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神戸大 経済学研究科 統計学 2024年度 第Ⅱ期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、統計・計量1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例

同分布であることだけを使う

Z1Z_1 と Z2Z_2 が独立であることは使っていない。同じ分布に従っていれば E(Z12)=E(Z22)E(Z_1^{2})=E(Z_2^{2}) が言える。式を展開して2乗の差にする一手だけで答えが出る。

設問3 Cov(X,Y)\mathrm{Cov}(X,Y)

一般の形でも確かめられる

Cov(Z1+Z2, Z1−Z2)=Var(Z1)−Var(Z2)\mathrm{Cov}(Z_1+Z_2,\ Z_1-Z_2)=\mathrm{Var}(Z_1)-\mathrm{Var}(Z_2) であり,2つの分散が等しいので0になる。同じ分散をもつ2変数の和と差は常に無相関である,という一般的な事実の特別な場合になっている。

設問4 XX と YY は独立か

無相関と独立の関係

独立ならば無相関であるが,逆は一般に成り立たない。共分散は線形の関係だけを測る指標であり,この例のように「偶奇が一致する」といった非線形の依存関係は捉えられない。例外は同時正規分布の場合で,そのときに限り無相関と独立が同値になる。この対比を1文書くと,15点の設問として十分な答案になる。

反例の選び方

反例は,同時確率が0になる組を選ぶと最も簡単である。XX の端の値(2または12)は実現の仕方が1通りしかないので YY が一意に決まり,矛盾を作りやすい。「X=2X=2 ならば Y=0Y=0 に限る」という一言だけでも独立でないことは示せる。

解答

Z1,Z2Z_1,Z_2 はともに {1,…,6}\{1,\dots,6\} 上の一様分布なので E(Zi)=1+2+3+4+5+66=216=72=3.5. E(Z_i)=\frac{1+2+3+4+5+6}{6}=\frac{21}{6}=\frac72=3.5 . 期待値の線形性より E(X)=E(Z1)+E(Z2)=7,E(Y)=E(Z1)−E(Z2)=0. E(X)=E(Z_1)+E(Z_2)=7, \qquad E(Y)=E(Z_1)-E(Z_2)=0 .

設問2 E(XY)E(XY)

XY=(Z1+Z2)(Z1−Z2)=Z12−Z22 XY=(Z_1+Z_2)(Z_1-Z_2)=Z_1^{2}-Z_2^{2} なので E(XY)=E(Z12)−E(Z22)=0. E(XY)=E(Z_1^{2})-E(Z_2^{2})=0 . Z1Z_1 と Z2Z_2 は同じ分布に従うので E(Z12)=E(Z22)E(Z_1^{2})=E(Z_2^{2}) であり,差は0になる。 (参考: E(Zi2)=1+4+9+16+25+366=916E(Z_i^{2})=\dfrac{1+4+9+16+25+36}{6}=\dfrac{91}{6}。)

Cov(X,Y)=E(XY)−E(X)E(Y)=0−7×0=0. \mathrm{Cov}(X,Y)=E(XY)-E(X)E(Y)=0-7\times0=0 .

結論

独立ではない。

反例による証明

独立であれば,任意の x,yx,y について P(X=x, Y=y)=P(X=x)P(Y=y)P(X=x,\ Y=y)=P(X=x)P(Y=y) が成り立たなければならない。x=2x=2,y=1y=1 をとる。X=2X=2 となるのは (Z1,Z2)=(1,1)(Z_1,Z_2)=(1,1) のときだけなので P(X=2)=136, P(X=2)=\frac{1}{36}, このとき Y=0Y=0 なので P(X=2, Y=1)=0. P(X=2,\ Y=1)=0 . 一方 Y=1Y=1 となるのは (2,1),(3,2),(4,3),(5,4),(6,5)(2,1),(3,2),(4,3),(5,4),(6,5) の5通りなので P(Y=1)=536,P(X=2)P(Y=1)=136⋅536=51296≠0. P(Y=1)=\frac{5}{36}, \qquad P(X=2)P(Y=1)=\frac{1}{36}\cdot\frac{5}{36}=\frac{5}{1296}\neq0 . よって P(X=2,Y=1)≠P(X=2)P(Y=1)P(X=2,Y=1)\neq P(X=2)P(Y=1) となり,独立ではない。

構造的な理由

X+Y=2Z1X+Y=2Z_1 は必ず偶数なので,XX と YY の偶奇は常に一致する。XX が偶数なら YY も偶数,XX が奇数なら YY も奇数である。XX の値を知れば YY がとりうる値の範囲が絞られるので,両者は独立ではありえない。

最終答

E(X)=7E(X)=7, E(Y)=0E(Y)=0

E(XY)=0E(XY)=0

Cov(X,Y)=0\mathrm{Cov}(X,Y)=0(XX と YY は無相関)

独立ではない。Cov(X,Y)=0\mathrm{Cov}(X,Y)=0 で無相関ではあるが,たとえば P(X=2,Y=1)=0≠P(X=2)P(Y=1)P(X=2,Y=1)=0\neq P(X=2)P(Y=1) であり,構造的には X+Y=2Z1X+Y=2Z_1 が偶数なので XX と YY の偶奇が常に一致する

第2問 — 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ

片側と両側を取り違えない

H1:μ>0H_1:\mu>0 なので上側だけに棄却域を置く。両側の 1.961.96 を使うと誤りである。片側5\%の 1.6451.645 と両側5\%の 1.961.96 は混同しやすいので,仮説の形を確認してから表を引く。

設問3 n=16n=16,Xˉn=0.39\bar X_n=0.39 のときの95\%信頼区間

設問2との関係

T16=16×0.39=1.56<1.645T_{16}=\sqrt{16}\times0.39=1.56<1.645 なので,設問2の片側検定では H0:μ=0H_0:\mu=0 は棄却されない。信頼区間が0を含むこととも整合する(ただし信頼区間は両側,検定は片側なので,一般には両者の判断が一致するとは限らない)。この対応を1行添えると理解が示せる。

設問4 下限が正となる最小の標本サイズ

境界の n=25n=25 を必ず確かめる

25.25725.257 という値が出たとき,n=26n=26 と答えるのは正しいが,n=25n=25 で条件を満たさないことを1行確かめておくと確実である。1.96/0.391.96/0.39 が 55 をわずかに超えるかどうかが分かれ目で,1.96/5=0.392>0.391.96/5=0.392>0.39 という比較で判定できる。

必要標本サイズの考え方

「信頼区間の下限が正」とは,両側95\%の水準で μ>0\mu>0 と言えるということであり,実質的に必要な標本サイズの設計問題である。一般に,幅を半分にするには標本サイズを4倍にする必要がある(1/n1/\sqrt n に比例するため)。この性質を1文添えると,計算の意味づけになる。

統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性

存在条件を書いておく

S11S22−S122≠0S_{11}S_{22}-S_{12}^{2}\neq0 という条件を明記しておくと,設問5・6でこの条件が破れる場合を扱う準備になる。この行列式は,2つの説明変数の相関係数を r12r_{12} とすると S11S22(1−r122)S_{11}S_{22}(1-r_{12}^{2}) と書けるので,∣r12∣=1|r_{12}|=1 のとき0になる。

設問5 x2i=2x1ix_{2i}=2x_{1i} の場合の正規方程式

「完全でない」多重共線性との区別

x1x_1 と x2x_2 の相関が1ではないが非常に高い場合は,推定自体は可能だが行列式 S11S22(1−r122)S_{11}S_{22}(1-r_{12}^{2}) が0に近くなり,係数の分散が大きくなる。個々の係数が有意にならない一方でモデル全体の R2R^{2} は高い,という症状が出る。本問は相関が厳密に1の極端な場合であり,推定そのものができない。この区別を1文添えると10点の設問として十分である。

対処法

完全な多重共線性は,同じ情報をもつ変数を重複して入れたときに起きる。ダミー変数をすべてのカテゴリについて入れつつ定数項も置く「ダミー変数の罠」が典型例である。対処は,片方の変数を落とすか,制約を課して識別することである。

計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める / 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定 / 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)

  • 2026年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時密度から周辺密度・条件付き密度・独立性・分布関数 / 統計学:標本平均と偏差の無相関性・平均自乗誤差を最小にする分散推定量・両側検定 / 計量経済学:2点・4点を使う回帰係数の推定量の不偏性と分散比較

  • 2025年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散 / 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力 / 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定

  • 2025年度 第Ⅰ期(全3問)

    統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定 / 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間 / 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量

  • 2024年度 第Ⅱ期(このページ・全3問)

    確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例 / 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ / 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性

  • 2024年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性 / 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算 / 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響

2024年度 第Ⅱ期の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・統計・計量1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問確率・統計サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例同分布であることだけを使う / 一般の形でも確かめられるあり
第2問—統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ片側と両側を取り違えない / 設問2との関係あり
第3問統計・計量重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性存在条件を書いておく / 「完全でない」多重共線性との区別あり

前年度(2024年度 第Ⅰ期)との違い

大問数
2024年度 第Ⅰ期 3問 → 2024年度 第Ⅱ期 3問
2024年度 第Ⅰ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF