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北海道大学 院試 過去問 解答例

北大 理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻 物理学 2024年度 院試 解答例・解説

北海道大学 理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻 物理学 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 力学

方針

前半は「中心力なら角運動量保存」「角運動量を使って角方向運動を有効ポテンシャルに押し込む」という標準形で解く。最接近点では r˙=0\dot r=0 になるので、速さの最小値は角運動量とエネルギー保存だけで決まる。軌道方程式そのものを解く必要はない。

後半は、一般化座標 x,θx,\theta を独立に取り、ばねの伸びを座標で表してからラグランジュ方程式を作る。重力はつり合い位置をずらすだけで、固有振動数には現れない。

途中式の要点

散乱の最終計算では、最接近点の半径 rminr_{\min} を直接求めるより rmin=lmvmin r_{\min}=\frac{l}{m v_{\min}} と置く方が短い。これによりエネルギー保存が vminv_{\min} の二次方程式になり、正の根を選ぶだけでよい。

滑車の問題では、線形化前の式 mx¨+K(xRθ)mg=0,Iθ¨KR(xRθ)+kR2θ=0 m\ddot x+K(x-R\theta)-mg=0,\qquad I\ddot\theta-KR(x-R\theta)+kR^2\theta=0 をまず書くことが重要である。つり合い位置まわりでは定数項が消え、固有値問題だけが残る。

検算

a0a\to0 の極限では斥力がなくなるので vminv0 v_{\min}\to v_0 となり、答は自然である。また aa が大きいほど vminv_{\min} は小さくなり、斥力ポテンシャルに運動エネルギーが移るという物理的解釈とも合う。

微小振動では ω2\omega^2 の次元が k/mk/m になっている。RR が消えるのは、回転角を長さ RθR\theta に換算した効果と円板の慣性モーメント IR2I\propto R^2 が対応しているためである。

典型ミス

中心力の角運動量保存で、r×F=0\boldsymbol r\times \boldsymbol F=0 を書かずに「保存する」とだけ述べる答案は減点されやすい。問われているのは保存則の利用ではなく保存の証明である。

滑車では xx が下向き正であるため、重力ポテンシャルは +mgx+mgx ではなく mgx-mgx である。また、右側ばねの伸びを RθR\theta としたら、左側ばねの伸びは同じ RθR\theta ではなく相対変位 xRθx-R\theta になる。

試験で書くべきポイント

力学の答案では、保存量、エネルギー式、有効ポテンシャルの三つを明確に分ける。微小振動の答案では、ポテンシャル、ラグランジアン、つり合い位置、線形化、行列式の順に書けば、途中で符号を確認しやすく部分点も取りやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 電磁気学

方針

導体系の問題は、まず誘導電荷を確定してからガウスの法則で電場を出し、電位は外側から内側へ連続につなぐ。回路部分は「導体 A と B の間の球形コンデンサー」がコイルで放電する問題として見る。

ポテンシャルの問題は、ベクトル解析の恒等式をマクスウェル方程式に代入するだけでよい。横波性は波動方程式ではなく、ゲージ条件から直接出る。

途中式の要点

導体球殻 B が中性であるため、内面と外面の電荷は Q,+Q -Q,\quad +Q である。導体内部 b<r<cb<r<c で電場が 00 になることを使えば、内面電荷の符号を間違えにくい。

放電の微分方程式では、電流の向きを A から B としているため I=dq/dtI=-dq/dt である。この符号を明示してから LI˙+RI=q/C0 L\dot I+RI=q/C_0 を書くと、最終的な II の方程式の符号が安定する。

検算

C0=4πε0ab/(ba)C_0=4\pi\varepsilon_0ab/(b-a) は、平行板ではなく同心球コンデンサーの形である。bb\to\infty とすると孤立球の容量 4πε0a4\pi\varepsilon_0a に近づくので妥当である。

波動方程式からは ω2=k2ε0μ0 \omega^2=\frac{k^2}{\varepsilon_0\mu_0} が出るので、速度は 1/ε0μ01/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0} であり、真空中の電磁波の速度と一致する。

典型ミス

導体 A と B をコイルで接続した後、全電荷 QQ が消えるわけではない。消えるのは A と B の間の電位差であり、全電荷は外表面に移るだけである。そのためジュール熱は全静電エネルギーではなく、A-B 間コンデンサーに蓄えられた分である。

接地後の導体 A の電荷を求める箇所では、導体 B の全電荷が QQ のまま保存される点を忘れやすい。B の外面電荷は単に QQ ではなく Q+qQ+q になる。

試験で書くべきポイント

電場と電位は領域ごとの場合分けが答案の骨格である。境界で電位が連続していることも確認しておくと、積分定数の誤りを防げる。ポテンシャルの設問では、(×A)=0\nabla\cdot(\nabla\times\boldsymbol A)=0×ϕ=0\nabla\times\nabla\phi=0 の二つを明示するだけで、前半の証明として十分に説得力がある。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 量子力学

方針

障壁問題は、右側の透過波の振幅 FF から左へ向かって境界条件を解くと、AABB が一度に得られる。確率流は同じ波数の領域 I と III で比較するため、透過率は単に F2/A2|F|^2/|A|^2 でよい。

角運動量問題は、交換関係、昇降演算子、ノルム計算、角運動量合成の順に進む。スピン軌道相互作用は l^s^\hat{\boldsymbol l}\cdot\hat{\boldsymbol s}J^2\hat{\boldsymbol J}^{\,2} で書き換えるのが最短である。

途中式の要点

AA の絶対値を計算するときは cosαiγsinα2=cos2α+γ2sin2α=1+(γ21)sin2α |\cos\alpha-i\gamma\sin\alpha|^2 =\cos^2\alpha+\gamma^2\sin^2\alpha =1+(\gamma^2-1)\sin^2\alpha を使う。ここで γ21=(k12k22)24k12k22 \gamma^2-1 =\frac{(k_1^2-k_2^2)^2}{4k_1^2k_2^2} となるため、問題で与えられた形に整理できる。

昇降演算子の係数は、状態ベクトルそのものを微分表示で求める必要はない。ノルム l,ml^l^±l,m \langle l,m|\hat l_\mp\hat l_\pm|l,m\rangle だけで決まる。

検算

sin(k2a)=0\sin(k_2a)=0 なら B=0B=0 となり、確かに完全透過である。V00V_0\to0 でも R0R\to0 となるので、障壁が消える極限と一致する。

スピン軌道の固有値は、J=3/2J=3/2 の四重縮退が上、J=1/2J=1/2 の二重縮退が下に来る。ζ>0\zeta>0 なので、ΔE3/2>ΔE1/2\Delta E_{3/2}>\Delta E_{1/2} であることを確認できる。

典型ミス

反射率と透過率を振幅比だけで書く場合、左右の波数が同じか確認する必要がある。本問では領域 I と III のポテンシャルが同じなので T=F2/A2T=|F|^2/|A|^2 でよいが、一般には確率流の速度因子が必要である。

角運動量では [l^z,l^±]=±l^±[\hat l_z,\hat l_\pm]=\pm\hbar\hat l_\pm[l^±,l^z]=l^±[\hat l_\pm,\hat l_z]=\mp\hbar\hat l_\pm の順序を取り違えやすい。問題がどちらの順序で聞いているかを必ず見る。

試験で書くべきポイント

障壁問題では、境界条件四本をすべて書くより、C,DC,D をいったん FF で表し、その後 A,BA,B に戻す答案が読みやすい。角運動量合成では、最高重率状態からの下降で J=3/2J=3/2 多重項を作り、残りを直交条件で作ると、係数の根号を間違えにくい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 熱力学・統計力学

方針

問1はエンタルピーの全微分を使うだけでよい。HHT,pT,p の関数と見る段階で、dHdH の二変数全微分を書くことが中心である。

問2は不可逆過程そのものを積分しようとしない。エントロピーが状態量であることを使い、可逆な迂回経路で状態差を求める。問3は幾何級数、lnZ\ln Z の微分、温度微分の三段階で完結する。

途中式の要点

定圧過程では dS=δQT=CpdTT dS=\frac{\delta Q}{T}=\frac{C_p\,dT}{T} なので、比熱が一定ならエントロピー変化は必ず対数になる。過冷却の設問で Cs(T0T1),Cl(T1T0) C_s(T_0-T_1),\quad C_l(T_1-T_0) のように熱量は一次式、エントロピーは対数式になる点を区別する。

分配関数では零点エネルギー eβω/2e^{-\beta\hbar\omega/2} を落とさない。これは熱容量には効かないが、内部エネルギーの Nω/2N\hbar\omega/2 には現れる。

検算

過冷却液体から固体への変化では、物質のエントロピーは下がるはずである。答 ΔS3=(ClCs)ln(T0/T1)Q0/T0 \Delta S_3=(C_l-C_s)\ln(T_0/T_1)-Q_0/T_0 は、問題の仮定により負になる。

調和振動子の高温極限で CVNkBC_V\to Nk_B となることは重要な検算である。低温では xx\to\infty により CV0C_V\to0 となり、第三法則とも整合する。

典型ミス

δQ\delta Q は状態量の微分ではないので、dQdQ と書いて QQ を状態関数のように扱うと熱力学の答案として弱い。準静的過程の熱量であることを示すには δQ\delta Q と書くのが安全である。

過冷却の不可逆過程で、放出熱を単純に T1T_1 で割って ΔS3\Delta S_3 とするのは誤りである。不可逆過程では ΔS=δQ/T\Delta S=\int \delta Q/T をそのまま使えないため、状態量として迂回経路から求める必要がある。

試験で書くべきポイント

問1は導出問題なので、定義 H=U+pVH=U+pV と全微分を省略しない。問2は、ΔS1+ΔS2+ΔS3=0\Delta S_1+\Delta S_2+\Delta S_3=0 を書けば、不可逆過程を直接積分していないことが明確になる。問3は、Z=Z1NZ=Z_1^Nβ=1/(kBT)\beta=1/(k_BT) を最初に宣言しておくと、以後の微分が読みやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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