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院試 信号処理の出題傾向と対策

院試 信号処理の出題傾向。フーリエ変換・ラプラス変換・Z変換・サンプリング定理・ディジタルフィルタの頻出パターンと、電気・情報通信系研究科ごとの試験範囲、答案で失点しやすい論点を整理します。

出題大学
15大学
収録した設問
175問
収録年度
2010〜2026年度
2024〜2026年度
95問
試験科目
59科目
頻出テーマ
5テーマ

信号処理 院試の出題傾向 — 頻出テーマ × 年度(2010〜2026年度)

最も多いのはフーリエ変換で91問(14大学)、 年度別では2025年度の42問が最多です。

テーマ20262025202420232022202120202019〜2018大学合計
フーリエ変換1316161310612141491
ラプラス変換1116107512–41256
フーリエ級数4864241–11130
Z変換–111111––36
標本化定理–111–––1135
年度計2842342618125320188

「〜2018」は2010〜2018年度の合計です。数字はテーマ別ののべ件数で、1つの設問が複数テーマに当たる場合は重複して数えています。重複を除いた設問数は175問です。

信号処理を出題する大学・研究科と試験科目

この分野が出た大学×研究科×試験科目は59件。出題数の多い順に24件を挙げます。うち24件は年度別の解答PDF151本を公開しています。

大学・研究科試験科目設問出題年度解答PDF
電気通信大学大学院情報理工学研究科専門科目(機械知能システム学)132020〜2026(7年度)2020〜2026年度・7本 ¥3,200
京都大学情報学研究科通信情報システムコース82021〜2025(5年度)2021〜2025年度・5本 ¥2,880
京都大学情報学研究科システム科学コース72023〜2025(3年度)2021〜2025年度・5本 ¥2,880
東京大学理学系研究科 物理学専攻専門科目(物理学)72011〜2024(7年度)2011〜2026年度・15本 ¥3,200
東京大学数理科学研究科 数理科学専攻専門科目B72010〜2026(6年度)2004〜2026年度・20本 ¥3,200
大阪大学情報科学研究科 情報数理学専攻専門科目(情報数理学)62021〜2025(4年度)2021〜2025年度・5本 ¥2,880
東京大学情報理工学系研究科 電子情報学専攻専門科目62021〜2025(4年度)2021〜2025年度・5本 ¥2,880
東京大学学際情報学府学際情報学専攻 先端表現情報学コース 専門科目62011〜2016(5年度)2010〜2020年度・11本 ¥3,200
名古屋大学大学院環境学研究科 地球環境科学専攻地球惑星科学系 専門科目52022〜2026(5年度)2022〜2026年度・5本 ¥2,880
京都大学情報学研究科知能情報学コース42021〜2024(4年度)2021〜2025年度・5本 ¥2,880
九州大学大学院理学府地球惑星科学専門科目42021〜2025(4年度)2021〜2026年度・6本 ¥3,200
東京科学大学工学院 システム制御系システム制御系 数学42021〜2025(4年度)2021〜2025年度・7本 ¥3,200
東京大学工学系研究科 電気系工学専攻専門科目42022〜2023(2年度)2022〜2025年度・3本 ¥2,180
東北大学大学院情報科学研究科2群 情報・生命系 基礎・専門科目42023〜2026(4年度)2023〜2026年度・7本 ¥3,200
東北大学大学院情報科学研究科3群 機械・知能系 数学・専門科目42023〜2025(3年度)2023〜2025年度・3本 ¥2,180
東北大学大学院工学研究科 電気・情報系基礎・専門科目42023〜2026(4年度)2023〜2026年度・7本 ¥3,200
東北大学大学院工学研究科 機械系機械系 数学・専門科目42023〜2025(3年度)2023〜2025年度・3本 ¥2,180
北海道大学大学院情報科学院 情報科学専攻 メディアネットワークコース専門科目42025〜2026(2年度)2025〜2026年度・2本 ¥1,680
九州大学大学院工学府 機械工学専攻・水素エネルギーシステム専攻機械工学32023〜2026(3年度)2023〜2026年度・4本 ¥2,580
早稲田大学大学院基幹理工学研究科数学応用数理専攻 専門科目32023〜2024(2年度)2022〜2026年度・5本 ¥2,880
大阪大学情報科学研究科専門科目(情報工学)32020〜2025(3年度)2020〜2025年度・6本 ¥3,200
東京科学大学工学院 電気電子系電気電子系 専門科目32019〜2024(3年度)2019〜2024年度・5本 ¥2,880
東京科学大学理学院 物理学系 物理学コース物理32020〜2024(3年度)2020〜2025年度・5本 ¥2,880
東京大学情報理工学系研究科 システム情報学専攻システム情報学32023〜2026(3年度)2022〜2026年度・5本 ¥2,880

信号処理と設問が重なる他分野の頻出テーマ

信号処理は、電気・電子・情報通信系の院試で「数学が試される専門科目」として配点の大きな割合を占めます。問われているのは公式の記憶量ではなく、連続時間と離散時間の対応を頭の中で行き来できるかという1点です。同じ周波数応答の議論を、ラプラス変換のs領域で書くか、フーリエ変換のω領域で書くか、z変換の単位円上で書くかは、対象が連続系か離散系か、初期条件を含めるか定常応答だけ見るかによって決まります。この使い分けが曖昧なまま過去問に入ると、解けたつもりでも採点者から見れば「どの設定で議論しているか分からない答案」になり、部分点も入りません。本記事では、連続・離散それぞれの論点と頻出失点を実務マップとして整理します。

学部段階で固めておくべき基礎

  • 複素関数論:オイラーの公式、複素積分(留数定理)、解析接続。逆ラプラス変換と逆z変換の留数計算で必須
  • 線形システム論:たたみ込み、インパルス応答、時不変性・線形性・因果性の定義。あらゆる論点の土台
  • フーリエ級数:周期信号の三角級数・複素指数展開、パーセバルの等式、ギブス現象
  • 常微分方程式・差分方程式:定数係数線形(同次・非同次)。連続系と離散系の伝達関数を出す入口
  • 確率変数の基礎:期待値・分散・共分散、定常性、エルゴード性。ランダム信号の自己相関と PSD で必須
  • 線形代数:直交基底、内積空間、固有値分解。フィルタの状態空間表現と DFT の直交性の理解で効く

とくに複素関数論は、学部の電気回路や制御工学で表面的に触れただけだと、極の留数を取る計算で躓きます。

論点別に見る出題と失点

信号処理の頻出論点は連続時間側と離散時間側で対をなしていて、片方を理解すると他方の理解も同時に進む構造になっています。1論点ずつ、答案で外せない作法と失点パターンを見ていきます。

連続時間フーリエ変換とラプラス変換

頻出は、矩形パルス・三角パルス・指数減衰のフーリエ変換、パーセバルの等式による電力計算、ラプラス変換の伝達関数表現、初期値・最終値定理、極零配置と安定性の判定。最大の失点源は、フーリエ変換の定義(規約)を答案冒頭で明示しないことです。F(ω) = ∫ f(t) e^(−iωt) dt を採るのか、F(f) = ∫ f(t) e^(−i2πft) dt を採るのか、あるいは対称型の (1/√(2π)) を前置するのかで、反転公式とパーセバルの等式の係数が変わります。教科書ごとに規約が違うので、最初に1行「本問では F(ω) = ∫ f(t) e^(−iωt) dt の定義を採る」と書くだけで採点者の心象が変わり、係数違いを「規約の問題」として処理してもらえます。ラプラス変換では、片側か両側か、初期条件を含めるか定常応答だけ見るかを明示しないと、L[f′(t)] = sF(s) − f(0) の f(0) を勝手に消した答案になりがちです。極零配置から安定性を判定する問題では、安定の十分条件(全ての極が左半平面)と必要条件を分けて書かないと、虚軸上の単純極を持つ系を「不安定」と即断する典型失点に陥ります。

離散時間信号とz変換

頻出は、単位インパルス δ[n]・単位ステップ u[n]・指数列 a^n u[n] のz変換、差分方程式の解法、伝達関数の極零配置、安定性(極の単位円内)。最大の失点源は、z変換の収束領域(ROC, Region of Convergence)を書かずに極の位置だけで因果性・安定性を判定することです。例えば X(z) = z / (z − a) という同じ式が、ROC が |z| > |a| なら因果列 a^n u[n] を、ROC が |z| < |a| なら反因果列 −a^n u[−n−1] を意味します。逆z変換の問題で ROC を明示しないと、答えが一意に定まらず採点不能になる。差分方程式の解法では、特性方程式の根を求めた後で初期条件を代入する順序を答案で明示する。z変換による解法と古典的な漸化式解法のどちらを採るかは問題が指定していないことが多いので、自分が採った方針を1行書いてから式に入ってください。安定性判定の問題で「極が単位円内」とだけ書く答案は、ROC が原点を含むかどうかへの言及がないため減点対象になります。因果かつ安定な LTI 系であれば「全ての極が単位円内、かつ ROC が外側を含み無限遠を含む」という二段で書くのが基本動作です。逆z変換を部分分数展開で求める場合、分子の最高次数と分母の最高次数の差で除算(多項式割り算)が先に必要になるかどうかを最初に判断する。これを忘れて部分分数展開に直行すると、有限長の遅延項を取り落として典型失点に陥ります。

標本化定理とエイリアシング

頻出は、ナイキスト周波数の計算、エイリアシングが発生する条件の判定、折り返しスペクトルの図示、理想低域通過フィルタによる再構成、ゼロ次ホールド(ZOH)による再構成の周波数特性。最大の失点は、エイリアシング条件の不等号の向きを取り違えることです。「信号の最高周波数を f_max、標本化周波数を f_s とするとき、エイリアシングが起きない条件は f_s ≥ 2 f_max」が正解で、> ではなく ≥ である点、左辺と右辺の取り違えに注意してください。実際にエイリアシングが起きた場合の折り返し周波数は |f − k f_s| を 0 ≤ f ≤ f_s/2 に折り畳んだものですが、図示問題ではスペクトルのコピーが ±k f_s の位置に等間隔で並ぶ様子をまず描き、その重なりとして折り返し成分を示してください。再構成の問題では、理想再構成フィルタの通過帯域幅を ±f_s/2 と書き、利得(1/f_s ではなく問題によっては 1)を明示する。ZOH は単に「保持」と書くだけでなく、周波数特性が sinc(f T_s) e^(−iπ f T_s) の形になり、その振幅減衰を補償するフィルタが後段に必要だという言及があると上位答案になります。

線形時不変系(インパルス応答・周波数応答)

頻出は、たたみ込み積分・たたみ込み和の計算、インパルス応答からの周波数応答の導出、ステップ応答からインパルス応答を逆算する問題、因果系・実現可能系の判定。最大の失点は、たたみ込みの積分区間の取り方を機械的に (−∞, ∞) と書いて、因果系での u(t) や u(t−τ) の存在を取り入れ忘れることです。例えば h(t) = e^(−at) u(t) と x(t) = u(t) のたたみ込みは ∫_0^t e^(−aτ) dτ = (1 − e^(−at)) / a となりますが、u(t) と u(t−τ) の積の非零区間が 0 ≤ τ ≤ t であることを図で示してから積分に入る順序を崩さないでください。周波数応答 H(jω) を求めたら、必ず振幅特性 |H(jω)| と位相特性 ∠H(jω) を別々に書き出し、ボード線図を要求された場合は片対数軸の傾き(dB/decade)と折点周波数を明示する。1次系ならカットオフで −3 dB と −45°、2次系なら共振点での Q 値の効きまで答案に出すと差がつきます。LTI 系の応答計算で「周波数領域で解いた方が速い問題」と「時間領域でたたみ込みを直接計算した方が速い問題」を見分けられるかも問われます。入力が複素指数 e^(jω₀t) の定常応答だけを問うなら H(jω₀) を代入するだけで終わり、たたみ込み積分は不要です。一方、入力が矩形パルスのように有限時間で非零の信号で過渡応答まで含めて求めよと指定された場合は、時間領域のたたみ込みかラプラス変換による式変形が必要になります。問題文の「定常」「過渡」「全応答」のどれを問うているかを最初に読み解いてから式を立ててください。

ディジタルフィルタ設計(FIR/IIR)

頻出は、窓関数法による FIR ローパスフィルタ設計、双線形変換による IIR フィルタ設計、インパルス不変変換、線形位相 FIR の対称条件、FIR と IIR の比較(位相、安定性、計算量)。失点パターンは、設計仕様(通過域端、阻止域端、通過域リップル、阻止域減衰量)と設計パラメータ(フィルタ次数、窓関数の種類、双線形変換のプリワーピング)の対応を答案上で接続しないことです。窓関数法の問題では、まず理想ローパスのインパルス応答 h_d[n] = (ω_c/π) sinc(ω_c n/π) を書き、それに窓 w[n] を乗じて打ち切る、という2段階を明示する。窓を選ぶ理由(ハミング窓ならサイドローブが約 −43 dB、ハニング窓なら −32 dB、矩形窓なら −13 dB だが遷移帯域が狭い)を1行書くと差がつきます。双線形変換の問題では s = (2/T)(z−1)/(z+1) の代入で連続系のフィルタ H_a(s) を H_d(z) に写像する手続きを書きますが、周波数の歪み(Ω = (2/T) tan(ω/2))を補償するプリワーピングを書き忘れる答案が多い。FIR の線形位相条件は h[n] が中心対称(h[n] = h[N−1−n])か中心反対称(h[n] = −h[N−1−n])であることに対応する点を明記してください。

DFT と FFT

頻出は、DFT の定義式と直交性、循環たたみ込みと線形たたみ込みの違い、ゼロパディングによる線形たたみ込みの計算、スペクトル漏れと窓関数、Cooley-Tukey FFT のバタフライ構造、計算量比較(O(N²) vs O(N log N))。最大の失点は、長さ N の系列同士の DFT を掛け合わせて IDFT を取ったものが「線形たたみ込み」ではなく「循環たたみ込み(長さ N で巡回)」になる点を見落とすことです。線形たたみ込みを求めたければ、両系列を最低 N1+N2−1 までゼロパディングしてから DFT を取る、という1行を答案に必ず残してください。スペクトル漏れの問題では、観測区間が信号の周期の整数倍でないと隣接ビンに漏れること、その対策として窓関数(ハニング、ブラックマンなど)を時間領域で掛けて打ち切り端の不連続を緩和することを書く。FFT の計算量比較は「N点 DFT は N² 回の乗算、FFT は (N/2) log_2 N 回」と具体的な式を残すのが基本動作で、「速い」とだけ書く答案は0点に近い扱いを受けます。バタフライ構造を描く問題では、入出力のビット反転並べ替え、ツイドル因子 W_N = e^(−i2π/N) の指数規約、in-place 演算の前後でデータがどう更新されるかを順に図示します。基数2 FFT を 8点で1段ずつ追えるようにしておくと、本番で大きい N が出ても同じ構造に帰着できます。

ランダム信号と最適フィルタ

頻出は、自己相関関数の定義(時間平均かアンサンブル平均か)、定常性とエルゴード性、パワースペクトル密度(PSD)、ウィーナー・ヒンチンの定理、整合フィルタ、ウィーナーフィルタ。失点は、定常性の仮定を書かずに「時間平均で PSD を求めた」と書いてしまうことです。エルゴード性が仮定できる場合に限り時間平均はアンサンブル平均と一致する、という1行を明示してから計算に入る。整合フィルタの問題では、SNR を最大化するフィルタが入力信号の時間反転共役 s*(T−t) の定数倍になる、という結論を覚えるだけでなく、シュワルツ不等式から導く流れを 3 行程度で再現できるようにしておくと部分点が伸びます。ウィーナーフィルタは雑音と所望信号の PSD が既知という仮定が肝で、その仮定を答案に書かずに最適解だけ書くと採点者は減点せざるを得ません。

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