神戸大 経済学研究科 統計学 2025年度 第Ⅱ期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)
全3問の分野は確率・統計1問、統計・計量1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
最終更新:
第1問 — 確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散
同時確率の表を作る
より この表を1つ書いておけば,設問2以降はすべてここから読み取れる。合計が1になることも同時に確認できる。
設問2 の平均と分散
2値変数の分散の公式
は1か2しかとらないので はベルヌーイ変数(成功確率 )である。分散は平行移動で変わらないから となり,計算と一致する。この確かめは一瞬でできる。
設問3 と の共分散
符号の意味
のとき となる確率は , のとき となる確率は である。 が大きいほど は小さくなりやすいので,共分散が負になるのは自然である。数値を出した後にこの一言を添えると,符号の取り違えを自分で防げる。
相関係数
なので 問われてはいないが, を満たしていることが計算の妥当性の確認になる。
設問4 の平均と分散
符号に注意
差の分散は である。共分散が負なので となり,分散は独立の場合()より大きくなる。「差なのに引く」と機械的に処理して としないよう,共分散の符号を代入した式を1本残す。
直接計算による検算
の実現値は,(確率0.20),(0.30),(0.40),(0.10)である。よって ,,。 公式と一致する。時間があればこの直接計算で確かめておくと確実である。
解答
条件付き確率は, の各値のもとで について足すと1になる。
表の下段より ,。
表から が0でないのは の行だけである。 はベルヌーイ(成功確率 )なので 。
最終答
,
,
,
第2問 — 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力
平均と中央値の位置
,中央値 で中央値のほうが大きい。密度が右上がりなので分布は左に裾を引き,平均が中央値より小さくなる。この向きを確認しておくと計算違いに気づける。
スケール族であること
( は のときの分布に従う)と書けるので,平均は に比例し,分散は に比例する。 で , を求めておけば一般の には比例で移せる。
設問4 棄却限界値と検定力
数値で確かめる
なら ,検定力 。 なら ,検定力 。有意水準を下げると棄却限界値が上がり,検定力は下がる。この単調な関係(第1種の過誤と第2種の過誤のトレードオフ)が式にそのまま現れている。
検定力が0.75を下回らない理由
の下では は 上に分布し, となる確率は である。 である限り棄却確率は 以上になる。標本が1つしかなくてもこれだけの検定力が出るのは, と で台そのものが と と大きく違うためである。 が観測されたら は確実に誤りだと分かる,という極端な構造がある。
失点しやすい点
「棄却域は右側」と指定されているので, で立式する。 としないこと。また検定力は「棄却しない確率」ではなく「棄却する確率」であり,第2種の過誤の確率 の余事象である。定義を1行書いてから式を立てると取り違えない。
第3問 — 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定
制約の課し方を式で示す
30点の配点はここに置かれている。「制約を課して推定する」とだけ書かず, を代入して両辺から を移項するところまで書く。この変形ができれば,制約付きモデルが通常の単回帰として推定できることが分かる。
検定でも可能
制約が1本なので, の標準誤差が得られれば による 検定でもよく, の関係がある。ただし本問は「制約付き回帰モデル・無制約回帰モデル」の語を使うよう指定されているので,残差平方和による 検定で答える。
設問3 検定統計量の値
分数のまま計算する
と,小数を10000倍して整数に直すと暗算できる。電卓が使える試験でも,この形に直しておくと入力ミスに気づける。
自由度を明記する
の値だけでなく自由度 を書く。設問4で臨界値を引くのに必要であり,ここを落とすと次の設問が続かない。
設問4 有意水準1\%での検定
結論の書き方
「収穫一定ではない」までは言えるが,収穫逓増か逓減かは 検定だけでは分からない。両側の検定だからである。どちらかを知るには の推定値の符号(1より大きいか小さいか)を見る必要がある。この留保を1行添えると精度の高い答案になる。
値が大きい理由
に対して なので,制約を課すと残差平方和が3倍以上に増える。制約が現実と大きく食い違っていることを意味し, が臨界値を大きく上回るのは自然である。数値の大小がもつ意味を1文書いておくと,計算だけで終わらない。
前提の確認
この 検定は,誤差項が独立に に従うという正規性の仮定に依存している。問題文にその仮定が明記されているので,答案でも「(2)式の仮定より」と一言触れておくとよい。標本サイズが16と小さいため,大標本近似ではなく厳密な 分布を使う必要がある点も,この仮定が効いている理由である。
年度別の解答例(6年度)
確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める / 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定 / 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)
確率論:同時密度から周辺密度・条件付き密度・独立性・分布関数 / 統計学:標本平均と偏差の無相関性・平均自乗誤差を最小にする分散推定量・両側検定 / 計量経済学:2点・4点を使う回帰係数の推定量の不偏性と分散比較
2025年度 第Ⅱ期(このページ・全3問)
確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散 / 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力 / 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定
統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定 / 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間 / 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量
確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例 / 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ / 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性
確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性 / 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算 / 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響
2025年度 第Ⅱ期の出題内容
全3問
前年度(2025年度 第Ⅰ期)との違い
- 大問数
- 2025年度 第Ⅰ期 3問 → 2025年度 第Ⅱ期 3問
神戸大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 英語の扱い
- TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
- 院試hubの最終確認
- 2026-09-04