広島大 先進理工系科学研究科 数学プログラム 数学 一般A(令和5年8月実施・午前) 院試 過去問 解答例・解説(全3問)
全3問の分野は線形代数1問、微分積分・解析1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 線形代数:平面部分空間と線形変換
方針
この問題の要点は, という一次関係を最後まで使い切ることにある。 は座標和 の平面なので, を基底にしてしまえば計算は 次元に落ちる。 (4) は「線形変換を基底でない生成系上に指定すると,既存の一次関係と矛盾することがある」という典型例である。 (5) は 基底で見ると単なる入れ替え行列であり,対称成分 と反対称成分 に分解すればよい。
典型ミス
(3) で が一次従属だから張らない,と短絡しないこと。 は 次元なので, 本の生成系が一次従属であることは自然である。
(4) では が独立な第3基底ベクトルではない点に注意する。 上の指定値は, を保たなければ線形写像を定めない。
(5) で 全体の線形変換として行列を作る必要はない。問題は 上の線形変換なので, の基底 で表すのが最短である。
採点上の注意
と書けば部分空間性は簡潔に示せる。
(4) は「線形性から が強制される」と明示し,指定値 との矛盾まで書く。
固有空間は抽象的な 表示だけでなく,座標表示も添えると検算しやすい。
解答
3つのベクトルは を満たす。しかも係数 はすべて ではない。したがって は一次従属である。
(2) が線形部分空間であること線形写像 を考えると, である。線形写像の核は常に線形部分空間だから, は の線形部分空間である。
直接確認してもよい。 なら なので であり,和とスカラー倍で閉じている。また である。
(3) が を張ることまず はいずれも座標和が なので に属する。さらに だから, である。
任意の をとる。 より である。そこで となる。したがって の任意の元は の線形結合,したがって の線形結合で書ける。
(4) 指定された値をもつ線形変換が存在しないこと上の線形変換 が を満たすと仮定する。ところが ,すなわち であるから,線形性より でなければならない。 から なので,線形性が強制する値は である。
これは指定値 と両立しない。実際, なら となるが, である。 よってそのような線形変換は存在しない。
(5) の固有値と固有空間は を基底にもつ。実際,(3) で が を張ることを示し, なら より である。
この基底 に関して を表す。条件は であるから,表現行列は 特性多項式は なので,固有値は である。
の固有空間。 が に等しい条件は である。よって これは と同じ直線であり, とも整合する。
の固有空間。 となる条件は である。よって
最終答
という非自明な一次関係があるので一次従属。
なので の線形部分空間である。
は と書けるので, は を張る。
線形性から が強制され,指定値 と矛盾する。
固有値は 。固有空間は , 。
第2問 — 解析:関数列・関数項級数と重積分
方針
(A) は「点ごとの極限」と「一様収束」を分けて扱う問題である。 を固定すれば指数減衰で に落ちるが, に近い場所では山が高くなるため 全体では一様にならない。 級数は で指数減衰がそろうので,Weierstrass の判定法がそのまま使える。
(B)(1) は積分順序の交換が本質で, 方向の長さが になる。 (B)(2) は射影領域をまず決める。 を円板として見抜けば,極座標で一気に処理できる。
典型ミス
(A)(1) で を などと誤るのは, 方向の最大点を取り違えている。 では に近づけられる。
(A)(3) で和と積分の交換理由を書かないと減点されやすい。(2) の一様収束を使う。
(B)(1) で を と逆に読まないこと。問題の領域は である。
(B)(2) で射影領域の中心を原点と勘違いしない。円板は で,原点を通る右側の円である。
採点上の注意
一様収束の否定では, と明示すると短く確実である。
重積分は,領域を言い換えてから積分式を書くと計算過程が読みやすい。
体積問題では「上側 minus 下側」が非負となる領域を先に定める。積分範囲と被積分関数の両方が正しくそろって初めて点が取れる。
第3問 — 位相:逆像位相と部分空間位相
方針
この問題は,逆像が集合演算と相性よく振る舞うことを確認するだけでほぼ解ける。 は, を連続にするために 側へ最低限入れなければならない開集合族である。 同様に は,包含写像 を連続にするために 側へ最低限入れなければならない開集合族である。
典型ミス
を逆写像と誤解しないこと。ここでの は集合の逆像であり, が全単射である必要はない。
任意和と有限交叉の区別を崩さない。位相の公理では和は任意個,交叉は有限個である。
(B) で を の開集合と主張しないこと。 は一般には で開とは限らず, 上の開集合として扱う。
採点上の注意
位相の証明では, と全体集合,任意和,有限交叉の3項目を分けて書くと採点者が追いやすい。
連続性との関係は定義を一行で書けばよい。過度な説明より,, の形を明示することが重要である。
年度別の解答例(8年度)
行列式・逆行列・固有値・ジョルダン標準形・可換子 / 一様連続性・関数項級数・広義重積分 / 第3問 (I)/(II) 選択
線形代数:逆行列・連立方程式と多項式空間上の線形写像 / 解析:関数列の一様収束と多変数関数の極値 / 第3問 (I)/(II) 選択
一般A(令和5年8月実施・午前)(このページ・全3問)
線形代数:平面部分空間と線形変換 / 解析:関数列・関数項級数と重積分 / 位相:逆像位相と部分空間位相
問4:群準同型・有限指数部分群・行列群 / 問5:多項式環の準同型と核イデアル / 問6:実射影平面の二次埋め込み
線形代数:交代行列・対称行列と内積 / 微分積分:x log sin x の解析と級数 / 第3問 (I)/(II) 選択:位相 / 確率
線形代数:階数条件と3周期線形写像 / 解析:振動関数と対数特異性をもつ広義重積分 / 位相:内部の逆像と余有限位相
問8:Möbius変換・留数計算・Schwarz型評価 / 問9:積分の等号条件と正則変動型の極限 / 問10:混合正規分布と切断平均
線形代数:べき零行列と逆行列・対角化と極限 / 多変数関数の連続・偏微分・重積分 / 第3問 (I)/(II) 選択
一般A(令和5年8月実施・午前)の出題内容
全3問
前年度(一般A(令和5年8月実施・午後))との違い
- 大問数
- 一般A(令和5年8月実施・午後) 9問 → 一般A(令和5年8月実施・午前) 3問
広島大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2020〜2026(プログラムにより差あり)
- 公式の解答例
- 一部の年度・科目のみ公開
- 英語の扱い
- TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
- 院試hubの最終確認
- 2026-06-03