北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻 物理学 2021年度 院試 解答例・解説
北海道大学 理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻 物理学 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 力学・相対論
方針
前半は剛体運動を「重心の並進」と「重心まわりの回転」に分けるのが最短である。微小振動なので、運動エネルギーは角度の時間微分の2次、重力ポテンシャルは角度の2次まで残す。後半は4元運動量保存を二乗し、電子の質量殻条件と光子の質量ゼロ条件を使って最大エネルギーの幾何を指定する。
途中式の要点
吊り下げ問題では、重心の横変位は2端の平均、棒の回転は2端の差で決まる。このため と が自然な基準座標になる。ポテンシャルエネルギーで を使うと、ラグランジアンが完全に対角化される。張力の問題では、切断直後の端2の鉛直加速度がゼロという拘束条件を書けるかが勝負である。
検算
モードでは なので棒は水平のまま動き、普通の単振り子と一致しなければならない。実際に となる。 モードでは で重心は横に動かず、回転だけなので単振り子より速い。張力 は静止時の各糸の張力 より小さく、切断直後に棒が回転し始めることとも整合する。
典型ミス
重心の鉛直変位を のように平均角だけで書くと、回転モードの復元力が消えてしまう。各端の高さ低下を先に計算してから平均を取ること。また、逆コンプトン散乱では だけを書いて反跳補正の分母を落としやすい。今回の数値では補正因子が約 で、無視すると3割程度ずれる。
試験で書くべきポイント
慣性モーメントは積分範囲を明記する。ラグランジアンでは と を分け、どの項まで残すかを書く。相対論の設問では、まず と質量殻条件を書き、最大エネルギーが正面衝突・前方散乱で得られることを一言添えると答案として強い。
第2問 — 電磁気学
方針
球対称の静電場は電場 ではなく電束密度 にGaussの法則を適用する。誘電率が場所に依存しても、自由電荷を包む球面では が先に決まる。電磁波の後半は、境界条件を電場だけでなく磁場にも立て、反射波の磁場符号を正しく扱う。
途中式の要点
誘電体中では となる。ポテンシャルは領域ごとに積分定数をつなぐより、無限遠から区間積分を足すとミスが少ない。接地時はBの電位がゼロで、外側の電場もゼロになる点が非接地の場合との違いである。
検算
容量の分母は長さの逆数の次元をもつので、 で割ると容量の次元になる。もし と近い極限を考えると、誘電体部分の寄与が真空球殻の積分に連続的につながる。光の反射率は で , , になり、媒質差が消える極限と一致する。
典型ミス
導体Bを接地しない設問で、Bの外側の電場をゼロにしてしまう誤りが多い。孤立した中性導体では内面と外面に誘起電荷が分かれるため、外側にも電場が残る。電磁波では のマイナス符号を落とすと、 の符号が逆になる。符号は位相反転を表すため、振幅反射率の問題では重要である。
試験で書くべきポイント
各領域の式を場合分けで明示し、導体内部では電場がゼロであることを書く。Maxwell方程式から波動方程式を出す設問では、 を使って とする過程を書く。境界条件は「接線成分が連続」と言葉でも式でも示すと採点者に伝わりやすい。
第3問 — 量子力学
方針
調和振動子は交換関係、数演算子、相互作用表示の3段階に分ける。時間依存摂動は、与えられた指数演算子の公式を使うために、最終的な時間発展を と の指数に分解する。散乱問題は、確率流で を定義し、有限幅井戸では境界条件を4本立てて反射振幅を求める。
途中式の要点
では に 、 に が付く。時間積分後に両者の係数が同じになるのは、 が偶関数であるためである。散乱の反射率では、井戸の中の波数 が外側の より大きい点に注意するが、式の形は有限障壁と同じで を実数として扱えばよい。
検算
はPoisson分布であり、 となる。井戸散乱では のとき になり、井戸内に半波長が整数個入る共鳴透過の条件と一致する。 では となり、幅に関係なく になることも確認できる。
典型ミス
の逆変換の符号を間違えると の零点エネルギーが正しく出ない。相互作用表示では と の順序を逆にしないこと。散乱では透過率を としてよいのは左右の漸近領域の波数が同じだからであり、一般には速度比を掛ける必要がある。
試験で書くべきポイント
連続の方程式はSchrodinger方程式と複素共役を並べて引き算する形を示す。井戸の反射率は最終式だけでなく、4つの接続条件を明記すれば途中点を取りやすい。無反射エネルギーでは の制限を書き忘れない。
第4問 — 統計力学
方針
理想気体では と を含む古典分配関数から出発する。平均場Isingは、1スピン問題に落として自己無撞着方程式を作り、 近傍の傾きで転移温度を決める。熱機関は効率だけでなく熱流量も に依存するため、仕事率 を最大化する。
途中式の要点
エントロピーの示量性は、Stirling公式で を入れた後に初めて正しく出る。平均場方程式では まで簡約してから、 を使う。熱機関では、 を上げると効率は上がるが熱流 は下がるため、その積に最大が生じる。
検算
理想気体の結果は と を再現する。 は を同時に2倍にすると2倍になり、Gibbsのパラドックスを避ける形になっている。平均場Isingでは で 、 で となり物理的である。熱機関の最大効率式は でゼロになり、温度差がない極限と合う。
典型ミス
理想気体で を落とすと、エントロピーが示量変数にならない。Ising模型では相互作用のペア数 を入れ忘れると がずれる。また、 の は磁気モーメントの大きさであり、理想気体の質量 とは別文脈で使われている点に注意する。熱機関ではCarnot効率をそのまま最大化して としてしまうと、熱流がゼロになり仕事率もゼロになる。
試験で書くべきポイント
分配関数の位相空間積分、Stirling公式の適用、熱力学量を微分で出す流れを書く。平均場では から を計算して自己無撞着方程式に至る過程が採点対象である。熱機関では を明示し、微分して最大条件を出すだけで簡潔に満点答案にできる。