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広島大 先進理工系科学研究科 数学プログラム 数学 一般A(令和4年8月実施・午後) 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問の分野は微分積分・解析1問、微分方程式1問です。解説は4問、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 問8:Möbius変換・留数計算・Schwarz型評価

方針

Möbius変換では,領域を図で追うより先に実部・虚部・絶対値を式で押さえると確実である。f(z)=(z−1)/(z+1)f(z)=(z-1)/(z+1) は右半平面側を左半平面側へ移す変換で,さらに単位円板の内側を保つ。3乗写像では偏角が3倍になるため,扇形の開閉を丁寧に扱う。

線積分の注意

第2の線積分は,被積分関数に z‾\overline z が含まれるためそのままでは正則関数の積分ではない。単位円上の関係 z‾=1/z\overline z=1/z を使ってから留数定理に持ち込むのが要点である。この置き換えは積分路上だけで行っているので,積分路が変わると同じ式は使えない。

級数の収束

(C)(3) は点ごとの収束だけでは正則性を結論できない。任意の閉円板 ∣z∣≤ρ<1|z|\le\rho<1 で ρn\rho^n による優級数を作り,一様収束を示すことが採点上の核心である。f(0)=0f(0)=0 があるから f(zn)f(z^n) を znz^n の大きさで押さえられる。

問8:Möbius変換・留数計算・Schwarz型評価の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 問9:積分の等号条件と正則変動型の極限

解答

(A) 積分の等号条件 (A)(1) 非負数の等号条件

a,b≥0a,b\ge 0 で ∣a−b∣=a+b |a-b|=a+b が成り立つとする。両辺は非負なので二乗してよく, (a−b)2=(a+b)2 (a-b)^2=(a+b)^2 を得る。整理すると a2−2ab+b2=a2+2ab+b2,4ab=0. a^2-2ab+b^2=a^2+2ab+b^2,\qquad 4ab=0. したがって a=0a=0 または b=0b=0 である。二乗だけで済ませると符号条件を見落としやすいが,ここでは a+b≥0a+b\ge 0 があるので問題ない。

(A)(2) 非負関数の零積分

g≥0g\ge 0 かつ ∫Rg(x) dx=0\int_{\mathbb R}g(x)\,dx=0 とする。m=1,2,…m=1,2,\ldots に対して Em={x∈R∣g(x)≥1/m} E_m=\{x\in\mathbb R\mid g(x)\ge 1/m\} とおく。もし ∣Em∣>0|E_m|>0 なら ∫Rg(x) dx≥∫Emg(x) dx≥1m∣Em∣>0 \int_{\mathbb R}g(x)\,dx \ge \int_{E_m}g(x)\,dx \ge \frac{1}{m}|E_m|>0 となり仮定に反する。よって各 EmE_m は零集合である。さらに {x∣g(x)>0}=⋃m=1∞Em \{x\mid g(x)>0\}=\bigcup_{m=1}^{\infty}E_m であるから,g(x)=0g(x)=0 はほとんどいたる所で成り立つ。

(A)(3) 三角不等式の等号条件

f+=max⁡(f,0)f^+=\max(f,0),f−=max⁡(−f,0)f^-=\max(-f,0) とおく。すると f=f+−f−,∣f∣=f++f−. f=f^+-f^-,\qquad |f|=f^++f^-. また A=∫Rf+(x) dx,B=∫Rf−(x) dx A=\int_{\mathbb R}f^+(x)\,dx,\qquad B=\int_{\mathbb R}f^-(x)\,dx とおけば A,B≥0A,B\ge 0 で, ∣∫Rf(x) dx∣=∣A−B∣,∫R∣f(x)∣ dx=A+B. \left|\int_{\mathbb R}f(x)\,dx\right|=|A-B|,\qquad \int_{\mathbb R}|f(x)|\,dx=A+B. 仮定より ∣A−B∣=A+B|A-B|=A+B である。したがって (1) を A,BA,B に適用して,A=0A=0 または B=0B=0 を得る。

B=0B=0 の場合,(2) を f−f^- に適用して f−=0f^-=0 がほとんどいたる所で成り立つので,f≥0f\ge 0 ほとんどいたる所である。 A=0A=0 の場合も同様に f+=0f^+=0 ほとんどいたる所であり,f≤0f\le 0 ほとんどいたる所である。これで二つのいずれかが示された。

(B) 正則変動型の極限 (B)(1) 対数積分の極限

t≥1t\ge 1 を固定する。gg は有界で,g(nv)→pg(nv)\to p が各 v∈[1,t]v\in[1,t] で成り立つ。したがって有界収束定理より lim⁡n→∞∫1tg(nv)v dv=∫1tpv dv=plog⁡t=log⁡(tp). \lim_{n\to\infty}\int_1^t \frac{g(nv)}{v}\,dv = \int_1^t \frac{p}{v}\,dv = p\log t = \log(t^p). t=1t=1 のときは両辺とも 00 であり,同じ式に含まれる。

(B)(2) f(nt)/f(n)f(nt)/f(n) の極限

定義から f(nt)f(n)=exp⁡(∫nntg(u)u du). \frac{f(nt)}{f(n)} = \exp\left(\int_n^{nt}\frac{g(u)}{u}\,du\right). ここで u=nvu=nv と置換すると ∫nntg(u)u du=∫1tg(nv)v dv. \int_n^{nt}\frac{g(u)}{u}\,du = \int_1^t\frac{g(nv)}{v}\,dv. (1) と指数関数の連続性より lim⁡n→∞f(nt)f(n)=elog⁡(tp)=tp \lim_{n\to\infty}\frac{f(nt)}{f(n)}=e^{\log(t^p)}=t^p である。

(B)(3) 一様上界

gg は有界なので,ある M>0M>0 を ∣g(u)∣≤M(u≥1) |g(u)|\le M\qquad (u\ge 1) となるように取れる。x≥1, t≥1x\ge 1,\ t\ge 1 に対して f(tx)f(x)=exp⁡(∫xtxg(u)u du)≤exp⁡(M∫xtxduu)=tM. \frac{f(tx)}{f(x)} = \exp\left(\int_x^{tx}\frac{g(u)}{u}\,du\right) \le \exp\left(M\int_x^{tx}\frac{du}{u}\right) = t^M. 指数関数の値は常に正だから 0<f(tx)f(x)≤tM 0<\frac{f(tx)}{f(x)}\le t^M が従う。ここで必要なのは gg の上からの有界性だけだが,後の優収束では一様な上界としてこの形が便利である。

(B)(4) 積分平均の極限

u=nvu=nv と置換すると 1nf(n)∫n3nf(u) du=∫13f(nv)f(n) dv. \frac{1}{n f(n)}\int_n^{3n} f(u)\,du = \int_1^3 \frac{f(nv)}{f(n)}\,dv. (2) より integrand は各 v∈[1,3]v\in[1,3] で vpv^p に収束する。また (3) より 0<f(nv)f(n)≤vM≤3M 0<\frac{f(nv)}{f(n)}\le v^M\le 3^M であり,右辺は [1,3][1,3] 上可積分な一様上界である。優収束定理を用いて lim⁡n→∞1nf(n)∫n3nf(u) du=∫13vp dv=3p+1−1p+1. \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n f(n)}\int_n^{3n} f(u)\,du = \int_1^3 v^p\,dv = \frac{3^{p+1}-1}{p+1}.

採点上の注意

(A) の等号条件は三角不等式の等号条件と同じ構造であるが,可積分関数では正負部分に分けて零積分の補題へ戻すのが安全である。(B) は正則変動の基本形で,点ごとの極限だけでは最後の積分極限に進めない。(3)(3) の一様評価を先に作っておくと,優収束定理の適用条件まで自然にそろう。

最終答

(A)(1)∣a−b∣=a+b⇒a=0 または b=0,(A)(2)g≥0, ∫Rg=0⇒g=0 a.e.,(A)(3)∣∫Rf∣=∫R∣f∣⇒f≥0 a.e. または f≤0 a.e. \begin{array}{ll} \text{(A)(1)} & |a-b|=a+b \Rightarrow a=0\ \text{または}\ b=0,\\[2mm] \text{(A)(2)} & g\ge0,\ \int_{\mathbb R}g=0 \Rightarrow g=0\ \text{a.e.},\\[2mm] \text{(A)(3)} & \left|\int_{\mathbb R}f\right|=\int_{\mathbb R}|f| \Rightarrow f\ge0\ \text{a.e.}\ \text{または}\ f\le0\ \text{a.e.} \end{array} (B)(1)lim⁡n→∞∫1tg(nv)v dv=plog⁡t,(B)(2)lim⁡n→∞f(nt)f(n)=tp,(B)(3)0<f(tx)f(x)≤tM(x≥1, t≥1),(B)(4)lim⁡n→∞1nf(n)∫n3nf(u) du=3p+1−1p+1. \begin{array}{ll} \text{(B)(1)} & \displaystyle \lim_{n\to\infty}\int_1^t \frac{g(nv)}{v}\,dv=p\log t,\\[2mm] \text{(B)(2)} & \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{f(nt)}{f(n)}=t^p,\\[2mm] \text{(B)(3)} & \displaystyle 0<\frac{f(tx)}{f(x)}\le t^M\quad(x\ge1,\ t\ge1),\\[2mm] \text{(B)(4)} & \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{1}{nf(n)}\int_n^{3n}f(u)\,du =\frac{3^{p+1}-1}{p+1}. \end{array}

第10問 — 問10:混合正規分布と切断平均

方針

この問題の本質は,二つの正規成分の平均差 δn\delta_n が大きくなると,閾値 δn/2\delta_n/2 で低い平均の成分と高い平均の成分がほぼ分離される点にある。標本平均 X‾n\overline X_n は,δn\delta_n が固定なら普通の分散評価で処理できる。一方,δn→∞\delta_n\to\infty では通常の平均だけを見ると高い平均の成分が強く効くので,切断した Yn,iY_{n,i} と Zn,iZ_{n,i} に分けるのが自然である。

典型ミス

pn→1p_n\to1 の場合と pn=pp_n=p の場合を混同しないことが重要である。前者では高い平均の成分の重みが消えるため X‾n\overline X_n は μ\mu に近づく。後者では高い平均の成分の割合が 1−p1-p だけ残るため,X‾n\overline X_n 自体は一般には μ\mu に近づかない。その代わり,下側だけを拾う Z‾n\overline Z_n が pμp\mu に近づく。

裾評価の役割

(5) で必要なのは,平均が μ+δn\mu+\delta_n の正規分布が δn/2\delta_n/2 より下に落ちる確率だけでなく,その領域での一次・二次モーメントも消えることである。正規分布の裾は指数的に小さいため,δn\delta_n や δn2\delta_n^2 を掛けても 0 に収束する。ここを確率だけで済ませると,分散評価が不足しやすい。

問10:混合正規分布と切断平均の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 問11:常微分方程式と散逸エネルギー

Riccati 方程式の標準手順

特解 y0y_0 が一つ見つかったら,y=y0+uy=y_0+u とおくと Riccati 方程式は uu について u′+(2y0)u+u2=0 u'+\left(2y_0\right)u+u^2=0 の形になる。ここで v=1/uv=1/u と置くと一次線形方程式になる。特解を探す段階で終わらず,この線形化まで進めるのが採点上の要点である。

なぜ t=sin⁡xt=\sin x が効くか

t=sin⁡xt=\sin x とすると dt/dx=cos⁡xdt/dx=\cos x である。二階微分から出る −Y′sin⁡x-Y'\sin x と,(tan⁡x)y′(\tan x)y' から出る +Y′sin⁡x+Y'\sin x が打ち消し合うため,方程式は定数係数の Y′′+2Y=0Y''+2Y=0 になる。初期条件では x=0x=0 で cos⁡0=1\cos 0=1 だから,y′(0)=Y′(0)y'(0)=Y'(0) と読める。

エネルギー法の見取り図

(C) の式は,ポテンシャル V(y)=−y2+14y4 V(y)=-y^2+\frac14y^4 をもつ減衰系と見られる。E′=−2y′2E'=-2y'^2 は摩擦でエネルギーが失われることを表し,y=0y=0 は E≥0E\ge0 の壁になるため,初期エネルギー −3/4-3/4 の軌道は 00 を越えられない。

極限値の決め方

EE が下に有界で単調なので,∫0∞y′(t)2 dt<∞\int_0^\infty y'(t)^2\,dt<\infty が従う。さらに y(t)y(t) 自体が収束すると仮定すると,y′(t)→0y'(t)\to0 まで言える。あとは微分方程式の平衡点 2α−α3=0 2\alpha-\alpha^3=0 を調べ,正値性とエネルギーの符号で α=0\alpha=0 を除く。単に「安定そうだから 2\sqrt2」と書くのではなく,正値性・エネルギー・平衡点の三段階を書くと答案として強い。

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第2問 — 問12:一様分布の最大値と推定量

方針

一様分布 U(0,θ)U(0,\theta) では,パラメータ θ\theta は密度の台の端点に現れる。したがって尤度の最大化では,微分ではなく「標本をすべて含む最小の端点」を探す。これが最大値 X(n)X_{(n)} である。

UMVUとBayes推定量の違い

θ^UMVU=(n+1)X(n)/n\widehat\theta_{\mathrm{UMVU}}=(n+1)X_{(n)}/n は不偏性を満たすように最大値を上方補正した推定量である。一方,β=2\beta=2 の事後平均は (n+2)X(n)/(n+1)(n+2)X_{(n)}/(n+1) で,補正係数は少し小さい。その分だけ負のバイアスを残すが,分散を抑える効果があり,平均二乗誤差では UMVU より小さくなる。

採点上の注意

十分性は「最大値だけ見ればよい」という直感だけではなく,同時密度の分解を書いて示す。周辺密度と事後密度では,x(n)>αx_{(n)}>\alpha の仮定により積分の下端が x(n)x_{(n)} になる点を明記する。ここを α\alpha のままにすると,事後分布の尺度母数を取り違える。

問12:一様分布の最大値と推定量の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(8年度)

  • 2026年度 一般A(全3問)

    行列式・逆行列・固有値・ジョルダン標準形・可換子 / 一様連続性・関数項級数・広義重積分 / 第3問 (I)/(II) 選択

  • 2025年度 一般A(全3問)

    線形代数:逆行列・連立方程式と多項式空間上の線形写像 / 解析:関数列の一様収束と多変数関数の極値 / 第3問 (I)/(II) 選択

  • 一般A(令和5年8月実施・午前)(全3問)

    線形代数:平面部分空間と線形変換 / 解析:関数列・関数項級数と重積分 / 位相:逆像位相と部分空間位相

  • 一般A(令和5年8月実施・午後)(全9問)

    問4:群準同型・有限指数部分群・行列群 / 問5:多項式環の準同型と核イデアル / 問6:実射影平面の二次埋め込み

  • 2024年度 一般B(全3問)

    線形代数:交代行列・対称行列と内積 / 微分積分:x log sin x の解析と級数 / 第3問 (I)/(II) 選択:位相 / 確率

  • 一般A(令和4年8月実施・午前)(全3問)

    線形代数:階数条件と3周期線形写像 / 解析:振動関数と対数特異性をもつ広義重積分 / 位相:内部の逆像と余有限位相

  • 一般A(令和4年8月実施・午後)(このページ・全5問)

    問8:Möbius変換・留数計算・Schwarz型評価 / 問9:積分の等号条件と正則変動型の極限 / 問10:混合正規分布と切断平均

  • 2023年度 一般B(全3問)

    線形代数:べき零行列と逆行列・対角化と極限 / 多変数関数の連続・偏微分・重積分 / 第3問 (I)/(II) 選択

一般A(令和4年8月実施・午後)の出題内容

全5問

この5問の分野は微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問Möbius変換・留数計算・Schwarz型評価線積分の注意 / 級数の収束あり
第9問微分積分・解析積分の等号条件と正則変動型の極限—あり
第10問混合正規分布と切断平均裾評価の役割あり
第11問微分方程式常微分方程式と散逸エネルギーRiccati 方程式の標準手順 / なぜ t=sin x が効くかあり
第2問—問12:一様分布の最大値と推定量UMVUとBayes推定量の違い / 採点上の注意あり

一般A(令和4年8月実施・午後)の解説には採点上の注意1件・典型ミス1件が付いています。

前年度(2023年度 一般B)との違い

大問数
2023年度 一般B 3問 → 一般A(令和4年8月実施・午後) 5問
2023年度 一般Bの解答例

広島大学の公式過去問

公開年度範囲
2020〜2026(プログラムにより差あり)
公式の解答例
一部の年度・科目のみ公開
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。学内英語試験はプログラムにより異なる。
院試hubの最終確認
2026-06-03
広島大学の公式過去問PDF