院試hub

神戸大 経済学研究科 統計学 2025年度 第Ⅰ期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計2問、統計・計量1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定

X2=XX^{2}=X を使う

XX が0か1しかとらないので X2=XX^{2}=X であり,E[X2]=E[X]=pE[X^{2}]=E[X]=p が直ちに分かる。この一手を書くと計算が1行で済む。分散は p=12p=\tfrac12 で最大値 14\tfrac14 をとる。

設問2 n=4n=4 のときの P(Y=2)P(Y=2)

分散を帰無仮説の下で評価する

母比率の検定では,標準誤差に pp が入る。H0H_0 の下で p=12p=\tfrac12 を代入するのが標準的な手続きであり,このとき sd(Xˉ)=12n=0.05\mathrm{sd}(\bar X)=\dfrac{1}{2\sqrt{n}}=0.05 ときれいな値になる。標本比率 p^=0.45\hat p=0.45 を使って 0.45×0.55/100=0.0497\sqrt{0.45\times0.55/100}=0.0497 とする流儀(ワルド型)もあり,Z=−1.005Z=-1.005 とほぼ同じ結論になるが,どちらを使ったかを明記する。

結論の書き方

Xˉ=0.45\bar X=0.45 は 0.50.5 より小さいが,100回の試行では45回程度の差は偶然の範囲である。「pp が 12\tfrac12 と異なるとはいえない」と書き,「p=12p=\tfrac12 が正しいと証明された」とは書かない。参考までに,同じ比率で n=1000n=1000 なら Z=−3.16Z=-3.16 となり棄却される。標本サイズが検定の結論を左右することに触れると理解が示せる。

解答

E[Xi]=1⋅p+0⋅(1−p)=p, E[X_i]=1\cdot p+0\cdot(1-p)=p, E[Xi2]=12⋅p+02⋅(1−p)=p, E[X_i^{2}]=1^{2}\cdot p+0^{2}\cdot(1-p)=p, Var(Xi)=E[Xi2]−(E[Xi])2=p−p2=p(1−p). \mathrm{Var}(X_i)=E[X_i^{2}]-\bigl(E[X_i]\bigr)^{2}=p-p^{2}=p(1-p).

Y=∑i=14XiY=\sum_{i=1}^{4}X_i は二項分布 Bin(4,p)\mathrm{Bin}(4,p) に従う。 P(Y=2)=(42)p2(1−p)4−2=6p2(1−p)2. P(Y=2)=\binom{4}{2}p^{2}(1-p)^{4-2}=6p^{2}(1-p)^{2}.

設問3 Xˉ\bar X の平均と分散

XiX_i は独立同分布なので E[Xˉ]=1n∑i=1nE[Xi]=p, E[\bar X]=\frac1n\sum_{i=1}^{n}E[X_i]=p, Var(Xˉ)=1n2∑i=1nVar(Xi)=p(1−p)n. \mathrm{Var}(\bar X)=\frac{1}{n^{2}}\sum_{i=1}^{n}\mathrm{Var}(X_i)=\frac{p(1-p)}{n}.

設問4 H0:p=12H_0:p=\tfrac12 の両側検定

帰無仮説の下での分布

n=100n=100 は十分大きいので中心極限定理により Xˉ\bar X は正規分布で近似できる。H0:p=12H_0:p=\tfrac12 の下では E[Xˉ]=12,Var(Xˉ)=12⋅12100=0.25100=0.0025, E[\bar X]=\frac12, \qquad \mathrm{Var}(\bar X)=\frac{\frac12\cdot\frac12}{100}=\frac{0.25}{100}=0.0025, sd(Xˉ)=0.0025=0.05. \mathrm{sd}(\bar X)=\sqrt{0.0025}=0.05 .

検定統計量と判定

Z=Xˉ−0.50.05=0.45−0.50.05=−0.050.05=−1. Z=\frac{\bar X-0.5}{0.05}=\frac{0.45-0.5}{0.05}=\frac{-0.05}{0.05}=-1 . 有意水準 0.050.05 の両側検定なので棄却域は ∣Z∣>1.96|Z|>1.96。∣Z∣=1<1.96|Z|=1<1.96 なので棄却域に入らない。pp 値は 2(1−Φ(1))=2(1−0.8413)=0.3174. 2\bigl(1-\Phi(1)\bigr)=2(1-0.8413)=0.3174 .

最終答

E[Xi]=pE[X_i]=p, Var(Xi)=p(1−p)\mathrm{Var}(X_i)=p(1-p)

P(Y=2)=6p2(1−p)2P(Y=2)=6p^{2}(1-p)^{2}

E[Xˉ]=pE[\bar X]=p, Var(Xˉ)=p(1−p)n\mathrm{Var}(\bar X)=\dfrac{p(1-p)}{n}

Z=−1Z=-1。∣Z∣=1<1.96|Z|=1<1.96 なので有意水準5\%で H0:p=12H_0:p=\tfrac12 は棄却されない(pp 値 ≈0.32\approx0.32)

第2問 — 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間

片側の確率を先に決める

両側で 0.900.90 なので,外側に残る確率は 0.100.10,片側では 0.050.05 である。使うのは上側5\%点 1.6451.645 であって,上側10\%点 1.28161.2816 でも上側2.5\%点 1.961.96 でもない。この配分を1行書いてから表を引く。

設問3 Z=∣X−μ∣Z=|X-\mu| の確率密度関数

半正規分布

これは半正規分布(half-normal distribution)と呼ばれ,正規分布の密度を正の側だけに折り返して2倍したものである。∫0∞fZ(z) dz=2×12=1\int_0^{\infty}f_Z(z)\,dz=2\times\dfrac12=1 で密度の条件を満たす。参考までに E[Z]=σ2/π≈0.798σE[Z]=\sigma\sqrt{2/\pi}\approx0.798\sigma である。

絶対値の変換の一般則

Y=∣X∣Y=|X| のように1対1でない変換では,密度を直接変換する公式は使えない。分布関数を経由して微分するのが確実である。対称な分布であれば「2倍して正の側だけ」となる,という結論を覚えておくとよい。

設問4 σ2\sigma^{2} の信頼係数 0.900.90 の信頼区間

分母に入る点の対応を間違えない

信頼区間の下限には大きい臨界値(上側5\%点 25.0025.00)が入り,上限には小さい臨界値(上側95\%点 7.267.26)が入る。不等式を σ2\sigma^{2} について解く過程を1行書いておけば,この入れ替わりを自分で確認できる。逆にすると [15.00,51.65][15.00,51.65] が [51.65,15.00][51.65,15.00] となって意味をなさない。

区間が非対称になる

点推定値 s2=25s^{2}=25 に対して,区間は [15.00,51.65][15.00,51.65] と右に大きく伸びる。カイ2乗分布が右に歪んでいるためであり,平均の信頼区間のように点推定値を中心に対称にはならない。この非対称性に触れると,形の妥当性を理解していることが示せる。

xˉ=7\bar x=7 は使わない

母分散の区間推定に標本平均の値は必要ない(自由度が1つ減ることには使われている)。与えられた数値のうち何を使い何を使わないかを見極めるのも出題意図のうちである。

統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量

定数項がある場合との違い

定数項があれば β^=∑(xi−xˉ)(yi−yˉ)∑(xi−xˉ)2\hat\beta=\dfrac{\sum(x_i-\bar x)(y_i-\bar y)}{\sum(x_i-\bar x)^{2}} と平均からの偏差で書かれるが,原点を通る回帰では偏差をとらず生の値のまま和をとる。xˉ\bar x を引かないことを明示すると,モデルの違いを理解していることが伝わる。

設問2 β^\hat\beta の分散

どちらの分散が小さいか

ガウス=マルコフ定理より,線形不偏推定量の中で最小二乗推定量が最小分散をもつ。したがって σ2∑ixi2≤σ2n2∑i1xi2, \frac{\sigma^{2}}{\sum_i x_i^{2}}\le\frac{\sigma^{2}}{n^{2}}\sum_i\frac{1}{x_i^{2}}, すなわち n2≤(∑ixi2)(∑i1xi2) n^{2}\le\left(\sum_i x_i^{2}\right)\left(\sum_i\frac{1}{x_i^{2}}\right) が成り立つ。これはコーシー=シュワルツの不等式(ai=∣xi∣a_i=|x_i|,bi=1/∣xi∣b_i=1/|x_i| とすると (∑aibi)2≤(∑ai2)(∑bi2)\left(\sum a_ib_i\right)^{2}\le\left(\sum a_i^{2}\right)\left(\sum b_i^{2}\right) で左辺が n2n^{2})そのものである。等号が成り立つのは ∣xi∣|x_i| がすべて等しいときに限る。問われてはいないが,この確認を書くと理解の深さが示せる。

β~\tilde\beta が劣る理由

β~\tilde\beta は各観測値から得られる比 yi/xiy_i/x_i を単純平均している。∣xi∣|x_i| が小さい観測は ui/xiu_i/x_i の分散が大きく信頼できないのに,同じ重みで扱ってしまう。最小二乗推定量は β^=∑ixi2∑jxj2⋅yixi\hat\beta=\sum_i\dfrac{x_i^{2}}{\sum_j x_j^{2}}\cdot\dfrac{y_i}{x_i} と書き直せるので,xi2x_i^{2} に比例した重みを付けた加重平均になっている。この対比が,2つの推定量の優劣の本質である。

数値例

n=2n=2,x1=1x_1=1,x2=3x_2=3 とすると Var(β^)=σ210=0.1σ2\mathrm{Var}(\hat\beta)=\dfrac{\sigma^{2}}{10}=0.1\sigma^{2},Var(β~)=σ24(1+19)=10σ236≈0.278σ2\mathrm{Var}(\tilde\beta)=\dfrac{\sigma^{2}}{4}\left(1+\dfrac19\right)=\dfrac{10\sigma^{2}}{36}\approx0.278\sigma^{2} となり,確かに β^\hat\beta のほうが小さい。答案に1つ数値例を添えると,不等式の向きを取り違えていないことを示せる。

計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める / 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定 / 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)

  • 2026年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時密度から周辺密度・条件付き密度・独立性・分布関数 / 統計学:標本平均と偏差の無相関性・平均自乗誤差を最小にする分散推定量・両側検定 / 計量経済学:2点・4点を使う回帰係数の推定量の不偏性と分散比較

  • 2025年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散 / 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力 / 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定

  • 2025年度 第Ⅰ期(このページ・全3問)

    統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定 / 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間 / 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量

  • 2024年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例 / 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ / 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性

  • 2024年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性 / 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算 / 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響

2025年度 第Ⅰ期の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計2問・統計・計量1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問確率・統計ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定X^2=X を使う / 分散を帰無仮説の下で評価するあり
第2問確率・統計正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間片側の確率を先に決める / 半正規分布あり
第3問統計・計量原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量定数項がある場合との違い / どちらの分散が小さいかあり

前年度(2024年度 第Ⅱ期)との違い

大問数
2024年度 第Ⅱ期 3問 → 2025年度 第Ⅰ期 3問
2024年度 第Ⅱ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF