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神戸大 経済学研究科 統計学 2024年度 第Ⅰ期 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は確率・統計1問、統計・計量1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性

a,ba,b を使わずに答えられる

どちらも第1列だけで決まるので,a,ba,b の値が分からなくても計算できる。設問3で a,ba,b が定まるが,この設問はそれに依存しないことを確認しておくと,無用な場合分けを避けられる。

設問2 YY の平均と分散

a,ba,b が個別に定まらなくても答えが出る

YY の周辺分布に必要なのは a+ba+b だけであり,これは全確率が1という条件から 0.60.6 と定まる。「a,ba,b が未知だから求まらない」と書かないこと。E[Y2]=0.6E[Y^{2}]=0.6(Y2=YY^{2}=Y)から Var=0.6−0.36=0.24\mathrm{Var}=0.6-0.36=0.24 と計算しても同じである。

設問3 XX と YY が独立になる a,ba,b

1つのセルで決まる理由

2×22\times2 の表では,周辺分布が定まると自由度は1しかない。したがって1つのセルについて独立性の等式を課せば,残りは自動的に決まる。ただし答案では,残りのセルでも成り立つことを1行確認しておくと減点されない。

別の解き方

独立性は P(X=1∣Y=0)=P(X=1∣Y=1)P(X=1|Y=0)=P(X=1|Y=1) と同値でもある。設問1で P(X=1∣Y=0)=0.75P(X=1|Y=0)=0.75 が求まっているので,P(X=1∣Y=1)=ba+b=b0.6=0.75P(X=1|Y=1)=\dfrac{b}{a+b}=\dfrac{b}{0.6}=0.75 から b=0.45b=0.45,a=0.15a=0.15 と直ちに出る。設問1の結果を使えるこの経路のほうが速い。

解答

P(X>Y)P(X>Y)

X,YX,Y はともに0か1しかとらないので,X>YX>Y となるのは (X,Y)=(1,0)(X,Y)=(1,0) のときだけである。 P(X>Y)=P(X=1,Y=0)=0.3. P(X>Y)=P(X=1,Y=0)=0.3 .

P(X=1∣Y=0)P(X=1|Y=0)

Y=0Y=0 となる確率は表の第1列の和で P(Y=0)=0.1+0.3=0.4, P(Y=0)=0.1+0.3=0.4 , 条件付き確率の定義より P(X=1∣Y=0)=P(X=1,Y=0)P(Y=0)=0.30.4=0.75. P(X=1|Y=0)=\frac{P(X=1,Y=0)}{P(Y=0)}=\frac{0.3}{0.4}=0.75 .

a+b=1−(0.1+0.3)=0.6a+b=1-(0.1+0.3)=0.6 なので,YY の周辺分布は P(Y=0)=0.4,P(Y=1)=a+b=0.6. P(Y=0)=0.4,\qquad P(Y=1)=a+b=0.6 . YY はベルヌーイ変数(成功確率 0.60.6)なので E[Y]=0×0.4+1×0.6=0.6, E[Y]=0\times0.4+1\times0.6=0.6, Var(Y)=0.6×(1−0.6)=0.6×0.4=0.24. \mathrm{Var}(Y)=0.6\times(1-0.6)=0.6\times0.4=0.24 .

周辺分布

P(X=0)=0.1+a,P(X=1)=0.3+b, P(X=0)=0.1+a,\qquad P(X=1)=0.3+b, P(Y=0)=0.4,P(Y=1)=0.6. P(Y=0)=0.4,\qquad P(Y=1)=0.6 .

独立性の条件

独立であれば,すべてのセルで同時確率が周辺確率の積に等しい。左上のセルで P(X=0,Y=0)=P(X=0)P(Y=0)⟹0.1=(0.1+a)×0.4. P(X=0,Y=0)=P(X=0)P(Y=0) \quad\Longrightarrow\quad 0.1=(0.1+a)\times0.4 . これを解くと 0.1+a=0.10.4=0.25⟹a=0.15, 0.1+a=\frac{0.1}{0.4}=0.25 \quad\Longrightarrow\quad a=0.15 , a+b=0.6a+b=0.6 より b=0.6−0.15=0.45. b=0.6-0.15=0.45 .

残りのセルの確認

P(X=0)=0.25P(X=0)=0.25,P(X=1)=0.75P(X=1)=0.75 となるので P(X=0)P(Y=1)=0.25×0.6=0.15=a ✓, P(X=0)P(Y=1)=0.25\times0.6=0.15=a\ \checkmark, P(X=1)P(Y=0)=0.75×0.4=0.30 ✓, P(X=1)P(Y=0)=0.75\times0.4=0.30\ \checkmark, P(X=1)P(Y=1)=0.75×0.6=0.45=b ✓. P(X=1)P(Y=1)=0.75\times0.6=0.45=b\ \checkmark . すべてのセルで一致するので,a=0.15a=0.15,b=0.45b=0.45 のとき独立である。

最終答

P(X>Y)=0.3P(X>Y)=0.3, P(X=1∣Y=0)=0.75P(X=1|Y=0)=0.75

E[Y]=0.6E[Y]=0.6, Var(Y)=0.24\mathrm{Var}(Y)=0.24

a=0.15a=0.15, b=0.45b=0.45

第2問 — 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算

上側か下側かを取り違えない

問われているのは P(W<a)=0.10P(W<a)=0.10 であって P(W>a)=0.10P(W>a)=0.10 ではない。後者なら a=χ0.102(2)=4.605a=\chi^{2}_{0.10}(2)=4.605 となり,まったく違う値になる。不等号の向きを確認してから表を引く。

設問3 tt 分布の上側5\%点

tt 分布の構成を書く

分子が標準正規,分母がカイ2乗を自由度で割った平方根,かつ両者が独立,という3条件を明示する。この確認を書かずに「tt 分布だから」と進めると,15点のうち構成の説明分を落とす。分母の 22 で割っているのが自由度による割り算にあたる点も指摘しておく。

自由度2の裾の厚さ

標準正規なら上側5\%点は 1.6451.645 だが,自由度2の tt 分布では 2.9202.920 と大きい。自由度が小さいほど裾が厚く,臨界値が大きくなる。値の妥当性の確認になる。

設問4 検定力

観測値 xˉ=3.5\bar x=3.5 は検定力に使わない

検定力は「対立仮説が正しいときに棄却する確率」であり,実際に観測された値には依存しない。xˉ=3.5\bar x=3.5 は 3.6453.645 を下回るので,この標本では帰無仮説は棄却されないが,それは検定力とは別の話である。与えられた数値のうち何が必要かを見極めることも出題意図に含まれる。

検定力が低い理由

H0H_0 と H1H_1 の距離は 11 で,標準誤差も 11 である。差が標準誤差1つ分しかないので,0.260.26 という低い検定力しか得られない。標本サイズを n=16n=16 にすれば標準誤差は 0.50.5 になり,棄却限界値は 2.82252.8225,検定力は P(Z>−0.355)≈0.64P(Z>-0.355)\approx0.64 まで上がる。標本サイズと検定力の関係に触れると,20点の設問として厚みが出る。

片側にする根拠

H1:μ=3H_1:\mu=3 は μ=2\mu=2 より大きい特定の値なので,棄却域は右側だけに置く。両側の 1.961.96 を使うと棄却限界値が 3.923.92 となり,検定力は P(Z>0.92)≈0.18P(Z>0.92)\approx0.18 と下がる。仮説の形から片側・両側を判断する。

統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響

バイアスの符号

Xi>0X_i>0 が多い(∑Xi>0\sum X_i>0)データでは,バイアスの符号は β0\beta_0 の符号と一致する。真の切片が正なら傾きを過大に推定する。原点を通ることを強制された直線が,切片の分を傾きで吸収しようとするためである。図で説明を添えると分かりやすい。

欠落変数バイアスの一種

定数項も1つの説明変数(すべての観測で値が1の変数)と見なせる。したがってこれは,真のモデルに含まれる説明変数を落としたことによる欠落変数バイアスの特別な場合である。一般に,落とした変数の係数と,落とした変数と残した変数の関係の強さの積がバイアスになる。

設問3 α1\alpha_1 の最小二乗推定量

2つの誤りの非対称性

必要な変数(定数項)を落とすとバイアスが生じるが,不要な変数(定数項)を入れてもバイアスは生じない。前者は「過少定式化」,後者は「過剰定式化」と呼ばれる。この非対称性が第3問全体の主題である。ただし過剰定式化が無害なわけではなく,推定量の分散は大きくなる。実際 Var(α^1)=σ2∑i(Xi−Xˉ)2 ≥ σ2∑iXi2 \mathrm{Var}(\hat\alpha_1)=\frac{\sigma^{2}}{\sum_i(X_i-\bar X)^{2}} \ \ge\ \frac{\sigma^{2}}{\sum_i X_i^{2}} であり(∑iXi2=SXX+nXˉ2≥SXX\sum_i X_i^{2}=S_{XX}+n\bar X^{2}\ge S_{XX}),真のモデルどおりに定数項なしで推定したときの分散より大きい。効率が落ちるという形で代償を払う。

実務上の含意

バイアスと分散のどちらを重く見るかで,定式化の方針が変わる。バイアスは標本を増やしても消えないが,分散は標本を増やせば小さくなる。したがって迷ったときは変数を入れておくほうが安全とされる。この一言を添えると,計算問題を実際の分析につなげた答案になる。

答案の書き方

(2)と(4)はどちらも「真のモデルを代入して期待値をとる」という同じ手順である。違うのは,どちらのモデルに定数項があるかだけなので,代入した直後の式を丁寧に整理することが得点につながる。特に(4)では ∑i(Xi−Xˉ)Xi=SXX\sum_i(X_i-\bar X)X_i=S_{XX} の変形が要になる。

計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:条件付き密度から同時分布・周辺分布・中央値を求める / 統計学:幾何分布の平均・分散,最尤推定量,大標本の両側検定 / 計量経済学:ガウス=マルコフ定理(最小二乗推定量が最良線形不偏推定量であること)

  • 2026年度 第Ⅰ期(全3問)

    確率論:同時密度から周辺密度・条件付き密度・独立性・分布関数 / 統計学:標本平均と偏差の無相関性・平均自乗誤差を最小にする分散推定量・両側検定 / 計量経済学:2点・4点を使う回帰係数の推定量の不偏性と分散比較

  • 2025年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:離散型2変量分布の周辺分布・共分散・差の分散 / 統計学:三角分布の分布関数・中央値・モーメントと検定力 / 計量経済学:対数線形の生産関数と規模に関する収穫一定の F 検定

  • 2025年度 第Ⅰ期(全3問)

    統計学:ベルヌーイ標本の平均・分散,二項確率,母比率の検定 / 統計学:正規分布の確率計算,絶対偏差の分布,母分散の信頼区間 / 計量経済学:原点を通る回帰の最小二乗推定量と比の平均による推定量

  • 2024年度 第Ⅱ期(全3問)

    確率論:サイコロ2回の和と差 — 無相関だが独立でない例 / 統計学:正規母集団の片側検定と信頼区間,必要な標本サイズ / 計量経済学:重回帰の正規方程式・決定係数の限界・完全な多重共線性

  • 2024年度 第Ⅰ期(このページ・全3問)

    確率論:同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性 / 統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算 / 計量経済学:定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響

2024年度 第Ⅰ期の出題内容

全3問

この3問の分野は確率・統計1問・統計・計量1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問確率・統計同時確率表からの条件付き確率・周辺分布・独立性a,b を使わずに答えられる / a,b が個別に定まらなくても答えが出るあり
第2問—統計学:正規・カイ2乗・t の各分布と検定力の計算上側か下側かを取り違えない / t 分布の構成を書くあり
第3問統計・計量定式化の誤りが推定量のバイアスに与える影響バイアスの符号 / 欠落変数バイアスの一種あり

2024年度 第Ⅰ期の解説には答案の書き方1件が付いています。

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF