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立教大学 理学研究科 物理学専攻 物理学 2023年度 春季(2023年2月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は電磁気学・回路1問、熱・統計力学1問、量子力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 力学:減衰と外力を受ける振り子の共鳴

方針

糸の張力は支点を通るのでトルクを生まない。回転の運動方程式 Iθ¨=NI\ddot\theta=N に I=mR2I=mR^2 を入れるだけで済む。

失点しやすい点

sin⁡θ\sin\theta を最初から θ\theta にしない。近似は(b)以降で使うと明記されている。

振り子として扱える条件

「糸が張った状態」という但し書きが重要である。糸がたるむ(θ\theta が大きく張力が 00 になる)場合は円弧上の運動でなくなり、この方程式は使えない。

設問(b) 単振動の角振動数

検算

次元は (m/s2)/m=s−1\sqrt{(\mathrm{m/s^2})/\mathrm{m}}=\mathrm{s^{-1}} で合う。RR が長いほどゆっくり振れる、という単振り子の性質と一致する。

mm が消えること

復元トルクも慣性モーメントもともに mm に比例するので質量が約分される。単振り子の周期が質量によらない理由である。

失点しやすい点

Ω0\Omega_0 は角振動数であって周期ではない。周期は 2π/Ω02\pi/\Omega_0 である。

設問(c) 空気抵抗を含む運動方程式

方針

力ではなくトルクで書く。抵抗力に腕の長さ RR を掛けるのを忘れると、θ˙\dot\theta の係数が ρ/(mR)\rho/(mR) になってしまう。

減衰定数

(e)で使う標準形 x¨+2βx˙+ω02x=Acos⁡ωt\ddot x+2\beta\dot x+\omega_0^2x=A\cos\omega t と比べると 2β=ρ/m2\beta=\rho/m、すなわち β=ρ2m\beta=\dfrac{\rho}{2m} である。

失点しやすい点

gg を使わずに Ω0\Omega_0 で表すという指示に従う。Ω02=g/R\Omega_0^2=g/R を代入する。

設問(d) 外力トルクを含む運動方程式

aa の次元

aa はトルクの次元をもつので a/(mR2)a/(mR^2) は角加速度の次元になる。標準形の AA に対応する。

失点しやすい点

外力は「力」ではなく「トルク」として与えられているので、RR を掛けずにそのまま右辺に足す。ただし mR2mR^2 で割る操作は必要である。

定常解と過渡解

(d)の方程式の一般解は、減衰する斉次解と外力の振動数で振動する特殊解の和である。時間が経つと斉次解は減衰して消え、(e)で扱う特殊解だけが残る。

設問(e) 共鳴角振動数と共鳴の条件

3つの振動数の大小

減衰のない固有振動数 Ω0\Omega_0、減衰振動の振動数 Ω02−β2\sqrt{\Omega_0^2-\beta^2}、共鳴振動数 Ω02−2β2\sqrt{\Omega_0^2-2\beta^2} はこの順に小さくなる。混同しやすいので、どれを問われているかを確認する。

検算

ρ→0\rho\to0(β→0\beta\to0)では ΩR→Ω0\Omega_{\mathrm R}\to\Omega_0 となり、減衰がなければ固有振動数で共鳴するという直感に合う。また D(ΩR)=A2βΩ02−β2D(\Omega_{\mathrm R})=\dfrac{A}{2\beta\sqrt{\Omega_0^2-\beta^2}} で、β→0\beta\to0 で発散する。

失点しやすい点

dg/dΩ=0dg/d\Omega=0 の因数 Ω=0\Omega=0 を共鳴として採用しない。Ω=0\Omega=0 は静的な変位で、振動の共鳴ではない。

設問(f) 位相のずれの関係式

(2)式も同時に出ること

22 式をそれぞれ 22 乗して足すと D2[(ω02−ω2)2+4β2ω2]=A2D^2\bigl[(\omega_0^2-\omega^2)^2+4\beta^2\omega^2\bigr]=A^2 となり、(2)式 D=A(ω02−ω2)2+4ω2β2D=\dfrac{A}{\sqrt{(\omega_0^2-\omega^2)^2+4\omega^2\beta^2}} が得られる。(e)で使った式もここから出る。

位相の意味

δ\delta は外力に対する応答の遅れである。ω≪ω0\omega\ll\omega_0 では δ≃0\delta\simeq0(同位相)、ω=ω0\omega=\omega_0 では δ=π/2\delta=\pi/2、ω≫ω0\omega\gg\omega_0 では δ→π\delta\to\pi(逆位相)となる。

失点しやすい点

cos⁡(φ+δ)\cos(\varphi+\delta) の加法定理で符号を誤らない。また cos⁡φ\cos\varphi と sin⁡φ\sin\varphi の係数を独立に比較してよい理由(一次独立性、すなわち任意の tt で成り立つこと)を一言添える。

解答

支点まわりのモーメント

糸が張った状態で小球は半径 RR の円弧上を動く。支点まわりの慣性モーメントは mR2mR^2、重力によるトルクは −mgRsin⁡θ-mgR\sin\theta(復元向き)だから mR2θ¨=−mgRsin⁡θ,すなわちθ¨=−gRsin⁡θ. mR^2\ddot\theta=-mgR\sin\theta, \qquad\text{すなわち}\qquad \ddot\theta=-\frac gR\sin\theta .

線形化

∣θ∣≪1|\theta|\ll1 で sin⁡θ≃θ\sin\theta\simeq\theta とすると θ¨=−gRθ. \ddot\theta=-\frac gR\theta . これは角振動数 Ω0\Omega_0 の単振動 θ¨=−Ω02θ\ddot\theta=-\Omega_0^2\theta の形だから Ω0=gR. \Omega_0=\sqrt{\frac gR}.

抵抗のトルク

小球の速さは ∣v∣=R∣θ˙∣|\bm v|=R|\dot\theta| で、速度は円弧の接線方向である。抵抗力 −ρv-\rho\bm v の大きさは ρR∣θ˙∣\rho R|\dot\theta| で、支点からの腕の長さが RR だから、トルクは −ρR2θ˙-\rho R^2\dot\theta である。

運動方程式

mR2θ¨=−mgRθ−ρR2θ˙. mR^2\ddot\theta=-mgR\theta-\rho R^2\dot\theta . 両辺を mR2mR^2 で割り、g/R=Ω02g/R=\Omega_0^2 を使うと θ¨+ρmθ˙+Ω02θ=0. \ddot\theta+\frac{\rho}{m}\dot\theta+\Omega_0^2\theta=0 .

トルクを加える

外力トルク acos⁡Ωta\cos\Omega t が θ\theta の正の向きにはたらくので、(c)の右辺に加えて mR2θ¨=−mgRθ−ρR2θ˙+acos⁡Ωt. mR^2\ddot\theta=-mgR\theta-\rho R^2\dot\theta+a\cos\Omega t . mR2mR^2 で割ると θ¨+ρmθ˙+Ω02θ=amR2cos⁡Ωt. \ddot\theta+\frac{\rho}{m}\dot\theta+\Omega_0^2\theta=\frac{a}{mR^2}\cos\Omega t .

標準形との対応

(d)を x¨+2βx˙+ω02x=Acos⁡ωt\ddot x+2\beta\dot x+\omega_0^2x=A\cos\omega t と比べると β=ρ2m,ω0=Ω0,A=amR2,ω=Ω. \beta=\frac{\rho}{2m},\qquad \omega_0=\Omega_0,\qquad A=\frac{a}{mR^2},\qquad \omega=\Omega . 振幅は与えられた(2)式より D(Ω)=A(Ω02−Ω2)2+4Ω2β2. D(\Omega)=\frac{A}{\sqrt{(\Omega_0^2-\Omega^2)^2+4\Omega^2\beta^2}} .

最大化

DD が最大になるのは根号の中身 g(Ω)=(Ω02−Ω2)2+4Ω2β2g(\Omega)=(\Omega_0^2-\Omega^2)^2+4\Omega^2\beta^2 が最小のときである。 dgdΩ=2(Ω02−Ω2)(−2Ω)+8Ωβ2=−4Ω[(Ω02−Ω2)−2β2]=0. \frac{dg}{d\Omega}=2(\Omega_0^2-\Omega^2)(-2\Omega)+8\Omega\beta^2 =-4\Omega\bigl[(\Omega_0^2-\Omega^2)-2\beta^2\bigr]=0 . Ω>0\Omega>0 の解は ΩR2=Ω02−2β2=Ω02−ρ22m2,ΩR=Ω02−ρ22m2. \Omega_{\mathrm R}^2=\Omega_0^2-2\beta^2=\Omega_0^2-\frac{\rho^2}{2m^2}, \qquad \Omega_{\mathrm R}=\sqrt{\Omega_0^2-\frac{\rho^2}{2m^2}} .

共鳴が起きる条件

ΩR\Omega_{\mathrm R} が正の実数であるためには Ω02>ρ22m2 ⟺ ρ<2 m Ω0. \Omega_0^2>\frac{\rho^2}{2m^2} \ \Longleftrightarrow\ \rho<\sqrt2\,m\,\Omega_0 . これを満たさないと Ω=0\Omega=0 で DD が最大になり、振動的な共鳴のピークは現れない。

特殊解の代入

xp=Dcos⁡(ωt−δ)x_p=D\cos(\omega t-\delta) とすると x˙p=−Dωsin⁡(ωt−δ)\dot x_p=-D\omega\sin(\omega t-\delta)、x¨p=−Dω2cos⁡(ωt−δ)\ddot x_p=-D\omega^2\cos(\omega t-\delta) だから、左辺は D[(ω02−ω2)cos⁡(ωt−δ)−2βωsin⁡(ωt−δ)]. D\bigl[(\omega_0^2-\omega^2)\cos(\omega t-\delta)-2\beta\omega\sin(\omega t-\delta)\bigr].

右辺の展開

φ=ωt−δ\varphi=\omega t-\delta とおくと右辺は Acos⁡ωt=Acos⁡(φ+δ)=Acos⁡δ cos⁡φ−Asin⁡δ sin⁡φ. A\cos\omega t=A\cos(\varphi+\delta)=A\cos\delta\,\cos\varphi-A\sin\delta\,\sin\varphi .

係数の比較

cos⁡φ\cos\varphi と sin⁡φ\sin\varphi は一次独立だから、それぞれの係数が等しい。 D(ω02−ω2)=Acos⁡δ,2βωD=Asin⁡δ. D(\omega_0^2-\omega^2)=A\cos\delta,\qquad 2\beta\omega D=A\sin\delta .

結論

第 22 式を第 11 式で割ると tan⁡δ=2βωω02−ω2 \tan\delta=\frac{2\beta\omega}{\omega_0^2-\omega^2} となり(1)式が示された。

最終答

θ¨=−gRsin⁡θ\ddot\theta=-\dfrac gR\sin\theta

Ω0=gR\Omega_0=\sqrt{\dfrac gR}

θ¨+ρmθ˙+Ω02θ=0\ddot\theta+\dfrac{\rho}{m}\dot\theta+\Omega_0^{2}\theta=0

θ¨+ρmθ˙+Ω02θ=amR2cos⁡Ωt\ddot\theta+\dfrac{\rho}{m}\dot\theta+\Omega_0^{2}\theta=\dfrac{a}{mR^{2}}\cos\Omega t

ΩR=Ω02−ρ22m2\Omega_{\mathrm R}=\sqrt{\Omega_0^{2}-\dfrac{\rho^{2}}{2m^{2}}}、共鳴が起きる条件は ρ<2 m Ω0\rho<\sqrt2\,m\,\Omega_0

第2問 — 電磁気学:電気双極子が作る場と外場から受ける力・トルク

符号の意味

W<0W<0 である。異符号の電荷は引き合うので、近づける過程では電気力が正の仕事をし、外力は負の仕事をする(引き戻しながらゆっくり運ぶ)。

正電荷は動かないこと

qq は固定されているので、qq に対して外力がする仕事は考えない。設問も「負の点電荷に対して外力がした仕事」と限定している。

失点しやすい点

W=+q2/(4πε0d)W=+q^2/(4\pi\varepsilon_0d) と符号を逆にしない。無限遠を基準に 00 から負の値へ下がる。

設問(b) 双極子が作る電場

r−3r^{-3} 依存

点電荷の場が r−2r^{-2} なのに対し、双極子は r−3r^{-3} で減衰する。正負の電荷の寄与が遠方で打ち消し合うためである。

向きの確認

θ=0\theta=0(双極子の正の側)では Eθ=0E_\theta=0、Er=2p/(4πε0r3)>0E_r=2p/(4\pi\varepsilon_0r^3)>0 で外向き。θ=π/2\theta=\pi/2(赤道)では Er=0E_r=0、Eθ=p/(4πε0r3)>0E_\theta=p/(4\pi\varepsilon_0r^3)>0 で θ\theta の増える向き、すなわち双極子と逆向きになる。双極子の電気力線の形と一致する。

失点しやすい点

EθE_\theta の 1/r1/r を落とさない。極座標の勾配の θ\theta 成分は 1r∂∂θ\dfrac1r\dfrac{\partial}{\partial\theta} である。

設問(c) 外部の点電荷から受ける力とトルク

なぜ勾配が要るか

一様な電場の中では、双極子の正負の電荷が受ける力が打ち消し合って合力は 00 になる。合力が生じるのは電場が場所によって変わるときで、その大きさは電場の勾配に比例する。F=(p⋅∇)E\bm F=(\bm p\cdot\nabla)\bm E はこの事実を表している。

検算:x′=0x'=0 の場合

QQ が zz 軸上(z′>0z'>0)にあるとき Fx=0F_x=0、Fz=pQ(−2z′2)4πε0z′5=−2pQ4πε0z′3F_z=\dfrac{pQ(-2z'^2)}{4\pi\varepsilon_0z'^5}=-\dfrac{2pQ}{4\pi\varepsilon_0z'^3} となる。Q>0Q>0、p>0p>0 なら Fz<0F_z<0、つまり双極子は QQ から遠ざかる向きに押される。zz 軸上では双極子の負電荷側が QQ から遠く、正電荷側が近いので反発が勝つ。整合している。 またこのとき Ny=0N_y=0 で、双極子と QQ が同一直線上にあるためトルクが消える。これも妥当である。

トルクの向き

N=p×E\bm N=\bm p\times\bm E は、双極子を外場の向きに揃えようとする向きにはたらく。yy 成分だけが残るのは、p\bm p が zz 軸方向、E\bm E が xzxz 平面内にあるためである。

失点しやすい点

「原点まわりのトルク」なので r×F\bm r\times\bm F の寄与は入らない(双極子は原点にある)。また力の計算で F=qE\bm F=q\bm E の形を使わない。点双極子には正味の電荷がないので、勾配の項だけが残る。

電磁気学:電気双極子が作る場と外場から受ける力・トルクの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学:半直線上の調和振動子

方針

e−αx2/2e^{-\alpha x^2/2} は x→∞x\to\infty での漸近形である。これを括り出すと、残る ff が多項式になる場合を探せばよい形の方程式になる。エルミートの微分方程式そのものである。

失点しやすい点

ψ′′\psi'' の展開で −αf-\alpha f の項(e−αx2/2e^{-\alpha x^2/2} の 22 階微分から出る)を落とさない。この項が ε−α\varepsilon-\alpha の −α-\alpha を生む。

x≤0x\le0 の扱い

ポテンシャルが無限大なので x≤0x\le0 では ψ=0\psi=0 である。以下の議論はすべて x>0x>0 の領域で行い、x=0x=0 での接続は(c)の境界条件として使う。

設問(b) 係数の漸化式

偶数項と奇数項が分離すること

漸化式は nn を 22 ずつ飛ばすので、a0a_0 から始まる偶数次の系列と a1a_1 から始まる奇数次の系列が独立に決まる。この分離が(c)で効く。

失点しやすい点

f′′f'' の添字のずらし n→n+2n\to n+2 を正しく行う。∑n(n−1)anxn−2\sum n(n-1)a_nx^{n-2} のまま比較すると係数が合わない。

漸化式の使い方

a0a_0 と a1a_1 の 22 つが初期値で、他はすべてこの 22 つから決まる。22 階の微分方程式なので独立解が 22 つある、という事実に対応している。

設問(c) エネルギー固有値

全空間の調和振動子との関係

ω=ℏαm\omega=\dfrac{\hbar\alpha}{m} とおくと、通常の調和振動子の準位は ℏω(n+12)=ℏ2α2m(2n+1)\hbar\omega\left(n+\dfrac12\right)=\dfrac{\hbar^2\alpha}{2m}(2n+1) である。 本問の結果はこのうち nn が奇数のものだけに一致する。壁があるために ψ(0)=0\psi(0)=0 を満たす奇関数の解しか許されない、という事実の反映である。

検算

基底状態は k=0k=0、N=1N=1 で f=a1xf=a_1x、ψ=a1xe−αx2/2\psi=a_1xe^{-\alpha x^2/2} である。これは全空間の調和振動子の第 11 励起状態(奇関数)を x>0x>0 に制限したもので、確かに ψ(0)=0\psi(0)=0 を満たす。

失点しやすい点

a0=0a_0=0 の条件を落として NN を偶数まで許すと、偽の準位が混ざる。境界条件と打ち切り条件の 22 つを両方使う。

設問(d) 規格化された基底状態

微分による積分の作り方

∫0∞x2e−αx2dx\displaystyle\int_0^\infty x^2e^{-\alpha x^2}dx は、与えられた公式をパラメータ α\alpha について微分すると得られる。この手法は x2nx^{2n} の積分に一般に使える。

検算

ψ0\psi_0 は x=0x=0 で 00、x→∞x\to\infty で 00 になり、途中に節をもたない(x>0x>0 で符号一定)。基底状態の波動関数が節をもたないという一般則と整合する。 最大値をとる位置は d(xe−αx2/2)/dx=0d(xe^{-\alpha x^2/2})/dx=0 より x=1/αx=1/\sqrt\alpha で、調和振動子の特性長と一致する。

積分範囲

規格化は x>0x>0 のみで行う。x≤0x\le0 では ψ=0\psi=0 なので寄与しない。全空間の調和振動子の第 11 励起状態の規格化係数と比べると 2\sqrt2 倍になるのは、半分の領域に確率を詰め込んでいるためである。

失点しやすい点

∫0∞\int_0^\infty を ∫−∞∞\int_{-\infty}^\infty としない。壁があるので半直線だけで規格化する。

量子力学:半直線上の調和振動子の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 統計力学:理想量子気体の大分配関数と分布関数

方針

正準集団では ∑ini=N\sum_in_i=N という拘束のせいで和が因子分解できない。大正準集団に移して NN について和を取ると拘束が消え、状態ごとの独立な和になる。これが大正準集団を使う最大の理由である。

μ\mu の役割

eβμNe^{\beta\mu N} が拘束条件を「化学ポテンシャルとの交換」に置き換えている。μ\mu は平均粒子数を指定するための共役変数である。

失点しやすい点

和と積の交換の根拠を書く。{ni}\{n_i\} が独立に走ることを明示してから積に直す。

設問(a-2) 占有数の期待値と低温での概形

図に書き込むこと

ε=μ\varepsilon=\mu で値が 1/21/2 になること、段差の幅が kBTk_BT 程度であること、0≤⟨ni⟩≤10\le\langle n_i\rangle\le1 であることの 33 点を示す。

失点しやすい点

⟨ni⟩\langle n_i\rangle が 11 を超えないことがフェルミ統計の特徴である。分母の +1+1 を落とすとボルツマン分布になってしまう。

化学ポテンシャルとフェルミエネルギー

T→0T\to0 で μ\mu はフェルミエネルギー εF\varepsilon_F に一致する。有限温度では μ\mu は εF\varepsilon_F からわずかにずれるが、金属では kBT≪εFk_BT\ll\varepsilon_F なので実用上は等しいとしてよい。

設問(a-3) 相対論的電子の状態密度とフェルミエネルギー

非相対論との比較

ε=p2/(2m)\varepsilon=p^2/(2m) の場合は D(ε)∝εD(\varepsilon)\propto\sqrt\varepsilon、εF∝(N/V)2/3\varepsilon_F\propto(N/V)^{2/3} である。相対論的な場合は D∝ε2D\propto\varepsilon^2、εF∝(N/V)1/3\varepsilon_F\propto(N/V)^{1/3} となり、密度依存性が弱くなる。白色矮星や中性子星の安定性の議論でこの違いが効く。

スピンの因子

電子はスピン 1/21/2 で各運動量状態に 22 状態あるから因子 22 が入る。これを落とすと εF\varepsilon_F が 21/32^{1/3} 倍ずれる。

失点しやすい点

d3p=4πp2dpd^3p=4\pi p^2dp の球殻の体積を使う。また ε=cp\varepsilon=cp の変換で dp=dε/cdp=d\varepsilon/c の 1/c1/c を落とさない。

設問(b-1) ボース気体の大分配関数と μ\mu の上限

フェルミとの違い

フェルミでは nin_i が 0,10,1 に限られるので和が有限で、μ\mu に制限がつかない。ボースでは無限級数になるため収束条件が μ\mu の上限を与える。

ボース・アインシュタイン凝縮との関係

μ\mu が ε1\varepsilon_1 に近づくと最低状態の占有数 ⟨n1⟩\langle n_1\rangle が発散的に大きくなる。温度を下げていくと μ→ε1\mu\to\varepsilon_1 となり、有限の割合の粒子が基底状態に落ちる。これがボース・アインシュタイン凝縮である。

失点しやすい点

上限を 00 と書かない。ε1=0\varepsilon_1=0 と取る流儀では μ<0\mu<0 になるが、一般には最低準位のエネルギーが上限である。

設問(b-2) ボース分布

3つの分布の関係

分母の符号だけが違う。+1+1 でフェルミ・ディラック、−1-1 でボース・アインシュタイン、00(すなわち eβ(ε−μ)e^{\beta(\varepsilon-\mu)} そのもの)でマクスウェル・ボルツマンである。β(εi−μ)≫1\beta(\varepsilon_i-\mu)\gg1 では 33 つとも一致し、古典統計に帰着する。

正値性

μ<εi\mu<\varepsilon_i なので分母は正で、⟨ni⟩>0\langle n_i\rangle>0 である。(b-1)の条件がここでも効いている。

光子気体との関係

光子は粒子数が保存しないので μ=0\mu=0 とすればよい。⟨n⟩=1eβℏω−1\langle n\rangle=\dfrac{1}{e^{\beta\hbar\omega}-1} となり、プランク分布が得られる。

失点しやすい点

分母の −1-1 を +1+1 にしない。ボース粒子は同じ状態に何個でも入れるので、低エネルギー側で占有数がいくらでも大きくなれる形でなければならない。

統計力学:理想量子気体の大分配関数と分布関数の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度 春季(2025年2月実施)(全4問)

    解析力学:ケプラー運動のラグランジアンと近星点・遠星点速度 / 電磁気学:一様電場中に置かれた導体球 / 量子力学:非調和振動子とハイパービリアル関係式

  • 2025年度 夏季(2024年7月実施)(全6問)

    力学:ロケットの運動方程式とツィオルコフスキーの式 / 電磁気学:ビオ・サバールの法則から円電流の磁場まで / 量子力学:時間依存2準位系と相互作用表示での摂動論

  • 2024年度 春季(2024年2月実施)(全4問)

    解析力学:円筒座標での中心力運動とラグランジュ方程式 / 電磁気学:球形コンデンサーの電場・電位・静電容量 / 量子力学:デルタ関数ポテンシャルの束縛状態

  • 2024年度 夏季(2023年7月実施)(全6問)

    力学:棒にはたらく動摩擦力と二糸振り子 / 電磁気学:トロイダルコイルの磁場・エネルギー・自己インダクタンス / 量子力学:超対称性をもつ調和振動子とスピンの結合系

  • 2023年度 春季(2023年2月実施)(このページ・全4問)

    力学:減衰と外力を受ける振り子の共鳴 / 電磁気学:電気双極子が作る場と外場から受ける力・トルク / 量子力学:半直線上の調和振動子

  • 2023年度 夏季(2022年7月実施)(全6問)

    解析力学:二重振り子の微小振動と基準モード / 電磁気学:磁気モーメント・磁気回転比・g 因子 / 量子力学:無限井戸に置かれたデルタ関数障壁

2023年度 春季(2023年2月実施)の出題内容

全4問

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学減衰と外力を受ける振り子の共鳴振り子として扱える条件 / m が消えることあり
第2問電磁気学・回路電気双極子が作る場と外場から受ける力・トルク符号の意味 / 正電荷は動かないことあり
第3問量子力学半直線上の調和振動子x≤0 の扱い / 偶数項と奇数項が分離することあり
第4問熱・統計力学理想量子気体の大分配関数と分布関数μ の役割 / 図に書き込むことあり

2023年度 春季(2023年2月実施)の解説には失点しやすい点4件・検算2件が付いています。

前年度(2023年度 夏季(2022年7月実施))との違い

大問数
2023年度 夏季(2022年7月実施) 6問 → 2023年度 春季(2023年2月実施) 4問
2023年度 夏季(2022年7月実施)の解答例

立教大学の公式過去問

公開年度範囲
2004年度以降の夏季・春季(直近は2023〜2025年度)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
英語は外部試験のスコア提出。専門科目の物理学のみ問題を掲載している。
院試hubの最終確認
2026-09-06
立教大学の公式過去問PDF