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東大 理学系研究科 天文学専攻 専門科目(数学・物理学・天文学) 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(解説2項目)

解説2項目の分野は複素解析1項目です。解説はすべて、答案例は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。問題本文は含みません。

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専門科目1 — ブラックホールの光子軌道と影

設問1 円形の光子軌道

ここで求めるのは、光子が一定の半径を保って回る軌道である。原題の aa は光が脱出できなくなる球面の半径だが、その球面そのものが円形の光子軌道であるとは限らない。与えられた運動方程式へ「円」の条件を代入するだけで、一般相対論の別の公式を使わずに求められる。

半径の一階微分が0なのは、接線の方向へ動く間に中心からの距離を変えないためである。二階微分も0となる。運動している光子の速度や加速度が物理的にゼロだと置いたわけではない。ϕ\phi は時間ではなく軌道上の角度であり、r(ϕ)r(\phi) の変化だけを表す。

a>0a>0 なら rph=1.5a>ar_{\mathrm{ph}}=1.5a>a で、原題のシュワルツシルト半径の外側にある。単位も長さで一致する。a→0a\to0 の無重力の極限ではこの円の半径は0へ縮み、有限の半径で光が自然に円運動を続ける解はなくなる。符号を −r−3a/2-r-3a/2 と誤って写すと負の半径を得るので、元の方程式と正の長さの条件を両方確かめる。

ただし円の解があるだけで、その円へ光が安定して捕まるとは言えない。後で有効ポテンシャルを調べると、これは極大に対応し不安定である。円の半径を求めた時点で「全ての入射光はこの円を回る」と説明するのは誤りとなる。

円からの小さいずれを u=1/ru=1/r の変数で表すと、後の方程式 u′′+u−3au2/2=0u''+u-3au^2/2=0 の円解は u∗=2/(3a)u_*=2/(3a)。u=u∗+δuu=u_*+\delta u として一次まで残せば δu′′−δu=0\delta u''-\delta u=0 となり、e±ϕe^{\pm\phi} のずれを持つ。わずかな初期条件の違いが円から離れる成分を作る。ここでも微分の変数は ϕ\phi であり、時間について同じ指数を主張したものではない。

線形化の係数を計算すると、u−3au2/2u-3au^2/2 の u∗u_* での微分は 1−3au∗=−11-3au_*=-1 である。従って円からのずれの一般解は δu=Aeϕ+Be−ϕ\delta u=Ae^\phi+Be^{-\phi}。初期のずれだけでなく初期の傾きも調整しなければ、増大する AA の成分を消せない。円の外側にわずかに置いた光が必ず外へ戻るという意味でもない。u′u' の初期値を含めて枝が決まり、円へ漸近する入射光は後の臨界値に対応する特別な条件となる。

設問2 逆半径で軌道の式を書き換える

逆半径は中心力の軌道を扱う時によく使う変数で、無限遠 r→∞r\to\infty を有限の値 u→0u\to0 に移す。今回は一階微分の二乗が消え、二階微分が一つの関数 uu だけで決まる形になることが利点である。r>0r>0 の範囲で変数変換し、有限の位置では u>0u>0 なので u2u^2 を掛けても解を失わない。

二度目の微分では、−u′u−2-u'u^{-2} の積の両因子を微分する。(−u′)′u−2+(−u′)(−2u−3u′)(-u')'u^{-2}+(-u')(-2u^{-3}u') により、第二項の符号は正、係数は2となる。一方 −2r′2/r=−2u′2/u3-2r'^2/r=-2u'^2/u^3 なので、ちょうど消える。

単位も確認できる。ϕ\phi は無次元の角度で、u′′,uu'',u の単位はいずれも長さの逆数。au2au^2 も同じ単位である。aa の項を auau と誤って残すと、他の項と単位が合わない。元の 3a/23a/2 に最後に掛けた u2u^2 を落とした誤りとなる。

円解を代入すれば u−3au2/2=u(1−3au/2)=0u-3au^2/2=u(1-3au/2)=0。正の有限の uu では u=2/(3a)u=2/(3a)、前問の r=3a/2r=3a/2 を再現する。u=0u=0 は無限遠の端点に対応し、有限半径の別の円ではない。

u′=0u'=0 と先に仮定すれば円しか扱えないので、一般の入射軌道を求める本問では残す。r′′r'' を単に −u′′/u2-u''/u^2 とすると二乗の項が消えず、例えば u=sin⁡ϕ/bu=\sin\phi/b の無重力の直線軌道でさえ式を満たさなくなる。連鎖律で生じる項を全て書き、相殺の前後を確認する。

この変数変換のもう一つの利点は、有限の地平面 r=ar=a を u=1/au=1/a、無限遠を u=0u=0 という有限区間の端点へ移すことである。uu の増加方向は半径の減少方向であり、u′>0u'>0 の枝を選べば入射の向きを一つの不等式で表せる。r′>0r'>0 と同時に入射の条件としてしまうと、r′=−u′/u2r'=-u'/u^2 の符号に矛盾する。距離を逆数にしたことで進行方向が逆になる点を、計算途中だけでなく最後の捕獲条件まで保つ。

設問3 一階の積分と有効ポテンシャル

一般に u′′=−12V′(u)u''=-\tfrac12 V'(u) の形の二階方程式は、2u′2u' を掛けると全微分にまとめられる。ここでは V′=2u−3au2V'=2u-3au^2 なので、前問と一致する。u′u' で割らない導出のため、途中で u′=0u'=0 になる折り返し点も含めて有効である。

この VV は ϕ\phi を独立変数とした軌道の形を理解するための有効ポテンシャルである。普通の時間を使った粒子の力学のエネルギーそのものと同一視しない。ただし u′2≥0u'^2\ge0 より許される領域が V(u)≤CV(u)\le C に限られ、等号で u′=0u'=0 となるという、一変数の力学と共通の見方ができる。

CC の単位は長さの逆数の二乗で、u2u^2 と au3au^3 は同じ単位を持つ。積分定数を0に固定すると、一般の入射光の初期条件を失う。後の設問で無限遠からのずれ bb が CC を決めるため、その段階までは任意定数として残す。

V=u2+au3V=u^2+au^3 と符号を誤ると、微分して u′′+u+3au2/2=0u''+u+3au^2/2=0 となり、元の軌道方程式を再現しない。また積分で au3au^3 の代わりに 3au3/23au^3/2 とすると、二乗項の係数が変わる。答案を一度微分して元へ戻すことが、積分の係数と符号を調べる最も直接な方法である。

a=0a=0 なら u′2+u2=Cu'^2+u^2=C。解 u=sin⁡(ϕ−ϕ0)/bu=\sin(\phi-\phi_0)/b では C=1/b2C=1/b^2 となり、これは rsin⁡(ϕ−ϕ0)=br\sin(\phi-\phi_0)=b という直線を表す。無重力の直線が表せることは、この積分の正しさと定数の物理的な意味を同時に確かめる例である。

一階積分を使うと、ある許された位置 u0u_0 からの角度は ϕ−ϕ0=∫u0uds/C−V(s)\phi-\phi_0=\int_{u_0}^u ds/\sqrt{C-V(s)} と表せる。これは入射の正の枝についての式で、折り返して u′<0u'<0 となった後は積分の符号を変える。根号の中が負になる領域へ実数の軌道を延長できない理由も明らかになる。定数 CC を決めた後には、積分の値を調べることで地平面まで有限の角度で到達するか、円へ無限の角度をかけて近づくかも判定できる。

設問4 ポテンシャルの形と極大

uu の単位を変えて s=aus=au、縦軸を a2Va^2V とすれば、形は s2−s3s^2-s^3 で 0<s≤10<s\le1。0<s<2/30<s<2/3 で増加し、2/3<s≤12/3<s\le1 で減少する。無次元化すれば任意の aa でも同じ山となり、極大の座標は (2/3,4/27)(2/3,4/27) と読める。

光子の有効ポテンシャル。無次元逆半径2/3で極大4/27となる。

図は上の式から作図した。u=0u=0 は範囲の外の端点なので、V′(0)=0V'(0)=0 でも指定範囲内の極小とは答えない。u=1/au=1/a は閉じた端点で最小値0を取るが、内部の停留点ではない。極値と区間全体の最大・最小を区別して述べる。

山の頂上は前問までの円形の光子軌道に対応する。頂上にちょうど載る u′=0u'=0 の解が円であり、少し小さい uu 側へずれると u′′=−V′/2<0u''=-V'/2<0、大きい側へずれると u′′>0u''>0 となり、いずれも頂上から離れる。曲率が負であることが、円が不安定な理由を示す。

極大の位置を u=3a/2u=3a/2 と書くと、uu の単位が逆長さであることを破る。半径 r=3a/2r=3a/2 の結果をそのまま移した誤りである。また Vmax⁡=4/(9a2)V_{\max}=4/(9a^2) とすると u2u^2 の値だけを使い、au3=8/(27a2)au^3=8/(27a^2) を引き忘れている。元の多項式へ停留点を代入して値まで確かめる。

図の高さの計算を数値の例でも確認する。au=1/3au=1/3 なら a2V=2/27a^2V=2/27、au=2/3au=2/3 なら 4/274/27、au=1au=1 なら0。最大の点が区間の中点 1/21/2 にあると推測するのは誤りで、三次項のため山は非対称である。aa を2倍にすると最大を与える uu は半分、最大の VV は4分の1となる。半径の図と逆半径の図を混同すると、横軸が反対に見えることにも注意する。

設問5 インパクトパラメーターと積分定数

bb は遠くでほぼ直線として入射する光と、原点からその直線までのずれを測る長さである。最も近づいた場所の半径そのものではない。重力があると軌道は曲がるが、無限遠の入射条件をこの一つの長さで表せる。

導出では、積分の式から u′u' が有限の極限 C\sqrt C を持つことを先に使った。すると u(ϕ)=C ϕ+o(ϕ)u(\phi)=\sqrt C\,\phi+o(\phi)、sin⁡ϕ∼ϕ\sin\phi\sim\phi から上の極限が出る。関数の極限 rsin⁡ϕ→br\sin\phi\to b だけを微分してよいと無条件に考えず、運動方程式が保証する滑らかな漸近線の性質と合わせて使う。

a=0a=0 の場合は全軌道で u=sin⁡ϕ/bu=\sin\phi/b だから、u′2+u2=(cos⁡2ϕ+sin⁡2ϕ)/b2=1/b2u'^2+u^2=(\cos^2\phi+\sin^2\phi)/b^2=1/b^2。先ほどの無重力の例と一致する。bb が大きいほど CC が小さくなるため、次問のポテンシャルの山を越えにくくなるという関係も理解できる。

C=b2C=b^2 と答えると次元が逆であり、大きく離れて入射する光ほど中心へ落ちやすいという反対の判定になる。u′→1/bu'\to1/b と u′2→1/b2u'^2\to1/b^2 を混同して C=1/bC=1/b とするのも次元で検出できる。また入射の向きを反対に取れば u′u' の極限は負となるが、CC は二乗なので同じとなる。

この設問では b>0b>0 が指定され、b=0b=0 の中心へ向かう極限は C→∞C\to\infty で表される。有限の CC の式の中へ b=0b=0 を直接代入して割り算を行わない。後の捕獲範囲を述べる際も、原題が定義した正の bb の範囲として答える。

CC は軌道の方向を選ぶ符号を含まない。u′=±C−Vu'=\pm\sqrt{C-V} の二つの枝は同じ CC を持ち、近づく光と離れる光を表す。したがって CC を知るだけで光が内向きか外向きかを答えてはいけない。原題は別に無限遠で u′>0u'>0 を指定している。無重力なら直線の最接近点 ϕ=π/2\phi=\pi/2 で枝が切り替わり、u=1/bu=1/b となるが、重力がある場合の最接近点は V(u)=1/b2V(u)=1/b^2 を満たす値へ変わる。

設問6 光が半径 aa に達する入射の範囲

uu が増加することは、半径 r=1/ur=1/u が減少することを意味する。無限遠から入射した光が地平面へ達するには、有効ポテンシャルの山を越えて u=1/au=1/a まで進めなければならない。CC が山より低ければ、山の手前で V=CV=C となり u′=0u'=0。そこで最小の半径を取り、外へ戻る。

特に境界 b=bc=33a/2b=b_{\mathrm c}=3\sqrt3a/2 を含めないことが必要である。この場合は山の頂上で C=Vmax⁡C=V_{\max}。u=u∗+δuu=u_*+\delta u の近くでは V=Vmax⁡−(δu)2+O((δu)3)V=V_{\max}-(\delta u)^2+O((\delta u)^3) だから、入射側で u′≃u∗−uu'\simeq u_*-u。従って u∗−uu_*-u は e−ϕe^{-\phi} に比例し、無限の角度をかけて円軌道へ近づく。半径 aa まで通過する軌道ではない。

C>Vmax⁡C>V_{\max} なら C−VC-V は区間全体で正、しかも0から離れているため uu は止まらず進む。b<bcb<b_{\mathrm c} の条件が十分である理由もこれで分かる。境界の円を越えないことと、半径 aa より内側が見えないことは別の記述だが、遠方から見た影の境界はこの臨界の bb により決まる。

例えば a=1a=1 の単位で b=2b=2 なら C=1/4>4/27C=1/4>4/27 で捕獲、b=3b=3 なら C=1/9<4/27C=1/9<4/27 で折り返す。bc≃2.598b_{\mathrm c}\simeq2.598 はその間にある。b<ab<a だけを捕獲範囲とすると、重力で曲がりながら落ちる a<b<bca<b<b_{\mathrm c} を落とす。

不等式を解く時、b2b^2 を掛けた後で逆数の大小をそのままにすると、離れて通る光だけが捕獲されるという逆の範囲を得る。また等号を含めた b≤bcb\le b_{\mathrm c} は、原題の「常に u′>0u'>0」を頂上で破る。境界ではどの種類の軌道になるかまで調べる。

臨界での近づき方は厳密な因数分解でも確かめられる。 Cc−V(u)=(u−23a)2(au+13). C_{\mathrm c}-V(u)=\left(u-\frac2{3a}\right)^2\left(au+\frac13\right). u∗u_* の近くで第二因子は1に近づくため、角度の積分は ∫du/(u∗−u)\int du/(u_*-u) となって対数的に発散する。根号の中が単に0になるだけで、必ず有限の角度で折り返すわけではない。通常の折り返しは単純な根、臨界は二重の根という違いが、この発散を生む。

設問7 ブラックホールシャドウから質量を求める

球対称で回転を考えない本問では、光を逆向きにたどっても同じ空間の軌道となる。遠方から見て、内側へたどると捕獲される光線の範囲が影に対応する。従って見かけの影の半径は、地平面の半径 aa でなく臨界インパクトパラメーター bcb_{\mathrm c} となる。

影は aa の約2.60倍、円形の光子軌道の半径 3a/23a/2 の 3\sqrt3 倍である。観測で見た影の大きさをそのまま地平面の長さと置くと、その倍率だけ質量を大きく見積もる。原題は影の半径を物理的な長さで与えているため、距離を別に使う角直径の換算は不要である。

GG の単位が m3 kg−1 s−2\mathrm{m^3\,kg^{-1}\,s^{-2}} なので、c2bc/Gc^2b_{\mathrm c}/G は kg\mathrm{kg}、さらに M⊙M_\odot で割れば無次元の倍率となる。kmをmに直さず入れると 3.9×1033.9\times10^3 倍という1000分の1の値を出す。見かけの半径と直径の混同なら2倍の誤差となる。

逆に求めた値から戻すと、a≃1.15×1010 ma\simeq1.15\times10^{10}\,\mathrm m、bc≃2.598a≃3.0×1010 mb_{\mathrm c}\simeq2.598a\simeq3.0\times10^{10}\,\mathrm m で原題と一致する。有効数字一桁の答えを 4×1064\times10^6 とした後に戻せば数\%の差が出るが、丸めの範囲内である。途中の計算では 3.9×1063.9\times10^6 程度を保持し、最後に一桁へ丸める。

影の半径を aa と誤って扱う場合は M=c2bc/(2G)M=c^2b_{\mathrm c}/(2G) となり、正答の 33/2≃2.603\sqrt3/2\simeq2.60 倍、約 1.0×1071.0\times10^7 太陽質量を得る。係数を単なる数値として覚えるより、円形軌道、捕獲の境界、影、シュワルツシルト半径の関係を順に区別して使う。

影の大きさは面積でも比較できる。遠方の入射光の捕獲断面積は πbc2=27πa2/4\pi b_{\mathrm c}^2=27\pi a^2/4 となり、半径 aa の円の幾何学的面積の 27/4=6.7527/4=6.75 倍である。半径の倍率2.60と面積の倍率6.75を混同しない。影が大きく見えるのは、地平面がその長さだけ広がるからではなく、その周囲で光の軌道が曲げられるためである。質量を半分にすれば aa と影の半径は半分になるが、捕獲断面積は4分の1となる。

解答

設問1 円形の光子軌道

原点を中心とする円なら rr は ϕ\phi によらず一定で、dr/dϕ=d2r/dϕ2=0dr/d\phi=d^2r/d\phi^2=0。原題の微分方程式に入れると −r+3a/2=0-r+3a/2=0 だから

設問2 逆半径で軌道の式を書き換える

u=1/ru=1/r と置き、ϕ\phi 微分をプライムで表す。 r′=−u′u2,r′′=−u′′u2+2u′2u3. r'=-\frac{u'}{u^2},\qquad r''=-\frac{u''}{u^2}+\frac{2u'^2}{u^3}. 原題の r′′−2r′2/r−r+3a/2=0r''-2r'^2/r-r+3a/2=0 に入れると、二つの u′2u'^2 の項が相殺する。−u2-u^2 を掛けて

設問3 一階の積分と有効ポテンシャル

前問に 2u′2u' を掛けると 2u′u′′+2uu′−3au2u′=ddϕ(u′2+u2−au3)=0. 2u'u''+2uu'-3au^2u' =\frac d{d\phi}(u'^2+u^2-au^3)=0. 従って積分定数を CC として

設問4 ポテンシャルの形と極大

V′=u(2−3au)V'=u(2-3au) より、指定の範囲内の停留点は u∗=2/(3a)u_*=2/(3a)。V′′=2−6auV''=2-6au だから V′′(u∗)=−2<0V''(u_*)=-2<0 で極大である。

u→0u\to0 で V→0V\to0、u=1/au=1/a でも V=0V=0 となる。

設問5 インパクトパラメーターと積分定数

無限遠では u→0,V(u)→0u\to0,V(u)\to0 なので、入射の u′>0u'>0 の枝で u′→Cu'\to\sqrt C。角度の原点を漸近線に合わせると u≃C ϕu\simeq\sqrt C\,\phi であり、 b=lim⁡r→∞rsin⁡ϕ=lim⁡ϕ→0sin⁡ϕu(ϕ)=1C. b=\lim_{r\to\infty}r\sin\phi =\lim_{\phi\to0}\frac{\sin\phi}{u(\phi)}=\frac1{\sqrt C}. 従って

設問6 光が半径 aa に達する入射の範囲

入射の u′>0u'>0 の枝では u′=C−V(u)u'=\sqrt{C-V(u)}。0<u<1/a0<u<1/a の全域で正を保つには C>Vmax⁡C>V_{\max} が必要十分である。従って 1b2>427a2 \frac1{b^2}>\frac4{27a^2} から

設問7 ブラックホールシャドウから質量を求める

影の半径 bc=3.0×107 km=3.0×1010 mb_{\mathrm c}=3.0\times10^7\,\mathrm{km}=3.0\times10^{10}\,\mathrm m は、前問の臨界値である。bc=33a/2b_{\mathrm c}=3\sqrt3a/2 と a=2GM/c2a=2GM/c^2 より MM⊙=c2bc33GM⊙=(3.0×108)2(3.0×1010)33(6.7×10−11)(2.0×1030)≃3.9×106. \frac M{M_\odot}=\frac{c^2b_{\mathrm c}}{3\sqrt3GM_\odot} =\frac{(3.0\times10^8)^2(3.0\times10^{10})} {3\sqrt3(6.7\times10^{-11})(2.0\times10^{30})} \simeq3.9\times10^6.

答案例

rph=32a\displaystyle r_{\mathrm{ph}}=\frac32a。

u′′+u−32au2=0\displaystyle u''+u-\frac32au^2=0。

u′2+V(u)=C,V(u)=u2−au3\displaystyle u'^2+V(u)=C,\qquad V(u)=u^2-au^3。

u∗=23a,Vmax⁡=427a2\displaystyle u_* =\frac{2}{3a},\qquad V_{\max}=\frac4{27a^2}。

C=1b2\displaystyle C=\frac1{b^2}。

0<b<332a\displaystyle 0<b<\frac{3\sqrt3}{2}a。

有効数字一桁で、太陽質量の 4×1064\times10^6 倍。

専門科目2 — 複素屈折率と薄膜による反射防止

設問1 導電性を含む複素屈折率

複素数の場は計算用の表示で、実際の電磁場はその実部を取る。NN の実部は位相の進み方、虚部は振幅の空間的な変化を表す。導電性は電場から電流へエネルギーを渡し、ジュール熱を生むため、受動的な媒質中の進行波は進むほど減衰する枝を選ぶ。

通常の ϵ>0,σ≥0\epsilon>0,\sigma\ge0 の媒質で N=n−iκN=n-i\kappa と置くと、n,κ≥0n,\kappa\ge0 を選べば e−iωNz/c+iωt=e−ωκz/ceiω(t−nz/c). e^{-i\omega Nz/c+i\omega t} =e^{-\omega\kappa z/c}e^{i\omega(t-nz/c)}. 従って負の虚部が減衰に対応する。この時間の約束で N=n+iκN=n+i\kappa とすれば振幅が増大し、外から供給されないエネルギーが増える誤った枝になる。

二乗の実部・虚部を比べれば n2−κ2=ϵ/ϵ0n^2-\kappa^2=\epsilon/\epsilon_0、2nκ=σ/(ϵ0ω)2n\kappa=\sigma/(\epsilon_0\omega)。s=ϵ/ϵ0s=\epsilon/\epsilon_0, q=σ/(ϵ0ω)q=\sigma/(\epsilon_0\omega) として n=s2+q2+s2,κ=s2+q2−s2. n=\sqrt{\frac{\sqrt{s^2+q^2}+s}{2}},\qquad \kappa=\sqrt{\frac{\sqrt{s^2+q^2}-s}{2}}. σ→0\sigma\to0 なら κ→0,N→s\kappa\to0,N\to\sqrt s。真空なら s=1s=1 で N=1N=1 と戻る。

σ/(ϵ0ω)\sigma/(\epsilon_0\omega) は無次元で、伝導電流と変位電流の比を表す。q≪sq\ll s なら κ≃q/(2s)\kappa\simeq q/(2\sqrt s)、q≫sq\gg s なら N≃(1−i)q/2N\simeq(1-i)\sqrt{q/2}。後者の振幅の減衰距離は c/(ωκ)=2/(μσω)c/(\omega\kappa)=\sqrt{2/(\mu\sigma\omega)} となる。電場だけでなく磁場も同じ波動方程式なので同じ NN を持つ。

よく使う e−iωte^{-i\omega t} の表示を記憶から混ぜると、導電率の項を +iσ/(ϵ0ω)+i\sigma/(\epsilon_0\omega) と逆にする。時間微分を実際に行えば、その取り違えを防げる。電場の二階方程式を満たすだけで任意の電場・磁場の振幅の組がよいわけではなく、次問ではマクスウェル方程式による振幅間の関係も課す。

電場振幅の減衰距離と強度の減衰距離も異なる。振幅が e−ωκz/ce^{-\omega\kappa z/c} なら、自己流束はその絶対値の二乗に比例し I(z)=I(0)e−2ωκz/cI(z)=I(0)e^{-2\omega\kappa z/c}。強度が 1/e1/e になる距離は振幅の場合の半分である。例えば振幅が半分となった位置では強度は4分の1となる。導電率の符号を反転した根を選ぶ誤りは、この強度が進むほど増えることからも見つけられる。媒質の吸収を記述する際は、振幅・強度のどちらの長さを示すかを明記する。

設問2(a) 進行方向による磁場振幅の符号

xx 方向の電場が zz だけに依存すれば、∇×E\nabla\times E の yy 成分は ∂zEx\partial_zE_x。前向きの e−ikz+iωte^{-ikz+i\omega t} では −ikEx=−iωμHy-ikE_x=-i\omega\mu H_y だから Hy=kEx/(ωμ)=NEx/(μc)H_y=kE_x/(\omega\mu)=NE_x/(\mu c)。後ろ向きでは e+ikz+iωte^{+ikz+i\omega t} の空間微分が +ik+ik となり、Hy=−NEx/(μc)H_y=-NE_x/(\mu c) を得る。

反射の際に磁場の式に負号が付くのは、E×HE\times H の向きが波のエネルギーの進行方向に一致するためである。全ての波を共通の +x,+y+x,+y 軸の成分で表示しているので、進行方向が変わった分を振幅の符号に入れる。磁場の軸そのものを反射波だけ反対に定義してはいない。

時間平均のポインティング流束は ⟨Sz⟩=12Re⁡(ExHy∗)\langle S_z\rangle=\tfrac12\operatorname{Re}(E_xH_y^*)。前向きの波なら Y0Re⁡N ∣Ex∣2/2Y_0\operatorname{Re}N\,|E_x|^2/2、後ろ向きならその負となる。例えば真空 N=1N=1 で同じ電場振幅の二つの反対向きの波を重ねると、電場は加算される場所でも磁場は相殺し得る。定在波を理解する際にもこの負号が必要となる。

HRy=+Y0N1ERxH_{Ry}=+Y_0N_1E_{Rx} と誤ると、境界で電場と磁場が同じ加算の式になり、屈折率が違う二媒質では一般の入射場に対して境界条件を満たせなくなる。反射が常に0か、振幅が矛盾するという結果になる。振幅の大きさだけから関係を推測しない。

Y0Y_0 は真空の波動アドミタンスで、単位は電流/電圧。屈折率を掛けた Y0NY_0N が EE と HH を結ぶ。透磁率が媒質ごとに違う場合には各媒質の N/(μc)N/(\mu c) を使うが、本問では同一の μ\mu が明示され、ϵ0\epsilon_0 と共通の μ\mu だけで前の係数を表せる。

横波であることは発散の式からも従う。均質な媒質で ∇⋅(ϵE)=0\nabla\cdot(\epsilon E)=0、∇⋅(μH)=0\nabla\cdot(\mu H)=0 を平面波へ代入すると、N≠0N\ne0 の伝播波では Ez=Hz=0E_z=H_z=0。その上で二つの回転の式が電場と磁場を直交させ、その比を固定する。場の二階の波動方程式は各成分に同じ分散関係を課すが、この横波条件や振幅の相互の関係を単独では全て表していない。境界条件を解く時も、原題が指定した共通の偏光成分を使う必要がある。

設問2(b) 境界で満たす条件

境界条件はマクスウェル方程式を、境界をまたぐ微小な長方形または薄い箱で積分して得る。ファラデーの式では、長方形の厚さを0へ近づけると磁束の時間変化の項が消え、接線電場の差が0となる。アンペールの式でも、有限の体積電流の積分は厚さとともに消え、別の面電流がなければ接線磁場も連続となる。

媒質の有限の導電率 σ\sigma は体積電流 σE\sigma E を作るが、ここでデルタ関数的な電流シートを追加するわけではない。完全導体の理想表面に面電流を置く別の問題とは区別する。境界条件へ導電率の差を直接足すのではなく、その効果は複素屈折率に含める。

原題が求める境界は z=0z=0 でなく z=dz=d。従って前向きの電場は EIe−iωN1d/c=EI/b1E_Ie^{-i\omega N_1d/c}=E_I/b_1、後ろ向きは ERb1E_Rb_1 となる。原点で定義された振幅を、局所の境界での振幅へ移してから足す。時間因子は同じなので両辺から消せる。

法線方向については z^⋅(B2−B1)=0\hat z\cdot(B_2-B_1)=0、z^⋅(D2−D1)=σs\hat z\cdot(D_2-D_1)=\sigma_s。本問の平面波では電場も磁場も zz 成分を持たず、両左辺が0なので波に伴う表面電荷も0となる。全ての条件を挙げる際は、二つの非自明な接線の式と、法線条件が自動的である理由まで述べる。

磁場を電場と同じ正号で足すと、反射波が運ぶ負方向の流束を失う。d≠0d\ne0 なのに EI+ER=EF+EBE_I+E_R=E_F+E_B と置けば、屈折率が違う媒質の位相差を落とし、次問の行列の指数因子を再現できない。まず境界位置へ各波を代入してから、場の連続性を課す。

境界の法線を媒質1から2へ向く z^\hat z に取れば、積分形の条件は z^×(E2−E1)=0\hat z\times(E_2-E_1)=0、z^×(H2−H1)=Ks\hat z\times(H_2-H_1)=K_s。面電流 KsK_s が0という指定により、今回の接線の連続式になる。例えば仮に yy 成分の面電流が加わる別の問題なら、HxH_x の跳びが対応するので、単に全ての HH 成分を連続とすることはできない。本問の平面波の向きと、境界条件のどの成分が非自明かを、ベクトルの式から成分へ落とす。

設問2(c) 界面の振幅変換行列

一つ目の対角行列は、境界での前向き・後ろ向き振幅を媒質2の原点の振幅へ戻す。中央の行列は界面での二つの連続条件を解く操作。右の対角行列は媒質1の原点の振幅を境界へ移す。この順に右から作用させるので、因子の積の順番を交換してはいけない。

式を導くには、F=EFx/b2F=E_{Fx}/b_2, B=EBxb2B=E_{Bx}b_2, I=EIx/b1I=E_{Ix}/b_1, R=ERxb1R=E_{Rx}b_1 と一時的に置く。F+B=I+RF+B=I+R、F−B=(N1/N2)(I−R)F-B=(N_1/N_2)(I-R) だから、二式の和と差を2で割ればよい。この操作は複素数でもそのまま成立し、N2≠0N_2\ne0 を前提とする。

N1=N2N_1=N_2 なら b1=b2b_1=b_2 で中央は 2N2I2N_2 I、対角行列も相殺して A=IA=I。媒質が同じなら人工的な界面を置いても全く場を変えない。この検査は指数の向きと係数を同時に確かめる。

また det⁡A=N1/N2\det A=N_1/N_2 である。中央の行列式が (N2+N1)2−(N2−N1)2=4N1N2(N_2+N_1)^2-(N_2-N_1)^2=4N_1N_2、両対角の行列式は1なので得られる。一般に1とは限らないのは、電場の振幅だけを異なる波動アドミタンスの媒質間で比較する表示だからであり、直ちにエネルギーの不保存を意味しない。

分母を 2N12N_1 とすると、同じ媒質の検査だけでは誤りを見落とし得る。しかし N1=1,N2=2,d=0N_1=1,N_2=2,d=0 なら、正しい行列は 14(3113)\tfrac14\begin{pmatrix}3&1\\1&3\end{pmatrix}。入射だけの列 (1,0)(1,0) から界面の前向き・後ろ向きが (3/4,1/4)(3/4,1/4) となり、和は1、磁場の差は 2(3/4−1/4)=12(3/4-1/4)=1 で一致する。分母を2にすると電場の和が2となり境界条件を破る。

局所の場へ変換する行列を Wj=(11Nj−Nj)W_j=\begin{pmatrix}1&1\\N_j&-N_j\end{pmatrix} とすれば、界面だけの行列は W2−1W1W_2^{-1}W_1。det⁡Wj=−2Nj\det W_j=-2N_j なので、行列式 N1/N2N_1/N_2 が別の方法でも得られる。二つの界面が同じ位置にあれば W3−1W2W2−1W1=W3−1W1W_3^{-1}W_2W_2^{-1}W_1=W_3^{-1}W_1 と中間媒質が消える。薄膜の厚さが0になる極限で、後の二界面の合成式を検査する根拠にもなる。

設問2(d) 単一の界面の反射率

振幅反射係数 rr は一般に複素数であり、その偏角は反射の位相のずれを表す。反射率 RR は、反射波が運ぶ時間平均のエネルギー流束の大きさを入射波のものと比べた実数である。同じ媒質1の前向き・後ろ向きの自己流束を比べるため、共通の Y0Re⁡N1/2Y_0\operatorname{Re}N_1/2 が消えて ∣r∣2|r|^2 となる。

透過の振幅は電場の連続性から t=EFx/EIx=1+r=2N1/(N1+N2)t=E_{Fx}/E_{Ix}=1+r=2N_1/(N_1+N_2)。無損失の正の実屈折率なら、透過率は T=(n2/n1)∣t∣2T=(n_2/n_1)|t|^2 となり R+T=(n1−n2)2+4n1n2(n1+n2)2=1. R+T=\frac{(n_1-n_2)^2+4n_1n_2}{(n_1+n_2)^2}=1. 電場の振幅を二乗しただけの ∣t∣2|t|^2 は、屈折率の違う二媒質の流束比そのものではない。

例えば n1=1,n2=2n_1=1,n_2=2 なら r=−1/3,R=1/9,t=2/3,T=8/9r=-1/3,R=1/9,t=2/3,T=8/9。反射波の負の振幅は電場の位相が π\pi だけ反転することを意味し、負のエネルギーを意味しない。R=rR=r として負の反射率を答えたり、R=r2R=r^2 として複素数の二乗を残したりせず、絶対値の二乗を取る。

同じ屈折率なら r=0r=0。媒質2のアドミタンスが非常に大きい極限では r→−1r\to-1 となり、界面の接線電場が入射と反射の相殺により小さくなる。これらの極限も係数の向きを調べる手掛かりとなる。

入射側まで吸収する媒質では、入射・反射の干渉項を含めた界面全体の流束と、個々の波の自己流束の比を区別する必要がある。本問の RR は境界での反射波と入射波の比であり、無損失の場合の R+T=1R+T=1 を複素屈折率の全ての状況へ無条件に流用しない。

吸収する透過側の例として、N1=1,N2=2−iN_1=1,N_2=2-i を考える。r=(−1+i)/(3−i)r=(-1+i)/(3-i) なので R=2/10=0.2R=2/10=0.2。界面での前向き流束の比は T=Re⁡N2∣2/(3−i)∣2=2⋅4/10=0.8T=\operatorname{Re}N_2|2/(3-i)|^2=2\cdot4/10=0.8 で、ここでは入射側が無損失のため界面で R+T=1R+T=1。媒質2へ入った0.8の流束は、さらに奥へ進む間にジュール熱へ変わる。界面で透過したことと、吸収せず無限遠まで届いたことを同じ透過率と呼ばない。

設問3(a) 薄膜の二界面を合成する

膜の後端では媒質3から入射する波がないので、局所の反射係数は ρ23\rho_{23}。前向きの波は原点から後端まで 1/b21/b_2 倍、後ろ向きの波は後端から原点までさらに 1/b21/b_2 倍となる。その積が b2−2b_2^{-2} である。二倍の位相は膜を往復するために現れ、片道の位相だけでは干渉条件を誤る。

β=EB/EF\beta=E_B/E_F、t=EF/EIt=E_F/E_I と一時的に置くと、前端の電場・磁場の式は 1+r=t(1+β)1+r=t(1+\beta)、N1(1−r)=N2t(1−β)N_1(1-r)=N_2t(1-\beta)。tt を消去すれば r=N1(1+β)−N2(1−β)N1(1+β)+N2(1−β)=ρ12+β1+ρ12β. r=\frac{N_1(1+\beta)-N_2(1-\beta)}{N_1(1+\beta)+N_2(1-\beta)} =\frac{\rho_{12}+\beta}{1+\rho_{12}\beta}. これに β=ρ23q\beta=\rho_{23}q を入れる。多重反射を逐次足す代わりに、二つの境界条件で全ての反射をまとめている。

d→0d\to0 なら q→1q\to1 で、式を整理すると r→(N1−N3)/(N1+N3)r\to(N_1-N_3)/(N_1+N_3)。厚さのない中間層の屈折率が最後の式から消える。また N2=N3N_2=N_3 なら後端の反射がなく r=ρ12r=\rho_{12}、N1=N2N_1=N_2 なら r=ρ23qr=\rho_{23}q で、膜中を往復した反射だけが残る。

本問の時間の約束では N2=n2−iκ2N_2=n_2-i\kappa_2 なので、∣q∣=e−2ωκ2d/c≤1|q|=e^{-2\omega\kappa_2d/c}\le1。指数を +2iωN2d/c+2i\omega N_2d/c と逆にすると、吸収する膜を厚くするほど反射の戻り振幅が増大する誤りとなる。損失のない特定の位相では絶対値が同じになって誤りを見落とし得るため、減衰する媒質でも検査する。

二界面の反射係数だけを足して r=ρ12+ρ23qr=\rho_{12}+\rho_{23}q と止めると、膜内で再び戻る波を落とす。例えば n1=n3=1,n2=2,q=−1n_1=n_3=1,n_2=2,q=-1 なら正答は r=−3/5,R=0.36r=-3/5,R=0.36 だが、その近似は r=−2/3,R=4/9r=-2/3,R=4/9 を与える。反射が十分小さい場合の一次近似と、答案の厳密な合成式を区別する。

膜内の多重反射を級数で数える方法もある。最初に後端から戻る成分は t12t21ρ23qt_{12}t_{21}\rho_{23}q、さらに膜内を往復するたびに ρ21ρ23q=−ρ12ρ23q\rho_{21}\rho_{23}q=-\rho_{12}\rho_{23}q が掛かる。等比級数の和と t12t21=1−ρ122t_{12}t_{21}=1-\rho_{12}^2 を使えば、r=ρ12+(1−ρ122)ρ23q/(1+ρ12ρ23q)r=\rho_{12}+(1-\rho_{12}^2)\rho_{23}q/(1+\rho_{12}\rho_{23}q) となり答案へまとまる。級数が収束する受動的な設定での導出であり、境界の連立方程式からの導出はこの繰り返しを一度に解いている。

設問3(b) 四分の一波長の反射防止膜

膜内の片道の位相が π/2\pi/2 なら往復で π\pi となり、後端から戻る反射は前端の反射と打ち消し合える。位相が反対になるだけでは十分ではなく、二つの界面の振幅反射係数も等しい必要がある。ρ12=ρ23\rho_{12}=\rho_{23} を解けば n1n3=n22n_1n_3=n_2^2 となり、幾何平均が現れる。

この条件は光学的厚さ n2dn_2d に課されている。n2n_2 の最適値を選ぶ際には、それに対応して d=λ0/(4n2)d=\lambda_0/(4n_2) を選ぶ。物理的厚さ dd を任意に固定したまま n2n_2 だけ変え、全ての値で四分の一波長条件が保たれると考えてはいけない。

例えば説明用に n1=1,n3=2.25n_1=1,n_3=2.25 とすれば、最適な n2=1.5n_2=1.5、d=λ0/6d=\lambda_0/6。二つの界面はどちらも ρ=−0.2\rho=-0.2 となり、往復位相の負号で分子が相殺する。膜がない場合の反射率は [(1−2.25)/(1+2.25)]2≃0.148[(1-2.25)/(1+2.25)]^2\simeq0.148 なので、指定波長で大きく抑えられる。

n2=(n1+n3)/2n_2=(n_1+n_3)/2 という算術平均を使うと、この例で1.625となり、R=[(2.25−1.6252)/(2.25+1.6252)]2≃0.00638R=[(2.25-1.625^2)/(2.25+1.625^2)]^2\simeq0.00638 が残る。小さくても完全な消失ではない。電場の境界条件から得た二つの反射係数を等しくする条件は、屈折率の差の等しさとは異なる。

また d=λ0/4d=\lambda_0/4 と真空中の波長だけで厚さを決めれば、膜内の位相は n2π/2n_2\pi/2 となり、一般には打ち消し合わない。膜内波長 λ0/n2\lambda_0/n_2 の四分の一が必要である。正反射の角度が0、無損失、同じ透磁率、指定の一つの角周波数という条件をそろえて初めて R=0R=0 が得られる。異なる波長や斜め入射でも自動的に反射が消えるとは限らない。

最適膜でも指定波長から外れると反射が戻る。分散を無視し、位相を δ=π/2+Δ\delta=\pi/2+\Delta とする。最適な屈折率で ρ12=ρ23=ρ\rho_{12}=\rho_{23}=\rho、q=−e−2iΔq=-e^{-2i\Delta} だから、∣Δ∣≪1|\Delta|\ll1 では R≃4ρ2(1−ρ2)2Δ2. R\simeq\frac{4\rho^2}{(1-\rho^2)^2}\Delta^2. 一次では振幅が位相のずれに比例し、反射率は二次で増える。例えば ρ=−0.2\rho=-0.2 なら係数は約0.174。四分の一波長という条件が一つの波長での設計条件であることを、わずかなずれの式でも確かめられる。

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  • 2021年度(このページ・解説2項目)

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2021年度の出題内容

解説2項目

この2問の分野は複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
専門科目1ブラックホールの光子軌道と影—あり
専門科目2複素解析複素屈折率と薄膜による反射防止—あり

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