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立教大学 理学研究科 数学専攻 数学 2026年度 春季(2026年2月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全9問)

全9問の分野は線形代数2問、代数2問、微分積分・解析2問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:固有値・対角化可能性・ジョルダン標準形と冪

展開の向きを選ぶ

33 次の行列式を機械的に展開すると λ\lambda の 33 次式になり因数分解に手間がかかる。00 が 22 つ並ぶ列(または行)に沿って展開すれば、最初から 11 次式と 22 次式の積として得られる。以降の設問すべてでこの分解を使う。

重解になる aa

1+a1+a が 00 または 22 に一致するのは a=−1a=-1 または a=1a=1 のときである。それ以外では固有値が相異なる 33 個になるので、設問 22 で調べるべきはこの 22 個の値だけになる。

検算

tr A=(1+a)+1+1=3+a\mathrm{tr}\,A=\left(1+a\right)+1+1=3+a。固有値の和も 0+2+(1+a)=3+a0+2+\left(1+a\right)=3+a で一致する。 また det⁡A\det A は第 11 列展開から (1+a)(1⋅1−(−1)(−1))=0\left(1+a\right)\left(1\cdot1-\left(-1\right)\left(-1\right)\right)=0、固有値の積も 00 で一致する。

設問2 対角化可能となる条件

判定の基準

対角化可能 ⟺\Longleftrightarrow 各固有値について(固有空間の次元)=(固有多項式における重複度)。重複固有値がなければ自動的に成り立つので、調べる必要があるのは重複が起きる aa の値だけである。

a=−1a=-1 と a=1a=1 の違い

どちらも重複度 22 の固有値をもつが、a=−1a=-1 では階数が 11 落ちるのに対し a=1a=1 では 22 落ちる。この差が対角化可能性を分ける。同じ「重解」でも中身が違うことを示す良い例である。

最小多項式で見る

a=−1a=-1 では最小多項式が λ(λ−2)\lambda\left(\lambda-2\right) で重根をもたない。a=1a=1 では (λ−2)2λ\left(\lambda-2\right)^{2}\lambda となり重根をもつ。対角化可能性は「最小多項式が重根をもたないこと」と同値である。

設問3 ジョルダン標準形と変換行列

列の順序

PP の列は u,v,w\bm u,\bm v,\bm w の順でなければならない。JJ の第 22 列に 11 が立つのは「AvA\bm v が u\bm u の分だけはみ出す」ことの表現で、u\bm u と v\bm v を入れ替えると JJ が上三角にならない。

答えは一意でない

u\bm u を cuc\bm u、v\bm v を cv+duc\bm v+d\bm u、w\bm w を ewe\bm w(c,e≠0c,e\neq0)に取り替えても同じ JJ が得られる。分数を避けるため v=(0,−1,1)T\bm v=\left(0,-1,1\right)^{\mathsf T} を選び、それに合わせて u=Nv\bm u=N\bm v を後から定めたのがここでの取り方である。

手順の型

ジョルダン鎖は「先に一般化固有ベクトル v\bm v を決め、u=Nv\bm u=N\bm v を計算する」順に作ると分数が出にくい。u\bm u を先に固定すると Nv=uN\bm v=\bm u を解く段で分数が現れることが多い。

設問4 AnA^{n}

検算(n=1n=1)

代入すると (2−1101−10−11)=A\begin{pmatrix}2&-1&1\\0&1&-1\\0&-1&1\end{pmatrix}=A。一致する。

検算(n=2n=2)

公式では (4−4402−20−22)\begin{pmatrix}4&-4&4\\0&2&-2\\0&-2&2\end{pmatrix}。直接 A⋅AA\cdot A を計算しても同じになる。nn を含む公式は必ず小さい nn で確かめる。

別解

AA の最小多項式が λ(λ−2)2\lambda\left(\lambda-2\right)^{2} なので、λn\lambda^{n} をこの 33 次式で割った余り c2λ2+c1λ+c0c_2\lambda^{2}+c_1\lambda+c_0 を求め、An=c2A2+c1A+c0IA^{n}=c_2A^{2}+c_1A+c_0I としてもよい。λ=0,2\lambda=0,2 の代入と λ=2\lambda=2 での微分から cic_i が決まる。ジョルダン標準形を経ないので計算量は少ない。

失点しやすい点

JnJ^{n} の非対角成分は n2n−1n2^{n-1} であって n2nn2^{n} ではない。(λ10λ)n\begin{pmatrix}\lambda&1\\0&\lambda\end{pmatrix}^{n} の右上は λn\lambda^{n} の導関数 nλn−1n\lambda^{n-1} である、と覚えておくとよい。

解答

固有多項式

第 11 列が (1+a, 0, 0)T\left(1+a,\,0,\,0\right)^{\mathsf T} なので、第 11 列に沿って余因子展開すると det⁡(A−λI)=(1+a−λ)∣1−λ−1−11−λ∣=(1+a−λ)[(1−λ)2−1]. \det\left(A-\lambda I\right) =\left(1+a-\lambda\right) \begin{vmatrix}1-\lambda & -1\\ -1 & 1-\lambda\end{vmatrix} =\left(1+a-\lambda\right)\left[\left(1-\lambda\right)^{2}-1\right].

因数分解

(1−λ)2−1=λ2−2λ=λ(λ−2)\left(1-\lambda\right)^{2}-1=\lambda^{2}-2\lambda=\lambda\left(\lambda-2\right) だから det⁡(A−λI)=−(λ−1−a)λ(λ−2). \det\left(A-\lambda I\right)=-\left(\lambda-1-a\right)\lambda\left(\lambda-2\right).

固有値が相異なる場合

a≠−1a\neq-1 かつ a≠1a\neq1 のとき、固有値 0, 2, 1+a0,\,2,\,1+a は相異なる 33 個なので AA は対角化可能である。

a=−1a=-1 の場合

固有値は 00(重複度 22)と 22。 A=(01−101−10−11) A=\begin{pmatrix}0&1&-1\\0&1&-1\\0&-1&1\end{pmatrix} の行はすべて (0,1,−1)\left(0,1,-1\right) の定数倍なので rank⁡A=1\operatorname{rank}A=1、したがって dim⁡ker⁡A=3−1=2\dim\ker A=3-1=2。重複度と一致するので対角化可能である。

a=1a=1 の場合

固有値は 22(重複度 22)と 00。 A−2I=(0−110−1−10−1−1) A-2I=\begin{pmatrix}0&-1&1\\0&-1&-1\\0&-1&-1\end{pmatrix} の第 11 行と第 22 行は 11 次独立なので rank⁡(A−2I)=2\operatorname{rank}\left(A-2I\right)=2、したがって dim⁡ker⁡(A−2I)=1<2\dim\ker\left(A-2I\right)=1<2。重複度に届かないので対角化できない。

a=1a=1 での行列

A=(2−1101−10−11),N≡A−2I=(0−110−1−10−1−1). A=\begin{pmatrix}2&-1&1\\0&1&-1\\0&-1&1\end{pmatrix}, \qquad N\equiv A-2I=\begin{pmatrix}0&-1&1\\0&-1&-1\\0&-1&-1\end{pmatrix}.

固有値 22 の鎖

ker⁡N\ker N は −y+z=0-y+z=0 と −y−z=0-y-z=0 から y=z=0y=z=0、xx は任意なので ker⁡N=⟨e1⟩\ker N=\left\langle\bm e_1\right\rangle。 そこで Nv=uN\bm v=\bm u(u∈ker⁡N\bm u\in\ker N)を満たす一般化固有ベクトルを探す。 v=(v1,v2,v3)T\bm v=\left(v_1,v_2,v_3\right)^{\mathsf T} に対し Nv=(−v2+v3, −v2−v3, −v2−v3)TN\bm v=\left(-v_2+v_3,\,-v_2-v_3,\,-v_2-v_3\right)^{\mathsf T} だから、 第 22・第 33 成分を 00 にするには v3=−v2v_3=-v_2、このとき第 11 成分は −2v2-2v_2 である。 v=(0,−1,1)T\bm v=\left(0,-1,1\right)^{\mathsf T} と取ると Nv=(2,0,0)T≡u. N\bm v=\left(2,0,0\right)^{\mathsf T}\equiv\bm u .

固有値 00 の固有ベクトル

Aw=0A\bm w=\bm 0 は 2w1−w2+w3=02w_1-w_2+w_3=0、w2−w3=0w_2-w_3=0 より w2=w3w_2=w_3、w1=0w_1=0。 w=(0,1,1)T\bm w=\left(0,1,1\right)^{\mathsf T}。

結果

P=[u v w]P=\left[\bm u\ \bm v\ \bm w\right] と置くと P=(2000−11011),J=P−1AP=(210020000). P=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&-1&1\\0&1&1\end{pmatrix}, \qquad J=P^{-1}AP=\begin{pmatrix}2&1&0\\0&2&0\\0&0&0\end{pmatrix}. 実際 Au=2uA\bm u=2\bm u、Av=2v+uA\bm v=2\bm v+\bm u、Aw=0A\bm w=\bm 0 で AP=PJAP=PJ が成り立つ。 det⁡P=2(−1−1)=−4≠0\det P=2\left(-1-1\right)=-4\neq0 なので PP は正則である。

ジョルダン行列の冪

2×22\times2 のジョルダン細胞は (2102)n=(2nn2n−102n)\begin{pmatrix}2&1\\0&2\end{pmatrix}^{n}=\begin{pmatrix}2^{n}&n2^{n-1}\\0&2^{n}\end{pmatrix} だから Jn=(2nn2n−1002n0000)(n≥1). J^{n}=\begin{pmatrix}2^{n}&n2^{n-1}&0\\0&2^{n}&0\\0&0&0\end{pmatrix} \qquad(n\ge1).

逆行列

PP の右下 2×22\times2 ブロック (−1111)\begin{pmatrix}-1&1\\1&1\end{pmatrix} の行列式は −2-2 なので P−1=(12000−121201212). P^{-1}=\begin{pmatrix}\tfrac12&0&0\\[2pt]0&-\tfrac12&\tfrac12\\[2pt]0&\tfrac12&\tfrac12\end{pmatrix}.

計算

An=PJnP−1A^{n}=PJ^{n}P^{-1} を順に計算すると JnP−1=(2n−1−n2n−2n2n−20−2n−12n−1000), J^{n}P^{-1}=\begin{pmatrix}2^{n-1}&-n2^{n-2}&n2^{n-2}\\0&-2^{n-1}&2^{n-1}\\0&0&0\end{pmatrix}, An=P(JnP−1)=(2n−n2n−1n2n−102n−1−2n−10−2n−12n−1). A^{n}=P\left(J^{n}P^{-1}\right) =\begin{pmatrix}2^{n}&-n2^{n-1}&n2^{n-1}\\0&2^{n-1}&-2^{n-1}\\0&-2^{n-1}&2^{n-1}\end{pmatrix}.

最終答

λ=0, 2, 1+a\lambda=0,\ 2,\ 1+a

a≠1a\neq1 のとき対角化可能。a=1a=1 のときのみ対角化できない

P=(2000−11011)\displaystyle P=\begin{pmatrix}2&0&0\\0&-1&1\\0&1&1\end{pmatrix}、 J=(210020000)\displaystyle J=\begin{pmatrix}2&1&0\\0&2&0\\0&0&0\end{pmatrix}

An=(2n−n2n−1n2n−102n−1−2n−10−2n−12n−1)\displaystyle A^{n}=\begin{pmatrix}2^{n}&-n2^{n-1}&n2^{n-1}\\[2pt]0&2^{n-1}&-2^{n-1}\\[2pt]0&-2^{n-1}&2^{n-1}\end{pmatrix} (n≥1)(n\ge1)

第2問 — 線形代数:可換な行列の共通固有ベクトルと同時対角化

可換性が効く場所

使ったのは ABx=BAxAB\bm x=BA\bm x の一箇所だけである。逆に、可換でなければ BB が VαV_\alpha を保つ理由はない。可換性の意味を「固有空間を保つ」と読み替えるのが、この問題全体の視点である。

零ベクトルの扱い

Bx=0B\bm x=\bm 0 でも 0∈Vα\bm 0\in V_\alpha なので不変性の主張は成り立つ。「固有ベクトルは零でない」という約束と混同して例外扱いしないこと。

一般化

同じ議論で BB は ker⁡(A−αI)k\ker\left(A-\alpha I\right)^{k}(一般化固有空間)も保つ。同時三角化の議論ではこちらを使う。

設問2 共通固有ベクトルの存在

複素数体であることの必然性

R\mathbb R 上では固有値が存在しないことがある(回転行列など)。実行列 A=(0−110)A=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}、B=AB=A は可換だが実固有ベクトルをもたない。問題文が「複素数を成分とする」と断っているのはこのためである。

A≠OA\neq O、B≠OB\neq O の条件

この条件がなくても議論自体は通る(A=OA=O なら任意のベクトルが AA の固有ベクトル)。設問 33 を含めた問題全体で自明な場合を除くために付けられた仮定と見てよい。

同時三角化への発展

この共通固有ベクトルを第 11 列に取り、商空間で帰納法を回すと「可換な 22 行列は同時に上三角化できる」が示せる。設問 33 はその対角版である。

設問3 同時対角化

最小多項式を使う理由

「BB が対角化可能なら不変部分空間への制限も対角化可能」は、行列の成分を見ても分かりにくい。最小多項式が重根をもたないという特徴づけを使うと、制限がその割り切りを引き継ぐことから一行で従う。ここが証明の要である。

逆も成り立つ

同時対角化できるなら P−1APP−1BP=P−1BPP−1APP^{-1}APP^{-1}BP=P^{-1}BPP^{-1}AP(対角行列は可換)より AB=BAAB=BA。したがって「A,BA,B がともに対角化可能」という条件のもとで、可換性と同時対角化可能性は同値である。

対角化可能性が要ること

A=(0100)A=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}、B=IB=I は可換だが AA が対角化できないので同時対角化もできない。可換性だけでは足りない。

失点しやすい点

VαjV_{\alpha_j} ごとに取った基底が全体で 11 次独立になる根拠は、固有空間の直和分解である。ここを飛ばすと証明が閉じない。

線形代数:可換な行列の共通固有ベクトルと同時対角化の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 微分積分:チェザロ平均と重み付き平均の極限

22 段構えの意味

はじめの NN 項は aka_k が α\alpha から離れているかもしれないが、その総和は有限なので 1n\frac1n を掛ければ消える。残りは 11 項あたりが ε2\frac{\varepsilon}{2} 未満で、項数の比が 11 以下だから全体でも ε2\frac{\varepsilon}{2} 未満。極限を扱う和の評価の標準的な型である。

逆は成り立たない

an=(−1)na_n=\left(-1\right)^{n} は発散するが bn→0b_n\to0 である。チェザロ平均は「ならす」操作なので、収束を保つが収束を生むこともある。ここから発散級数の総和法(チェザロ総和)が生まれる。

失点しやすい点

NN を固定してから n→∞n\to\infty を取る順序を守る。NN が nn に依存すると MM が定数でなくなり、議論が崩れる。

設問2 重みの総和

確率の重みではない

∑kpn,k=n+12n→12\sum_k p_{n,k}=\frac{n+1}{2n}\to\frac12 であって 11 ではない。したがって cnc_n は「重み付き平均」ではなく、平均の約 12\frac12 倍になる。設問 33 の答えに 12\frac12 が現れる理由がここにある。

各項の大きさ

0<pn,k≤pn,1=nn2=1n0<p_{n,k}\le p_{n,1}=\dfrac{n}{n^{2}}=\dfrac1n。設問 33 の評価でこの上界を使う。

検算

n=1n=1 で p1,1=1p_{1,1}=1、公式も 22=1\frac{2}{2}=1。n=2n=2 で p2,1=24p_{2,1}=\frac24、p2,2=14p_{2,2}=\frac14、和 34\frac34、公式も 34\frac{3}{4}。一致する。

設問3 重み付き和の極限

12\frac12 が出る理由

重み pn,kp_{n,k} は k=1k=1 での 1n\frac1n から k=nk=n での 1n2\frac1{n^{2}} まで直線的に減る。その総和が 12\frac12 に近づくので、aka_k がすべて α\alpha に近い状況では cn≃α2c_n\simeq\frac{\alpha}{2} になる。三角形の面積が長方形の半分、という図形的な直観と同じ構図である。

簡単な例で確かめる

ak≡1a_k\equiv1(α=1\alpha=1)なら cn=∑pn,k=n+12n→12c_n=\sum p_{n,k}=\frac{n+1}{2n}\to\frac12。答えと一致する。

一般化(トープリッツの定理)

重み pn,k≥0p_{n,k}\ge0 が「各 kk を固定して pn,k→0p_{n,k}\to0」かつ「∑kpn,k→s\sum_k p_{n,k}\to s」を満たせば、ak→αa_k\to\alpha から ∑kpn,kak→sα\sum_k p_{n,k}a_k\to s\alpha が従う。本問はこの定理の s=12s=\frac12 の場合であり、設問 11 は s=1s=1 の場合にあたる。

失点しやすい点

∑kpn,k\sum_k p_{n,k} が 11 でないことを見落として lim⁡cn=α\lim c_n=\alpha としない。設問 22 を先に置いているのは、この落とし穴を避けさせるためである。

微分積分:チェザロ平均と重み付き平均の極限の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 微分積分:積分判定法によるp級数と比較判定

不等号の向き

発散を示すには「級数 ≥\ge 発散する積分」の向きが要る。x−sx^{-s} が減少関数であることから、区間の左端の値 n−sn^{-s} が区間上の最大値になる。これが 1ns≥∫nn+1\frac{1}{n^{s}}\ge\int_n^{n+1} の根拠である。

s≤0s\le0 を除く理由

問題は s>0s>0 を仮定しているが、s≤0s\le0 なら一般項が 00 に収束せず、そもそも発散は明らかである。

調和級数

s=1s=1 の場合が調和級数で、部分和は log⁡N\log N の程度で無限大に発散する。発散はするが極めて遅い。

設問2 s>1s>1 のとき

n=1n=1 の項を別扱いする理由

∫01x−sdx\int_{0}^{1}x^{-s}dx は s>1s>1 では発散するので、n=1n=1 に対して同じ不等式は使えない。有限個の項を切り離すのは収束判定では常套手段である。

和の評価

同じ不等式から 1s−1≤ζ(s)≤1+1s−1\dfrac{1}{s-1}\le\zeta\left(s\right)\le1+\dfrac{1}{s-1}。s=2s=2 では 1≤ζ(2)≤21\le\zeta\left(2\right)\le2 で、実際 ζ(2)=π2/6=1.6449⋯\zeta\left(2\right)=\pi^{2}/6=1.6449\cdots である。

境界の s=1s=1

s>1s>1 で収束、s≤1s\le1 で発散という結果は、s=1s=1 が収束・発散の境目であることを示す。1n\frac1n よりわずかでも速く減れば収束する、という感覚を持っておくと設問 33 の判定が速い。

設問3 2つの級数の判定

主要項の見つけ方

分子・分母の最高次のみを残して比べる。(a) は n/n3=n−2n/n^{3}=n^{-2}、(b) は n/n2=n−1n/n^{2}=n^{-1}。pp 級数の指数が 11 を超えるか否かで判定が決まる。

極限比較判定法による別解

lim⁡n→∞(n+4)/(n3+3n)1/n2=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\left(n+4\right)/\left(n^{3}+3n\right)}{1/n^{2}}=1、 lim⁡n→∞n/(n+1)(n+2)1/n=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n/\left(n+1\right)\left(n+2\right)}{1/n}=1。 極限が 00 でも ∞\infty でもない正の値なので、比較対象と収束・発散が一致する。不等式を作る手間が省ける。

(b) の一般項は 00 に収束すること

n(n+1)(n+2)→0\frac{n}{(n+1)(n+2)}\to0 である。一般項が 00 に収束することは収束の必要条件にすぎず、十分条件ではない。ここを混同すると誤答になる。

失点しやすい点

比較判定法は正項級数に対してのみ有効である。(a)(b) とも n≥1n\ge1 で各項が正であることを確認してから使う。

微分積分:積分判定法によるp級数と比較判定の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 代数学:整域の性質と有限整域が体になること

言い換え

一般に「R/IR/I が整域 ⟺\Longleftrightarrow II が素イデアル」である。R/(0)≅RR/\left(0\right)\cong R だから、この設問は定義の言い換えにすぎない。証明を書くときは、その対応を明示すると見通しがよい。

1≠01\neq0 の役割

1=01=0 なら R={0}R=\left\{0\right\}(零環)となり、(0)=R\left(0\right)=R で素イデアルにならない。整域の定義に 1≠01\neq0 を含めるのはこの種の退化を除くためである。

極大とは限らない

R=ZR=\mathbb Z では (0)\left(0\right) は素イデアルだが極大ではない((2)\left(2\right) に真に含まれる)。(0)\left(0\right) が極大になるのは RR が体のときである。設問 44 はその特別な場合を扱う。

設問2 R2R^{2} が整域か

直積の一般的性質

零環でない環 22 つの直積は決して整域にならない。上の反例が常に使える。イデアルの言葉では、R2R^{2} の (0)\left(0\right) が (1,0)\left(1,0\right) と (0,1)\left(0,1\right) の生成するイデアルの交わりとして分解されることに対応する。

中国剰余定理との関係

Z/6Z≅Z/2Z×Z/3Z\mathbb Z/6\mathbb Z\cong\mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z/3\mathbb Z。左辺が整域でないことは 2⋅3=02\cdot3=0 から分かるが、右辺の直積の形からも同じことが読める。

失点しやすい点

「RR が整域だから R2R^{2} も整域」と早合点しない。反例を 11 つ挙げれば十分なので、(1,0)\left(1,0\right) と (0,1)\left(0,1\right) を書き下ろす。

設問3 faf_a が単射となる条件

整域であることが効く場所

a≠0a\neq0 のときに ar=0⇒r=0ar=0\Rightarrow r=0 と言えるのは、零因子がないからである。R=Z/6ZR=\mathbb Z/6\mathbb Z、a=2a=2 では 2⋅3=02\cdot3=0 で f2f_2 は単射でない。

全射との違い

R=ZR=\mathbb Z、a=2a=2 では f2f_2 は単射だが全射でない(奇数が像に入らない)。無限環では単射から全射は従わない。設問 44 で有限性が本質的になる理由がここにある。

環準同型ではないこと

fa(rr′)=arr′f_a\left(rr'\right)=arr' に対し fa(r)fa(r′)=a2rr′f_a\left(r\right)f_a\left(r'\right)=a^{2}rr' で、一般には一致しない。faf_a は加法群の準同型(かつ RR-加群の準同型)であって環準同型ではない。

設問4 有限な整域は体

有限性が本質的であること

Z\mathbb Z は無限の整域だが体ではない。設問 33 の直後に「有限」の仮定が置かれているのは、単射から全射を導く一歩がそこだけで効くからである。

別証(元の冪を追う)

a≠0a\neq0 に対し a,a2,a3,…a,a^{2},a^{3},\dots は有限個の値しか取れないので、am=am+ka^{m}=a^{m+k} となる m,k≥1m,k\ge1 がある。整域なので ama^{m} で割れて ak=1a^{k}=1、よって a−1=ak−1a^{-1}=a^{k-1}。こちらは乗法群の位数を直接扱う方法である。

有限体との関係

この結果から、有限整域は必ず有限体(位数は素数冪)になる。ウェダーバーンの小定理は可換性の仮定さえ落とせること(有限斜体は必ず可換)を主張しており、本問はその易しい可換版にあたる。

失点しやすい点

「単射だから逆写像がある」だけでは不十分で、逆写像の行き先が RR 全体でなければ 11 の原像が取れない。全射性を鳩の巣原理から明示的に導くこと。

代数学:整域の性質と有限整域が体になることの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 代数学:x^3-2 の分解体とガロア対応

LL が x3−2x^{3}-2 の分解体であること

x3−2x^{3}-2 の 33 根は 23, 23ε, 23ε2\sqrt[3]{2},\ \sqrt[3]{2}\varepsilon,\ \sqrt[3]{2}\varepsilon^{2} で、いずれも LL に属する。したがって LL は Q\mathbb Q 上のガロア拡大であり、∣Gal(L/Q)∣=6\left|\mathrm{Gal}\left(L/\mathbb Q\right)\right|=6。

ガロア群の同型類

Gal(L/Q)\mathrm{Gal}\left(L/\mathbb Q\right) は 33 根の置換として S3S_3 に埋め込まれ、位数が 6=∣S3∣6=\left|S_3\right| なので S3S_3 に同型である。設問 22 の関係式はこの S3S_3 の構造そのものである。

Q(23)\mathbb Q\left(\sqrt[3]{2}\right) はガロアでない

x3−2x^{3}-2 の実根は 11 つだけなので、Q(23)⊂R\mathbb Q\left(\sqrt[3]{2}\right)\subset\mathbb R は他の 22 根を含まない。ガロア拡大にするために ε\varepsilon を添加する必要がある。

設問2 στ=τ2σ\sigma\tau=\tau^{2}\sigma

位数

σ2=id\sigma^{2}=\mathrm{id}(ε↦ε2↦ε4=ε\varepsilon\mapsto\varepsilon^{2}\mapsto\varepsilon^{4}=\varepsilon)、τ3=id\tau^{3}=\mathrm{id}(23↦23ε3=23\sqrt[3]{2}\mapsto\sqrt[3]{2}\varepsilon^{3}=\sqrt[3]{2})。 関係式 στσ−1=τ2=τ−1\sigma\tau\sigma^{-1}=\tau^{2}=\tau^{-1} と合わせて、Gal(L/Q)=⟨σ,τ∣σ2=τ3=1, στσ−1=τ−1⟩≅S3\mathrm{Gal}\left(L/\mathbb Q\right)=\left\langle\sigma,\tau\mid\sigma^{2}=\tau^{3}=1,\ \sigma\tau\sigma^{-1}=\tau^{-1}\right\rangle\cong S_3 が読める。

σ\sigma の正体

σ\sigma は 23\sqrt[3]{2}(実数)を動かさず ε\varepsilon を εˉ=ε2\bar\varepsilon=\varepsilon^{2} に写すので、L⊂CL\subset\mathbb C 上の複素共役の制限である。

生成元で確かめれば十分な理由

体の準同型は加法・乗法を保つので、生成元の像で完全に決まる。Q\mathbb Q の元は自動的に固定される。

設問3 Gal(L/K)\mathrm{Gal}\left(L/K\right) の生成元

位数の確認

設問 22 の関係式から στ2=(στ)τ=τ2στ=τ2τ2σ=τσ\sigma\tau^{2}=\left(\sigma\tau\right)\tau=\tau^{2}\sigma\tau=\tau^{2}\tau^{2}\sigma=\tau\sigma。これを使うと (τ2σ)2=τ2(στ2)σ=τ2(τσ)σ=τ3σ2=id\left(\tau^{2}\sigma\right)^{2}=\tau^{2}\left(\sigma\tau^{2}\right)\sigma=\tau^{2}\left(\tau\sigma\right)\sigma=\tau^{3}\sigma^{2}=\mathrm{id}。確かに位数 22 である。

33 つの中間体

S3S_3 の位数 22 の部分群 33 つに、33 つの 33 次中間体 Q(23)\mathbb Q\left(\sqrt[3]{2}\right)、Q(23ε)\mathbb Q\left(\sqrt[3]{2}\varepsilon\right)、Q(23ε2)\mathbb Q\left(\sqrt[3]{2}\varepsilon^{2}\right) が対応する。⟨σ⟩\left\langle\sigma\right\rangle が Q(23)\mathbb Q\left(\sqrt[3]{2}\right)、⟨τ2σ⟩\left\langle\tau^{2}\sigma\right\rangle が KK である。位数 33 の部分群 ⟨τ⟩\left\langle\tau\right\rangle には 22 次中間体 Q(ε)\mathbb Q\left(\varepsilon\right) が対応する。

正規性

⟨τ⟩\left\langle\tau\right\rangle は指数 22 なので正規、対応する Q(ε)/Q\mathbb Q\left(\varepsilon\right)/\mathbb Q はガロア拡大。一方 ⟨τ2σ⟩\left\langle\tau^{2}\sigma\right\rangle は正規でなく、K/QK/\mathbb Q もガロアでない(x3−2x^{3}-2 の他の根を含まない)。

設問4 ξ=23+ε\xi=\sqrt[3]{2}+\varepsilon の KK 上の最小多項式

係数が KK に入る理由

ξ+ρξ\xi+\rho\xi と ξ⋅ρξ\xi\cdot\rho\xi は ρ\rho で不変な対称式である。Gal(L/K)={id,ρ}\mathrm{Gal}\left(L/K\right)=\left\{\mathrm{id},\rho\right\} の不変体はちょうど KK なので、これらは KK の元でなければならない。実際 η\eta の多項式として表せた。

数値による検算

23=1.2599\sqrt[3]{2}=1.2599、ε=−0.5+0.8660i\varepsilon=-0.5+0.8660i とすると ξ=0.7599+0.8660i\xi=0.7599+0.8660i、ρξ=−1.1299−1.9572i\rho\xi=-1.1299-1.9572i、η=−0.6300+1.0911i\eta=-0.6300+1.0911i。 和は −0.3700−1.0911i-0.3700-1.0911i で −η−1=−0.3700−1.0911i-\eta-1=-0.3700-1.0911i に一致。 積は 0.8361−2.4658i0.8361-2.4658i で η2−η+1=0.8366−2.4657i\eta^{2}-\eta+1=0.8366-2.4657i に一致する。

Q\mathbb Q 上の最小多項式との関係

ξ\xi の Q\mathbb Q 上の最小多項式は 66 次で、Gal(L/Q)\mathrm{Gal}\left(L/\mathbb Q\right) の 66 個の像すべてを根にもつ。KK に係数を許すと、そのうち ρ\rho-軌道の 22 個だけを取り出せるので 22 次に落ちる。

失点しやすい点

ρ=τ2σ\rho=\tau^{2}\sigma を作用させる順序を守る。σ\sigma を先に、τ2\tau^{2} を後に施す(写像の合成の約束)。順序を逆にすると ρ(ξ)\rho\left(\xi\right) が変わり、係数が KK に入らなくなる。

代数学:x^3-2 の分解体とガロア対応の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 位相空間:距離空間の1点集合と距離関数の連続性

使った公理

d(x,y)=0⟺x=yd\left(x,y\right)=0\Longleftrightarrow x=y という公理(正定値性)が本質的である。これを落とした擬距離では 11 点集合が閉にならないことがある。

分離公理での言い換え

11 点集合が閉である位相空間を T1T_1 空間という。距離空間はさらに強い T2T_2(ハウスドルフ)であり、x≠yx\neq y に対し B(x;r/2)B\left(x;r/2\right) と B(y;r/2)B\left(y;r/2\right)(r=d(x,y)r=d(x,y))が交わらないことから従う。

有限集合も閉

11 点集合が閉なら、有限個の合併も閉である。したがって距離空間の有限部分集合はすべて閉集合になる。

設問2 距離関数の連続性

一様連続でもある

上の評価では δ=ε/2\delta=\varepsilon/2 が点 (x0,y0)\left(x_0,y_0\right) に依らない。したがって dd は(X×XX\times X に距離 D((x,y),(x′,y′))=d(x,x′)+d(y,y′)D\left(\left(x,y\right),\left(x',y'\right)\right)=d\left(x,x'\right)+d\left(y,y'\right) を入れた意味で)一様連続、さらにリプシッツ定数 11 のリプシッツ写像である。

積位相が距離化されること

X×XX\times X の積位相は上の DD(あるいは max⁡\max をとる距離)から定まる距離位相と一致する。この事実を認めれば、証明は「ε\varepsilon--δ\delta で書ける」ので 11 変数の連続性と同じ扱いになる。

片方を固定した場合

y0y_0 を固定した x↦d(x,y0)x\mapsto d\left(x,y_0\right) の連続性は、三角不等式から ∣d(x,y0)−d(x′,y0)∣≤d(x,x′)\left|d\left(x,y_0\right)-d\left(x',y_0\right)\right|\le d\left(x,x'\right) として直接出る。距離空間で「点からの距離」がつねに連続関数であるという事実は、ウリゾーンの補題の距離空間版など各所で使われる。

失点しやすい点

X×XX\times X に積位相が入っているという条件を使い、開集合として 22 つの開球の直積を取る。片方だけ動かす評価では積位相での連続性を示したことにならない。

位相空間:距離空間の1点集合と距離関数の連続性の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 幾何学:回転面と常らせん面の第一基本量とガウス曲率

F1=0F_1=0 の意味

母線(v1v_1 一定)と緯線(u1u_1 一定)が直交している。回転面では常に成り立つ性質で、以降の曲率計算が大きく簡単になる。

一般の回転面

(rcos⁡v,rsin⁡v,h(r))\left(r\cos v,r\sin v,h\left(r\right)\right) の形では E=1+h′(r)2E=1+h'\left(r\right)^{2}、F=0F=0、G=r2G=r^{2}。本問は h(r)=log⁡rh\left(r\right)=\log r、h′=1/rh'=1/r の場合である。

線素

ds2=(1+1u12)du12+u12dv12ds^{2}=\left(1+\frac{1}{u_1^{2}}\right)du_1^{2}+u_1^{2}dv_1^{2}。設問 55 でこの式を S2S_2 のものと比べる。

設問2 S2S_2 の第一基本量

E2=1E_2=1 の意味

v2v_2 を固定した曲線(zz 軸に直交する直線)は弧長でパラメータ付けされている。常らせん面が直線の族で張られる線織面であることの反映である。

S1S_1 との違い

S1S_1 では E1=1+u−2>1E_1=1+u^{-2}>1、G1=u2G_1=u^{2}。S2S_2 では E2=1E_2=1、G2=u2+1G_2=u^{2}+1。EE と GG の「+1+1 の付き方」が入れ替わっている。設問 55 の判定はこの差から出る。

線素

ds2=du22+(u22+1)dv22ds^{2}=du_2^{2}+\left(u_2^{2}+1\right)dv_2^{2}。

設問3 ガウス曲率

符号

どちらも負で、両曲面とも各点で鞍点型(主曲率の符号が逆)である。常らせん面は極小曲面(L2+N2=0L_2+N_2=0 から平均曲率 00)で、これは常に K≤0K\le0 をもつ。

S2S_2 の L2=N2=0L_2=N_2=0

p2,uu=0\bm p_{2,uu}=\bm 0 は「v2v_2 一定の曲線が直線」であることの表れである。常らせん面が線織面かつ極小曲面という際立った性質をもつことがここに出ている。

回転面の一般公式

(rcos⁡v,rsin⁡v,h(r))\left(r\cos v,r\sin v,h\left(r\right)\right) に対し K=h′h′′r(1+h′2)2K=\dfrac{h'h''}{r\left(1+h'^{2}\right)^{2}}。 h=log⁡rh=\log r なら h′=1/rh'=1/r、h′′=−1/r2h''=-1/r^{2} で K=−1/r3r(1+r−2)2=−1(r2+1)2K=\dfrac{-1/r^{3}}{r\left(1+r^{-2}\right)^{2}}=-\dfrac{1}{\left(r^{2}+1\right)^{2}}。上の結果と一致する。

設問4 u1=u2u_1=u_2 での曲率の一致

偶然ではない

S1S_1 は z=log⁡xz=\log x の回転面、S2S_2 は常らせん面で、見た目はまったく異なるが曲率関数が一致する。回転面と線織面の間にこの種の対応が現れるのは、両者がともに 11 助変数の等長変形族(ブール族)に属することと関係している。

ガウスの驚異の定理

ガウス曲率は第一基本量だけから決まる内在量である。したがって 22 曲面が等長ならば対応点で曲率が一致する。設問 44 はその必要条件が満たされていることを確かめている。

u→∞u\to\infty の振る舞い

K→0K\to0 で、どちらの曲面も遠方では平坦に近づく。u→0+u\to0^{+} では K→−1K\to-1 に近づく。

設問5 u1=u2u_1=u_2 の対応は等長写像か

曲率の一致は十分条件ではない

設問 44 で K1=K2K_1=K_2 が示されたが、これは等長であるための必要条件にすぎない。ガウスの驚異の定理の逆は一般に成り立たない(成り立つのは曲率が定数の場合などに限られる)。この設問はまさにその点を試している。

別の対応なら等長になるか

GG を合わせるには u2=u12−1u_2=\sqrt{u_1^{2}-1}(u1>1u_1>1)とすればよいが、このとき E2 du22=u12u12−1du12E_2\,du_2^{2}=\dfrac{u_1^{2}}{u_1^{2}-1}du_1^{2} に対し E1 du12=u12+1u12du12E_1\,du_1^{2}=\dfrac{u_1^{2}+1}{u_1^{2}}du_1^{2} で、 u14=u14−1u_1^{4}=u_1^{4}-1 となり成立しない。座標軸を保つ形の対応では等長にできない。

カテノイドとの対比

懸垂面(カテノイド)と常らせん面は等長であることが知られている(ブールの定理)。本問の S1S_1 は懸垂面ではないので、曲率だけが偶然一致した例になっている。

失点しやすい点

「K1=K2K_1=K_2 だから等長」と結論しない。第一基本形式そのものを比較するか、具体的な曲線の長さの違いを示すこと。

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第9問 — 複素解析:長方形積分路による ∫_0^\inftyx/(e^2π x-1)dx の計算

定義値が効いていること

f(0)=i2πf\left(0\right)=\frac{i}{2\pi}、f(i)=−i2πf\left(i\right)=-\frac{i}{2\pi} という定義は、まさに除去可能特異点を埋める値である。この定義がなければ ff は積分路の頂点で定義されず、コーシーの定理を適用できない。

留数定理を使わない理由

内部に極がないので留数の和は 00 である。留数定理を持ち出してもよいが、正則性だけで結論するほうが簡潔である。

高さを 11 に取る意味

e2πze^{2\pi z} の周期は ii である。高さを周期ちょうどに取ることで、上辺と下辺で分母が同じ値になり、設問 33 の相殺が起こる。

設問2 右辺の寄与が消えること

下からの評価に逆三角不等式を使う

分母は ∣∣z∣−∣w∣∣≤∣z+w∣\left|\left|z\right|-\left|w\right|\right|\le\left|z+w\right|(与えられた不等式)を z=e2πae2πiyz=e^{2\pi a}e^{2\pi iy}、w=−1w=-1 に適用して下から押さえる。分母の下界を取ることが分数の上界を与える。

C4C_4 は消えない

C4C_4 は虚軸上の長さ 11 の線分で、aa に依らないから a→∞a\to\infty でも消えない。むしろこれが答えを与える主役になる。

指数が多項式に勝つこと

lim⁡a→∞a2e2πa=0\lim_{a\to\infty}\frac{a^{2}}{e^{2\pi a}}=0。この種の評価は複素積分で繰り返し現れる。

設問3 実軸上の積分の書き換え

周期性が生む相殺

上辺と下辺で分母が完全に一致するのは e2πze^{2\pi z} が周期 ii をもつからである。分子の x2x^{2} の項は符号が逆になって消え、ixix の項は同符号で残る。求めたい積分だけが取り出される仕組みになっている。

左辺の収束

x→0+x\to0^{+} で xe2πx−1→12π\frac{x}{e^{2\pi x}-1}\to\frac{1}{2\pi}(有界)、x→∞x\to\infty で指数的に 00。したがって広義積分は絶対収束する。

右辺の被積分関数

y→0+y\to0^{+}、y→1−y\to1^{-} で分母が 00 に近づくが、分子の y(1−y)y\left(1-y\right) も同じ速さで 00 になるので有界である。実際 lim⁡y→0ye2πiy−1=12πi\lim_{y\to0}\frac{y}{e^{2\pi iy}-1}=\frac{1}{2\pi i}。

失点しやすい点

C3C_3 の向き(a+ia+i から ii へ、すなわち xx が減る向き)で符号が変わることを忘れない。反時計回りの順序を保つ。

設問4 置換 y↦1−yy\mapsto1-y

対称性の出どころ

分子 y(1−y)y\left(1-y\right) は y↦1−yy\mapsto1-y で不変である。一方、分母は e2πiy↦e−2πiye^{2\pi iy}\mapsto e^{-2\pi iy} と共役に移る。この非対称性が設問 55 で 22 式を足し合わせる動機になる。

複素共役との関係

yy が実数なので e2πiy−1‾=e−2πiy−1\overline{e^{2\pi iy}-1}=e^{-2\pi iy}-1。したがって右辺は左辺の複素共役でもある。つまりこの等式は「積分が実数である」ことを主張していることになる。

符号の確認

dy=−dtdy=-dt と積分区間の入れ替えで負号が 22 回現れて打ち消す。どちらか一方だけを処理すると符号を誤る。

設問5 広義積分の値

ゼータ関数による検算

一般に ∫0∞xs−1eβx−1dx=Γ(s)ζ(s)βs\displaystyle\int_0^{\infty}\frac{x^{s-1}}{e^{\beta x}-1}dx=\frac{\Gamma\left(s\right)\zeta\left(s\right)}{\beta^{s}}。 s=2s=2、β=2π\beta=2\pi とすると Γ(2)ζ(2)(2π)2=1⋅π2/64π2=124. \frac{\Gamma\left(2\right)\zeta\left(2\right)}{\left(2\pi\right)^{2}} =\frac{1\cdot\pi^{2}/6}{4\pi^{2}}=\frac{1}{24}. 一致する。

1/241/24 の現れる場所

124\frac{1}{24} はデデキントのイータ関数の展開やモジュラー形式の理論に現れる定数で、ζ(−1)=−112\zeta\left(-1\right)=-\frac{1}{12} とも近い関係にある。実際 J=−112J=-\frac{1}{12} が途中で出てくるのは偶然ではない。

22 式を足す発想

JJ そのものを直接計算しようとすると複素数値の被積分関数の原始関数が必要になる。設問 44 の対称性を使って 2J2J を作ると、被積分関数が実の多項式に化ける。等式を「足して簡単にする」型の典型例である。

失点しやすい点

1w−1−1=w1−w\frac{1}{w^{-1}-1}=\frac{w}{1-w} の変形で、分母分子に ww を掛ける操作を丁寧に行う。ここを誤ると 2J2J の値が変わる。

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年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 春季(2026年2月実施)(このページ・全9問)

    線形代数:固有値・対角化可能性・ジョルダン標準形と冪 / 線形代数:可換な行列の共通固有ベクトルと同時対角化 / 微分積分:チェザロ平均と重み付き平均の極限

  • 2026年度 夏季(2025年7月実施)(全9問)

    線形代数:パラメータ付き線形写像の全射性・核・像 / 線形代数:冪等行列の固有値・固有空間・対角化可能性 / 微分積分:逆関数定理と逆関数の縮小性

  • 2025年度 春季(2025年2月実施)(全9問)

    線形代数:4次行列の核・固有空間・対角化可能性 / 線形代数:基底の取り替えと表現行列・対角化可能性 / 微分積分:絶対収束による広義積分の存在と sin x の評価

  • 2025年度 夏季(2024年7月実施)(全9問)

    線形代数:多項式空間上の線形写像と表現行列 / 線形代数:A^4=E を満たす行列の構造 / 微分積分:log(1+x)/x と (1+x)^1/x の連続延長とマクローリン展開

  • 2024年度 春季(2024年2月実施)(全9問)

    線形代数:シルベスター方程式 AX-XB と共通固有値 / 線形代数:{}^tAA と A{}^tA の固有値から行列を復元する / 微分積分:多重極限の非存在と単調増加列による広義重積分

  • 2024年度 夏季(2023年7月実施)(全9問)

    線形代数:パラメータ付き3次行列の固有値と対角化・ジョルダン標準形 / 線形代数:3つの1次因子で零化される行列の構造 / 微分積分:一様連続性の定義と判定

2026年度 春季(2026年2月実施)の出題内容

全9問

この9問の分野は線形代数2問・代数2問・微分積分・解析2問・位相・幾何1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数固有値・対角化可能性・ジョルダン標準形と冪展開の向きを選ぶ / 重解になる aあり
第2問線形代数可換な行列の共通固有ベクトルと同時対角化可換性が効く場所 / 零ベクトルの扱いあり
第3問微分積分・解析チェザロ平均と重み付き平均の極限2 段構えの意味 / 逆は成り立たないあり
第4問微分積分・解析積分判定法によるp級数と比較判定不等号の向き / s≤0 を除く理由あり
第5問代数整域の性質と有限整域が体になること言い換え / 1≠0 の役割あり
第6問代数x^3-2 の分解体とガロア対応L が x^3-2 の分解体であること / ガロア群の同型類あり
第7問位相・幾何距離空間の1点集合と距離関数の連続性使った公理 / 分離公理での言い換えあり
第8問—幾何学:回転面と常らせん面の第一基本量とガウス曲率F_1=0 の意味 / 一般の回転面あり
第9問—複素解析:長方形積分路による ∫_0^\inftyx/(e^2π x-1)dx の計算定義値が効いていること / 留数定理を使わない理由あり

2026年度 春季(2026年2月実施)の解説には失点しやすい点9件・検算2件が付いています。

前年度(2026年度 夏季(2025年7月実施))との違い

大問数
2026年度 夏季(2025年7月実施) 9問 → 2026年度 春季(2026年2月実施) 9問
2026年度 夏季(2025年7月実施)の解答例

立教大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026年度の夏季・春季(直近は2024〜2026年度)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
英語は外部試験のスコア提出。専門科目の数学のみ問題を掲載している。
院試hubの最終確認
2026-09-05
立教大学の公式過去問PDF