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立教大学 理学研究科 物理学専攻 物理学 2025年度 春季(2025年2月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は電磁気学・回路1問、量子力学1問、力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 解析力学:ケプラー運動のラグランジアンと近星点・遠星点速度

方針

極座標の速度の 22 乗は r˙2+r2θ˙2\dot r^2+r^2\dot\theta^2 である。rθ˙r\dot\theta の rr を落として θ˙2\dot\theta^2 とする誤りが最も多いので、v=r˙ er+rθ˙ eθ\bm{v}=\dot r\,\bm{e}_r+r\dot\theta\,\bm{e}_\theta の形を一度書いておくとよい。

符号の確認

UU は負である。無限遠で 00、近づくほど小さくなるので、束縛された軌道では力学的エネルギーが負になる。楕円軌道の条件と整合する。

失点しやすい点

「m≪Mm\ll M より恒星は動かない」という近似を明示する。厳密には換算質量 μ=mM/(M+m)\mu=mM/(M+m) を使うが、本問では μ≃m\mu\simeq m としてよい。

設問(b) ラグランジアン

符号

UU が負なので −U-U は正になり、LL の第 22 項は +GMm/r+GMm/r である。ここで符号を落とすと(c)の運動方程式で引力が斥力になる。

θ\theta が現れないこと

LL は θ\theta を含まない(循環座標)。この時点で θ\theta に共役な運動量 pθ=∂L/∂θ˙=mr2θ˙p_\theta=\partial L/\partial\dot\theta=mr^2\dot\theta が保存することが読める。(c)で確認する。

失点しやすい点

L=T+UL=T+U としない。ハミルトニアンが T+UT+U、ラグランジアンが T−UT-U である。

設問(c) 運動方程式

各項の意味

mrθ˙2mr\dot\theta^2 は遠心力(見かけの力)、−GMm/r2-GMm/r^2 は万有引力である。動径方向の方程式はこの 22 つの釣り合いで軌道の形を決める。

θ\theta 方程式が保存則になる理由

LL が θ\theta を陽に含まないので ∂L/∂θ=0\partial L/\partial\theta=0 となり、共役運動量 pθp_\theta が保存する。これがケプラーの第 22 法則(面積速度一定)である。面積速度は 12r2θ˙=ℓ/(2m)\frac12 r^2\dot\theta=\ell/(2m) で一定になる。

失点しやすい点

∂L/∂r\partial L/\partial r で第 22 項 GMm/rGMm/r を rr で微分すると −GMm/r2-GMm/r^2 になる。符号を追う。

設問(d) 近星点速度と遠星点速度の関係

方針

比を出すだけなら角運動量保存の 11 本で足りる。エネルギー保存を持ち出す必要はない。22 つの保存量のうちどちらが何を決めるかを意識すると、(e)への流れが自然になる。

検算

e=0e=0(円軌道)なら vp=vav_p=v_a となり、速さが一定という円運動の性質と一致する。e→1e\to1 で vp/va→∞v_p/v_a\to\infty となり、細長い軌道では近星点で急激に速くなることを表す。

失点しやすい点

r˙=0\dot r=0 を根拠として書かないと、v=rθ˙v=r\dot\theta としてよい理由が示せない。rr の極値であることを明記する。

設問(e) vpv_p と vav_a の値

検算

e=0e=0 とすると vp=va=GM/av_p=v_a=\sqrt{GM/a} で、半径 aa の円軌道の速さ GM/a\sqrt{GM/a} に一致する。 また vpva=GM/av_pv_a=GM/a という関係が成り立ち、ee に依存しない。

別解

ヴィス・ヴィヴァ方程式 v2=GM(2r−1a)v^2=GM\left(\dfrac{2}{r}-\dfrac{1}{a}\right) を既知として使えば、r=rp=a(1−e)r=r_p=a(1-e) を代入して vp2=GM(2a(1−e)−1a)=GMa⋅2−(1−e)1−e=GMa⋅1+e1−ev_p^2=GM\left(\dfrac{2}{a(1-e)}-\dfrac1a\right)=\dfrac{GM}{a}\cdot\dfrac{2-(1-e)}{1-e}=\dfrac{GM}{a}\cdot\dfrac{1+e}{1-e} と直ちに得られる。ただしこの式自体はエネルギー保存と長半径の定義から導かれるので、本問では上の手順を踏むのが安全である。

背景

E=−GMm2aE=-\dfrac{GMm}{2a} が成り立つ(長半径だけでエネルギーが決まる)。実際 vpv_p を代入すると E=12mGM(1+e)a(1−e)−GMma(1−e)=GMma(1−e)(1+e2−1)=−GMm2aE=\frac12 m\dfrac{GM(1+e)}{a(1-e)}-\dfrac{GMm}{a(1-e)}=\dfrac{GMm}{a(1-e)}\left(\dfrac{1+e}{2}-1\right)=-\dfrac{GMm}{2a} となる。

失点しやすい点

1−e2=(1−e)(1+e)1-e^2=(1-e)(1+e) の因数分解で約分を誤りやすい。2e2e が両辺に現れて消えることを確認する。

解答

座標系の設定

恒星は m≪Mm\ll M より静止しているとみなせる。恒星の中心を原点とする 22 次元極座標 (r,θ)(r,\theta) で惑星の位置を表す。直交座標との関係は x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta である。

運動エネルギー

速度の成分は動径方向が r˙\dot r、方位方向が rθ˙r\dot\theta で、この 22 つは直交する。よって T=12m(r˙2+r2θ˙2). T=\frac12 m\bigl(\dot r^2+r^2\dot\theta^2\bigr).

位置エネルギー

万有引力 F=−GMmr2F=-\dfrac{GMm}{r^2}(引力)に対し、無限遠を基準(U(∞)=0U(\infty)=0)とすると U=−∫∞r(−GMmr′2)dr′=−GMmr. U=-\int_{\infty}^{r}\left(-\frac{GMm}{r'^2}\right)dr'=-\frac{GMm}{r}.

定義

L=T−UL=T-U だから L=12m(r˙2+r2θ˙2)+GMmr. L=\frac12 m\bigl(\dot r^2+r^2\dot\theta^2\bigr)+\frac{GMm}{r}.

rr についての方程式

∂L∂r˙=mr˙,∂L∂r=mrθ˙2−GMmr2 \frac{\partial L}{\partial\dot r}=m\dot r,\qquad \frac{\partial L}{\partial r}=mr\dot\theta^2-\frac{GMm}{r^2} だからオイラー・ラグランジュ方程式 ddt∂L∂r˙−∂L∂r=0\dfrac{d}{dt}\dfrac{\partial L}{\partial\dot r}-\dfrac{\partial L}{\partial r}=0 より mr¨=mrθ˙2−GMmr2. m\ddot r=mr\dot\theta^2-\frac{GMm}{r^2}.

θ\theta についての方程式

∂L∂θ˙=mr2θ˙,∂L∂θ=0 \frac{\partial L}{\partial\dot\theta}=mr^2\dot\theta,\qquad \frac{\partial L}{\partial\theta}=0 だから ddt(mr2θ˙)=0,すなわちmr2θ˙=一定. \frac{d}{dt}\bigl(mr^2\dot\theta\bigr)=0,\qquad\text{すなわち}\qquad mr^2\dot\theta=\text{一定}.

原本の誤植について

設問文には「近星点距離 rp=a(1−e)r_p=a(1-e) と遠星点距離 ra=a(1−e)r_a=a(1-e)」と印刷されているが、22 つが同じ式では近星点と遠星点が区別できない。楕円の定義から遠星点距離は ra=a(1+e)r_a=a(1+e) であり、第 22 式は誤植と読む。以下 rp=a(1−e)r_p=a(1-e)、ra=a(1+e)r_a=a(1+e) とする。

近星点・遠星点では速度が動径に垂直

rr が極値をとる点だから r˙=0\dot r=0 であり、速度は方位方向成分 rθ˙r\dot\theta のみになる。したがって vp=rpθ˙pv_p=r_p\dot\theta_p、va=raθ˙av_a=r_a\dot\theta_a である。

角運動量保存の適用

ℓ=mr2θ˙=mr⋅(rθ˙)\ell=mr^2\dot\theta=m r\cdot(r\dot\theta) だから、この 22 点で mrpvp=mrava,すなわちvpva=rarp=a(1+e)a(1−e)=1+e1−e. m r_p v_p=m r_a v_a,\qquad\text{すなわち}\qquad \frac{v_p}{v_a}=\frac{r_a}{r_p}=\frac{a(1+e)}{a(1-e)}=\frac{1+e}{1-e}.

エネルギー保存

力学的エネルギー E=12mv2−GMmrE=\frac12 mv^2-\dfrac{GMm}{r} は保存するから、近星点と遠星点で 12vp2−GMrp=12va2−GMra. \frac12 v_p^2-\frac{GM}{r_p}=\frac12 v_a^2-\frac{GM}{r_a}.

(d)を代入

va=1−e1+evpv_a=\dfrac{1-e}{1+e}v_p を代入すると左辺と右辺の速度項の差は 12vp2{1−(1−e1+e)2}=12vp2⋅(1+e)2−(1−e)2(1+e)2=2e(1+e)2vp2. \frac12 v_p^2\left\{1-\left(\frac{1-e}{1+e}\right)^2\right\} =\frac12 v_p^2\cdot\frac{(1+e)^2-(1-e)^2}{(1+e)^2} =\frac{2e}{(1+e)^2}v_p^2 . 位置エネルギー項の差は GM(1rp−1ra)=GMa⋅(1+e)−(1−e)(1−e)(1+e)=GMa⋅2e1−e2. GM\left(\frac{1}{r_p}-\frac{1}{r_a}\right) =\frac{GM}{a}\cdot\frac{(1+e)-(1-e)}{(1-e)(1+e)}=\frac{GM}{a}\cdot\frac{2e}{1-e^2}.

vpv_p の決定

両者を等置して 2e2e を約すと vp2(1+e)2=GMa(1−e2)=GMa(1−e)(1+e),vp2=GMa⋅1+e1−e. \frac{v_p^2}{(1+e)^2}=\frac{GM}{a(1-e^2)}=\frac{GM}{a(1-e)(1+e)}, \qquad v_p^2=\frac{GM}{a}\cdot\frac{1+e}{1-e}. (d)より va=1−e1+evpv_a=\dfrac{1-e}{1+e}v_p だから va2=GMa⋅1−e1+e. v_a^2=\frac{GM}{a}\cdot\frac{1-e}{1+e}.

最終答

T=12m(r˙2+r2θ˙2)T=\dfrac12 m(\dot r^2+r^2\dot\theta^2)、U=−GMmrU=-\dfrac{GMm}{r}

L=12m(r˙2+r2θ˙2)+GMmrL=\dfrac12 m(\dot r^2+r^2\dot\theta^2)+\dfrac{GMm}{r}

mr¨=mrθ˙2−GMmr2m\ddot r=mr\dot\theta^2-\dfrac{GMm}{r^2}、ddt(mr2θ˙)=0\dfrac{d}{dt}\bigl(mr^2\dot\theta\bigr)=0(角運動量 ℓ=mr2θ˙\ell=mr^2\dot\theta は保存)

vp=1+e1−e vav_p=\dfrac{1+e}{1-e}\,v_a

vp=GMa⋅1+e1−ev_p=\sqrt{\dfrac{GM}{a}\cdot\dfrac{1+e}{1-e}}、va=GMa⋅1−e1+ev_a=\sqrt{\dfrac{GM}{a}\cdot\dfrac{1-e}{1+e}}

第2問 — 電磁気学:一様電場中に置かれた導体球

符号

電場は電位の高い方から低い方へ向く。Ez>0E_z>0 なら zz が大きいほど電位は低く、ϕ=−Ezz\phi=-E_zz は確かに zz の増加とともに減る。

失点しやすい点

ϕ=Ezz\phi=E_zz と符号を落とすと(d)の無限遠条件が逆になる。E=−∇ϕ\bm{E}=-\nabla\phi のマイナスを最初に書く。

基準点の取り方

電位には定数の任意性があり、設問は原点を 00 と指定している。無限遠を基準に取れないのは、一様電場が無限遠まで続くため ϕ\phi が発散するからである。(c)(d)では有限系なので無限遠を基準に戻る。

設問(b) 極座標表示

φ\varphi に依らないこと

一様電場は zz 軸のまわりに軸対称だから、電位は方位角 φ\varphi を含まない。この対称性が(d)で ϕ=F(r)cos⁡θ\phi=F(r)\cos\theta という形を仮定してよい根拠になる。

cos⁡θ\cos\theta が現れる意味

cos⁡θ\cos\theta は ℓ=1\ell=1 のルジャンドル多項式 P1(cos⁡θ)P_1(\cos\theta) である。一様電場は ℓ=1\ell=1 の成分だけをもつので、導体球を置いても ℓ=1\ell=1 の項しか現れない。

失点しやすい点

θ\theta を zz 軸からの角(極角)と取るか xyxy 平面からの角(緯度)と取るかで cos⁡\cos と sin⁡\sin が入れ替わる。設問の図に従い極角とする。

設問(c) 孤立した帯電導体球の外部電位

方針

球対称なのでラプラス方程式を解くまでもなく、ガウスの法則で 11 行で決まる。ℓ=0\ell=0 の成分だけからなる場である。

検算

球面 r=ar=a での電位は Q/(4πε0a)Q/(4\pi\varepsilon_0a) で、導体内部も同じ値の等電位になる。導体内部の電場が 00 であることと整合する。

失点しやすい点

r<ar<a では ϕ\phi は一定(=Q/(4πε0a)=Q/(4\pi\varepsilon_0a))であって 00 ではない。設問は球外を問うているので r≥ar\ge a の式を答える。

設問(d) 一様電場中の導体球の外部電位

第2項の意味

Eza3cos⁡θ/r2E_za^3\cos\theta/r^2 は、原点に置かれた電気双極子の電位 pcos⁡θ4πε0r2\dfrac{p\cos\theta}{4\pi\varepsilon_0r^2} の形をしている。比較すると誘起双極子モーメントは p=4πε0a3Ezp=4\pi\varepsilon_0a^3E_z である。導体球は外場に応じて双極子として振る舞う。

全電荷が 00 であること

ℓ=0\ell=0 の項(C/rC/r の形)を入れなかったのは、全電荷が 00 で接地されていないためである。もし電荷 QQ を与えれば(c)の項が重なる。

検算

r=ar=a で ϕ=0\phi=0、r→∞r\to\infty で ϕ→−Ezrcos⁡θ\phi\to-E_zr\cos\theta の両方を満たす。また a→0a\to0 とすれば第 22 項が消えて一様電場に戻る。

失点しやすい点

一般解を Ar+B/r2Ar+B/r^2 ではなく A/r+BA/r+B としない。cos⁡θ\cos\theta(ℓ=1\ell=1)に対応する動径解は rr と r−2r^{-2} である。

設問(e) 電気力線と等電位線

図で押さえるべき点

33 点を落とさない。第 11 に電気力線が導体表面に垂直であること、第 22 に球の近くで力線が球を避けるように曲がること、第 33 に赤道面(θ=π/2\theta=\pi/2)が球面と同電位でつながっていることである。

力線の疎密

北極・南極(θ=0,π\theta=0,\pi)付近では力線が集まり電場が強く、赤道付近では疎になる。この疎密が(f)の表面電荷密度の cos⁡θ\cos\theta 依存に対応する。

失点しやすい点

導体内部にも力線を描かない。導体内部は電場 00 で等電位である。

設問(f) 表面電荷密度

検算:全電荷

∮σ dS=∫02π ⁣ ⁣∫0π3ε0Ezcos⁡θ⋅a2sin⁡θ dθ dφ=6πε0Eza2∫0πcos⁡θsin⁡θ dθ=0 \oint\sigma\,dS=\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{\pi}3\varepsilon_0E_z\cos\theta\cdot a^2\sin\theta\,d\theta\,d\varphi =6\pi\varepsilon_0E_za^2\int_0^{\pi}\cos\theta\sin\theta\,d\theta=0 となり、全電荷 00 という設定と一致する。

双極子モーメントとの整合

p=∮σ (acos⁡θ) dS=3ε0Eza3∫02π ⁣ ⁣∫0πcos⁡2θsin⁡θ dθ dφ=4πε0a3Ezp=\displaystyle\oint\sigma\,(a\cos\theta)\,dS=3\varepsilon_0E_za^3\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{\pi}\cos^2\theta\sin\theta\,d\theta\,d\varphi=4\pi\varepsilon_0a^3E_z となり、(d)で読み取った誘起双極子モーメントと一致する。

値の意味

北極(θ=0\theta=0)で σ=3ε0Ez\sigma=3\varepsilon_0E_z、南極で −3ε0Ez-3\varepsilon_0E_z、赤道で 00 である。一様電場だけのときの ε0Ez\varepsilon_0E_z の 33 倍になるのは、導体が電場を集めるためである。

失点しやすい点

Er=−∂ϕ/∂rE_r=-\partial\phi/\partial r のマイナスと、ϕ\phi の中の −Ez-E_z のマイナスが重なって符号が戻る。段階を分けて書く。

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第3問 — 量子力学:非調和振動子とハイパービリアル関係式

次元の確認

α\alpha は長さの次元をもち、調和振動子の特性長 ℏ/(mω)\sqrt{\hbar/(m\omega)} である。β\beta はエネルギーの次元で、調和振動子の基底エネルギー ℏω/2\hbar\omega/2 に等しい。λ\lambda は無次元で、非調和項の強さを測る。

検算

g=0g=0 とすると λ=0\lambda=0 で H^=p^2+x^2\hat H=\hat p^2+\hat x^2 となり、固有値は E=2n+1E=2n+1。H^0=βH^\hat H_0=\beta\hat H より E0=ℏω2(2n+1)=ℏω(n+12)E_0=\frac{\hbar\omega}{2}(2n+1)=\hbar\omega(n+\frac12) で、調和振動子のエネルギー準位に一致する。

失点しやすい点

p^2\hat p^2 の係数を ℏ2/(2mα2)\hbar^2/(2m\alpha^2) と書くとき、P^2=(ℏ/α)2p^2\hat P^2=(\hbar/\alpha)^2\hat p^2 の 22 乗を落とさない。

設問(b) ⟨[H^,A^]⟩=0\langle[\hat H,\hat A]\rangle=0

方針

A^\hat A に何も仮定していないのがこの恒等式の強みである。A^\hat A を選ぶたびに新しい関係式が 11 本得られ、(c)(d)(e)はその使い分けにすぎない。

必要な仮定

∣φ⟩|\varphi\rangle がエネルギー固有状態であること、H^\hat H がエルミートで EE が実であることの 22 点である。定常状態でない一般の状態では成り立たない。

失点しやすい点

⟨φ∣H^=E⟨φ∣\langle\varphi|\hat H=E\langle\varphi| を書くときにエルミート性と EE の実性を使う。ここを省くと E∗E^{*} が残る。

設問(c) ビリアル定理

ビリアル定理としての読み方

一般に V=∑kckxkV=\sum_k c_k x^k の形のポテンシャルでは 2⟨T⟩=⟨xV′(x)⟩2\langle T\rangle=\langle xV'(x)\rangle が成り立つ。ここでは T=p^2T=\hat p^2、V=x^2+λx^4V=\hat x^2+\lambda\hat x^4、xV′=2x^2+4λx^4xV'=2\hat x^2+4\lambda\hat x^4 で、2⟨p^2⟩=2⟨x^2⟩+4λ⟨x^4⟩2\langle\hat p^2\rangle=2\langle\hat x^2\rangle+4\lambda\langle\hat x^4\rangle となり上と同じである。

エネルギーとの関係

E=⟨H^⟩=⟨p^2⟩+⟨x^2⟩+λ⟨x^4⟩E=\langle\hat H\rangle=\langle\hat p^2\rangle+\langle\hat x^2\rangle+\lambda\langle\hat x^4\rangle にビリアル定理を代入すると E=2⟨x^2⟩+3λ⟨x^4⟩E=2\langle\hat x^2\rangle+3\lambda\langle\hat x^4\rangle が得られる。これは(e)で n=1n=1 とした場合に一致する。

失点しやすい点

[x^2,x^p^][\hat x^2,\hat x\hat p] を計算するとき、[x^2,x^]=0[\hat x^2,\hat x]=0 なので x^[x^2,p^]\hat x[\hat x^2,\hat p] だけが残る。展開公式 [A,BC]=[A,B]C+B[A,C][A,BC]=[A,B]C+B[A,C] を使う。

設問(d) ⟨f′(x^)p^⟩\langle f'(\hat x)\hat p\rangle の関係式

ii が現れる理由

f′(x^)p^f'(\hat x)\hat p はエルミートでないので、その期待値は一般に複素数になる。実際 (f′p^)†=p^f′=f′p^−if′′(f'\hat p)^{\dagger}=\hat pf'=f'\hat p-if'' だから、⟨f′p^⟩\langle f'\hat p\rangle の実部は 12⟨f′p^+p^f′⟩\frac12\langle f'\hat p+\hat pf'\rangle、虚部が 12⟨f′′⟩\frac12\langle f''\rangle にあたる。上式はその虚部だけが残ることを述べている。

検算

f(x)=x2f(x)=x^2 とすると f′=2xf'=2x、f′′=2f''=2 で ⟨x^p^⟩=i2\langle\hat x\hat p\rangle=\frac{i}{2} となる。実際 x^p^=12(x^p^+p^x^)+12[x^,p^]\hat x\hat p=\frac12(\hat x\hat p+\hat p\hat x)+\frac12[\hat x,\hat p] で、対称化された部分の期待値は定常状態で 00、残りが i2\frac{i}{2} である。

失点しやすい点

[p^,f(x^)]=−if′(x^)[\hat p,f(\hat x)]=-if'(\hat x) の符号を落とさない。[x^,p^]=i[\hat x,\hat p]=i の向きから決まる。

設問(e) ハイパービリアル関係式

検算:n=1n=1

第 11 項が消えて 4E−8⟨x^2⟩−12λ⟨x^4⟩=04E-8\langle\hat x^2\rangle-12\lambda\langle\hat x^4\rangle=0、すなわち E=2⟨x^2⟩+3λ⟨x^4⟩E=2\langle\hat x^2\rangle+3\lambda\langle\hat x^4\rangle となる。これは(c)のビリアル定理を E=⟨p^2⟩+⟨x^2⟩+λ⟨x^4⟩E=\langle\hat p^2\rangle+\langle\hat x^2\rangle+\lambda\langle\hat x^4\rangle に代入した結果と一致する。

検算:n=0n=0

A^=p^\hat A=\hat p の場合にあたり、−4⟨x^⟩−8λ⟨x^3⟩=0-4\langle\hat x\rangle-8\lambda\langle\hat x^3\rangle=0、すなわち ⟨V′⟩=0\langle V'\rangle=0 が出る。これは定常状態で平均の力が 00 になるというエーレンフェストの定理である。

この関係式の使い道

nn を 1,2,3,…1,2,3,\dots と動かすと、⟨x^k⟩\langle\hat x^k\rangle たちを結ぶ漸化式の族が得られる。λ\lambda の摂動展開と組み合わせると、非調和振動子のエネルギー準位を数値的に高精度で求める方法(ハイパービリアル摂動法)になる。

失点しやすい点

x^n−1p^2\hat x^{n-1}\hat p^2 の書き換えで x^n−1H^\hat x^{n-1}\hat H の期待値を E⟨x^n−1⟩E\langle\hat x^{n-1}\rangle とできるのは、H^\hat H が右側の ∣φ⟩|\varphi\rangle に作用するからである。順序を逆にすると使えない。

量子力学:非調和振動子とハイパービリアル関係式の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 統計力学:リング上のハードコア格子気体と転送行列

方針

「全体から隣接するものを引く」が最短である。リングでは辺の本数が頂点数と同じ LL 本になる点が、直線鎖(L−1L-1 本)との違いである。

失点しやすい点

L=4L=4 では (1,3)(1,3) と (2,4)(2,4) がともに「向かい合う」配置で、これ以外にないことを確認する。粒子は区別できないので (1,3)(1,3) と (3,1)(3,1) を別に数えない。

リングと直線の違い

同じ L=4L=4 でも直線状に並んだ格子なら (1,3),(1,4),(2,4)(1,3),(1,4),(2,4) の 33 通りが可能で、Z=3Z=3 になる。リングでは 11 と 44 が隣接するため 11 通り減る。この差が(c)の L(L−3)/2L(L-3)/2 と直線鎖の (L−12)\binom{L-1}{2} の違いに対応する。

設問(b) Ξ4(x)\Xi_4(x)

母関数の意味

xx は絶対活動度(フガシティー)にあたり、ΞL\Xi_L はグランドカノニカル分配関数である。xx の次数が粒子数、係数が縮重度を表す。

検算

x=0x=0 とすると Ξ4(0)=1=Z4,0\Xi_4(0)=1=Z_{4,0} で、粒子が 00 個の配置が 11 通りであることと合う。

失点しやすい点

N=0N=0 の項を落とさない。空配置も 11 通りの配置である。

設問(c) ZL,2Z_{L,2}

検算

L=3L=3 とすると 00 で、設問文にある Z3,2=0Z_{3,2}=0 と一致する。L=4L=4 とすると 4⋅12=2\dfrac{4\cdot1}{2}=2 で(a)と一致する。L=5L=5 なら 55 で、正五角形の「対角線」の本数と等しい。

L≥3L\ge3 が必要な理由

L=2L=2 のリングでは格子 11 と 22 が 22 本の辺で結ばれ、辺の本数が LL に等しいという前提が崩れる。設問が L≥3L\ge3 としているのはこのためである。

失点しやすい点

隣接する組の個数をリングで L−1L-1 とすると直線鎖の数え方になる。リングは端がないので LL 本である。

設問(d) 転送行列による ΞL(x)\Xi_L(x)

xn/2+n′/2x^{n/2+n'/2} の意味

各粒子は左隣との辺と右隣との辺の両方に現れるので、xx を半分ずつ振り分けて xn/2x^{n/2} と xn′/2x^{n'/2} にしている。LL 個の辺をすべて掛け合わせると、粒子 11 個あたりちょうど x1x^1 になる。因子 (1−nn′)(1-nn') は隣り合う占有を禁止する。

検算

μ++μ−=1\mu_++\mu_-=1、μ+μ−=−x\mu_+\mu_-=-x である。ニュートンの公式で冪和 pL=μ+L+μ−Lp_L=\mu_+^L+\mu_-^L を計算すると p1=1p_1=1、p2=1+2xp_2=1+2x、p3=1+3xp_3=1+3x、p4=p3+xp2=1+4x+2x2p_4=p_3+xp_2=1+4x+2x^2 となり、(b)の Ξ4\Xi_4 と一致する。

背景

x=1x=1 とすると ΞL(1)\Xi_L(1) はリング上の「隣接しない部分集合」の総数で、リュカ数 LnL_n に一致する。μ±\mu_{\pm} が黄金比とその共役になるためである。

失点しやすい点

周期境界条件 nL+1=n1n_{L+1}=n_1 があるからトレースになる。開いた鎖ならベクトルで挟む形になり、固有値の LL 乗の単純な和にはならない。

設問(e) F(1)F(1)

方針

転送行列の最大固有値だけが熱力学極限に効く、というのは統計力学の標準的な事実である。μ−\mu_- の寄与は (μ−/μ+)L(\mu_-/\mu_+)^L として指数的に消える。

F(1)F(1) の意味

x=1x=1 では配置に重みを付けないので、ΞL(1)\Xi_L(1) はリング上の隣接しない配置の総数である。F(1)F(1) はその総数の増大率の対数、すなわち 11 格子あたりのエントロピー(ハードコア格子気体の残留エントロピー)を表す。黄金比が現れるのは、この数え上げがフィボナッチ型の漸化式に従うためである。

検算

L=4L=4 で Ξ4(1)=1+4+2=7\Xi_4(1)=1+4+2=7(リュカ数 L4=7L_4=7)。14ln⁡7≈0.486\frac14\ln7\approx0.486 で、極限値 0.48120.4812 に近い。

失点しやすい点

μ−\mu_- は x>0x>0 で負である。∣μ−∣<μ+|\mu_-|<\mu_+ を絶対値で比較する。μ−L\mu_-^L が振動するが大きさが小さいので極限には影響しない。

統計力学:リング上のハードコア格子気体と転送行列の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度 春季(2025年2月実施)(このページ・全4問)

    解析力学:ケプラー運動のラグランジアンと近星点・遠星点速度 / 電磁気学:一様電場中に置かれた導体球 / 量子力学:非調和振動子とハイパービリアル関係式

  • 2025年度 夏季(2024年7月実施)(全6問)

    力学:ロケットの運動方程式とツィオルコフスキーの式 / 電磁気学:ビオ・サバールの法則から円電流の磁場まで / 量子力学:時間依存2準位系と相互作用表示での摂動論

  • 2024年度 春季(2024年2月実施)(全4問)

    解析力学:円筒座標での中心力運動とラグランジュ方程式 / 電磁気学:球形コンデンサーの電場・電位・静電容量 / 量子力学:デルタ関数ポテンシャルの束縛状態

  • 2024年度 夏季(2023年7月実施)(全6問)

    力学:棒にはたらく動摩擦力と二糸振り子 / 電磁気学:トロイダルコイルの磁場・エネルギー・自己インダクタンス / 量子力学:超対称性をもつ調和振動子とスピンの結合系

  • 2023年度 春季(2023年2月実施)(全4問)

    力学:減衰と外力を受ける振り子の共鳴 / 電磁気学:電気双極子が作る場と外場から受ける力・トルク / 量子力学:半直線上の調和振動子

  • 2023年度 夏季(2022年7月実施)(全6問)

    解析力学:二重振り子の微小振動と基準モード / 電磁気学:磁気モーメント・磁気回転比・g 因子 / 量子力学:無限井戸に置かれたデルタ関数障壁

2025年度 春季(2025年2月実施)の出題内容

全4問

この4問の分野は電磁気学・回路1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学ケプラー運動のラグランジアンと近星点・遠星点速度符号の確認 / 符号あり
第2問電磁気学・回路一様電場中に置かれた導体球符号 / 基準点の取り方あり
第3問量子力学非調和振動子とハイパービリアル関係式次元の確認 / 必要な仮定あり
第4問—統計力学:リング上のハードコア格子気体と転送行列リングと直線の違い / 母関数の意味あり

2025年度 春季(2025年2月実施)の解説には検算4件・失点しやすい点4件が付いています。

前年度(2025年度 夏季(2024年7月実施))との違い

大問数
2025年度 夏季(2024年7月実施) 6問 → 2025年度 春季(2025年2月実施) 4問
2025年度 夏季(2024年7月実施)の解答例

立教大学の公式過去問

公開年度範囲
2004年度以降の夏季・春季(直近は2023〜2025年度)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
英語は外部試験のスコア提出。専門科目の物理学のみ問題を掲載している。
院試hubの最終確認
2026-09-06
立教大学の公式過去問PDF