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神戸大 経済学研究科 統計学 2026年度 第Ⅱ期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、統計・計量1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める

密度の確認

∫012x dx=1\int_0^1 2x\,dx=1 なので,これは正しい確率密度関数である。計算の前に1行確かめておくと,係数の取り違えに気づける。fXf_X は Beta(2,1)\mathrm{Beta}(2,1) 分布の密度で,平均 22+1=23\dfrac{2}{2+1}=\dfrac23,分散 2⋅1(2+1)2(2+1+1)=236=118\dfrac{2\cdot1}{(2+1)^{2}(2+1+1)}=\dfrac{2}{36}=\dfrac1{18} と,ベータ分布の公式とも一致する。

設問2 X,YX,Y の同時確率密度関数

三角形上の一様分布

台は頂点 (0,0),(1,0),(1,1)(0,0),(1,0),(1,1) の直角三角形で,面積は 12\dfrac12。密度が定数2なので 2×12=12\times\dfrac12=1 となり積分は1になる。すなわち (X,Y)(X,Y) はこの三角形上の一様分布である。これに気づくと,設問3・設問4を幾何的に確かめられる。

台の書き方

0<y<x0<y<x と 0<x<10<x<1 を合わせて 0<y<x<10<y<x<1 と1本に書く。この不等式を書き落とすと,設問3の積分範囲を間違える。

設問3 YY の周辺確率密度関数と分布関数

検算

∫012(1−y) dy=[2y−y2]01=1\int_0^1 2(1-y)\,dy=\bigl[2y-y^{2}\bigr]_0^1=1 で積分は1,FY(1)=2−1=1F_Y(1)=2-1=1,FY(0)=0F_Y(0)=0 と端点も合う。fYf_Y は右下がりの直線で,YY は小さい値をとりやすい。YY は Beta(1,2)\mathrm{Beta}(1,2) 分布であり,E[Y]=11+2=13E[Y]=\dfrac{1}{1+2}=\dfrac13 である(E[Y]=E[E[Y∣X]]=E[X/2]=13E[Y]=E[E[Y|X]]=E[X/2]=\dfrac13 とも確かめられる)。

設問4 YY の中央値

2解のうち一方を落とす根拠

1+22≈1.7071+\dfrac{\sqrt2}{2}\approx1.707 は台 [0,1][0,1] の外なので不適である。「0<m<10<m<1 より」と一言添えて落とす。

平均との比較

E[Y]=13≈0.333E[Y]=\dfrac13\approx0.333 に対し中央値は 0.2930.293 で,中央値のほうが小さい。密度が右下がりで右に裾を引く形なので,平均が中央値より大きくなる(右に歪んだ分布)。この対比を1行書くと,計算結果の妥当性を自分で確認したことが示せる。

幾何的な確かめ方

(X,Y)(X,Y) が三角形上の一様分布なので,P(Y≤m)P(Y\le m) は三角形のうち y≤my\le m の部分の面積の割合である。y>my>m の部分は頂点 (m,m),(1,m),(1,1)(m,m),(1,m),(1,1) の三角形で面積 (1−m)22\dfrac{(1-m)^{2}}{2},全体は 12\dfrac12 なので P(Y>m)=(1−m)2=12⟹1−m=12, P(Y>m)=(1-m)^{2}=\frac12 \quad\Longrightarrow\quad 1-m=\frac{1}{\sqrt2}, と同じ答えが出る。図で確かめられるので,積分と併せて使うとよい。

解答

E[X]=∫01x⋅2x dx=∫012x2 dx=[2x33]01=23, E[X]=\int_0^1 x\cdot 2x\,dx=\int_0^1 2x^{2}\,dx=\left[\frac{2x^{3}}{3}\right]_0^1=\frac23, E[X2]=∫01x2⋅2x dx=[x42]01=12, E[X^{2}]=\int_0^1 x^{2}\cdot 2x\,dx=\left[\frac{x^{4}}{2}\right]_0^1=\frac12, Var(X)=E[X2]−(E[X])2=12−49=9−818=118. \mathrm{Var}(X)=E[X^{2}]-\bigl(E[X]\bigr)^{2}=\frac12-\frac49=\frac{9-8}{18}=\frac{1}{18}.

条件付き密度の定義 fY∣X(y∣x)=fX,Y(x,y)fX(x)f_{Y|X}(y|x)=\dfrac{f_{X,Y}(x,y)}{f_X(x)} より fX,Y(x,y)=fX(x) fY∣X(y∣x)=2x⋅1x=2(0<y<x<1), f_{X,Y}(x,y)=f_X(x)\,f_{Y|X}(y|x) =2x\cdot\frac1x=2 \qquad(0<y<x<1), それ以外では0である。

周辺密度

yy を固定したとき,xx は y<x<1y<x<1 を動く。 fY(y)=∫y12 dx=2(1−y)(0<y<1), f_Y(y)=\int_y^1 2\,dx=2(1-y) \qquad(0<y<1), それ以外では0。

分布関数

0≤y≤10\le y\le1 では FY(y)=∫0y2(1−t) dt=[2t−t2]0y=2y−y2. F_Y(y)=\int_0^{y}2(1-t)\,dt =\Bigl[2t-t^{2}\Bigr]_0^{y} =2y-y^{2}. まとめると FY(y)={0(y<0)2y−y2(0≤y≤1)1(y>1). F_Y(y)= \begin{cases} 0 & (y<0)\\ 2y-y^{2} & (0\le y\le 1)\\ 1 & (y>1). \end{cases}

中央値 mm は FY(m)=12F_Y(m)=\dfrac12 を満たす。 2m−m2=12⟺m2−2m+12=0⟺m=2±4−22=1±22. 2m-m^{2}=\frac12 \quad\Longleftrightarrow\quad m^{2}-2m+\frac12=0 \quad\Longleftrightarrow\quad m=\frac{2\pm\sqrt{4-2}}{2}=1\pm\frac{\sqrt2}{2}. 0<m<10<m<1 を満たすのは負号の解なので m=1−22=1−12≈0.293. m=1-\frac{\sqrt2}{2}=1-\frac{1}{\sqrt2}\approx0.293 .

最終答

E[X]=23E[X]=\dfrac23, Var(X)=118\mathrm{Var}(X)=\dfrac{1}{18}

fX,Y(x,y)=2f_{X,Y}(x,y)=2(0<y<x<10<y<x<1),それ以外は0

fY(y)=2(1−y)f_Y(y)=2(1-y)(0<y<10<y<1), FY(y)=2y−y2F_Y(y)=2y-y^{2}(0≤y≤10\le y\le1)

m=1−22=1−12≈0.293m=1-\dfrac{\sqrt2}{2}=1-\dfrac{1}{\sqrt2}\approx0.293

第2問 — 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定

分布の意味

p=1−rp=1-r を「成功確率」とみれば,XX は初めて成功するまでの試行回数(成功を含む)である。標準的な幾何分布の公式 E[X]=1pE[X]=\dfrac1p,Var(X)=1−pp2\mathrm{Var}(X)=\dfrac{1-p}{p^{2}} に p=1−rp=1-r を代入すると本文の結果と一致する。公式を覚えている場合の検算に使える。

r=0r=0 の場合

r=0r=0 なら P(X=1)=1P(X=1)=1 で μ=1\mu=1,σ2=0\sigma^{2}=0。式に代入しても同じ値になり,端点でも整合している。

設問2 rr の最尤推定量

不変性で確かめる

設問1より μ=11−r\mu=\dfrac{1}{1-r} すなわち r=1−1μr=1-\dfrac1\mu である。最尤推定量の不変性から,μ\mu の最尤推定量が Xˉ\bar X であれば rr の最尤推定量は 1−1Xˉ1-\dfrac{1}{\bar X} になる。実際に得た答えと一致する。この確認を1行入れると計算違いに気づける。

設問3 H0:μ=5H_0:\mu=5 の両側検定

σ\sigma を帰無仮説の下で評価する理由

問題文が「σ\sigma は(1)の結果を帰無仮説の下で評価して得られる値を用いること」と指定している。この分布では平均と分散が同じパラメータ rr で決まるので,H0H_0 が正しいとすれば σ\sigma も定まる。標本から推定した σ^\hat\sigma を使う流儀もあるが,指示に従って r=0.8r=0.8 を代入する。指示を読み落として Xˉ\bar X から r^=1−1/5.45≈0.8165\hat r=1-1/5.45\approx0.8165 を作り σ≈4.94\sigma\approx4.94 とすると Z≈1.63Z\approx1.63 となって値がずれる。

結論の書き方

「棄却されない」であって「帰無仮説が正しいと証明された」ではない。Xˉ=5.45\bar X=5.45 は μ=5\mu=5 より大きいが,その差はこの標本サイズでは偶然の範囲に収まる,という書き方が正確である。参考までに有意水準10\%(z=1.645z=1.645)なら棄却されるので,判定は水準に依存する。この一言を添えるとよい。

数値の検算

20/320\sqrt{20/320} は 1/16=1/4\sqrt{1/16}=1/4 である。20/320=1/1620/320=1/16 に気づけば電卓なしで 0.250.25 が出る。0.45/0.25=1.80.45/0.25=1.8 も暗算できる。試験では計算を単純な分数に直してから進めると速い。

統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)

この2式の役割

∑wi=0\sum w_i=0 は定数項 α\alpha を消し,∑wixi=1\sum w_ix_i=1 は β\beta の係数を1にする。この2つがそろって初めて β^\hat\beta が β\beta の不偏推定量になる。設問3の条件も,この2式を wi+diw_i+d_i について要求したものにほかならない。

途中式を省かない

∑(xi−xˉ)xi=∑(xi−xˉ)2\sum(x_i-\bar x)x_i=\sum(x_i-\bar x)^{2} の変形は,xˉ\bar x を引いても和が変わらないことを使っている。ここを飛ばすと20点のうち導出分を落とす。

設問2 β^\hat\beta の分散

どの仮定をどこで使うか

均一分散 E[ui2]=σ2E[u_i^{2}]=\sigma^{2} は各項の分散をまとめるために,無相関 E[uiuj]=0E[u_iu_j]=0 は交差項を消すために使う。xix_i が非確率であることは wiw_i を定数として括り出すために使う。答案では「仮定より」と書くだけでなく,どの仮定かを明示すると加点される。

1/Sxx1/S_{xx} という形の意味

SxxS_{xx} は説明変数のばらつきである。xx の散らばりが大きいほど傾きの推定精度が上がる。この解釈を1行添えるとよい。

設問3 β~\tilde\beta が不偏推定量となる条件

「任意の α,β\alpha,\beta について」が効く

不偏性は真のパラメータの値によらず成り立たなければならない。特定の α,β\alpha,\beta でだけ E[β~]=βE[\tilde\beta]=\beta となる条件を書くと誤りになる。恒等式として係数を比較する,という論法を明示する。

設問4 β~\tilde\beta の分散と β^\hat\beta との比較

定理の名前を書く

(1)から(4)までの流れは,ガウス=マルコフ定理の証明そのものである。最後に「以上より β^\hat\beta は最良線形不偏推定量(BLUE)であり,これがガウス=マルコフ定理である」と1文で締めると,設問の意図を理解していることが伝わる。

交差項が消えるところが山場

∑widi=0\sum w_id_i=0 を示すのに設問3の2条件を両方使う。ここを示さずに「交差項は0とする」と書くと大きく減点される。xˉ∑di\bar x\sum d_i の項を落とさないよう,∑dixi\sum d_ix_i と ∑di\sum d_i の両方が必要であることを式の上で見せる。

定理が使っていない仮定

証明のどこでも,誤差項が正規分布に従うことは使っていない。均一分散と無相関だけで成り立つのがガウス=マルコフ定理の要点であり,正規性は tt 検定や FF 検定の分布を導くときに初めて必要になる。この区別を1行添えると理解が示せる。逆に,均一分散が崩れる(不均一分散)場合や誤差が系列相関をもつ場合には,最小二乗推定量はもはや最小分散ではなくなり,一般化最小二乗法が最良になる。

計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(このページ・全3問)

    確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める / 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定 / 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)

  • 2026年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時密度から周辺密度・条件付き密度・独立性・分布関数 / 統計学:標本平均と偏差の無相関性・平均自乗誤差を最小にする分散推定量・両側検定 / 計量経済学:2点・4点を使う回帰係数の推定量の不偏性と分散比較

  • 2025年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散 / 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力 / 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定

  • 2025年度 第Ⅰ期(全3問)

    統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定 / 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間 / 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量

  • 2024年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例 / 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ / 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性

  • 2024年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性 / 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算 / 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響

2026年度 第Ⅱ期の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・統計・計量1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問確率・統計条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める密度の確認 / 三角形上の一様分布あり
第2問—統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定分布の意味 / r=0 の場合あり
第3問統計・計量ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)この2式の役割 / 途中式を省かないあり

2026年度 第Ⅱ期の解説には検算1件が付いています。

前年度(2026年度 第Ⅰ期)との違い

大問数
2026年度 第Ⅰ期 3問 → 2026年度 第Ⅱ期 3問
2026年度 第Ⅰ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF