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神戸大 経済学研究科 統計学 2025年度 第Ⅱ期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、統計・計量1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散

同時確率の表を作る

P(X=x,Y=y)=P(X=x)P(Y=y∣X=x)P(X=x,Y=y)=P(X=x)P(Y=y|X=x) より Y=1Y=2計X=00.5×0.4=0.200.5×0.6=0.300.5X=10.5×0.8=0.400.5×0.2=0.100.5計0.600.401.0 \begin{array}{c|cc|c} & Y=1 & Y=2 & \text{計}\\\hline X=0 & 0.5\times0.4=0.20 & 0.5\times0.6=0.30 & 0.5\\ X=1 & 0.5\times0.8=0.40 & 0.5\times0.2=0.10 & 0.5\\\hline \text{計} & 0.60 & 0.40 & 1.0 \end{array} この表を1つ書いておけば,設問2以降はすべてここから読み取れる。合計が1になることも同時に確認できる。

設問2 YY の平均と分散

2値変数の分散の公式

YY は1か2しかとらないので Y−1Y-1 はベルヌーイ変数(成功確率 0.40.4)である。分散は平行移動で変わらないから Var(Y)=Var(Y−1)=0.4×0.6=0.24\mathrm{Var}(Y)=\mathrm{Var}(Y-1)=0.4\times0.6=0.24 となり,計算と一致する。この確かめは一瞬でできる。

設問3 XX と YY の共分散

符号の意味

X=0X=0 のとき Y=2Y=2 となる確率は 0.60.6,X=1X=1 のとき Y=2Y=2 となる確率は 0.20.2 である。XX が大きいほど YY は小さくなりやすいので,共分散が負になるのは自然である。数値を出した後にこの一言を添えると,符号の取り違えを自分で防げる。

相関係数

Var(X)=0.5×0.5=0.25\mathrm{Var}(X)=0.5\times0.5=0.25 なので ρ=−0.100.25×0.24=−0.100.06≈−0.408. \rho=\frac{-0.10}{\sqrt{0.25\times0.24}}=\frac{-0.10}{\sqrt{0.06}}\approx-0.408 . 問われてはいないが,∣ρ∣≤1|\rho|\le1 を満たしていることが計算の妥当性の確認になる。

設問4 Z=X−YZ=X-Y の平均と分散

符号に注意

差の分散は Var(X−Y)=Var(X)+Var(Y)−2Cov(X,Y)\mathrm{Var}(X-Y)=\mathrm{Var}(X)+\mathrm{Var}(Y)-2\mathrm{Cov}(X,Y) である。共分散が負なので −2×(−0.10)=+0.20-2\times(-0.10)=+0.20 となり,分散は独立の場合(0.490.49)より大きくなる。「差なのに引く」と機械的に処理して 0.290.29 としないよう,共分散の符号を代入した式を1本残す。

直接計算による検算

Z=X−YZ=X-Y の実現値は,(X,Y)=(0,1)→−1(X,Y)=(0,1)\to-1(確率0.20),(0,2)→−2(0,2)\to-2(0.30),(1,1)→0(1,1)\to0(0.40),(1,2)→−1(1,2)\to-1(0.10)である。よって P(Z=−2)=0.30P(Z=-2)=0.30,P(Z=−1)=0.30P(Z=-1)=0.30,P(Z=0)=0.40P(Z=0)=0.40。 E[Z]=−2(0.30)−1(0.30)+0(0.40)=−0.9, E[Z]=-2(0.30)-1(0.30)+0(0.40)=-0.9, E[Z2]=4(0.30)+1(0.30)=1.5,Var(Z)=1.5−0.81=0.69. E[Z^{2}]=4(0.30)+1(0.30)=1.5,\qquad \mathrm{Var}(Z)=1.5-0.81=0.69 . 公式と一致する。時間があればこの直接計算で確かめておくと確実である。

解答

条件付き確率は,XX の各値のもとで YY について足すと1になる。 P(Y=1∣X=0)+P(Y=2∣X=0)=0.4+a=1⟹a=0.6, P(Y=1|X=0)+P(Y=2|X=0)=0.4+a=1 \quad\Longrightarrow\quad a=0.6, P(Y=1∣X=1)+P(Y=2∣X=1)=0.8+b=1⟹b=0.2. P(Y=1|X=1)+P(Y=2|X=1)=0.8+b=1 \quad\Longrightarrow\quad b=0.2 .

表の下段より P(Y=1)=0.6P(Y=1)=0.6,P(Y=2)=0.4P(Y=2)=0.4。 E[Y]=1×0.6+2×0.4=1.4, E[Y]=1\times0.6+2\times0.4=1.4, E[Y2]=12×0.6+22×0.4=0.6+1.6=2.2, E[Y^{2}]=1^{2}\times0.6+2^{2}\times0.4=0.6+1.6=2.2, Var(Y)=2.2−1.42=2.2−1.96=0.24. \mathrm{Var}(Y)=2.2-1.4^{2}=2.2-1.96=0.24 .

表から XYXY が0でないのは X=1X=1 の行だけである。 E[XY]=1⋅1×0.40+1⋅2×0.10=0.40+0.20=0.60. E[XY]=1\cdot1\times0.40+1\cdot2\times0.10=0.40+0.20=0.60 . XX はベルヌーイ(成功確率 0.50.5)なので E[X]=0.5E[X]=0.5。 Cov(X,Y)=E[XY]−E[X]E[Y]=0.60−0.5×1.4=0.60−0.70=−0.10. \mathrm{Cov}(X,Y)=E[XY]-E[X]E[Y]=0.60-0.5\times1.4=0.60-0.70=-0.10 .

E[Z]=E[X]−E[Y]=0.5−1.4=−0.9. E[Z]=E[X]-E[Y]=0.5-1.4=-0.9 . Var(Z)=Var(X)+Var(Y)−2 Cov(X,Y)=0.25+0.24−2(−0.10)=0.25+0.24+0.20=0.69. \mathrm{Var}(Z)=\mathrm{Var}(X)+\mathrm{Var}(Y)-2\,\mathrm{Cov}(X,Y) =0.25+0.24-2(-0.10) =0.25+0.24+0.20=0.69 .

最終答

a=0.6a=0.6, b=0.2b=0.2

E[Y]=1.4E[Y]=1.4, Var(Y)=0.24\mathrm{Var}(Y)=0.24

Cov(X,Y)=−0.10\mathrm{Cov}(X,Y)=-0.10

E[Z]=−0.9E[Z]=-0.9, Var(Z)=0.69\mathrm{Var}(Z)=0.69

第2問 — 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力

平均と中央値の位置

E[X]=0.667aE[X]=0.667a,中央値 =0.707a=0.707a で中央値のほうが大きい。密度が右上がりなので分布は左に裾を引き,平均が中央値より小さくなる。この向きを確認しておくと計算違いに気づける。

スケール族であること

X=aUX=aU(UU は a=1a=1 のときの分布に従う)と書けるので,平均は aa に比例し,分散は a2a^{2} に比例する。a=1a=1 で E=2/3E=2/3,Var=1/18\mathrm{Var}=1/18 を求めておけば一般の aa には比例で移せる。

設問4 棄却限界値と検定力

数値で確かめる

α=0.05\alpha=0.05 なら c=0.95≈0.9747c=\sqrt{0.95}\approx0.9747,検定力 =3.054=0.7625=\dfrac{3.05}{4}=0.7625。α=0.01\alpha=0.01 なら c=0.99≈0.995c=\sqrt{0.99}\approx0.995,検定力 =0.7525=0.7525。有意水準を下げると棄却限界値が上がり,検定力は下がる。この単調な関係(第1種の過誤と第2種の過誤のトレードオフ)が式にそのまま現れている。

検定力が0.75を下回らない理由

a=2a=2 の下では XX は [0,2][0,2] 上に分布し,X>1X>1 となる確率は 1−14=0.751-\dfrac{1}{4}=0.75 である。c≤1c\le1 である限り棄却確率は 0.750.75 以上になる。標本が1つしかなくてもこれだけの検定力が出るのは,H0H_0 と H1H_1 で台そのものが [0,1][0,1] と [0,2][0,2] と大きく違うためである。X>1X>1 が観測されたら H0H_0 は確実に誤りだと分かる,という極端な構造がある。

失点しやすい点

「棄却域は右側」と指定されているので,P(X>c)P(X>c) で立式する。P(X<c)P(X<c) としないこと。また検定力は「棄却しない確率」ではなく「棄却する確率」であり,第2種の過誤の確率 β=1−α4\beta=\dfrac{1-\alpha}{4} の余事象である。定義を1行書いてから式を立てると取り違えない。

統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定

制約の課し方を式で示す

30点の配点はここに置かれている。「制約を課して推定する」とだけ書かず,β2=1−β1\beta_2=1-\beta_1 を代入して両辺から lKilK_i を移項するところまで書く。この変形ができれば,制約付きモデルが通常の単回帰として推定できることが分かる。

tt 検定でも可能

制約が1本なので,β^1+β^2\hat\beta_1+\hat\beta_2 の標準誤差が得られれば t=β^1+β^2−1se(β^1+β^2) t=\frac{\hat\beta_1+\hat\beta_2-1}{\mathrm{se}(\hat\beta_1+\hat\beta_2)} による tt 検定でもよく,F=t2F=t^{2} の関係がある。ただし本問は「制約付き回帰モデル・無制約回帰モデル」の語を使うよう指定されているので,残差平方和による FF 検定で答える。

設問3 検定統計量の値

分数のまま計算する

0.0014×130.0006=14×136=1826=30.33…\dfrac{0.0014\times13}{0.0006}=\dfrac{14\times13}{6}=\dfrac{182}{6}=30.33\ldots と,小数を10000倍して整数に直すと暗算できる。電卓が使える試験でも,この形に直しておくと入力ミスに気づける。

自由度を明記する

FF の値だけでなく自由度 (q, n−k)=(1,13)(q,\ n-k)=(1,13) を書く。設問4で臨界値を引くのに必要であり,ここを落とすと次の設問が続かない。

設問4 有意水準1\%での検定

結論の書き方

「収穫一定ではない」までは言えるが,収穫逓増か逓減かは FF 検定だけでは分からない。両側の検定だからである。どちらかを知るには β^1+β^2\hat\beta_1+\hat\beta_2 の推定値の符号(1より大きいか小さいか)を見る必要がある。この留保を1行添えると精度の高い答案になる。

FF 値が大きい理由

SSRR=0.002SSR_R=0.002 に対して SSRU=0.0006SSR_U=0.0006 なので,制約を課すと残差平方和が3倍以上に増える。制約が現実と大きく食い違っていることを意味し,FF が臨界値を大きく上回るのは自然である。数値の大小がもつ意味を1文書いておくと,計算だけで終わらない。

前提の確認

この FF 検定は,誤差項が独立に N(0,σ2)N(0,\sigma^{2}) に従うという正規性の仮定に依存している。問題文にその仮定が明記されているので,答案でも「(2)式の仮定より」と一言触れておくとよい。標本サイズが16と小さいため,大標本近似ではなく厳密な FF 分布を使う必要がある点も,この仮定が効いている理由である。

計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める / 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定 / 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)

  • 2026年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時密度から周辺密度・条件付き密度・独立性・分布関数 / 統計学:標本平均と偏差の無相関性・平均自乗誤差を最小にする分散推定量・両側検定 / 計量経済学:2点・4点を使う回帰係数の推定量の不偏性と分散比較

  • 2025年度 第Ⅱ期(このページ・全3問)

    確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散 / 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力 / 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定

  • 2025年度 第Ⅰ期(全3問)

    統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定 / 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間 / 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量

  • 2024年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例 / 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ / 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性

  • 2024年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性 / 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算 / 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響

2025年度 第Ⅱ期の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・統計・計量1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問確率・統計離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散同時確率の表を作る / 2値変数の分散の公式あり
第2問—統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力平均と中央値の位置 / スケール族であることあり
第3問統計・計量対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定制約の課し方を式で示す / t 検定でも可能あり

2025年度 第Ⅱ期の解説には失点しやすい点1件が付いています。

前年度(2025年度 第Ⅰ期)との違い

大問数
2025年度 第Ⅰ期 3問 → 2025年度 第Ⅱ期 3問
2025年度 第Ⅰ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF