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立教大学 理学研究科 物理学専攻 物理学 2024年度 春季(2024年2月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は電磁気学・回路1問、熱・統計力学1問、量子力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 解析力学:円筒座標での中心力運動とラグランジュ方程式

方針

速度の方位成分が rϕ˙r\dot\phi(ϕ˙\dot\phi ではない)であることが要点である。角速度に半径を掛けて初めて速さになる。

MM を使った表現

ϕ˙=M/(mr2)\dot\phi=M/(mr^2) を代入すると遠心力は M2/(mr3)M^2/(mr^3) と書ける。(g)でこの形が現れる。

失点しやすい点

角運動量を mrϕ˙mr\dot\phi としない。(( 腕の長さ r)×(r)\times( 運動量の方位成分 mrϕ˙)mr\dot\phi) で mr2ϕ˙mr^2\dot\phi である。

設問(b) 直交座標との関係

図との対応

図 11 で ϕ\phi は xx 軸から測った xyxy 平面内の角、rr は zz 軸からの距離である。極座標を xyxy 平面に入れて zz を独立に付け加えた形になっている。

失点しやすい点

rr を原点からの距離(球座標の rr)と取り違えない。円筒座標の rr は zz 軸からの距離で、原点からの距離は r2+z2\sqrt{r^2+z^2} である。

この設問の位置づけ

(b)は(c)の計算の下ごしらえである。直交座標の x˙,y˙\dot x,\dot y を経由して速さの 22 乗を出すため、まず x,yx,y を r,ϕr,\phi で書いておく。

設問(c) 運動エネルギー

方針

交差項が打ち消し合うのは、動径方向と方位方向が直交しているためである。直交座標に戻して計算するのが確実だが、v=r˙ er+rϕ˙ eϕ+z˙ ez\bm{v}=\dot r\,\bm{e}_r+r\dot\phi\,\bm{e}_\phi+\dot z\,\bm{e}_z と直交基底で書いてもよい。

検算

rr 一定・zz 一定なら v2=r2ϕ˙2v^2=r^2\dot\phi^2 で(a)の等速円運動に一致する。ϕ\phi、zz 一定なら v2=r˙2v^2=\dot r^2 で動径方向の直線運動になる。

失点しやすい点

r2ϕ˙2r^2\dot\phi^2 の r2r^2 を落として ϕ˙2\dot\phi^2 としない。次元を確認すれば気づける。

設問(d) zz 成分と保存量

循環座標

LL に現れない一般座標を循環座標といい、それに共役な運動量が保存する。本問では zz と ϕ\phi がともに循環座標である。ネーターの定理の最も簡単な形である。

失点しやすい点

「保存量が存在することを示せ」なので、pzp_z が何であるかを明示する。方程式 mz¨=0m\ddot z=0 を書くだけでは足りない。

ポテンシャルの形が効くところ

UU が rr だけの関数であることが ∂L/∂z=0\partial L/\partial z=0 の根拠である。UU が zz にも依存すれば pzp_z は保存しない。

設問(e) ϕ\phi 成分と MM の保存

対称性との対応

UU が rr のみに依存するので、系は zz 軸まわりの回転に対して不変である。この軸対称性に対応する保存量が角運動量の zz 成分である。

等速円運動でないときも成り立つこと

(a)では等速円運動に限って MM を定義したが、(e)は一般の運動でも M=mr2ϕ˙M=mr^2\dot\phi が保存することを示している。rr が変化すれば ϕ˙\dot\phi が逆に変化して積を一定に保つ。

失点しやすい点

UU が ϕ\phi に依存しないことを根拠として明記する。中心力であることがこの保存則の前提である。

設問(f) rr 成分

各項の意味

第 11 項 mrϕ˙2mr\dot\phi^2 は(a)で求めた遠心力、第 22 項 −dU/dr-dU/dr はポテンシャルによる動径方向の力である。動径方向の運動はこの 22 つの釣り合いで決まる。

失点しやすい点

∂L/∂r\partial L/\partial r で運動エネルギーの 12mr2ϕ˙2\frac12mr^2\dot\phi^2 を rr で微分する項を落とさない。これが遠心力を生む。

3つの方程式の関係

(d)(e)で得た 22 つの保存量を使うと、(f)の rr の方程式は rr だけの 11 変数問題に閉じる。33 次元の問題が実効的に 11 次元に落ちるという中心力問題の基本構造である。

設問(g) 具体的なポテンシャルの場合

δ\delta 項の役割

1/r31/r^3 の係数が M2m+2δ\dfrac{M^2}{m}+2\delta とまとまるので、δ\delta は実効的に角運動量を M2→M2+2mδM^2\to M^2+2m\delta と置き換えたのと同じ働きをする。δ>0\delta>0 なら遠心障壁が強まり、δ<0\delta<0 なら弱まる。

軌道への影響

δ=0\delta=0 ならケプラー問題で軌道は閉じた楕円になる。δ≠0\delta\ne0 では実効的な角運動量がずれるため、近日点が回転する(軌道が閉じない)。一般相対論による水星の近日点移動が同じ構造で説明されるのは有名である。

検算

δ=0\delta=0、MM 一定として r¨=0\ddot r=0(円軌道)とおくと M2mr3=kr2\dfrac{M^2}{mr^3}=\dfrac{k}{r^2} より r=M2mkr=\dfrac{M^2}{mk} となり、ケプラー問題の円軌道半径の式に一致する。

失点しやすい点

ϕ˙\dot\phi を MM で置き換えるとき ϕ˙2=M2/(m2r4)\dot\phi^2=M^2/(m^2r^4) の m2m^2 を落とさない。

解答

等速円運動の設定

xyxy 平面内で原点を中心とする半径 rr の等速円運動では rr は一定、ϕ˙\dot\phi も一定である。速度は方位方向のみで大きさ rϕ˙r\dot\phi である。

角運動量の zz 成分

M=m r⋅(rϕ˙)=mr2ϕ˙M=m\,r\cdot(r\dot\phi)=mr^2\dot\phi。

遠心力

円運動に必要な向心加速度の大きさは rϕ˙2r\dot\phi^2 だから、回転系で見た遠心力の大きさは mrϕ˙2mr\dot\phi^2 である。

定義から

円筒座標では zz 軸まわりの回転角が ϕ\phi、zz 軸からの距離が rr だから x=rcos⁡ϕ,y=rsin⁡ϕ. x=r\cos\phi,\qquad y=r\sin\phi . (zz はそのまま zz である。)

時間微分

(b)を tt で微分する。 x˙=r˙cos⁡ϕ−rϕ˙sin⁡ϕ,y˙=r˙sin⁡ϕ+rϕ˙cos⁡ϕ. \dot x=\dot r\cos\phi-r\dot\phi\sin\phi,\qquad \dot y=\dot r\sin\phi+r\dot\phi\cos\phi .

2乗して足す

x˙2+y˙2=r˙2cos⁡2ϕ−2rr˙ϕ˙sin⁡ϕcos⁡ϕ+r2ϕ˙2sin⁡2ϕ+r˙2sin⁡2ϕ+2rr˙ϕ˙sin⁡ϕcos⁡ϕ+r2ϕ˙2cos⁡2ϕ \dot x^2+\dot y^2 =\dot r^2\cos^2\phi-2r\dot r\dot\phi\sin\phi\cos\phi+r^2\dot\phi^2\sin^2\phi +\dot r^2\sin^2\phi+2r\dot r\dot\phi\sin\phi\cos\phi+r^2\dot\phi^2\cos^2\phi で交差項が消え、x˙2+y˙2=r˙2+r2ϕ˙2\dot x^2+\dot y^2=\dot r^2+r^2\dot\phi^2 となる。z˙2\dot z^2 を加えて v2=r˙2+r2ϕ˙2+z˙2,12mv2=12m(r˙2+r2ϕ˙2+z˙2). v^2=\dot r^2+r^2\dot\phi^2+\dot z^2, \qquad \frac12mv^2=\frac12m\bigl(\dot r^2+r^2\dot\phi^2+\dot z^2\bigr).

ラグランジアン

L=12m(r˙2+r2ϕ˙2+z˙2)−U(r)L=\dfrac12m\bigl(\dot r^2+r^2\dot\phi^2+\dot z^2\bigr)-U(r) である。

zz 成分の方程式

∂L∂z˙=mz˙\dfrac{\partial L}{\partial\dot z}=m\dot z、∂L∂z=0\dfrac{\partial L}{\partial z}=0(UU は rr のみの関数)だから ddt(mz˙)=0,すなわちpz=mz˙=一定. \frac{d}{dt}\bigl(m\dot z\bigr)=0,\qquad\text{すなわち}\qquad p_z=m\dot z=\text{一定}.

物理的解釈

LL が zz を陽に含まないので、zz 方向の並進に対して系は不変である。この対称性に対応する保存量が zz 方向の運動量 pz=mz˙p_z=m\dot z である。ポテンシャルが zz 軸方向に一様なので zz 方向には力が働かず、質点は zz 方向に等速運動する。

方程式

∂L∂ϕ˙=mr2ϕ˙\dfrac{\partial L}{\partial\dot\phi}=mr^2\dot\phi、∂L∂ϕ=0\dfrac{\partial L}{\partial\phi}=0 だから ddt(mr2ϕ˙)=0. \frac{d}{dt}\bigl(mr^2\dot\phi\bigr)=0 . 括弧の中は(a)で定義した角運動量の zz 成分 MM そのものだから、MM は保存する。

方程式

∂L∂r˙=mr˙,∂L∂r=mrϕ˙2−dUdr \frac{\partial L}{\partial\dot r}=m\dot r,\qquad \frac{\partial L}{\partial r}=mr\dot\phi^2-\frac{dU}{dr} だから mr¨=mrϕ˙2−dU(r)dr. m\ddot r=mr\dot\phi^2-\frac{dU(r)}{dr}.

ϕ˙\dot\phi を MM で置き換える

(e)より ϕ˙=Mmr2\dot\phi=\dfrac{M}{mr^2} だから mrϕ˙2=mr⋅M2m2r4=M2mr3. mr\dot\phi^2=mr\cdot\frac{M^2}{m^2r^4}=\frac{M^2}{mr^3}.

ポテンシャルの微分

U(r)=−kr+δr2U(r)=-\dfrac{k}{r}+\dfrac{\delta}{r^2} より dUdr=kr2−2δr3. \frac{dU}{dr}=\frac{k}{r^2}-\frac{2\delta}{r^3}.

代入

mr¨=M2mr3−kr2+2δr3=1r3(M2m+2δ)−kr2. m\ddot r=\frac{M^2}{mr^3}-\frac{k}{r^2}+\frac{2\delta}{r^3} =\frac{1}{r^3}\left(\frac{M^2}{m}+2\delta\right)-\frac{k}{r^2}.

最終答

M=mr2ϕ˙M=mr^{2}\dot\phi、遠心力の大きさ =mrϕ˙2=mr\dot\phi^{2}

x=rcos⁡ϕx=r\cos\phi、y=rsin⁡ϕy=r\sin\phi

12mv2=12m(r˙2+r2ϕ˙2+z˙2)\dfrac12mv^{2}=\dfrac12m\bigl(\dot r^{2}+r^{2}\dot\phi^{2}+\dot z^{2}\bigr)

mz¨=0m\ddot z=0、保存量は pz=mz˙p_z=m\dot z(zz 方向の並進対称性に対応する zz 方向の運動量)

ddt(mr2ϕ˙)=0\dfrac{d}{dt}\bigl(mr^{2}\dot\phi\bigr)=0 より M=mr2ϕ˙M=mr^{2}\dot\phi は保存する

mr¨=mrϕ˙2−dUdrm\ddot r=mr\dot\phi^{2}-\dfrac{dU}{dr}

mr¨=1r3(M2m+2δ)−kr2m\ddot r=\dfrac{1}{r^{3}}\left(\dfrac{M^{2}}{m}+2\delta\right)-\dfrac{k}{r^{2}}

第2問 — 電磁気学:球形コンデンサーの電場・電位・静電容量

球殻の影響がないこと

球殻 B に誘導された電荷は半径 bb の面上にあり、r<br<b のガウス面の内部には入らない。したがって a<r<ba<r<b の電場は導体球 A の電荷だけで決まる。

誘導電荷

静電遮蔽により B の内側表面には −Q-Q が誘導される。B は接地されているので外側表面の電荷は 00 になり、r>br>b では電場が消える。この事実は(c)で使う。

失点しやすい点

「大きさと向き」の両方が問われている。向きを書き忘れない。

設問(b) A の電位

符号

a<ba<b なので 1/a>1/b1/a>1/b であり、Q>0Q>0 なら ϕA>0\phi_A>0 である。正電荷を与えた内球の電位が接地された外球より高いという直感に合う。

導体内部

導体球 A の内部(r<ar<a)は等電位で、値は ϕA\phi_A に等しい。(c)のグラフで水平線になる部分である。

失点しやすい点

ϕ=∫E dr\phi=\int E\,dr の積分方向を取り違えない。電位は電場に逆らって進む向きに上がるので、ϕ(a)−ϕ(b)=∫abE dr\phi(a)-\phi(b)=\int_a^bE\,dr である。

設問(c) 電位のグラフ

グラフで押さえる点

33 点を落とさない。r<ar<a が水平(導体内は等電位)であること、a<r<ba<r<b が 1/r1/r 型の減少であること、r>br>b が恒等的に 00(接地された球殻の外に電場がない)であることである。r=ar=a と r=br=b で ϕ\phi は連続だが、r=br=b で傾きが不連続になる(電場が跳ぶ)。

接地の効果

もし B が接地されていなければ、外側表面に QQ が残り r>br>b で ϕ=Q/(4πε0r)\phi=Q/(4\pi\varepsilon_0r) となって 00 にならない。接地されているという条件がグラフの右半分を決めている。

失点しやすい点

r<ar<a を 00 としない。導体内部は電場が 00 なだけで、電位は表面と同じ値をとる。

設問(d) 静電容量

極限での確認

b→∞b\to\infty とすると C→4πε0aC\to4\pi\varepsilon_0a で、孤立した導体球の静電容量に一致する。 また b−a=d≪ab-a=d\ll a の薄い隙間では C≃4πε0a2d=ε0SdC\simeq\dfrac{4\pi\varepsilon_0a^2}{d}=\dfrac{\varepsilon_0S}{d}(S=4πa2S=4\pi a^2)となり、平行平板コンデンサーの式に帰着する。

QQ が消えること

静電容量は形状と誘電率だけで決まる量なので、QQ が約分されて消えるのが正しい。残っていたら計算違いである。

失点しやすい点

指定どおり ε0,a,b\varepsilon_0,a,b のみで表す。QQ を含む答えにしない。

設問(e) 静電エネルギー

別解:場のエネルギー

エネルギー密度 u=ε02E2u=\dfrac{\varepsilon_0}{2}E^2 を全空間で積分しても同じ値が出る。電場があるのは a<r<ba<r<b だけだから U=∫abε02(Q4πε0r2)24πr2dr=Q28πε0∫abdrr2=Q28πε0(1a−1b) U=\int_a^b\frac{\varepsilon_0}{2}\left(\frac{Q}{4\pi\varepsilon_0r^2}\right)^2 4\pi r^2dr =\frac{Q^2}{8\pi\varepsilon_0}\int_a^b\frac{dr}{r^2} =\frac{Q^2}{8\pi\varepsilon_0}\left(\frac1a-\frac1b\right) となり一致する。22 通りで確かめられるので検算に使える。

極限での確認

b→∞b\to\infty で U→Q28πε0aU\to\dfrac{Q^2}{8\pi\varepsilon_0a} となり、孤立導体球に QQ を蓄えるのに要するエネルギーに一致する。

失点しやすい点

U=12QVU=\frac12QV、U=12CV2U=\frac12CV^2、U=Q22CU=\frac{Q^2}{2C} はすべて同値だが、指定された文字(ε0,Q,a,b\varepsilon_0,Q,a,b)で書けるのは Q2/(2C)Q^2/(2C) の形である。

電磁気学:球形コンデンサーの電場・電位・静電容量の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 量子力学:デルタ関数ポテンシャルの束縛状態

方針

デルタ関数は方程式を微小区間で積分すると 11 点での値を取り出す。ψ′′\psi'' の積分が ψ′\psi' の跳びに、EψE\psi の積分が 00 になることが要点である。

符号

引力(Λ>0\Lambda>0)なので ψ(0)>0\psi(0)>0 のとき傾きは減る。井戸の位置で波動関数が尖った山になることに対応する。

失点しやすい点

ψ\psi 自身は連続であることを断る。δ\delta が 11 階微分の跳びを生むだけで、ψ\psi の跳びは生じない。

設問(a)(ii) 束縛状態

規格化

∫−∞∞A2e−2κ∣x∣dx=A2κ=1\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}A^2e^{-2\kappa|x|}dx=\frac{A^2}{\kappa}=1 より A=κA=\sqrt\kappa である。

11 次元の特徴

11 次元では引力ポテンシャルがどれほど弱くても必ず束縛状態が 11 つ存在する。κ=mΛ/ℏ2\kappa=m\Lambda/\hbar^2 は Λ→0\Lambda\to0 で 00 に近づくが正のままである。

失点しやすい点

「すべての束縛状態」を問われているので、11 つしかないことを明示する。κ\kappa の方程式が 11 次で解が一意であることが根拠である。

設問(b)(i) 4本の接続条件

方針

22 つの特異点それぞれで「ψ\psi 連続」「ψ′\psi' が −(強さ)ψ-(\text{強さ})\psi だけ跳ぶ」の 22 本、合わせて 44 本になる。未知数は A,B,C,DA,B,C,D の 44 つだが、全体のスケールが自由なので実質 33 本が独立で、残りの 11 本が κ\kappa を決める条件になる。

失点しやすい点

x=ℓx=\ell の跳びの向きに注意する。ψ′(ℓ+)−ψ′(ℓ−)=−βψ(ℓ)\psi'(\ell^+)-\psi'(\ell^-)=-\beta\psi(\ell) であり、ψ′(ℓ+)=−κDe−κℓ\psi'(\ell^+)=-\kappa De^{-\kappa\ell}、ψ′(ℓ−)=κ(Beκℓ−Ce−κℓ)\psi'(\ell^-)=\kappa(Be^{\kappa\ell}-Ce^{-\kappa\ell}) である。

未知数の数え方

未知数は A,B,C,DA,B,C,D と κ\kappa の 55 つ、式は 44 本である。波動関数全体のスケールは規格化で決まるので、44 本の式のうち 33 本が振幅の比を決め、残る 11 本が κ\kappa の条件になる。

設問(b)(ii) 固有値方程式

極限での確認

ℓ→∞\ell\to\infty では右辺が 00 になり κ=α/2\kappa=\alpha/2 または κ=β/2\kappa=\beta/2、つまり 22 つの井戸が独立になったときの解に一致する。 ℓ→0\ell\to0 では (2κ−α)(2κ−β)=αβ(2\kappa-\alpha)(2\kappa-\beta)=\alpha\beta、展開して 4κ2−2κ(α+β)=04\kappa^2-2\kappa(\alpha+\beta)=0 より κ=(α+β)/2\kappa=(\alpha+\beta)/2 となり、強さ Λ+λ\Lambda+\lambda の単一井戸に一致する。どちらも期待どおりである。

形の言い換え

両辺を αβ\alpha\beta で割ると (2κα−1)(2κβ−1)=e−2κℓ\left(\dfrac{2\kappa}{\alpha}-1\right)\left(\dfrac{2\kappa}{\beta}-1\right)=e^{-2\kappa\ell} となり、(iii)の議論はこの形で行うと見通しがよい。

失点しやすい点

e2κℓe^{2\kappa\ell} を左右どちらに置くかで符号を誤りやすい。整理の途中式を残す。

設問(b)(iii) 束縛状態の数と臨界間隔

物理的な読み方

1/α=ℏ2/(2mΛ)1/\alpha=\hbar^2/(2m\Lambda) は単一井戸の束縛状態の広がり(1/κ1/\kappa の半分)にあたる長さである。22 つの井戸がそれぞれの波動関数の広がりより離れて初めて、弱い方の井戸も独立に 11 つの束縛状態を支えられるようになる。

極限での確認

ℓ→∞\ell\to\infty では 22 つの束縛状態(κ≃α/2\kappa\simeq\alpha/2 と κ≃β/2\kappa\simeq\beta/2)、ℓ→0\ell\to0 では 11 つ(κ=(α+β)/2\kappa=(\alpha+\beta)/2)で、(ii)の極限と整合する。

Λ>λ\Lambda>\lambda の役割

強さが等しい(α=β\alpha=\beta)場合は g(β/2)=−e−βℓ<0g(\beta/2)=-e^{-\beta\ell}<0 の議論がそのまま使え、ℓc=2/α\ell_c=2/\alpha となる。Λ>λ\Lambda>\lambda は(iv)で分母 Λ−λ\Lambda-\lambda が 00 にならないために効く。

失点しやすい点

κ=0\kappa=0 を束縛状態と数えない。E=0E=0 は連続スペクトルの下端で、規格化できる状態に対応しない。

設問(b)(iv) 基底エネルギーの補正

符号の確認

Λ>λ\Lambda>\lambda より Λ−λ>0\Lambda-\lambda>0 なので E0(1)<0E^{(1)}_0<0 である。第 22 の井戸を加えるとエネルギーは必ず下がる、という設問文の記述と一致する。

指数の肩

e−αℓ=e−2mΛℓ/ℏ2=e−2κ0ℓe^{-\alpha\ell}=e^{-2m\Lambda\ell/\hbar^2}=e^{-2\kappa_0\ell}(κ0=mΛ/ℏ2\kappa_0=m\Lambda/\hbar^2)である。これは強い井戸の束縛状態の波動関数が第 22 の井戸の位置でとる値の 22 乗 ∣ψ(ℓ)∣2∝e−2κ0ℓ|\psi(\ell)|^2\propto e^{-2\kappa_0\ell} に比例している。弱い井戸が感じるのは「しみ出した確率密度」だけなので、補正が指数的に小さくなる。

別解の見通し

第 22 の井戸を摂動 −λδ(x−ℓ)-\lambda\delta(x-\ell) とみなして 11 次摂動論を使うと E(1)=−λ∣ψ0(ℓ)∣2=−λκ0e−2κ0ℓ=−mΛλℏ2e−2mΛℓ/ℏ2E^{(1)}=-\lambda|\psi_0(\ell)|^2=-\lambda\kappa_0e^{-2\kappa_0\ell}=-\dfrac{m\Lambda\lambda}{\hbar^2}e^{-2m\Lambda\ell/\hbar^2} となる。上の厳密な展開と指数部分は一致し、係数が ΛΛ−λ\dfrac{\Lambda}{\Lambda-\lambda} 倍だけ異なる。λ≪Λ\lambda\ll\Lambda の極限で両者が一致することが確認になる。

失点しやすい点

e−2κℓe^{-2\kappa\ell} の κ\kappa に α/2\alpha/2 を代入して e−αℓe^{-\alpha\ell} とする。ε\varepsilon の寄与は指数の肩でさらに高次なので落としてよい。

量子力学:デルタ関数ポテンシャルの束縛状態の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 電磁気学・統計力学:マクスウェル方程式から空洞放射まで

意味

磁気単量子(磁荷)が存在しないことを表す。∇⋅E=0\nabla\cdot\bm{E}=0 が電荷のない真空を、∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 が磁荷の不在を述べている。

他式との整合

∇×E=−∂B/∂t\nabla\times\bm{E}=-\partial\bm{B}/\partial t の両辺の発散を取ると 0=−∂(∇⋅B)/∂t0=-\partial(\nabla\cdot\bm{B})/\partial t となり、∇⋅B\nabla\cdot\bm{B} が時間によらないことが従う。∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 はその値を定める初期条件の役割も果たす。

失点しやすい点

真空中なので右辺は 00 である。一般の ∇⋅D=ρ\nabla\cdot\bm{D}=\rho の形と混同しない。

設問(a)(ii) 波動方程式と伝播速度

方針

B\bm{B} を消去するために回転をもう一度取る。∇⋅E=0\nabla\cdot\bm{E}=0 が使えるのは真空だからで、電荷があると ∇(∇⋅E)\nabla(\nabla\cdot\bm{E}) の項が残る。

検算

ε0=8.85×10−12\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}、μ0=4π×10−7\mu_0=4\pi\times10^{-7} を代入すると c≃3.0×108 m/sc\simeq3.0\times10^8\,\mathrm{m/s} で光速に一致する。電磁波が光であるという結論の根拠である。

失点しやすい点

恒等式 ∇×(∇×A)=∇(∇⋅A)−∇2A\nabla\times(\nabla\times\bm{A})=\nabla(\nabla\cdot\bm{A})-\nabla^2\bm{A} の符号を落とさない。

設問(a)(iii) 平面波解と偏光

B\bm{B} との関係

∇×E=−∂B/∂t\nabla\times\bm{E}=-\partial\bm{B}/\partial t より B0=k×E0ω\bm{B}_0=\dfrac{\bm{k}\times\bm{E}_0}{\omega} となり、E\bm{E}、B\bm{B}、k\bm{k} がこの順に右手系をなす。∣B0∣=∣E0∣/c|\bm{B}_0|=|\bm{E}_0|/c である。

自由度 22 の重要性

この 22 が(b)(ii)の状態密度の因子 22、ひいてはプランク分布の係数に直接効く。ここで 33 としないことが以降の正しさを決める。

失点しやすい点

「偏光の向き」を問われているので、k\bm{k} に垂直であることを明記する。自由度だけ答えて向きを書かない答案は不足である。

設問(b)(i) 波数ベクトルのとる値

周期境界条件との違い

自由空間を周期境界で扱うと k=2πL(nx,ny,nz)\bm{k}=\dfrac{2\pi}{L}(n_x,n_y,n_z)(nin_i は整数、負も可)になる。本問は反射壁なので刻みが π/L\pi/L になり、nin_i は非負に限られる。格子点の密度は結局同じになり、(ii)の結果は一致する。

磁束密度の条件

「磁束密度は壁に平行」は、壁に垂直な成分が 00 ということである。電場の条件と合わせて完全導体の境界条件になっており、両者は独立ではない。

失点しやすい点

nin_i に負の値を許すと同じモードを重複して数えることになる。反射壁では sin⁡\sin の定在波なので符号の自由度がない。

設問(b)(ii) 状態密度 g(ω)g(\omega)

因子の内訳

18\dfrac18(第 11 象限のみ)、22(偏光)、4πk24\pi k^2(球殻)、(L/π)3(L/\pi)^3(格子の密度)が組み合わさって π2\pi^2 が分母に残る。どの因子も落とさないよう、順に書き並べて確認する。

ω\omega が十分大きいという仮定

格子点を連続的な積分で近似しているので、球殻に多数の格子点が入る必要がある。設問文の「ω\omega は十分大きいとする」がこの近似を保証している。

LL が消えること

単位体積あたりに直すと LL が消え、空洞の大きさによらない量になる。これが状態密度を体積あたりで定義する利点である。

失点しやすい点

偏光の因子 22 と第 11 象限の因子 1/81/8 の両方を入れる。どちらか一方を忘れると係数が 22 倍または 88 倍ずれる。

設問(b)(iii) エネルギー密度 uβ(ω)u_\beta(\omega)

プランクの放射則

これがプランクの公式である。β=1/(kBT)\beta=1/(k_BT) を代入すれば教科書の形になる。

2つの極限

βℏω≪1\beta\hbar\omega\ll1(低振動数・高温)では eβℏω−1≃βℏωe^{\beta\hbar\omega}-1\simeq\beta\hbar\omega より uβ≃ω2π2c3β=ω2kBTπ2c3u_\beta\simeq\dfrac{\omega^2}{\pi^2c^3\beta}=\dfrac{\omega^2k_BT}{\pi^2c^3} となり、レイリー・ジーンズの法則に一致する。 βℏω≫1\beta\hbar\omega\gg1(高振動数・低温)では uβ≃ℏω3π2c3e−βℏωu_\beta\simeq\dfrac{\hbar\omega^3}{\pi^2c^3}e^{-\beta\hbar\omega} でウィーンの法則になる。前者を全振動数で積分すると発散する(紫外破綻)が、プランクの式では ∫0∞uβdω=π215ℏ3c3β4\displaystyle\int_0^\infty u_\beta d\omega=\frac{\pi^2}{15\hbar^3c^3\beta^4} と有限になり、シュテファン・ボルツマンの T4T^4 則が出る。

零点エネルギーを引く理由

12ℏω\dfrac12\hbar\omega を残すと全振動数の和が発散する。観測されるのは温度による差なので、設問の指示どおり差し引く。

失点しやすい点

分母を eβℏω+1e^{\beta\hbar\omega}+1(フェルミ分布)としない。光子はボース粒子で、同じモードに何個でも入れる。

電磁気学・統計力学:マクスウェル方程式から空洞放射までの途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2025年度 春季(2025年2月実施)(全4問)

    解析力学:ケプラー運動のラグランジアンと近星点・遠星点速度 / 電磁気学:一様電場中に置かれた導体球 / 量子力学:非調和振動子とハイパービリアル関係式

  • 2025年度 夏季(2024年7月実施)(全6問)

    力学:ロケットの運動方程式とツィオルコフスキーの式 / 電磁気学:ビオ・サバールの法則から円電流の磁場まで / 量子力学:時間依存2準位系と相互作用表示での摂動論

  • 2024年度 春季(2024年2月実施)(このページ・全4問)

    解析力学:円筒座標での中心力運動とラグランジュ方程式 / 電磁気学:球形コンデンサーの電場・電位・静電容量 / 量子力学:デルタ関数ポテンシャルの束縛状態

  • 2024年度 夏季(2023年7月実施)(全6問)

    力学:棒にはたらく動摩擦力と二糸振り子 / 電磁気学:トロイダルコイルの磁場・エネルギー・自己インダクタンス / 量子力学:超対称性をもつ調和振動子とスピンの結合系

  • 2023年度 春季(2023年2月実施)(全4問)

    力学:減衰と外力を受ける振り子の共鳴 / 電磁気学:電気双極子が作る場と外場から受ける力・トルク / 量子力学:半直線上の調和振動子

  • 2023年度 夏季(2022年7月実施)(全6問)

    解析力学:二重振り子の微小振動と基準モード / 電磁気学:磁気モーメント・磁気回転比・g 因子 / 量子力学:無限井戸に置かれたデルタ関数障壁

2024年度 春季(2024年2月実施)の出題内容

全4問

この4問の分野は電磁気学・回路1問・熱・統計力学1問・量子力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学円筒座標での中心力運動とラグランジュ方程式M を使った表現 / 図との対応あり
第2問電磁気学・回路球形コンデンサーの電場・電位・静電容量球殻の影響がないこと / 誘導電荷あり
第3問量子力学デルタ関数ポテンシャルの束縛状態符号 / 規格化あり
第4問熱・統計力学マクスウェル方程式から空洞放射まで意味 / 他式との整合あり

2024年度 春季(2024年2月実施)の解説には失点しやすい点4件・検算2件が付いています。

前年度(2024年度 夏季(2023年7月実施))との違い

大問数
2024年度 夏季(2023年7月実施) 6問 → 2024年度 春季(2024年2月実施) 4問
2024年度 夏季(2023年7月実施)の解答例

立教大学の公式過去問

公開年度範囲
2004年度以降の夏季・春季(直近は2023〜2025年度)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
英語は外部試験のスコア提出。専門科目の物理学のみ問題を掲載している。
院試hubの最終確認
2026-09-06
立教大学の公式過去問PDF