する。 そのため NNF 変換のような意味を保つ変換は、文字列ではなく AST 上で実装すると単純になる。
NNF 変換の不変条件
`nnf(e, neg)` は、`neg=False` なら と同値な NNF、`neg=True` なら と同値な NNF を 返す関数である。この不変条件を置くと、二重否定、ド・モルガン律、原子命題への否定の停止条件が 自然に整理される。