院試hub

立教大学 理学研究科 数学専攻 数学 2024年度 夏季(2023年7月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全9問)

全9問の分野は線形代数3問、微分積分・解析2問、位相・幾何1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 線形代数:パラメータ付き3次行列の固有値と対角化・ジョルダン標準形

検算

tr⁡A=1+1+1=3\operatorname{tr}A=1+1+1=3、固有値の和も 1+(1−μ)+(1+μ)=31+\left(1-\mu\right)+\left(1+\mu\right)=3(μ=4−a2\mu=\sqrt{4-a^{2}})。 det⁡A=1⋅(1−μ)(1+μ)=1−μ2=a2−3\det A=1\cdot\left(1-\mu\right)\left(1+\mu\right)=1-\mu^{2}=a^{2}-3。直接展開しても 1(1−4)−a(−a)=a2−31\left(1-4\right)-a\left(-a\right)=a^{2}-3 で一致する。

tt で書く利点

対角成分がすべて 11 なので t=1−λt=1-\lambda と置くと行列が「対角成分 tt、非対角が定数」の形になる。展開が楽になり、a=2a=2 という臨界値も t2=4−a2t^{2}=4-a^{2} から即座に読める。

非対称行列であること

A12=aA_{12}=a、A21=−aA_{21}=-a なので AA は対称でない。したがって固有値が実数とは限らず、実際 a>2a>2 で虚数が現れる。

設問2 各固有空間の基底

検算

A(a,−μ,2)TA\left(a,-\mu,2\right)^{\mathsf T} の第 22 成分は −a2−μ+4=μ2−μ=μ(μ−1)-a^{2}-\mu+4=\mu^{2}-\mu=\mu\left(\mu-1\right)、 一方 (1−μ)⋅(−μ)=μ2−μ\left(1-\mu\right)\cdot\left(-\mu\right)=\mu^{2}-\mu。一致する。第 11・第 33 成分も同様に確かめられる。

a=2a=2 の場合

μ=0\mu=0 なので v2=v3=(2,0,2)T\bm v_2=\bm v_3=\left(2,0,2\right)^{\mathsf T}。これは v1=(2,0,2)T\bm v_1=\left(2,0,2\right)^{\mathsf T}(a=2a=2)と同じベクトルで、固有空間は 11 次元しかない。設問 33・44 でこの退化を扱う。

第 22 行が従属になること

t2+a2−4=0t^{2}+a^{2}-4=0(固有値の条件)を使うと、第 22 行の式は第 11・第 33 行の式から導ける。したがって独立な条件は 22 本で固有空間は 11 次元である。

設問3 対角化可能な aa と変換行列

det⁡P=−2μ3\det P=-2\mu^{3} の意味

a→2a\to2(μ→0\mu\to0)で det⁡P→0\det P\to0 となり、33 本の固有ベクトルが 11 本に潰れていく様子が式に表れている。設問 44 の退化はこの極限にあたる。なお、固有値が相異なることから 11 次独立性は理論的にも保証されるので、行列式の計算は確認の意味をもつ。

実行列としての注意

a>2a>2 では μ\mu が純虚数になるので、PP と対角形の成分は複素数である。実行列として実対角化できるのは 0<a<20<a<2 に限る。答案ではどちらの体で考えているかを明示する。

列の順序

PP の列の順序と対角成分の順序は対応させる。入れ替えると対角形の並びも入れ替わる。

設問4 a=2a=2 のジョルダン標準形

細胞の決め方

細胞の個数 =dim⁡ker⁡N=\dim\ker N、最大の大きさ == NN の冪零指数。本問では 11 個で大きさ 33 と決まるので、他の可能性(2+12+1 や 1+1+11+1+1)は排除される。

N2N^{2} の計算

NN の第 11 行 (0,2,0)\left(0,2,0\right) は「第 22 行を 22 倍する」作用なので、N2N^{2} の第 11 行は 2×(−2,0,2)=(−4,0,4)2\times\left(-2,0,2\right)=\left(-4,0,4\right)。同様に他の行も求まる。

最小多項式

N3=ON^{3}=O、N2≠ON^{2}\neq O より AA の最小多項式は (λ−1)3\left(\lambda-1\right)^{3}。固有多項式 (1−λ)3\left(1-\lambda\right)^{3} と(符号を除いて)一致するので、AA は巡回行列(コンパニオン行列に相似)である。

失点しやすい点

dim⁡ker⁡N=1\dim\ker N=1 だけでは「細胞が 11 個」しか分からない。大きさは NN の冪を調べて決める。33 次で細胞 11 個なら大きさは自動的に 33 になるので、本問では冪の計算は確認の意味をもつ。

解答

置き換え

t=1−λt=1-\lambda と置くと A−λI=(ta0−at202t). A-\lambda I=\begin{pmatrix}t&a&0\\-a&t&2\\0&2&t\end{pmatrix}.

行列式

第 11 行に沿って展開すると det⁡(A−λI)=t(t2−4)−a(−at−0)+0=t3−4t+a2t=t(t2+a2−4). \det\left(A-\lambda I\right) =t\left(t^{2}-4\right)-a\left(-at-0\right)+0 =t^{3}-4t+a^{2}t =t\left(t^{2}+a^{2}-4\right).

λ\lambda に戻す

det⁡(A−λI)=(1−λ)[(1−λ)2+a2−4]=(1−λ)(λ2−2λ+a2−3). \det\left(A-\lambda I\right) =\left(1-\lambda\right)\left[\left(1-\lambda\right)^{2}+a^{2}-4\right] =\left(1-\lambda\right)\left(\lambda^{2}-2\lambda+a^{2}-3\right).

固有値

t=0t=0 から λ=1\lambda=1。t2=4−a2t^{2}=4-a^{2} から t=±4−a2t=\pm\sqrt{4-a^{2}}、すなわち λ=1,λ=1±4−a2. \lambda=1,\qquad \lambda=1\pm\sqrt{4-a^{2}} . 0<a<20<a<2 では 33 つとも相異なる実数、a=2a=2 では λ=1\lambda=1(重複度 33)、a>2a>2 では λ=1\lambda=1 と 1±ia2−41\pm i\sqrt{a^{2}-4}(虚数)である。

λ=1\lambda=1(t=0t=0)

A−I=(0a0−a02020). A-I=\begin{pmatrix}0&a&0\\-a&0&2\\0&2&0\end{pmatrix}. 第 11 行から ay2=0ay_2=0、a>0a>0 より y2=0y_2=0。第 22 行から −ay1+2y3=0-ay_1+2y_3=0、すなわち y1=2ay3y_1=\dfrac{2}{a}y_3。 y3=ay_3=a と取ると基底は v1=(2, 0, a)T. \bm v_1=\left(2,\ 0,\ a\right)^{\mathsf T}.

λ=1∓μ\lambda=1\mp\mu(t=±μt=\pm\mu、μ=4−a2≠0\mu=\sqrt{4-a^{2}}\neq0)

t=μt=\mu のとき (A−λI)y=0\left(A-\lambda I\right)\bm y=\bm 0 は μy1+ay2=0,2y2+μy3=0 \mu y_1+ay_2=0,\qquad 2y_2+\mu y_3=0 (第 22 行はこの 22 式から従う)。y2=−μy_2=-\mu と取ると y1=ay_1=a、y3=2y_3=2。 同様に t=−μt=-\mu では y2=μy_2=\mu と取れて y1=ay_1=a、y3=2y_3=2。

結果

λ=1−μ: v2=(a, −μ, 2)T,λ=1+μ: v3=(a, μ, 2)T. \lambda=1-\mu:\ \bm v_2=\left(a,\ -\mu,\ 2\right)^{\mathsf T}, \qquad \lambda=1+\mu:\ \bm v_3=\left(a,\ \mu,\ 2\right)^{\mathsf T}.

判定

a≠2a\neq2 のとき μ=4−a2≠0\mu=\sqrt{4-a^{2}}\neq0 で、固有値 1, 1−μ, 1+μ1,\ 1-\mu,\ 1+\mu は相異なる 33 個である。相異なる nn 個の固有値をもつ nn 次行列は対角化可能だから、AA は対角化可能である(a>2a>2 のときは複素数の範囲で)。

a=2a=2 のときは μ=0\mu=0 で固有値 11 の重複度が 33 になるが、設問 22 より固有空間は 11 次元である。1<31<3 なので対角化できない。

変換行列

a≠2a\neq2 のとき、設問 22 の固有ベクトルを列に並べて P=(2aa0−μμa22),μ=4−a2. P=\begin{pmatrix}2&a&a\\0&-\mu&\mu\\a&2&2\end{pmatrix}, \qquad \mu=\sqrt{4-a^{2}} . 第 11 列に沿って展開すると det⁡P=2∣−μμ22∣+a∣aa−μμ∣=2(−4μ)+a(2aμ)=2μ(a2−4)=−2μ3. \det P=2\begin{vmatrix}-\mu&\mu\\2&2\end{vmatrix}+a\begin{vmatrix}a&a\\-\mu&\mu\end{vmatrix} =2\left(-4\mu\right)+a\left(2a\mu\right)=2\mu\left(a^{2}-4\right)=-2\mu^{3}. μ≠0\mu\neq0 なので det⁡P≠0\det P\neq0、すなわち PP は正則である。

対角形

P−1AP=(10001−μ0001+μ). P^{-1}AP=\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1-\mu&0\\0&0&1+\mu\end{pmatrix}.

行列

a=2a=2 のとき固有値は 11 のみ(重複度 33)で N≡A−I=(020−202020). N\equiv A-I=\begin{pmatrix}0&2&0\\-2&0&2\\0&2&0\end{pmatrix}.

階数と固有空間

第 11 行と第 33 行は等しく、第 22 行はそれと 11 次独立だから rank⁡N=2\operatorname{rank}N=2、 dim⁡ker⁡N=3−2=1. \dim\ker N=3-2=1 . ジョルダン細胞の個数は固有空間の次元に等しいので、細胞は 11 個である。

冪零性

N2=(−404000−404)≠O,N3=O. N^{2}=\begin{pmatrix}-4&0&4\\0&0&0\\-4&0&4\end{pmatrix}\neq O, \qquad N^{3}=O . NN の冪零指数が 33 なので、最大の細胞の大きさは 33 である。

結論

細胞が 11 個で大きさ 33、固有値は 11 だから J=(110011001). J=\begin{pmatrix}1&1&0\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}.

最終答

固有多項式 (1−λ)(λ2−2λ+a2−3)\left(1-\lambda\right)\left(\lambda^{2}-2\lambda+a^{2}-3\right)、 固有値 λ=1, 1±4−a2\lambda=1,\ 1\pm\sqrt{4-a^{2}}

μ=4−a2\mu=\sqrt{4-a^{2}} として λ=1\lambda=1:(2,0,a)T\left(2,0,a\right)^{\mathsf T}、 λ=1−μ\lambda=1-\mu:(a,−μ,2)T\left(a,-\mu,2\right)^{\mathsf T}、 λ=1+μ\lambda=1+\mu:(a,μ,2)T\left(a,\mu,2\right)^{\mathsf T}(a≠2a\neq2 のとき)

a≠2a\neq2 のとき対角化可能。μ=4−a2\mu=\sqrt{4-a^{2}} として P=(2aa0−μμa22)P=\begin{pmatrix}2&a&a\\0&-\mu&\mu\\a&2&2\end{pmatrix}、 P−1AP=diag⁡(1, 1−μ, 1+μ)P^{-1}AP=\operatorname{diag}\left(1,\ 1-\mu,\ 1+\mu\right)

a=2a=2 のとき AA は対角化できず、ジョルダン標準形は J=(110011001)\displaystyle J=\begin{pmatrix}1&1&0\\0&1&1\\0&0&1\end{pmatrix}(固有値 11 の 33 次細胞 11 個)

第2問 — 線形代数:3つの1次因子で零化される行列の構造

一般則

AA の多項式どうしは常に可換である。p(A)q(A)=q(A)p(A)p\left(A\right)q\left(A\right)=q\left(A\right)p\left(A\right) が成り立つのは、どちらも AA の冪の 11 次結合だからである。本問の 33 因子はどの順に並べ替えてもよい。

設問2で使う場所

(A−γI)\left(A-\gamma I\right) を先頭に移す操作にこの可換性を使う。「与えられた積が OO」という情報を任意の並び順で使えるようにするのが設問 11 の役目である。

II がスカラー行列であること

αI\alpha I はすべての行列と可換である。α\alpha を一般の行列に置き換えるとこの議論は成り立たない。

設問2 (A−αI)(A−βI)x\left(A-\alpha I\right)\left(A-\beta I\right)\bm x が固有ベクトル

どの固有値が出るか

掛けた 22 つの因子が α,β\alpha,\beta なので、残った γ\gamma が固有値になる。「使わなかった因子の固有値」が答えである、と覚えるとよい。

射影としての解釈

AA が対角化可能なとき、(A−αI)(A−βI)(γ−α)(γ−β)\dfrac{\left(A-\alpha I\right)\left(A-\beta I\right)}{\left(\gamma-\alpha\right)\left(\gamma-\beta\right)} は固有値 γ\gamma の固有空間への射影になる(ラグランジュの補間公式の行列版)。設問 55 の階数の計算はこの射影の階数を求めることに等しい。

失点しやすい点

w≠0\bm w\neq\bm 0 という仮定を必ず使う。w=0\bm w=\bm 0 でも (A−γI)w=0\left(A-\gamma I\right)\bm w=\bm 0 は成り立つが、固有ベクトルにはならない。

設問3 α,β,γ\alpha,\beta,\gamma がすべて固有値

仮定が効く場所

「どの 22 因子の積も OO でない」という条件が、33 つの固有値すべての存在を保証する。たとえば (A−αI)(A−βI)=O\left(A-\alpha I\right)\left(A-\beta I\right)=O なら γ\gamma が固有値である必要はない(A=αIA=\alpha I など)。

固有多項式

33 次行列が相異なる 33 個の固有値をもつので、固有多項式は (λ−α)(λ−β)(λ−γ)\left(\lambda-\alpha\right)\left(\lambda-\beta\right)\left(\lambda-\gamma\right) に(符号を除いて)等しい。

最小多項式

(λ−α)(λ−β)(λ−γ)\left(\lambda-\alpha\right)\left(\lambda-\beta\right)\left(\lambda-\gamma\right) は AA を零化し、その真の約数(22 因子の積)は零化しない。したがってこれが最小多項式であり、重根をもたないので AA は対角化可能である。

設問4 {vα,vβ,vγ}\left\{\bm v_\alpha,\bm v_\beta,\bm v_\gamma\right\} が基底

AA が対角化可能であること

固有ベクトルからなる基底が取れたので、P=[vα vβ vγ]P=\left[\bm v_\alpha\ \bm v_\beta\ \bm v_\gamma\right] に対し P−1AP=diag⁡(α,β,γ)P^{-1}AP=\operatorname{diag}\left(\alpha,\beta,\gamma\right)。設問 55 の計算はこの対角形で行う。

固有ベクトルが実であること

α,β,γ\alpha,\beta,\gamma は実数と仮定されているので、(A−αI)v=0\left(A-\alpha I\right)\bm v=\bm 0 の解は実ベクトルの中に取れる。R3\mathbb R^{3} の基底になると言えるのはこのためである。

因子を掛けて消す技法

(A−βI)(A−γI)vβ=0\left(A-\beta I\right)\left(A-\gamma I\right)\bm v_\beta=\bm 0 となるのは、(A−βI)\left(A-\beta I\right) を後ろに回して vβ\bm v_\beta に当てられるから(設問 11 の可換性)。11 次独立性の証明でよく使う手である。

設問5 22 因子の積の階数

像が固有空間になること

(A−αI)(A−βI)\left(A-\alpha I\right)\left(A-\beta I\right) の像は固有値 γ\gamma の固有空間 ⟨vγ⟩\left\langle\bm v_\gamma\right\rangle(11 次元)に一致する。設問 22 で示した「像の元が固有値 γ\gamma の固有ベクトル」という事実が、階数 11 の内容そのものである。

核の次元

階数が 11 なので核は 22 次元で、⟨vα,vβ⟩\left\langle\bm v_\alpha,\bm v_\beta\right\rangle に等しい。33 つの積の核を合わせると空間全体の分解が読める。

仮定との整合

階数が 1≠01\neq0 なので、これらの積はいずれも OO でない。問題の仮定と矛盾しないことが確認できる。逆に、この仮定がなければ階数は 00 になり得た。

失点しやすい点

(D−αI)(D−βI)\left(D-\alpha I\right)\left(D-\beta I\right) の第 33 成分が (γ−α)(γ−β)\left(\gamma-\alpha\right)\left(\gamma-\beta\right) であることを、対角成分ごとに DD の値を代入して確かめる。行列の積ではなくスカラーの積になる点が便利である。

線形代数:3つの1次因子で零化される行列の構造の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 微分積分:一様連続性の定義と判定

各点連続との違い

各点連続では δ\delta が ε\varepsilon と点 x0x_0 の両方に依存してよい。一様連続では δ\delta が ε\varepsilon だけで決まり、区間全体で共通に取れる。量化子の順序(∃δ\exists\delta が ∀x,y\forall x,y より前)がその違いを表している。

否定

一様連続でないとは、ある ε0>0\varepsilon_0>0 が存在して、どんな δ>0\delta>0 に対しても ∣x−y∣<δ\left|x-y\right|<\delta かつ ∣f(x)−f(y)∣≥ε0\left|f\left(x\right)-f\left(y\right)\right|\ge\varepsilon_0 となる x,y∈Ix,y\in I が取れることである。設問 22 でこの形を使う。

数列による言い換え

∣xn−yn∣→0\left|x_n-y_n\right|\to0 を満たすどんな列に対しても ∣f(xn)−f(yn)∣→0\left|f\left(x_n\right)-f\left(y_n\right)\right|\to0、と言い換えられる。反例を作るときはこちらが扱いやすい。

設問2 y=x2y=x^{2} が一様連続でないこと

原因は傾きの非有界性

(x2)′=2x\left(x^{2}\right)'=2x は x→∞x\to\infty で発散する。傾きがいくらでも大きくなるので、同じ幅 δ\delta でも値の変化がいくらでも大きくなる。

有界区間なら一様連続

[0,M]\left[0,M\right] 上では ∣x2−y2∣=∣x+y∣∣x−y∣≤2M∣x−y∣\left|x^{2}-y^{2}\right|=\left|x+y\right|\left|x-y\right|\le2M\left|x-y\right| でリプシッツになる。設問 44・55 の主張と整合する。区間の非有界性が本質である。

失点しやすい点

δ\delta を固定してから x,yx,y を選ぶ順序を守る。x,yx,y を先に固定すると否定命題の形にならない。

設問3 y=xy=\sqrt x が [1,∞)\left[1,\infty\right) で一様連続

リプシッツであること

上の評価は M=12M=\dfrac12 としたリプシッツ条件そのものである。設問 44 を先に示しておけば、そこに帰着させて 11 行で済む。

[0,∞)\left[0,\infty\right) でも一様連続

x=0x=0 を含めるとリプシッツではなくなる(x=0x=0 で傾きが発散)。それでも ∣x−y∣≤∣x−y∣\left|\sqrt x-\sqrt y\right|\le\sqrt{\left|x-y\right|} が成り立つので、δ=ε2\delta=\varepsilon^{2} と取れば一様連続である。リプシッツでなくても一様連続なことがある、という好例である。

x2x^{2} との対比

x\sqrt x の導関数 12x\dfrac{1}{2\sqrt x} は [1,∞)\left[1,\infty\right) で有界(≤12\le\frac12)である。導関数が有界なら一様連続、という設問 44・55 の筋道がここでも働いている。

設問4 リプシッツ条件から一様連続

δ\delta が点に依らないこと

MM が区間全体で共通の定数だから、δ\delta も共通に取れる。これが一様連続の核心である。

逆は成り立たない

設問 33 の注で見たとおり、x\sqrt x は [0,∞)\left[0,\infty\right) で一様連続だがリプシッツでない。リプシッツ条件は十分条件にすぎない。

MM の存在

M>0M>0 と仮定されている。M=0M=0 なら ff は定数で、当然一様連続である。

設問5 C1C^{1} 級関数の有界閉区間上での一様連続性

有界閉であることの必要性

II が非有界だと f′f' が有界とは限らない。設問 22 の f=x2f=x^{2}(f′=2xf'=2x)がその例である。II が開区間だと f′f' が端点近くで発散し得る(f=1/xf=1/x を (0,1)\left(0,1\right) で考えるなど)。

より強い定理

「コンパクト集合上の連続関数は一様連続」(ハイネ・カントールの定理)が知られており、C1C^{1} 級である必要はない。本問は設問 44 を使う形に誘導しているので、微分可能性を経由する道筋を取る。

M=M0+1M=M_0+1 とした理由

設問 44 の仮定が M>0M>0(正)なので、M0=0M_0=0(ff が定数)の場合に備えて 11 を足しておく。細かいが仮定を満たすための配慮である。

失点しやすい点

平均値の定理を使うには ff が閉区間で連続かつ開区間で微分可能であることが要る。C1C^{1} 級ならどちらも満たす。

微分積分:一様連続性の定義と判定の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 微分積分:|x|^ssin(1/x^2) の微分可能性と導関数の連続性

x>0x>0 と x<0x<0 をまとめる

x>0x>0 なら ∣x∣s=xs\left|x\right|^{s}=x^{s} で f′=sxs−1sin⁡1x2−2xs−3cos⁡1x2f'=sx^{s-1}\sin\frac{1}{x^{2}}-2x^{s-3}\cos\frac{1}{x^{2}}。 x<0x<0 でも ∣x∣s/x\left|x\right|^{s}/x という書き方をすれば同じ式にまとまる。絶対値を残したまま扱うのがこつである。

22 項の大きさの差

第 11 項は ∣x∣s−1\left|x\right|^{s-1}、第 22 項は ∣x∣s−3\left|x\right|^{s-3} の大きさをもつ。x→0x\to0 では第 22 項のほうが ∣x∣−2\left|x\right|^{-2} 倍だけ大きい。設問 33 で効いてくる差である。

ff は x≠0x\neq0 で C∞C^{\infty} 級

∣x∣s\left|x\right|^{s} も sin⁡(1/x2)\sin\left(1/x^{2}\right) も x≠0x\neq0 で何回でも微分できる。問題になるのは x=0x=0 だけである。

設問2 x=0x=0 での微分可能性

境界 s=1s=1

∣x∣s\left|x\right|^{s} が 00 に近づく速さと、差商で 11 回割ることの釣り合いが s=1s=1 である。振動因子は有界なので速さの比較だけで決まる。

s=2s=2 の例

f(x)=x2sin⁡1x2f\left(x\right)=x^{2}\sin\dfrac{1}{x^{2}} は x=0x=0 で微分可能(f′(0)=0f'\left(0\right)=0)だが、設問 33 で見るように f′f' は x=0x=0 で連続でない。「微分可能だが C1C^{1} 級でない」関数の標準的な例である。

失点しやすい点

sin⁡(1/h2)\sin\left(1/h^{2}\right) は h→0h\to0 で極限をもたないので、積の極限を「0×0\times(極限)」と書いてはいけない。有界性を使ったはさみうちで扱う。

設問3 f′f' が x=0x=0 で連続となる ss

22 つの境界

微分可能性は s>1s>1、導関数の連続性は s>3s>3。差の 22 は ddxsin⁡1x2\dfrac{d}{dx}\sin\dfrac{1}{x^{2}} が x−3x^{-3} を生み、差商での x−1x^{-1} より 22 だけ強く発散することによる。

1<s≤31<s\le3 の意味

この範囲では ff は R\mathbb R 全体で微分可能だが f′f' は x=0x=0 で不連続、すなわち ff は C1C^{1} 級でない。導関数は中間値の性質(ダルブーの定理)をもつので、不連続でも「跳び」ではなく振動の形でしか現れない。本問の f′f' はまさに振動している。

sin⁡(1/x)\sin\left(1/x\right) の場合との比較

∣x∣ssin⁡1x\left|x\right|^{s}\sin\dfrac1x なら微分で x−2x^{-2} が出るので、境界は s>1s>1 と s>2s>2 になる。振動の速さが指数の閾値を決めている。

失点しやすい点

f′(0)=0f'\left(0\right)=0 と lim⁡x→0f′(x)\displaystyle\lim_{x\to0}f'\left(x\right) を混同しない。前者は差商の極限、後者は導関数の極限で、一致するとは限らない。連続性は両者の一致を要求する。

微分積分:|x|^ssin(1/x^2) の微分可能性と導関数の連続性の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 線形代数:短完全列と次元の有限性

線型性が要ること

「核が自明 ⇔\Leftrightarrow 単射」は線型写像(一般には群準同型)に特有である。一般の写像では成り立たない。

記号 OO

O={0}O=\left\{0\right\} は零空間で、00 次元の線型空間である。OO からの準同型も OO への準同型も一意に定まる。

失点しやすい点

Im⁡(i)\operatorname{Im}\left(i\right) が LL の部分空間 {0L}\left\{0_L\right\} であることを明記する。OO そのものと LL の零部分空間を同一視して書く。

設問2 gg の全射性

両端の OO の役割

列 O→L→M→N→OO\to L\to M\to N\to O の左端の OO は「ff が単射」を、右端の OO は「gg が全射」をそれぞれ符号化している。この形の完全列を短完全列という。

π\pi が一意であること

NN から O={0}O=\left\{0\right\} への線型写像は零写像しかない。したがって π\pi は自動的に定まり、Ker⁡π=N\operatorname{Ker}\pi=N は常に成り立つ。

完全性の位置

「どこで完全か」を明示する。設問 11 は LL における完全性、設問 22 は NN における完全性、設問 33 は MM における完全性を使う。

設問3 MM の有限次元性

実は等号が成り立つ

SS は 11 次独立でもある。∑bif(li)+∑cjmj=0\sum b_if\left(\bm l_i\right)+\sum c_j\bm m_j=0 に gg を施すと(g∘f=0g\circ f=0 なので第 11 項が消え)∑cjnj=0\sum c_j\bm n_j=0、基底より cj=0c_j=0。残る ∑bif(li)=0\sum b_if\left(\bm l_i\right)=0 に ff の単射性を使うと ∑bili=0\sum b_i\bm l_i=0、よって bi=0b_i=0。したがって dim⁡M=dim⁡L+dim⁡N. \dim M=\dim L+\dim N .

次元定理との関係

g:M→Ng:M\to N に次元定理を適用すると dim⁡M=dim⁡Ker⁡g+dim⁡Im⁡g=dim⁡Im⁡f+dim⁡N\dim M=\dim\operatorname{Ker}g+\dim\operatorname{Im}g=\dim\operatorname{Im}f+\dim N。 ff が単射なので dim⁡Im⁡f=dim⁡L\dim\operatorname{Im}f=\dim L。同じ結論が得られる。ただし次元定理は MM が有限次元であることを前提とするので、本問ではまず張ることを示す順序が正しい。

持ち上げの任意性

mj\bm m_j の取り方には Ker⁡g\operatorname{Ker}g の分だけ自由度があるが、どう取っても SS は MM を張る。選択に依存しないことが議論の要点である。

失点しやすい点

MM における完全性 Ker⁡g=Im⁡f\operatorname{Ker}g=\operatorname{Im}f を使う場所を明示する。設問 11・22 で使ったのは両端の完全性で、ここでは中央の完全性が必要である。

線形代数:短完全列と次元の有限性の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 代数学:5次円分体とその実部分体

一般の円分体

Gal(Q(ζn)/Q)≅(Z/nZ)×\mathrm{Gal}\left(\mathbb Q\left(\zeta_n\right)/\mathbb Q\right)\cong\left(\mathbb Z/n\mathbb Z\right)^{\times} が一般に成り立つ。n=5n=5 では位数 φ(5)=4\varphi\left(5\right)=4 の巡回群になる。

部分群と中間体

Z/4Z\mathbb Z/4\mathbb Z の部分群は位数 1,2,41,2,4 の 33 つ。したがって中間体も 33 つで、Q(ζ5)\mathbb Q\left(\zeta_5\right)、22 次体(設問 22 の FF)、Q\mathbb Q である。

複素共役

複素共役 τ:ζ5↦ζ5‾=ζ5−1=ζ54\tau:\zeta_5\mapsto\overline{\zeta_5}=\zeta_5^{-1}=\zeta_5^{4} は 4ˉ=2ˉ2\bar4=\bar2^{2} に対応し、位数 22 の元である。設問 22 で使う。

設問2 [F:Q]\left[F:\mathbb Q\right]

τ\tau が Q(ζ5)\mathbb Q\left(\zeta_5\right) を保つこと

Q(ζ5)\mathbb Q\left(\zeta_5\right) は ζ5\zeta_5 のすべての共役(ζ5k\zeta_5^{k})を含むので複素共役で閉じている。したがって τ\tau の制限が Gal\mathrm{Gal} の元になる。

一般の円分体

n≥3n\ge3 では [Q(ζn):Q(ζn)∩R]=2\left[\mathbb Q\left(\zeta_n\right):\mathbb Q\left(\zeta_n\right)\cap\mathbb R\right]=2 が常に成り立つ。実部分体は Q(ζn+ζn−1)\mathbb Q\left(\zeta_n+\zeta_n^{-1}\right) で、最大実部分体と呼ばれる。

ζ5∉R\zeta_5\notin\mathbb R

ζ5=cos⁡72∘+isin⁡72∘\zeta_5=\cos72^\circ+i\sin72^\circ で虚部が 00 でない。したがって F⊊Q(ζ5)F\subsetneq\mathbb Q\left(\zeta_5\right) であり、[F:Q]=4\left[F:\mathbb Q\right]=4 にはならない。

設問3 F=Q(5)F=\mathbb Q\left(\sqrt5\right)

正五角形との関係

2cos⁡72∘=5−12=0.618⋯2\cos72^\circ=\dfrac{\sqrt5-1}{2}=0.618\cdots は黄金比の逆数である。正五角形の対角線と辺の比に 5\sqrt5 が現れるのはこの関係による。定規とコンパスで正五角形が作図できることも、[F:Q]=2\left[F:\mathbb Q\right]=2 から従う。

ζ2\zeta^{2} で割る技法

ζ+ζ−1\zeta+\zeta^{-1} の満たす方程式を求めるには、円分方程式を ζdeg⁡/2\zeta^{\deg/2} で割って対称式に直す。この「相反方程式の解法」は次数を半分に落とす標準的な手法である。

符号の決定

22 次方程式の 22 根 −1±52\dfrac{-1\pm\sqrt5}{2} は η=2cos⁡72∘\eta=2\cos72^\circ と η′=2cos⁡144∘=ζ2+ζ3\eta'=2\cos144^\circ=\zeta^{2}+\zeta^{3} にあたる。cos⁡72∘>0>cos⁡144∘\cos72^\circ>0>\cos144^\circ から符号が決まる。

設問4 5\sqrt5 を ζ5\zeta_5 で表す

ガウス和としての形

第 22 の表示は 5=∑r=14(r5)ζ5r\displaystyle\sqrt5=\sum_{r=1}^{4}\left(\frac{r}{5}\right)\zeta_5^{r} ((r5)\left(\frac{r}{5}\right) はルジャンドル記号、1,41,4 が平方剰余、2,32,3 が非剰余)というガウス和である。一般に p≡1(mod4)p\equiv1\pmod4 の素数に対し p\sqrt p がこの形で書ける。

数値確認

ζ5=cos⁡72∘+isin⁡72∘=0.3090+0.9511i\zeta_5=\cos72^\circ+i\sin72^\circ=0.3090+0.9511i、 ζ54=ζ5‾=0.3090−0.9511i\zeta_5^{4}=\overline{\zeta_5}=0.3090-0.9511i。 1+2(0.3090+0.3090)=1+1.2360=2.2360=51+2\left(0.3090+0.3090\right)=1+1.2360=2.2360=\sqrt5。一致する。

符号の選択

−5-\sqrt5 も FF の元だが、上の表示は正の平方根を与える。ζ5\zeta_5 を ζ52\zeta_5^{2}(別の原始根)に取り替えると符号が反転する。どの原始根を ζ5\zeta_5 と呼ぶかで符号が決まる。

失点しやすい点

ζ5−1=ζ54\zeta_5^{-1}=\zeta_5^{4} の書き換えを使う。負の指数のままでも正しいが、「ζ5\zeta_5 を用いて表せ」という要求には多項式の形で答えるほうが素直である。

代数学:5次円分体とその実部分体の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 幾何学:上半平面の双曲計量と測地線・面積

ユークリッド長との違い

ユークリッドでは長さ p−1p-1 だが、双曲計量では log⁡p\log p。yy が小さいほど「重み 1/y1/y」が大きくなるので、実軸に近づくほど距離が伸びる。実軸そのものへは無限の距離があり、到達できない。

p→∞p\to\infty

log⁡p→∞\log p\to\infty。上方向にも無限に広がっている。上半平面は双曲計量について完備である。

向きに依らないこと

Q\mathrm Q から P\mathrm P へ辿っても長さは同じ log⁡p\log p である。長さは向きに依存しない。

設問2 鉛直線分が最短であること

等号成立

第 11 の不等号の等号は x′≡0x'\equiv0(曲線が鉛直線上にある)、第 22 の等号は y′y' が符号を変えないこと(yy が単調)。すなわち等号は γ\gamma が γ0\gamma_0 の(向きを保つ)再助変数化のときに限る。したがって yy 軸上の線分は測地線であり、最短経路は本質的に一意である。

双曲幾何の測地線

上半平面モデルの測地線は「実軸に垂直な半直線」と「実軸に中心をもつ半円」である。本問の γ0\gamma_0 は前者にあたる。22 点が同じ鉛直線上にない場合は半円が最短になる。

log⁡\log が現れる理由

y′y=(log⁡y)′\dfrac{y'}{y}=\left(\log y\right)' なので、鉛直方向の長さは yy の対数の差になる。双曲距離が「比の対数」で測られる、という双曲幾何の基本的な性質である。

設問3 △H(0,α,β)\triangle_H\left(0,\alpha,\beta\right) の面積

ガウス・ボンネの定理

双曲平面(曲率 −1-1)の測地三角形の面積は π−(内角の和)\pi-\left(\text{内角の和}\right) である。本問の領域は、単位半円弧(測地線)と 22 本の鉛直線(測地線)で囲まれた三角形で、22 本の鉛直線は無限遠で交わるため、そこでの内角は 00 である。内角は 0,α,β0,\alpha,\beta で、面積 π−(0+α+β)\pi-\left(0+\alpha+\beta\right) と一致する。

α,β\alpha,\beta が内角であること

x=cos⁡βx=\cos\beta の鉛直線と単位円 x2+y2=1x^{2}+y^{2}=1 の交点は (cos⁡β,sin⁡β)\left(\cos\beta,\sin\beta\right)。この点で円の接線と鉛直線のなす角が β\beta になる。−cos⁡α-\cos\alpha 側も同様である。

面積の上限

α,β→0\alpha,\beta\to0 で面積は π\pi に近づく。双曲平面では三角形の面積は π\pi を超えられない。ユークリッド幾何との決定的な違いである。

失点しやすい点

面積要素は dxdyy2\dfrac{dxdy}{y^{2}} であって dxdyy\dfrac{dxdy}{y} ではない。第 11 基本形式の係数から EG−F2\sqrt{EG-F^{2}} を計算して確かめる。

幾何学:上半平面の双曲計量と測地線・面積の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 位相空間:連続関数の空間に入れた L^1 型の距離

連続性が本質的な場所

同一律の証明だけが連続性を使う。連続でない関数まで含めると、たとえば「11 点だけ値が違う関数」の距離が 00 になり、同一律が破れる。可測関数の空間では「ほとんど至るところ一致」で同一視して L1L^{1} 空間を作る。

一様収束の距離との違い

d∞(f,g)=max⁡x∣f−g∣d_\infty\left(f,g\right)=\displaystyle\max_{x}\left|f-g\right| という距離も CC に入る。d≤2d∞d\le2d_\infty なので d∞d_\infty で収束すれば dd でも収束するが、逆は成り立たない。設問 22 以降の fnf_n がその例で、dd では 00 に収束するが d∞(0,fn)=1d_\infty\left(0,f_n\right)=1 で一様収束はしない。

完備でないこと

(C,d)\left(C,d\right) は完備でない。たとえば階段関数に L1L^{1} で近づく連続関数列はコーシー列だが極限が CC にない。本問の fnf_n はその例ではなく、ちゃんと CC の中に極限をもつ。

設問2 d(0,fn)d\left(0,f_n\right)

直接積分しても同じ

∫−1/n0(nx+1)dx=[nx22+x]−1/n0=0−(12n−1n)=12n\displaystyle\int_{-1/n}^{0}\left(nx+1\right)dx=\left[\frac{nx^{2}}{2}+x\right]_{-1/n}^{0}=0-\left(\frac{1}{2n}-\frac1n\right)=\frac{1}{2n}。 ∫01/n(−nx+1)dx=12n\displaystyle\int_0^{1/n}\left(-nx+1\right)dx=\frac{1}{2n}。和は 1n\dfrac1n である。

fnf_n が連続であること

x=±1nx=\pm\dfrac1n で値は 00、x=0x=0 で 11。折れ点はあるが連続なので fn∈Cf_n\in C である。

高さは変わらない

max⁡fn=1\max f_n=1 は nn によらない。それでも面積は 1n→0\dfrac1n\to0 になる。台の幅が縮むためで、この「高さは残るが面積は消える」性質が設問 44 の要点になる。

設問3 コーシー列であること

00 を経由する

fnf_n と fmf_m の差を直接積分してもよいが、共通の点 00(零関数)を経由して三角不等式を使うほうが速い。設問 22 の結果がそのまま使える。

収束列は必ずコーシー列

設問 44 で fn→0f_n\to0 が示されるので、コーシー列であることは自動的に従う。設問 33 が先に置かれているのは、44 で「収束するかどうか」を独立に考えさせるためである。

直接計算

m>nm>n のとき d(fn,fm)=∫∣fn−fm∣d\left(f_n,f_m\right)=\displaystyle\int\left|f_n-f_m\right| を計算すると 1n−1m\dfrac1n-\dfrac1m になる。上の評価より小さいが、どちらでもコーシー性は言える。

設問4 収束の判定

一様収束はしない

max⁡x∣fn(x)−0∣=fn(0)=1\displaystyle\max_{x}\left|f_n\left(x\right)-0\right|=f_n\left(0\right)=1 で nn によらない。したがって fnf_n は 00 に一様収束しない。「L1L^{1} の意味で収束するが一様収束しない」典型例である。

各点収束はする

x≠0x\neq0 を固定すると、n>1∣x∣n>\dfrac{1}{\left|x\right|} で fn(x)=0f_n\left(x\right)=0。x=0x=0 では fn(0)=1f_n\left(0\right)=1 で 00 に収束しない。すなわち各点収束の極限は「x=0x=0 で 11、他で 00」という不連続関数で、L1L^{1} の極限(零関数)と一致しない。積分の距離では 11 点の値は効かない、ということである。

完備性の反例ではないこと

(C,d)\left(C,d\right) が完備でないことを示すには、極限が連続関数にならないコーシー列が要る。本問の fnf_n は極限が連続なので反例にならない。台の幅を縮めるのではなく、階段に近づける列(たとえば tanh⁡(nx)\tanh\left(nx\right))を使えば反例になる。

失点しやすい点

「高さが 11 のまま残るから収束しない」と早合点しない。距離は面積で測られており、面積は 1n→0\dfrac1n\to0 である。どの距離で考えているかを常に確認する。

位相空間:連続関数の空間に入れた L^1 型の距離の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 複素解析:正方形積分路による ∑1/(2n+1)^2 の計算

虚軸上に並ぶ

ez+1e^{z}+1 の零点は虚軸上に等間隔(間隔 2π2\pi)に並ぶ。±πi,±3πi,…\pm\pi i,\pm3\pi i,\dots である。設問 33 の正方形はこれらを内部に取り込むように大きさを選んである。

真性特異点はない

eze^{z} は整関数、z−2z^{-2} は z=0z=0 に極をもつだけなので、ff は有理型関数である。無限遠点は極の集積点なので孤立特異点ではない。

z=0z=0 が二重になる理由

z−2z^{-2} の因子がそのまま極の位数を与える。ez+1e^{z}+1 が z=0z=0 で 00 にならないので約分は起きない。

設問2 位数と留数

留数がすべて正の実数

(2k+1)2\left(2k+1\right)^{2} は正なので、虚軸上の極の留数はすべて正の実数である。kk と −k−1-k-1(すなわち ±(2m−1)πi\pm\left(2m-1\right)\pi i の対)で同じ値になるので、設問 33 で 22 倍が現れる。

z=0z=0 の別計算

1ez+1=12−z4+O(z2)\dfrac{1}{e^{z}+1}=\dfrac12-\dfrac{z}{4}+O\left(z^{2}\right) なので f=12z2−14z+O(1)f=\dfrac{1}{2z^{2}}-\dfrac{1}{4z}+O\left(1\right)。1z\dfrac1z の係数が −14-\dfrac14 である。微分公式と一致する。

1ez+1\dfrac{1}{e^{z}+1} の展開

これはフェルミ分布関数の形で、12−z4+z348−⋯\dfrac12-\dfrac z4+\dfrac{z^{3}}{48}-\cdots と奇数次のみが続く(1ez+1−12\dfrac{1}{e^{z}+1}-\dfrac12 が奇関数)。

設問3 正方形上の積分

正方形の辺上に極がないこと

極は z=0z=0 と虚軸上の (2k+1)πi\left(2k+1\right)\pi i だけである。∣Im⁡z∣=2Nπ\left|\operatorname{Im}z\right|=2N\pi の水平辺上に虚軸上の極が乗るには (2k+1)=±2N\left(2k+1\right)=\pm2N が必要だが、左辺は奇数なので起こらない。正方形の大きさを偶数倍 2Nπ2N\pi にしてあるのはこのためである。

極の個数

内部の 11 位の極は 2N2N 個で、N→∞N\to\infty とともに増える。留数の和が部分和として現れるのが、級数を取り出す仕掛けである。

N=1N=1 の確認

内部の極は 0,±πi0,\pm\pi i の 33 個。和は −14+2π2-\dfrac14+\dfrac{2}{\pi^{2}}。公式に N=1N=1 を入れた形と一致する。

設問4 級数の値

ζ(2)\zeta\left(2\right) との関係

∑k=1∞1k2=π26\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{k^{2}}=\frac{\pi^{2}}{6}、偶数部分は ∑1(2m)2=14⋅π26=π224\displaystyle\sum\frac{1}{\left(2m\right)^{2}}=\frac14\cdot\frac{\pi^{2}}{6}=\frac{\pi^{2}}{24}。 差を取ると奇数部分は π26−π224=π28\dfrac{\pi^{2}}{6}-\dfrac{\pi^{2}}{24}=\dfrac{\pi^{2}}{8}。本問の結果と一致する。

数値確認

π28−1=1.2337−1=0.2337\dfrac{\pi^{2}}{8}-1=1.2337-1=0.2337。 一方 19+125+149+181=0.1111+0.0400+0.0204+0.0123=0.1838\dfrac19+\dfrac1{25}+\dfrac1{49}+\dfrac1{81}=0.1111+0.0400+0.0204+0.0123=0.1838、さらに項を足すと 0.23370.2337 に近づく。

z−2z^{-2} の役割

z−2z^{-2} があるおかげで、正方形上で ∣f∣\left|f\right| が N−2N^{-2} の大きさになり、周の長さ NN を掛けても 00 に収束する。z−1z^{-1} だと収束しないので、指数 22 が本質的である。

失点しやすい点

求める級数は n=1n=1 から始まるので、11 の項を引く。π28\dfrac{\pi^{2}}{8} をそのまま答えにしない。

複素解析:正方形積分路による ∑1/(2n+1)^2 の計算の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 春季(2026年2月実施)(全9問)

    線形代数:固有値・対角化可能性・ジョルダン標準形と冪 / 線形代数:可換な行列の共通固有ベクトルと同時対角化 / 微分積分:チェザロ平均と重み付き平均の極限

  • 2026年度 夏季(2025年7月実施)(全9問)

    線形代数:パラメータ付き線形写像の全射性・核・像 / 線形代数:冪等行列の固有値・固有空間・対角化可能性 / 微分積分:逆関数定理と逆関数の縮小性

  • 2025年度 春季(2025年2月実施)(全9問)

    線形代数:4次行列の核・固有空間・対角化可能性 / 線形代数:基底の取り替えと表現行列・対角化可能性 / 微分積分:絶対収束による広義積分の存在と sin x の評価

  • 2025年度 夏季(2024年7月実施)(全9問)

    線形代数:多項式空間上の線形写像と表現行列 / 線形代数:A^4=E を満たす行列の構造 / 微分積分:log(1+x)/x と (1+x)^1/x の連続延長とマクローリン展開

  • 2024年度 春季(2024年2月実施)(全9問)

    線形代数:シルベスター方程式 AX-XB と共通固有値 / 線形代数:{}^tAA と A{}^tA の固有値から行列を復元する / 微分積分:多重極限の非存在と単調増加列による広義重積分

  • 2024年度 夏季(2023年7月実施)(このページ・全9問)

    線形代数:パラメータ付き3次行列の固有値と対角化・ジョルダン標準形 / 線形代数:3つの1次因子で零化される行列の構造 / 微分積分:一様連続性の定義と判定

2024年度 夏季(2023年7月実施)の出題内容

全9問

この9問の分野は線形代数3問・微分積分・解析2問・位相・幾何1問・代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数パラメータ付き3次行列の固有値と対角化・ジョルダン標準形t で書く利点 / 非対称行列であることあり
第2問線形代数3つの1次因子で零化される行列の構造一般則 / 設問2で使う場所あり
第3問微分積分・解析一様連続性の定義と判定各点連続との違い / 否定あり
第4問微分積分・解析|x|^ssin(1/x^2) の微分可能性と導関数の連続性x>0 と x<0 をまとめる / 2 項の大きさの差あり
第5問線形代数短完全列と次元の有限性線型性が要ること / 記号 Oあり
第6問代数5次円分体とその実部分体一般の円分体 / 部分群と中間体あり
第7問—幾何学:上半平面の双曲計量と測地線・面積ユークリッド長との違い / p→∞あり
第8問位相・幾何連続関数の空間に入れた L^1 型の距離連続性が本質的な場所 / 一様収束の距離との違いあり
第9問—複素解析:正方形積分路による ∑1/(2n+1)^2 の計算虚軸上に並ぶ / 真性特異点はないあり

2024年度 夏季(2023年7月実施)の解説には失点しやすい点9件・検算1件が付いています。

立教大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026年度の夏季・春季(直近は2024〜2026年度)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
英語は外部試験のスコア提出。専門科目の数学のみ問題を掲載している。
院試hubの最終確認
2026-09-05
立教大学の公式過去問PDF