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北海道大学 院試 過去問 解答例

北大 理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻 物理学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問。テーマタグは7件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・剛体の回転運動)。2021年度と共通のテーマは調和振動子・剛体の回転運動・ハミルトン形式。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

北大 物理学 2023年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学解析力学途中式の意味あり
第2問電磁気学・回路電磁気学—あり
第3問量子力学—途中式の意味あり
第4問熱・統計力学——あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に7テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 4問 → 2023年度 4問
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第1問 — 解析力学

方針

前半は、自然長を含む座標 xjx_j のまま固有値問題に入ると式が長くなる。静止位置 cjc_j からの変位 qj=xj−cjq_j=x_j-c_j に直して、ばねの伸びを q2−q1q_2-q_1, q3−q2q_3-q_2 と書くのが最短である。後半は、支点まわりの剛体回転であり、まず対称軸まわりの慣性モーメント、次に重力トルクを見る。

途中式の意味

連成振動の行列は km(1−10−12−10−11) \frac{k}{m} \begin{pmatrix} 1&-1&0\\ -1&2&-1\\ 0&-1&1 \end{pmatrix} の固有値問題である。端の台車にはばねが1本だけ、中央の台車にはばねが2本効くため、対角成分が 1,2,11,2,1 になる。固有値 00 は全体の並進であり、ばねが全く伸びない運動を表す。

検算

(A,A,A)(A,A,A) では q2−q1=q3−q2=0q_2-q_1=q_3-q_2=0 なので復元力はゼロである。(A,0,−A)(A,0,-A) では中央は動かず左右が逆位相、(A,−2A,A)(A,-2A,A) では中央が大きく逆向きに動く。節の数が増えるほど振動数が大きくなるので、k/m\sqrt{k/m}, 3k/m\sqrt{3k/m} の順序も物理的に妥当である。

典型ミス

弾性エネルギーを k2(x2−x1)2+k2(x3−x2)2\frac{k}{2}(x_2-x_1)^2+\frac{k}{2}(x_3-x_2)^2 と書くと自然長 ll を落としている。ただし固有振動では、静止位置からの変位に直すと ll は消える。また、特性方程式で mω2−km\omega^2-k と k−mω2k-m\omega^2 の符号を混在させると固有値の符号を誤りやすい。

試験で書くべきポイント

ラグランジアン、3本の運動方程式、行列式の非自明解条件、3つの固有振動数、3つの固有ベクトルを順に書けば満点に近い。コマでは、重心が支点から距離 ll にあること、トルクが rG×Mg\mathbf{r}_{\mathrm{G}}\times M\mathbf{g} であること、トルクの向きが保存量を決めることを明記する。

解答

1. 連成振動

静止位置を c2−c1=l,c3−c2=l c_2-c_1=l,\qquad c_3-c_2=l とし、微小変位を qj=xj−cj(j=1,2,3) q_j=x_j-c_j\qquad (j=1,2,3) で表す。運動エネルギーと弾性エネルギーは T=m2(x˙12+x˙22+x˙32), T=\frac{m}{2}\left(\dot{x}_1^2+\dot{x}_2^2+\dot{x}_3^2\right), V=k2(x2−x1−l)2+k2(x3−x2−l)2=k2(q2−q1)2+k2(q3−q2)2. V=\frac{k}{2}(x_2-x_1-l)^2+\frac{k}{2}(x_3-x_2-l)^2 =\frac{k}{2}(q_2-q_1)^2+\frac{k}{2}(q_3-q_2)^2. したがってラグランジアンは L=T−V. L=T-V.

オイラー・ラグランジュ方程式より mq¨1=k(q2−q1), m\ddot{q}_1=k(q_2-q_1), mq¨2=k(q1−2q2+q3), m\ddot{q}_2=k(q_1-2q_2+q_3), mq¨3=k(q2−q3). m\ddot{q}_3=k(q_2-q_3). ここで qj=Ajeiωtq_j=A_j e^{i\omega t} とおくと (k−mω2−k0−k2k−mω2−k0−kk−mω2)(A1A2A3)=0. \begin{pmatrix} k-m\omega^2 & -k & 0\\ -k & 2k-m\omega^2 & -k\\ 0 & -k & k-m\omega^2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} A_1\\ A_2\\ A_3 \end{pmatrix} =0. 非自明解の条件は det⁡(k−mω2−k0−k2k−mω2−k0−kk−mω2)=0 \det \begin{pmatrix} k-m\omega^2 & -k & 0\\ -k & 2k-m\omega^2 & -k\\ 0 & -k & k-m\omega^2 \end{pmatrix}=0 であり、固有値は ω2=0,ω2=km,ω2=3km. \omega^2=0,\qquad \omega^2=\frac{k}{m},\qquad \omega^2=\frac{3k}{m}. よって基準振動数は ω0=0,ω1=km,ω2=3km. \omega_0=0,\qquad \omega_1=\sqrt{\frac{k}{m}},\qquad \omega_2=\sqrt{\frac{3k}{m}}. A1=AA_1=A と規格化すると、それぞれの基準振動は (A1,A2,A3)=(A,A,A), (A_1,A_2,A_3)=(A,A,A), (A1,A2,A3)=(A,0,−A), (A_1,A_2,A_3)=(A,0,-A), (A1,A2,A3)=(A,−2A,A). (A_1,A_2,A_3)=(A,-2A,A).

2. 対称コマ

円盤の対称軸が棒と一致している。棒を zz 軸に一致させたとき、zz 軸まわりの慣性モーメントは円盤の中心軸まわりの値で Iz=12Ma2. I_z=\frac{1}{2}Ma^2. 角速度 ω0\omega_0 で回転しているとき、 L=Izω0 ez=12Ma2ω0 ez. \mathbf{L}=I_z\omega_0\,\mathbf{e}_z =\frac{1}{2}Ma^2\omega_0\,\mathbf{e}_z. 重心は支点から距離 ll の位置にあるので、z=0z=0 を基準にした力学的エネルギーは E=12Izω02+Mgl=14Ma2ω02+Mgl. E=\frac{1}{2}I_z\omega_0^2+Mgl =\frac{1}{4}Ma^2\omega_0^2+Mgl.

棒の向きを単位ベクトル n\mathbf{n} で表すと、重心位置は rG=ln. \mathbf{r}_{\mathrm{G}}=l\mathbf{n}. 重力は −Mgez-Mg\mathbf{e}_z であるから、支点まわりのトルクは N=rG×(−Mgez)=−Mgl n×ez. \mathbf{N} =\mathbf{r}_{\mathrm{G}}\times(-Mg\mathbf{e}_z) =-Mgl\,\mathbf{n}\times\mathbf{e}_z. 棒が zz 軸から角度 θ\theta だけ傾いているので ∣N∣=Mglsin⁡θ. |\mathbf{N}|=Mgl\sin\theta. 例えば棒が xzxz 平面内で +x+x 側へ傾いている瞬間には N=Mglsin⁡θ ey. \mathbf{N}=Mgl\sin\theta\,\mathbf{e}_y.

重力トルクは n\mathbf{n} にも ez\mathbf{e}_z にも垂直である。したがって、角運動量の棒方向成分は自転の大きさを変えず、また zz 軸方向成分も保存される。定常歳差では θ\theta が一定なので、ω0\omega_0 と ωz\omega_z は重力によって時間変化しない。

最終答

T=m2∑j=13x˙j2,V=k2(x2−x1−l)2+k2(x3−x2−l)2. T=\frac{m}{2}\sum_{j=1}^{3}\dot{x}_j^2,\qquad V=\frac{k}{2}(x_2-x_1-l)^2+\frac{k}{2}(x_3-x_2-l)^2. ω=0,k/m,3k/m, \omega=0,\quad \sqrt{k/m},\quad \sqrt{3k/m}, 対応する規格化を A1=AA_1=A にとれば (A,A,A),(A,0,−A),(A,−2A,A). (A,A,A),\quad (A,0,-A),\quad (A,-2A,A). コマについて Iz=12Ma2,L=12Ma2ω0 ez,E=14Ma2ω02+Mgl, I_z=\frac12 Ma^2,\quad \mathbf{L}=\frac12 Ma^2\omega_0\,\mathbf{e}_z,\quad E=\frac14 Ma^2\omega_0^2+Mgl, N=ln×(−Mgez),∣N∣=Mglsin⁡θ. \mathbf{N}=l\mathbf{n}\times(-Mg\mathbf{e}_z),\qquad |\mathbf{N}|=Mgl\sin\theta.

第2問 — 電磁気学

方針

この問題は「場がエネルギーを運ぶ」ことと「結合した回路のエネルギー」を同じ電磁気の言葉で扱う構成である。コンデンサでは E\mathbf{E}, H\mathbf{H}, S\mathbf{S} の向きを丁寧に決める。コイルでは鎖交磁束からエネルギーを作り、最後の力は MM の距離依存性だけを微分する。電磁波では、時間依存を eiωte^{i\omega t} とした符号に合わせる。

検算

ポインティングベクトルの大きさは VdIw \frac{V}{d}\frac{I}{w} であり、断面積 dwdw を掛けると VIVI になる。これは抵抗の消費電力と一致し、向きも電源から負荷へ向かう。導体中の波では、σ\sigma が大きいほど α\alpha が大きくなり、表皮深さ 1/α1/\alpha が短くなるので物理的にも正しい。

典型ミス

S=E×H\mathbf{S}=\mathbf{E}\times\mathbf{H} の順序を逆にして向きを反対にするミスが多い。また、コイル2の微分方程式では誘導起電力の符号を落としやすい。符号規約が逆でも、最初に電流の正方向を明記し、その規約で一貫していればよい。力の符号は「正の xx 方向」をどう定義したかに依存するため、答案では F=∂U/∂xF=\partial U/\partial x を採用した条件を添える。

試験で書くべきポイント

コンデンサでは電荷、磁場、ポインティングベクトル、面積積分の4行をそろえる。相互インダクタンスでは dU=I1dΦ1+I2dΦ2dU=I_1d\Phi_1+I_2d\Phi_2 を出発点にする。導体中の波では、∇⋅E=0\nabla\cdot\mathbf{E}=0 を使って ∇×∇×E=−∇2E\nabla\times\nabla\times\mathbf{E}=-\nabla^2\mathbf{E} とする点を書かないと、波動方程式の導出が飛んで見える。

電磁気学の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学

方針

前半は、調和振動子を生成消滅演算子で対角化し、2粒子問題を重心運動と相対運動に分ける。後半は、縮退部分空間だけを取り出して摂動行列を対角化する。クーロンポテンシャルの具体的な動径関数は不要で、角運動量の代数だけで決まる。

途中式の意味

2粒子ばね系で全運動量が保存するのは、ポテンシャルが x^2−x^1\hat{x}_2-\hat{x}_1 だけに依存し、全体を同じだけ平行移動してもハミルトニアンが変わらないからである。相対座標の換算質量が m/2m/2 になるため、単振動の角振動数は 2k/m\sqrt{2k/m} になる。

検算

k′→0k'\to 0 とすると、追加ポテンシャルつきの固有値は λ+=2k\lambda_+=2k, λ−=0\lambda_-=0 となる。これは元の問題の相対振動と自由な重心運動に戻るので正しい。摂動 B⋅L\mathbf{B}\cdot\mathbf{L} では l=0l=0 の 2s2s が動かず、l=1l=1 の3状態だけが −λBℏ,0,+λBℏ-\lambda B\hbar,0,+\lambda B\hbar に分かれる。

典型ミス

a^†a^\hat{a}^{\dagger}\hat{a} を a^a^†\hat{a}\hat{a}^{\dagger} と取り違えるとゼロ点エネルギーの符号がずれる。2粒子系では相対運動の質量を mm としてしまい、k/m\sqrt{k/m} と答えるミスが多い。縮退摂動では、元の Y1mY_1^m 基底のまま対角成分だけを見ると、B\mathbf{B} が zz 方向でない場合に誤答になる。

試験で書くべきポイント

非縮退摂動の式だけでは縮退問題の答案にならない。必ず縮退部分空間の行列 WabW_{ab} と永年方程式を書く。f(r)r⋅Lf(r)\mathbf{r}\cdot\mathbf{L} では、対称性で曖昧に説明するより r⋅(r×p)=0\mathbf{r}\cdot(\mathbf{r}\times\mathbf{p})=0 と書くのが最も強い。最後の問題では、量子化軸を B\mathbf{B} 方向に取り直すと明記すれば、固有関数の意味が明確になる。

量子力学の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 熱・統計力学

方針

ヒートポンプは、まず与えられた PV=U/3PV=U/3 から U=3PVU=3PV とし、各過程の熱を第一法則で計算する。断熱指数が出れば、体積比を消去して性能指数を圧力比だけで表せる。統計力学は、カノニカル分布の運動量部分が位置部分から分離すること、流出分子は vxv_x で重み付けされることが中心である。

検算

PB<PAP_B<P_A なので (PB/PA)1/4<1(P_B/P_A)^{1/4}<1 であり、ϵc\epsilon_c は正である。また TA>TBT_A>T_B なら ϵc=TB/(TA−TB)\epsilon_c=T_B/(T_A-T_B) はカルノー冷凍機の標準形と一致する。流出率の係数 kBT2πm \sqrt{\frac{k_BT}{2\pi m}} は速度の次元を持つため、(S/V)(S/V) と掛けると 1/time1/\text{time} になる。

典型ミス

定圧圧縮での熱を PA(V2−V1)P_A(V_2-V_1) だけにしてしまうと、内部エネルギー変化を落としている。ここでは U=3PVU=3PV なので定圧過程の熱は 4PΔV4P\Delta V になる。流出問題では、穴を通過する分子の分布を容器内の vxv_x 分布そのものと誤解しやすい。速い分子ほど単位時間に穴へ到達しやすいため、必ず vxv_x の重みが付く。

試験で書くべきポイント

熱力学恒等式の導出では、dS=(1/T)dU+(P/T)dVdS=(1/T)dU+(P/T)dV と書いてから混合微分の等式を使うと筋が見える。統計力学では、相互作用ポテンシャル Φ\Phi が速度分布に影響しない理由を「運動量積分と配置積分が分離する」と明記する。流出の微分方程式では、数密度 N/VN/V、穴の面積 SS、正の速度成分 vxv_x の3つを掛けて流束を作るところが採点対象である。

熱・統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

北大 物理学 院試 過去問の収録3年度