北海道大学 院試 過去問 解答例
北大 工学院 機械・宇宙航空工学系研究室群 専門科目 2024年度 院試 解答例・解説
北海道大学 工学院 機械・宇宙航空工学系研究室群 専門科目 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 材料力学 問1
方針
この問題は「引張り」と「ねじり」の重ね合わせである。丸棒ではねじりの公式 を使う。最大値は側面 で生じるので,側面応力だけを使って主応力を求めればよい。
モールの応力円
側面の応力状態は,軸方向垂直応力 とせん断応力 の組で表せる。モールの円では中心が 半径が である。したがって右端が ,左端が となる。
典型ミス
断面二次極モーメントを長方形断面の と混同しないこと。丸断面では であり,円では なので である。また,純ねじりの最大主応力は表面せん断応力と同じ大きさになる。ここでさらにモール円の半径を二重に掛ける誤りが多い。
検算
は が力の次元を持つため次元的に整合している。軸応力とせん断応力はいずれも に比例し,半径を大きくすると三乗で低下する。最後の結果 は,純ねじりだけで同じ最大主応力を出すには半径を小さくする必要がある,という物理的解釈とも一致する。
第2問 — 材料力学 問2
集中モーメントを受ける単純支持はり
集中モーメントは鉛直力を直接持たないため,反力は同じ大きさで逆向きになる。答案では,力のつり合いだけで と書き,モーメントのつり合いで を決めるとよい。
たわみ曲線の作り方
曲げモーメント図は集中モーメント位置でジャンプする。一方,はり自体は切れていないので,たわみ とたわみ角 は連続である。この違いを明確に書くことが採点上重要である。集中力ではせん断力がジャンプし,集中モーメントでは曲げモーメントがジャンプする,と整理しておくと混乱しにくい。
積層はりの中立軸
異種材料の積層はりでは,幾何学的な重心ではなく, で重み付けした断面一次モーメントがゼロになる位置が中立軸である。ここでは下半分の剛性が なので, なら となり,中立軸は剛い下側へ移動する。この極限の向きは検算に使える。
典型ミス
曲げ剛性を単に と書くと,積層はりでは不十分である。正しくは であり,上下の材料ごとに を変えて積分する。また,中立軸位置を求める前に各層の断面二次モーメントだけを足してしまうと,平行軸の項を落とすことになる。
第3問 — 機械力学・制御工学 問1
方針
前半は回転 1 自由度系,後半は転がりを含む 2 自由度系である。つり合い位置まわりの微小振動なので,重力による定常トルクやばねの初期伸びは運動方程式に現れない。
有効質量
転がる円板では並進エネルギーに回転エネルギーが加わる。一様円板では となるので,Lagrange 方程式の慣性係数は になる。
典型ミス
右端質点の慣性モーメント を落とすと前半の固有振動数が過大になる。また,中央ばねの伸びは であり, ではない。
第4問 — 機械力学・制御工学 問2
方針
ステップ応答から を作り, で割れば閉ループ伝達関数が得られる。単位負帰還では を使う。
ボード線図
は零点 1 個,極 2 個を持つ。折れ線近似では,折点周波数だけでなく,低周波ゲインと最終的な傾きも書くと答案として十分である。
状態フィードバック
制御対象は右半平面極を 2 つ持つため非制御時は不安定である。状態フィードバックでは係数比較だけで極配置できるが,入力符号が である点に注意する。
検算
のとき外側ループの DC ゲインは 9 であり,定常偏差は になる。目標極 は左半平面にあるため,極配置後の系は安定である。
第5問 — 流体力学 問1
方針
栓があるときは静水圧,栓を外した後は連続式と Bernoulli 式を使う。水面速度を無視しない指定なので,断面積比を残して解く。
有限断面積の補正
大きなタンクなら として Torricelli の式 になる。今回は本体直径とノズル直径が有限なので, が分母に現れる。
典型ミス
を と逆にしてしまうと,水面速度が噴出速度より大きくなって物理的におかしい。面積の大きい本体部の水面はゆっくり下がる。
第6問 — 流体力学 問2
方針
円筒 Couette 流れでは,周方向速度を とおくのが標準形である。境界条件で定数を決め,最後にせん断応力からトルクを求める。
剛体回転の圧力勾配
内外円筒が同じ角速度で回ると相対せん断はないが,遠心加速度を支えるため半径方向の圧力勾配は残る。したがって圧力一定ではない。
トルクの符号
内円筒は流体を反時計回りに引きずるが,流体は内円筒に逆向きの粘性トルクを及ぼす。外円筒は流体から同じ大きさで反対向きのトルクを受ける。
典型ミス
せん断応力を単に としてはいけない。円筒座標の周方向せん断では を使う。
第7問 — 熱力学 問1
方針
容器全体は断熱・剛体なので,全内部エネルギーは保存される。各気体は理想気体であり,比熱比が同じなので, が等しいことから定積熱容量も等しくなる。
混合過程
温度がすでに等しくなった後に隔壁を外すので,混合による温度変化はない。ただし異種気体の自由混合により,各気体は利用可能体積が 2 倍になり,エントロピーは増加する。
エクセルギー
断熱剛体容器では外部への熱・仕事の出入りがないため,エクセルギー減少は不可逆性による損失であり, に全エントロピー生成を掛けて評価できる。
典型ミス
混合後の温度を平均してさらに変化させてしまう誤りがある。第一過程で両気体はすでに同温になっているため,第二過程では理想気体の内部エネルギーは変化しない。
第8問 — 熱力学 問2
方針
サバテサイクルは,断熱圧縮,定積加熱,定圧加熱,断熱膨張,定積放熱で構成される。状態 3 と状態 5 の温度が与えられているので,締切比 は断熱膨張式から決める。
エントロピー変化
断熱可逆過程ではエントロピー変化は 0 である。定積過程では ,定圧過程では を使う。全サイクルのエントロピー変化が 0 になることも検算になる。
仕事と効率
正味仕事は で求めるのが最短である。20 cycle/s は 1 サイクル仕事を 20 倍して kJ/s,すなわち kW に変換する。
典型ミス
行程容積 を と取り違えないこと。圧縮比と行程容積を同時に使い,, と先に決める。