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立教大学 理学研究科 数学専攻 数学 2025年度 夏季(2024年7月実施) 院試 過去問 解答例・解説(全9問)

全9問の分野は線形代数2問、代数2問、微分積分・解析2問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:多項式空間上の線形写像と表現行列

22 つの操作の合成

TtT_t は「f↦x2f′′f\mapsto x^{2}f''」と「f↦f(x+t)f\mapsto f\left(x+t\right)」という 22 つの線形写像の和である。線形写像の和は線形なので、個々の線形性を示せば足りる。

像が VV に留まることの重要性

線形性だけでなく、VV から VV への写像であることを確認する必要がある。x2f′′x^{2}f'' の次数が 22 を超えないのは、ff が 22 次以下で f′′f'' が定数になるからである。33 次以上を許すとこの性質は崩れる。

失点しやすい点

f(x+t)f\left(x+t\right) は xx の多項式として ff と同じ次数である。tt が入っても次数は上がらない。

設問2 表現行列

上三角になる理由

x2f′′x^{2}f'' は次数を上げず、f(x+t)f\left(x+t\right) は最高次係数を変えない。したがって TtT_t は「次数が高い基底の像に低次が混じる」形になり、この基底の順序では上三角行列になる。

t=0t=0 の場合

A=diag⁡(1,1,3)A=\operatorname{diag}\left(1,1,3\right)。T0(f)=x2f′′+fT_0\left(f\right)=x^{2}f''+f で、1,x,x21,x,x^{2} がすべて固有ベクトルになる。

検算

f=x2f=x^{2} に対し Tt(f)=3x2+2tx+t2T_t\left(f\right)=3x^{2}+2tx+t^{2}。第 33 列 (t2,2t,3)T\left(t^{2},2t,3\right)^{\mathsf T} と一致する。

設問3 固有値

固有ベクトルの意味

λ=3\lambda=3 に対応する固有ベクトルは、x2x^{2} の係数が 00 でない多項式である。実際 Tt(f)=3fT_t\left(f\right)=3f を満たす 22 次式が存在する(設問 44 の議論で tt によらず 11 次元)。λ=1\lambda=1 は定数関数 11(常に固有ベクトル)に対応する。

tt に依存しない理由

tt は上三角部分にしか現れないので対角成分を変えない。固有値は対角成分だけで決まる。

検算

tr⁡A=1+1+3=5=1+1+3\operatorname{tr}A=1+1+3=5=1+1+3。整合する。

設問4 対角化可能となる tt

t=0t=0 での意味

T0(f)=x2f′′+fT_0\left(f\right)=x^{2}f''+f である。T0(1)=1T_0\left(1\right)=1、T0(x)=xT_0\left(x\right)=x、T0(x2)=3x2T_0\left(x^{2}\right)=3x^{2} で、基底のすべてが固有ベクトルになる。t≠0t\neq0 では Tt(x)=x+tT_t\left(x\right)=x+t となり xx が固有ベクトルでなくなる。

最小多項式による確認

t=0t=0 なら最小多項式は (λ−1)(λ−3)\left(\lambda-1\right)\left(\lambda-3\right)(重根なし)、t≠0t\neq0 なら (λ−1)2(λ−3)\left(\lambda-1\right)^{2}\left(\lambda-3\right)(重根あり)。判定が一目で済む。

λ=1\lambda=1 の固有ベクトル

t≠0t\neq0 のときは定数関数 11 のスカラー倍だけである。実際 Tt(a+bx+cx2)=a+bt+ct2+(b+2ct)x+3cx2T_t\left(a+bx+cx^{2}\right)=a+bt+ct^{2}+\left(b+2ct\right)x+3cx^{2} を a+bx+cx2a+bx+cx^{2} と等値すると c=0c=0、bt=0bt=0 より b=0b=0 となる。

失点しやすい点

λ=3\lambda=3 の側も確認する必要があると思い込みやすいが、重複度 11 の固有値の固有空間は必ず 11 次元である。調べるのは重複固有値だけでよい。

解答

像が VV に入ること

f∈Vf\in V は 22 次以下だから f′′f'' は定数であり、x2f′′(x)x^{2}f''\left(x\right) は 22 次以下。また f(x+t)f\left(x+t\right) も 22 次以下である。したがって Tt(f)∈VT_t\left(f\right)\in V。

加法性

f,g∈Vf,g\in V に対し、22 階微分と平行移動はともに加法的だから Tt(f+g)=x2(f+g)′′+(f+g)(x+t)=[x2f′′+f(x+t)]+[x2g′′+g(x+t)]=Tt(f)+Tt(g). T_t\left(f+g\right)=x^{2}\left(f+g\right)''+\left(f+g\right)\left(x+t\right) =\left[x^{2}f''+f\left(x+t\right)\right]+\left[x^{2}g''+g\left(x+t\right)\right] =T_t\left(f\right)+T_t\left(g\right).

斉次性

c∈Rc\in\mathbb R に対し (cf)′′=cf′′\left(cf\right)''=cf''、(cf)(x+t)=cf(x+t)\left(cf\right)\left(x+t\right)=cf\left(x+t\right) だから Tt(cf)=x2⋅cf′′+cf(x+t)=c Tt(f). T_t\left(cf\right)=x^{2}\cdot cf''+cf\left(x+t\right)=c\,T_t\left(f\right).

基底の像

基底を (1, x, x2)\left(1,\ x,\ x^{2}\right) の順に取る。 Tt(1)=x2⋅0+1=1,Tt(x)=x2⋅0+(x+t)=t⋅1+1⋅x,Tt(x2)=x2⋅2+(x+t)2=2x2+x2+2tx+t2=t2⋅1+2t⋅x+3⋅x2.\begin{align*} T_t\left(1\right)&=x^{2}\cdot0+1=1,\\ T_t\left(x\right)&=x^{2}\cdot0+\left(x+t\right)=t\cdot1+1\cdot x,\\ T_t\left(x^{2}\right)&=x^{2}\cdot2+\left(x+t\right)^{2}=2x^{2}+x^{2}+2tx+t^{2}=t^{2}\cdot1+2t\cdot x+3\cdot x^{2}. \end{align*}

列に並べる

係数を列ベクトルにして並べると A=(1tt2012t003). A=\begin{pmatrix}1&t&t^{2}\\0&1&2t\\0&0&3\end{pmatrix}.

上三角行列の固有多項式

AA は上三角行列なので det⁡(A−λI)=(1−λ)2(3−λ). \det\left(A-\lambda I\right)=\left(1-\lambda\right)^{2}\left(3-\lambda\right).

固有値

λ=1\lambda=1(代数的重複度 22)と λ=3\lambda=3(重複度 11)。

判定の焦点

λ=3\lambda=3 は重複度 11 なので固有空間の次元は自動的に 11 である。問題になるのは λ=1\lambda=1 で、dim⁡ker⁡(A−I)=2\dim\ker\left(A-I\right)=2 が必要十分である。

A−IA-I の階数

A−I=(0tt2002t002). A-I=\begin{pmatrix}0&t&t^{2}\\0&0&2t\\0&0&2\end{pmatrix}. 第 33 行 (0,0,2)\left(0,0,2\right) は tt によらず 00 でない。第 22 行はその定数倍である。第 11 行 (0,t,t2)\left(0,t,t^{2}\right) は t≠0t\neq0 のとき 00 でなく、第 33 行と 11 次独立(第 22 成分が t≠0t\neq0)である。

したがって rank⁡(A−I)={2(t≠0)1(t=0)⟹dim⁡ker⁡(A−I)={1(t≠0)2(t=0). \operatorname{rank}\left(A-I\right)=\begin{cases}2&\left(t\neq0\right)\\1&\left(t=0\right)\end{cases} \quad\Longrightarrow\quad \dim\ker\left(A-I\right)=\begin{cases}1&\left(t\neq0\right)\\2&\left(t=0\right).\end{cases}

結論

重複度 22 に一致するのは t=0t=0 のときに限る。

最終答

Tt(V)⊂VT_t\left(V\right)\subset V であり、加法性と斉次性が成り立つ。よって TtT_t は VV 上の線形写像である(証明終わり)

A=(1tt2012t003)\displaystyle A=\begin{pmatrix}1&t&t^{2}\\0&1&2t\\0&0&3\end{pmatrix}

λ=1\lambda=1(重複度 22)と λ=3\lambda=3(重複度 11)。tt の値によらない

t=0t=0

第2問 — 線形代数:A^4=E を満たす行列の構造

行列式による別証

det⁡(A)4=det⁡(A4)=det⁡E4=1\det\left(A\right)^{4}=\det\left(A^{4}\right)=\det E_4=1 なので det⁡A≠0\det A\neq0。よって AA は正則である。こちらは逆行列を具体的に与えないが、11 行で済む。

det⁡A\det A の値

(det⁡A)4=1\left(\det A\right)^{4}=1 より det⁡A∈{1,−1,i,−i}\det A\in\left\{1,-1,i,-i\right\}。設問 22 の固有値の集合と同じ形になるのは、det⁡A\det A が固有値の積だからである。

有限位数の元

A4=EA^{4}=E は「AA が乗法群 GL4(C)GL_4\left(\mathbb C\right) の位数 44 の約数の元である」ことを意味する。群論の言葉で言えば、有限位数の元は自動的に可逆である。

設問2 固有値

∣α∣=1\left|\alpha\right|=1

どの値も絶対値 11 である。有限位数の行列の固有値は必ず 11 の冪根であり、単位円上にある。設問 44 の評価はこの事実だけを使う。

C\mathbb C であること

R\mathbb R 上でも A4=EA^{4}=E は起こり得るが、固有値 ±i\pm i は実数でないので実固有値としては現れない(回転行列がその例)。複素数体で考えることで 44 つの可能性がすべて実現し得る。

すべてが現れるとは限らない

A=E4A=E_4 なら固有値は 11 のみである。設問は「α∈{±1,±i}\alpha\in\left\{\pm1,\pm i\right\}」という包含を主張しているだけである。

設問3 対角化可能性

標数の注意

標数 22 の体では x4−1=(x−1)4x^{4}-1=\left(x-1\right)^{4} となり重根をもつ。実際 F2\mathbb F_2 上では A=(1101)A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix} が A2=EA^{2}=E(したがって A4=EA^{4}=E)を満たすが対角化できない。複素数体(標数 00)であることが本質的である。

固有空間分解

対角化可能なので C4=V1⊕V−1⊕Vi⊕V−i\mathbb C^{4}=V_1\oplus V_{-1}\oplus V_i\oplus V_{-i} と分解し、それぞれの次元の和は 44 である(現れない固有値の空間は {0}\left\{\bm 0\right\})。

別証

Pα=14∑k=03α−kAk\displaystyle P_\alpha=\frac14\sum_{k=0}^{3}\alpha^{-k}A^{k} が固有値 α\alpha への射影になることを直接確かめてもよい。∑αPα=E\sum_\alpha P_\alpha=E から分解が得られる。

設問4 トレースの評価

等号成立条件

複素数の三角不等式で等号が成り立つのは、すべての αj\alpha_j が同じ向き(同じ複素数)のときである。すなわち α1=⋯=α4=α\alpha_1=\cdots=\alpha_4=\alpha で、AA が対角化可能(設問 33)だから A=αE4A=\alpha E_4。このとき ∣tr⁡A∣=4\left|\operatorname{tr}A\right|=4 になる。

取り得る値

tr⁡A\operatorname{tr}A は {1,−1,i,−i}\left\{1,-1,i,-i\right\} から重複を許して 44 つ選んだ和なので、4, 2, 0, 2i, 1+i,…4,\ 2,\ 0,\ 2i,\ 1+i,\dots など有限個の値しか取らない。とくにガウス整数である。

対角化可能性が要らないこと

設問 44 自体は設問 22 だけから従う。設問 33 は等号成立条件を論じるときに使う。

失点しやすい点

tr⁡A\operatorname{tr}A が実数とは限らないので、絶対値は複素数の絶対値である。実数と思って評価すると等号条件を誤る。

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第3問 — 微分積分:log(1+x)/x と (1+x)^1/x の連続延長とマクローリン展開

ロピタルの定理でもよい

00\dfrac{0}{0} 型なので lim⁡x→01/(1+x)1=1\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{1/\left(1+x\right)}{1}=1 としてもよい。ただし微分係数の定義に戻る本解のほうが仮定が軽い。

除去可能特異点

x=0x=0 は ff の除去可能特異点である。実際、設問 22 で見るように延長した f~\tilde f は ∣x∣<1\left|x\right|<1 で解析的である。

定義域の左端

x>−1x>-1 でないと log⁡(1+x)\log\left(1+x\right) が定義されない。問題文の定義域 (−1,0)∪(0,∞)\left(-1,0\right)\cup\left(0,\infty\right) に x=0x=0 を補って (−1,∞)\left(-1,\infty\right) になる。

設問2 ff のマクローリン展開

収束半径

log⁡(1+x)\log\left(1+x\right) の展開の収束半径は 11(x=−1x=-1 が特異点)。xx で割っても収束半径は変わらない。

延長の解析性

べき級数で書けたので、f~\tilde f は ∣x∣<1\left|x\right|<1 で何回でも微分可能(実解析的)である。設問 11 で連続延長できることを示したが、実際にはもっと良い性質をもつ。

導関数の値

f~(n)(0)=n!⋅(−1)nn+1\tilde f^{\left(n\right)}\left(0\right)=n!\cdot\dfrac{\left(-1\right)^{n}}{n+1}。たとえば f~′(0)=−12\tilde f'\left(0\right)=-\dfrac12、f~′′(0)=23\tilde f''\left(0\right)=\dfrac{2}{3} である。

設問3 gg の連続延長

ee の定義との関係

lim⁡x→0(1+x)1/x=e\displaystyle\lim_{x\to0}\left(1+x\right)^{1/x}=e は、n→∞n\to\infty での (1+1n)n→e\left(1+\frac1n\right)^{n}\to e を連続変数に書き換えたものである。ee の定義そのものと言ってよい。

exp⁡\exp を経由する利点

(1+x)1/x\left(1+x\right)^{1/x} を直接扱うと 0∞0^{\infty} 型などの不定形の判断が必要になるが、exp⁡(f~)\exp\left(\tilde f\right) と書けば設問 11 の結果がそのまま使える。設問 44 でも同じ書き換えが効く。

x→−1+x\to-1^{+} と x→∞x\to\infty

x→−1+x\to-1^{+} では f~→+∞\tilde f\to+\infty(log⁡(1+x)→−∞\log\left(1+x\right)\to-\infty、x→−1x\to-1)なので g~→∞\tilde g\to\infty。x→∞x\to\infty では f~→0\tilde f\to0 で g~→1\tilde g\to1。定義域の両端の様子も押さえておくとよい。

設問4 gg のマクローリン展開(2次まで)

数値による検算

x=0.1x=0.1 とすると (1.1)10=2.59374\left(1.1\right)^{10}=2.59374。 展開式は e(1−0.05+0.0045833)=2.71828×0.9545833=2.59477e\left(1-0.05+0.0045833\right)=2.71828\times0.9545833=2.59477。 44 桁目まで合っており、誤差は O(x3)O\left(x^{3}\right) の大きさ(∼10−3\sim10^{-3})と整合する。

直接微分する場合

g~′′(0)\tilde g''\left(0\right) を定義通り計算するには (1+x)1/x\left(1+x\right)^{1/x} を 22 回微分する必要があり、対数微分を使っても煩雑である。ef~e^{\tilde f} の合成として扱うほうがはるかに速い。

11 次の項の意味

g~′(0)=−e2\tilde g'\left(0\right)=-\dfrac{e}{2}。(1+x)1/x\left(1+x\right)^{1/x} は x=0x=0 の近くで減少しており、n→∞n\to\infty で (1+1n)n\left(1+\frac1n\right)^{n} が下から ee に近づくこと(x=1/n>0x=1/n>0 で g~<e\tilde g<e)と符合する。

失点しやすい点

u2/2u^{2}/2 の項を落とすと x2x^{2} の係数が 13\dfrac13 になってしまう。uu の 11 次の項の 22 乗が x2x^{2} に寄与することを忘れない。

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第4問 — 微分積分:関数列の各点収束と一様収束

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分子の nn についての最高次は 2n2x32n^{2}x^{3}、分母は n2x2n^{2}x^{2}。比を取れば 2x2x である。x=0x=0 ではこの見方が使えないので別扱いにする。

極限関数が連続であること

f(x)=2xf\left(x\right)=2x は連続である。極限関数が不連続なら一様収束は直ちに否定できるが、本問ではその手は使えない。設問 22 で別の方法が要る。

検算

x=1x=1、n=10n=10:f10(1)=12+200101=2.099f_{10}\left(1\right)=\dfrac{12+200}{101}=2.099。f(1)=2f\left(1\right)=2 に近い。

設問2 I=[0,2]I=\left[0,2\right] での一様収束

山が動く現象

fn−ff_n-f のグラフは高さ 12\dfrac12 の山をもち、その位置 x=1nx=\dfrac1n が nn とともに原点へ近づく。各点では 00 に収束するのに、山の高さが下がらないので一様にはならない。一様収束が破れる典型例である。

原点が問題であること

どんな δ>0\delta>0 に対しても、nn を大きくすれば山は (0,δ)\left(0,\delta\right) の中に入る。したがって 00 を含む区間では常に一様収束しない。設問 33 で 00 を除くとどうなるかを見る。

失点しやすい点

fn−ff_n-f を計算せずに「各項が 2x2x に近づくから一様」と結論しない。上限を実際に評価すること。

設問3 J=[1,2]J=\left[1,2\right] での一様収束

00 を離れることの効果

u=nx≥nu=nx\ge n なので、nn が大きいと uu が大きく、u1+u2≃1u\dfrac{u}{1+u^{2}}\simeq\dfrac1u は小さい。山の位置 x=1nx=\dfrac1n が JJ の外に出るため、JJ 上では単調に減衰する部分しか見えない。

一般化

任意の δ>0\delta>0 に対し [δ,2]\left[\delta,2\right] 上で一様収束する。(0,2]\left(0,2\right] 全体では一様収束しない(δ\delta を 00 に近づけると評価が破れる)。「コンパクト集合上での局所一様収束」という言い方になる。

失点しやすい点

分母の 11 を落として nxn2x2\dfrac{nx}{n^{2}x^{2}} と評価するのは、不等号の向きが正しいので問題ない。分母を小さくすると分数は大きくなるので、上からの評価として妥当である。

設問4 積分の極限

一様収束を使う理由

∣∫12fn−∫12f∣≤∫12∣fn−f∣dx≤sup⁡J∣fn−f∣×1≤1n→0\displaystyle\left|\int_1^{2}f_n-\int_1^{2}f\right|\le\int_1^{2}\left|f_n-f\right|dx\le\sup_J\left|f_n-f\right|\times1\le\frac1n\to0。 一様収束(あるいは上限の評価)が交換を正当化する。

直接計算による確認

∫12(fn−2x)dx=∫12nx1+n2x2dx=12n[log⁡(1+n2x2)]12=12nlog⁡1+4n21+n2→0. \int_1^{2}\left(f_n-2x\right)dx=\int_1^{2}\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}dx =\frac{1}{2n}\left[\log\left(1+n^{2}x^{2}\right)\right]_1^{2} =\frac{1}{2n}\log\frac{1+4n^{2}}{1+n^{2}}\to0 . 確かに 00 に収束する(log⁡\log の中は 44 に近づき、12n→0\dfrac{1}{2n}\to0)。

[0,2]\left[0,2\right] での積分

一様収束しない区間でも積分の極限は存在し得る。実際 ∫02nx1+n2x2dx=12nlog⁡(1+4n2)→0\displaystyle\int_0^{2}\frac{nx}{1+n^{2}x^{2}}dx=\frac{1}{2n}\log\left(1+4n^{2}\right)\to0 なので、lim⁡n∫02fn=∫022x dx=4\displaystyle\lim_n\int_0^{2}f_n=\int_0^{2}2x\,dx=4 である。一様収束は交換の十分条件であって必要条件ではない。

失点しやすい点

交換の根拠として一様収束を明示する。設問 33 が直前に置かれているのはそのためである。

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第5問 — 代数学:極大イデアル・根基イデアル・準素イデアル

対応定理による見方

R/IR/I のイデアルは II を含む RR のイデアルと 11 対 11 に対応する。「体 ⟺\Longleftrightarrow イデアルが {0}\left\{0\right\} と全体の 22 つだけ」なので、この対応で「II を含むイデアルが II と RR の 22 つだけ」=極大性になる。本解はこの対応を具体的に書き下ろしたものである。

可換性と 11 の存在

b+Ib+I が両側逆元であることに可換性を使い、1∈R1\in R の存在に「I≠RI\neq R ⇔\Leftrightarrow 1∉I1\notin I」の判定を使う。どちらも仮定に含まれている。

素イデアルとの関係

同様に「II が素 ⟺\Longleftrightarrow R/IR/I が整域」。体は整域なので、極大イデアルは素イデアルである。設問 44 の例と対比するとよい。

設問2 I\sqrt I がイデアルであること

指数 m+n−1m+n-1 の意味

kk と m+n−1−km+n-1-k の一方は必ず mm 以上または nn 以上になる、という「鳩の巣」を働かせるための最小の指数である。m+n−2m+n-2 では k=m−1k=m-1 の項で bb の指数が n−1n-1 となり、この論法が破れる。

I⊂II\subset\sqrt I

a∈Ia\in I なら a1∈Ia^{1}\in I だから a∈Ia\in\sqrt I。また I=I\sqrt{\sqrt I}=\sqrt I も同様に確かめられる。

幾何的な意味

R=k[x1,…,xn]R=k\left[x_1,\dots,x_n\right] のとき、ヒルベルトの零点定理により I\sqrt I は「II の零点集合の上で消える多項式全体」に一致する。根基を取る操作は「重複度を落とす」ことに対応する。

設問3 準素イデアルの根基は素イデアル

準素の定義の非対称性

「a∈Ia\in I もしくは b∈Ib\in\sqrt I」と、22 つの条件が非対称に書かれている。aa と bb を入れ替えた形も同値であることは、I\sqrt I が素であることから従う。

I\sqrt I を「II に属する素イデアル」と呼ぶ

I=P\sqrt I=P のとき II を PP-準素イデアルという。ネーター環ではすべてのイデアルが準素イデアルの有限個の交わりに分解する(ラスカー・ネーターの定理)。準素イデアルは素イデアルの「重複度つき」の一般化である。

逆は成り立たない

I\sqrt I が素でも II が準素とは限らない。R=k[x,y,z]R=k\left[x,y,z\right]、I=(x2,xy)I=\left(x^{2},xy\right) が反例として知られる。

設問4 I=(x2,y)⊂R[x,y]I=\left(x^{2},y\right)\subset\mathbb R\left[x,y\right]

II が準素であること

R[x,y]/I≅R[x]/(x2)\mathbb R\left[x,y\right]/I\cong\mathbb R\left[x\right]/\left(x^{2}\right) で、この環の零因子は (x)\left(x\right) の元すなわち冪零元だけである。したがって II は準素イデアルであり、設問 33 の主張の具体例になっている。

幾何的な意味

II の零点集合は原点 (0,0)\left(0,0\right) の 11 点だが、x2x^{2} は「xx 方向に重複度 22 をもつ」。根基を取ると重複度が落ちて (x,y)\left(x,y\right)、すなわち原点の(重複度なしの)定義イデアルになる。

x∉Ix\notin I の厳密な確認

x=x2p+yqx=x^{2}p+yq と書けたとすると、y=0y=0 を代入して x=x2p(x,0)x=x^{2}p\left(x,0\right)。左辺の次数は 11、右辺は x2x^{2} で割り切れるので矛盾。p=0p=0 なら左辺が 00 にならず、やはり矛盾する。

失点しやすい点

I=(x,y)\sqrt I=\left(x,y\right) は両方向の包含を示す。とくに ⊂\subset の向きは「(x,y)\left(x,y\right) が素であること」を経由するのが最短である。

代数学:極大イデアル・根基イデアル・準素イデアルの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 代数学:7次円分体とガウス和による2次部分体

ガロア群

LL は x7−1x^{7}-1 の分解体(根はすべて ζ\zeta の冪)なので Q\mathbb Q 上ガロアで、 Gal(L/Q)≅(Z/7Z)×≅Z/6Z\mathrm{Gal}\left(L/\mathbb Q\right)\cong\left(\mathbb Z/7\mathbb Z\right)^{\times}\cong\mathbb Z/6\mathbb Z。設問 33 でこの同型を使う。

ζ\zeta の冪の和

Φ7(ζ)=0\Phi_7\left(\zeta\right)=0 から ζ+ζ2+ζ3+ζ4+ζ5+ζ6=−1\zeta+\zeta^{2}+\zeta^{3}+\zeta^{4}+\zeta^{5}+\zeta^{6}=-1。 設問 22 で繰り返し使う基本関係である。

中間体の個数

Z/6Z\mathbb Z/6\mathbb Z の部分群は位数 1,2,3,61,2,3,6 の 44 つ。したがって中間体も 44 つで、Q\mathbb Q、KK(22 次)、33 次体、LL である。

設問2 η\eta の最小多項式と K=Q(−7)K=\mathbb Q\left(\sqrt{-7}\right)

ガウス和

η−η′=∑r=16(r7)ζr\eta-\eta'=\displaystyle\sum_{r=1}^{6}\left(\frac{r}{7}\right)\zeta^{r}(ルジャンドル記号)はガウス和で、その 22 乗が −7-7 になる。p≡3(mod4)p\equiv3\pmod4 の素数 pp に対して Q(ζp)\mathbb Q\left(\zeta_p\right) が Q(−p)\mathbb Q\left(\sqrt{-p}\right) を含む、という一般的な事実の p=7p=7 の場合である。

η\eta の周期

η\eta のような「平方剰余の指数についての ζ\zeta の冪の和」をガウスの周期という。6=2×36=2\times3 の約数ごとに周期を作ると、LL の各中間体の生成元が得られる。

数値確認

ζ=e2πi/7\zeta=e^{2\pi i/7} とすると η≃−0.5+1.3229i\eta\simeq-0.5+1.3229i、−1+−72=−0.5+1.3229i\dfrac{-1+\sqrt{-7}}{2}=-0.5+1.3229i。一致する。

設問3 Gal(L/K)\mathrm{Gal}\left(L/K\right) に対応する部分群

位数 33 の部分群の一意性

Z/6Z\mathbb Z/6\mathbb Z は巡回群なので、各約数に対して部分群がちょうど 11 つ存在する。位数 33 の部分群を探すだけで対応が決まる。

η′\eta' の固定群も同じ

σ2(η′)=ζ6+ζ10+ζ12=ζ6+ζ3+ζ5=η′\sigma_2\left(\eta'\right)=\zeta^{6}+\zeta^{10}+\zeta^{12}=\zeta^{6}+\zeta^{3}+\zeta^{5}=\eta'。η\eta と η′\eta' はともに KK の元なので当然である。

KK を動かす元

3ˉ\bar3(原始根)に対応する σ3:ζ↦ζ3\sigma_3:\zeta\mapsto\zeta^{3} は η↦ζ3+ζ6+ζ12=ζ3+ζ6+ζ5=η′\eta\mapsto\zeta^{3}+\zeta^{6}+\zeta^{12}=\zeta^{3}+\zeta^{6}+\zeta^{5}=\eta' で η\eta を動かす。σ3\sigma_3 の KK への制限が Gal(K/Q)\mathrm{Gal}\left(K/\mathbb Q\right) の非自明元である。

設問4 ζ\zeta の KK 上の最小多項式

検算(Φ7\Phi_7 への分解)

h~(x)=x3−η′x2−(1+η′)x−1\tilde h\left(x\right)=x^{3}-\eta'x^{2}-\left(1+\eta'\right)x-1(η↔η′\eta\leftrightarrow\eta')と掛け合わせると Φ7(x)\Phi_7\left(x\right) になる。 実際 x5x^{5} の係数は −η−η′=1-\eta-\eta'=1、定数項は (−1)(−1)=1\left(-1\right)\left(-1\right)=1 で、Φ7\Phi_7 の対応する係数と一致する。

係数が KK に入る理由

hh の係数は Gal(L/K)\mathrm{Gal}\left(L/K\right) の軌道に関する基本対称式なので、この群の作用で不変である。ガロア対応により不変体は KK だから、係数は KK の元になる。

−7\sqrt{-7} で書き直す

η=−1+−72\eta=\dfrac{-1+\sqrt{-7}}{2} を代入すると h(x)=x3−−1+−72x2−1+−72x−1h\left(x\right)=x^{3}-\dfrac{-1+\sqrt{-7}}{2}x^{2}-\dfrac{1+\sqrt{-7}}{2}x-1。 K=Q(−7)K=\mathbb Q\left(\sqrt{-7}\right) 上の 33 次式であることが目に見える。

失点しやすい点

ζ\zeta の共役を Gal(L/Q)\mathrm{Gal}\left(L/\mathbb Q\right) の軌道(66 個)と取り違えない。KK 上の最小多項式なので Gal(L/K)\mathrm{Gal}\left(L/K\right) の軌道(33 個)である。

代数学:7次円分体とガウス和による2次部分体の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 位相空間:距離を凹関数で変換して得られる距離

EE は有界

E<1E<1 が常に成り立つ。任意の距離空間を、位相を変えずに有界な距離空間に取り替えられる、という有用な事実である(EE と dd は同じ開集合系を定める)。

位相が変わらないこと

φ\varphi は 00 の近くで φ(u)≃u\varphi\left(u\right)\simeq u なので、小さい半径の球は互いに含み合う。したがって dd と EE は同じ位相を定める。可算個の距離空間の直積を距離化する構成でもこの変換が使われる。

設問3との関係

φ\varphi は f(0)=0f\left(0\right)=0、f′>0f'>0、f′′=−2(1+u)3<0f''=\dfrac{-2}{\left(1+u\right)^{3}}<0(u≥0u\ge0)を満たすので、設問 33 の ff の典型例である。ただし φ\varphi は u=−1u=-1 で定義されないので、R\mathbb R 全体での条件を満たす関数としては使えない。設問が独立に置かれているのはこのためである。

設問2 DD の非負性と同一律

f′′<0f''<0 はここでは不要

非負性と同一律には f(0)=0f\left(0\right)=0 と f′>0f'>0 しか使わない。凹性は設問 33 の三角不等式のためにある。仮定のどれがどこで効くかを整理しておくと見通しがよい。

ff の値域

ff は狭義増加で凹だから、x→∞x\to\infty で有限の極限をもつか ∞\infty に発散するかのいずれか。どちらでも距離としては問題ない。

d≥0d\ge0 の範囲だけ使う

DD を定義するのに ff の [0,∞)\left[0,\infty\right) 上の値しか使わない。ff が R\mathbb R 全体で定義されているのは、微分の条件を素直に書くためである。

設問3 (X,D)\left(X,D\right) が距離空間であること

f(0)=0f\left(0\right)=0 が要ること

f(0)=c>0f\left(0\right)=c>0 なら D(p,p)=c≠0D\left(p,p\right)=c\neq0 となり同一律が破れる。また劣加法性の証明でも f(0)=0f\left(0\right)=0 を使っている。仮定の中で最も効いている条件である。

凹性の必要性

f(u)=u2f\left(u\right)=u^{2}(凸)では劣加法性が破れる:(1+1)2=4>1+1\left(1+1\right)^{2}=4>1+1。実際 X=RX=\mathbb R、dd を通常の距離として D=d2D=d^{2} は三角不等式を満たさない(D(0,2)=4>1+1D\left(0,2\right)=4>1+1)。凹性は落とせない。

よく使う例

f(u)=min⁡(u,1)f\left(u\right)=\min\left(u,1\right)、f(u)=u1+uf\left(u\right)=\dfrac{u}{1+u}、f(u)=log⁡(1+u)f\left(u\right)=\log\left(1+u\right)、f(u)=uαf\left(u\right)=u^{\alpha}(0<α≤10<\alpha\le1)などが劣加法的な増加関数である。いずれも距離を有界化したりべき乗したりする際に使われる。

位相への影響

ff が 00 で連続かつ f(0)=0f\left(0\right)=0、f′(0)>0f'\left(0\right)>0 なら DD と dd は同じ位相を定める。距離の値は変わっても、開集合の族は変わらない。

位相空間:距離を凹関数で変換して得られる距離の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 幾何学:ねじれの位置にある2直線を結ぶ直線族と双曲面

一意性の理由

zz 座標が uu をただちに決め、u=3≠0,1u=3\neq0,1 なので tt と ss も一意に定まる。z≠0,1z\neq0,1 の点はちょうど 11 本の npqn_{pq} 上にある。

幾何的な意味

ll と mm はねじれの位置にある(交わらず平行でもない)。空間の一般の点を通り、この 22 直線の両方と交わる直線はちょうど 11 本ある。設問 22 はその例外を探す問題である。

検算

s=−12s=-\frac12、t=23t=\frac23、u=3u=3 を代入すると (−12(1−3), 3⋅23, 3)=(1,2,3)\left(-\frac12\left(1-3\right),\ 3\cdot\frac23,\ 3\right)=\left(1,2,3\right)。一致する。

設問2 XX の決定

除かれる点の意味

平面 z=0z=0 上の ll 以外の点 (x0,y0,0)\left(x_0,y_0,0\right)(y0≠0y_0\neq0)を通り ll と mm の両方に交わる直線は存在しない。ll と交わるには z=0z=0 の平面内で ll 上の点を通る必要があるが、そのような直線は z=0z=0 の平面に含まれてしまい mm(z=1z=1)と交わらないからである。z=1z=1 側も同様である。

ll と mm 自身は含まれる

u=0u=0 の直線は ll 全体を、u=1u=1 の直線は mm 全体を通る。したがって 22 直線そのものは XX に属する。

XX の位相

XX は開集合でも閉集合でもない。R3\mathbb R^{3} からほとんど 22 枚の平面を除いた集合に、その平面内の 11 本ずつの直線を戻した形になっている。

設問3 YY の方程式

曲面の型

xz+yz−y=0xz+yz-y=0 は 22 次曲面である。22 次形式の部分 xz+yzxz+yz の行列は 12(001001110)\frac12\begin{pmatrix}0&0&1\\0&0&1\\1&1&0\end{pmatrix} で、固有値の符号は +,−,0+,-,0。したがって YY は退化した 22 次曲面で、実際には双曲放物面(鞍型)である。w=x+yw=x+y と置けば wz=ywz=y、すなわち y=wzy=wz という標準的な鞍型の式になる。

線織面であること

YY は定義からして直線の族の和集合なので線織面である。しかも ss を固定した直線と、もう 11 組の直線族(y=wzy=wz で zz を固定したもの)の 22 通りの直線族をもつ二重線織面である。

XX との違い

XX は ss と tt を独立に動かすので 33 次元的な集合になるが、YY は s=ts=t と拘束するので 22 次元の曲面になる。

設問4 YY が正則曲面であること

大域的な助変数表示

w=x+yw=x+y と置くと YY は y=wzy=wz、x=w−y=w(1−z)x=w-y=w\left(1-z\right) と書けるので (w,z)⟼(w(1−z), wz, z) \left(w,z\right)\longmapsto\left(w\left(1-z\right),\ wz,\ z\right) が R2\mathbb R^{2} から YY への全単射な助変数表示を与える。設問 33 の (s,u)\left(s,u\right) そのものである。この写像のヤコビ行列の階数が至る所 22 であることを示しても正則性が言える。

陰関数定理の使い方

∇F≠0\nabla F\neq\bm 0 の点では、FF の偏微分が 00 でない変数について局所的に解ける。たとえば z≠0z\neq0 の点では xx について、z=0z=0 の点では z−1=−1≠0z-1=-1\neq0 なので yy について解ける。どの点でも 22 変数のグラフとして書ける。

接平面

点 (x0,y0,z0)∈Y\left(x_0,y_0,z_0\right)\in Y での接平面は z0(x−x0)+(z0−1)(y−y0)+(x0+y0)(z−z0)=0z_0\left(x-x_0\right)+\left(z_0-1\right)\left(y-y_0\right)+\left(x_0+y_0\right)\left(z-z_0\right)=0。 ∇F\nabla F が法ベクトルである。

失点しやすい点

正則曲面であることを示すには、方程式を書くだけでなく勾配が消えないことを確認する。22 次曲面でも ∇F=0\nabla F=\bm 0 になる点(円錐の頂点など)があれば正則曲面にならない。

幾何学:ねじれの位置にある2直線を結ぶ直線族と双曲面の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 複素解析:留数計算と三角関数の定積分

分子の零点

z4+1=0z^{4}+1=0 の根は eiπ/4e^{i\pi/4} など 44 つで、いずれも絶対値 11 の非実数である。分母の零点とは重ならない。

無限遠での振る舞い

z→∞z\to\infty で f(z)→z42z4=12f\left(z\right)\to\dfrac{z^{4}}{2z^{4}}=\dfrac12 となり、ff は無限遠で有界だが 00 に収束しない。半円積分路で実軸上の積分を扱う型ではないことが分かる。

位数の確認法

(z−a)kf(z)\left(z-a\right)^{k}f\left(z\right) が z=az=a で 00 でない有限値をもつような kk が位数である。分子が 00 でないことを確かめる一手間を省かない。

設問2 各極での留数

z=0z=0 の別計算(級数展開)

1(2z+1)(z+2)=12(1−2z+⋯ )(1−z2+⋯ )=12−54z+O(z2), \frac{1}{\left(2z+1\right)\left(z+2\right)}=\frac{1}{2}\left(1-2z+\cdots\right)\left(1-\frac z2+\cdots\right) =\frac12-\frac54z+O\left(z^{2}\right), これに z4+1=1+O(z4)z^{4}+1=1+O\left(z^{4}\right) を掛けて z2z^{2} で割ると f=12z2−54z+O(1)f=\dfrac{1}{2z^{2}}-\dfrac{5}{4z}+O\left(1\right)。 1z\dfrac1z の係数 −54-\dfrac54 が留数である。微分公式と一致する。

22 位の極の公式

kk 位の極では Res⁡=1(k−1)!lim⁡z→adk−1dzk−1[(z−a)kf]\operatorname*{Res}=\dfrac{1}{\left(k-1\right)!}\lim_{z\to a}\dfrac{d^{k-1}}{dz^{k-1}}\left[\left(z-a\right)^{k}f\right]。k=2k=2 なら (k−1)!=1\left(k-1\right)!=1 なので係数は付かない。

1712\dfrac{17}{12} が対で現れること

z=−12z=-\dfrac12 と z=−2z=-2 の留数が符号だけ違う。2z+12z+1 と z+2z+2 が「z→1/zz\to1/z で入れ替わる」関係にあることの反映で、被積分関数が単位円について対称な構造をもつことに対応する。

設問3 単位円上の複素積分

極が円周上にないこと

∣0∣=0\left|0\right|=0、∣−12∣=12\left|-\frac12\right|=\frac12、∣−2∣=2\left|-2\right|=2 はいずれも 11 でないので、積分路上に特異点はない。留数定理を使う前に必ず確認する。

22 つの留数の打ち消し

−54-\dfrac54 と 1712\dfrac{17}{12} はほぼ同じ大きさで符号が逆なので、和が 16\dfrac16 と小さくなる。設問 44 の答えが π6\dfrac{\pi}{6} と小さい値になるのはこのためである。

全留数の和

−54+1712−1712=−54-\dfrac54+\dfrac{17}{12}-\dfrac{17}{12}=-\dfrac54。ff は無限遠で 12\dfrac12 に近づくので無限遠点にも寄与があり、全留数の和は 00 にならない。

設問4 三角関数の定積分

一般公式との照合

∫02πcos⁡nθa+bcos⁡θdθ=2πa2−b2(a2−b2−ab)n\displaystyle\int_0^{2\pi}\frac{\cos n\theta}{a+b\cos\theta}d\theta =\frac{2\pi}{\sqrt{a^{2}-b^{2}}}\left(\frac{\sqrt{a^{2}-b^{2}}-a}{b}\right)^{n}。 a=5a=5、b=4b=4、n=2n=2 とすると 25−16=3\sqrt{25-16}=3、3−54=−12\dfrac{3-5}{4}=-\dfrac12 で 2π3⋅14=π6\dfrac{2\pi}{3}\cdot\dfrac14=\dfrac{\pi}{6}。一致する。

ff がちょうど現れる仕掛け

cos⁡2θ\cos2\theta が z2+z−2z^{2}+z^{-2} を、分母 5+4cos⁡θ5+4\cos\theta が (2z+1)(z+2)/z\left(2z+1\right)\left(z+2\right)/z を生み、dθ=dz/(iz)d\theta=dz/\left(iz\right) の zz と合わせて z2z^{2} が分母に立つ。設問 33 の ff はこの計算から逆算して作られている。

値の符号

5+4cos⁡θ>05+4\cos\theta>0 で分母は正だが、cos⁡2θ\cos2\theta は正負両方を取る。それでも積分が正になるのは、分母が小さい(θ\theta が 00 に近い)ところで cos⁡2θ>0\cos2\theta>0 となり重みが大きいためである。

失点しやすい点

cos⁡2θ\cos2\theta を 2cos⁡2θ−12\cos^{2}\theta-1 と展開してから置換すると、分子の次数が上がって計算が長くなる。z2+z−2z^{2}+z^{-2} の形のまま扱うのが最短である。

複素解析:留数計算と三角関数の定積分の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 春季(2026年2月実施)(全9問)

    線形代数:固有値・対角化可能性・ジョルダン標準形と冪 / 線形代数:可換な行列の共通固有ベクトルと同時対角化 / 微分積分:チェザロ平均と重み付き平均の極限

  • 2026年度 夏季(2025年7月実施)(全9問)

    線形代数:パラメータ付き線形写像の全射性・核・像 / 線形代数:冪等行列の固有値・固有空間・対角化可能性 / 微分積分:逆関数定理と逆関数の縮小性

  • 2025年度 春季(2025年2月実施)(全9問)

    線形代数:4次行列の核・固有空間・対角化可能性 / 線形代数:基底の取り替えと表現行列・対角化可能性 / 微分積分:絶対収束による広義積分の存在と sin x の評価

  • 2025年度 夏季(2024年7月実施)(このページ・全9問)

    線形代数:多項式空間上の線形写像と表現行列 / 線形代数:A^4=E を満たす行列の構造 / 微分積分:log(1+x)/x と (1+x)^1/x の連続延長とマクローリン展開

  • 2024年度 春季(2024年2月実施)(全9問)

    線形代数:シルベスター方程式 AX-XB と共通固有値 / 線形代数:{}^tAA と A{}^tA の固有値から行列を復元する / 微分積分:多重極限の非存在と単調増加列による広義重積分

  • 2024年度 夏季(2023年7月実施)(全9問)

    線形代数:パラメータ付き3次行列の固有値と対角化・ジョルダン標準形 / 線形代数:3つの1次因子で零化される行列の構造 / 微分積分:一様連続性の定義と判定

2025年度 夏季(2024年7月実施)の出題内容

全9問

この9問の分野は線形代数2問・代数2問・微分積分・解析2問・位相・幾何1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数多項式空間上の線形写像と表現行列2 つの操作の合成 / 像が V に留まることの重要性あり
第2問線形代数A^4=E を満たす行列の構造行列式による別証 / \det A の値あり
第3問微分積分・解析log(1+x)/x と (1+x)^1/x の連続延長とマクローリン展開ロピタルの定理でもよい / 除去可能特異点あり
第4問微分積分・解析関数列の各点収束と一様収束最高次で見る / 極限関数が連続であることあり
第5問代数極大イデアル・根基イデアル・準素イデアル対応定理による見方 / 可換性と 1 の存在あり
第6問代数7次円分体とガウス和による2次部分体ガロア群 / \zeta の冪の和あり
第7問位相・幾何距離を凹関数で変換して得られる距離E は有界 / 位相が変わらないことあり
第8問—幾何学:ねじれの位置にある2直線を結ぶ直線族と双曲面一意性の理由 / 幾何的な意味あり
第9問—複素解析:留数計算と三角関数の定積分分子の零点 / 無限遠での振る舞いあり

2025年度 夏季(2024年7月実施)の解説には失点しやすい点8件・検算3件が付いています。

前年度(2024年度 春季(2024年2月実施))との違い

大問数
2024年度 春季(2024年2月実施) 9問 → 2025年度 夏季(2024年7月実施) 9問
2024年度 春季(2024年2月実施)の解答例

立教大学の公式過去問

公開年度範囲
2022〜2026年度の夏季・春季(直近は2024〜2026年度)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
英語は外部試験のスコア提出。専門科目の数学のみ問題を掲載している。
院試hubの最終確認
2026-09-05
立教大学の公式過去問PDF